The Tears of a Clown2012/12/05 23:06

 我がモータウン・ミュージックの導師、マーティン・フリーマン師匠は無事離日されたとのこと、さて次はどこへ行くのかと思ったら、ニューヨークに現れた。お忙しいことで…NBCの名物朝番組、NBC Todayの、例の場所に登場し、インタビューを受けている。
 Sherlock の撮影は3月からですか。はぁ、そうですか。

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 ジャパン・プレミアの時はきっちり分けていた髪が、今度はとってもラフ。しかも服装が相変わらずオシャレさん。
 師匠!ニューヨークには良いレコード屋が一杯ですな!私のお勧めは、何と言ってもグリニッジ・ヴィレッジの、ブリーカー・ストリート・レコーズです!師匠の大好きなアナログ盤が充実してますよ…

 マーティン師匠のモータウン・コレクションは洒落にならないほど膨大らしいが、その中でも一番のお気に入りの一人が、スモーキー・ロビンソン。中でも、特に"The Tears of a Clown" が大好きだ。
 彼のモータウン編集アルバム、[Made to Measure](このアルバムに関する当ブログの記事はこちら)にも入っているし、ドキュメンタリー番組 [Martin Freeman Goes to Motown] のラストでも、この曲を選んでいる。
 マーティン師匠のお導きにより、目下のところ、私の一番好きなモータウン・ソングも、"The Tears of a Clown"。ポップでキャッチーで、どこか悲しくて、演奏も歌もコーラスも絶妙に上手くて、完璧な一曲だ。



 "The Tears of a Clown" (邦題は「涙のクラウン」と言うらしい)は、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ1967年のアルバム [Make It Happen] の収録曲で、シングルカットはされていなかった。
 これがUKで1970年シングルカットされるや、ナンバーワン・ヒットになり、それにつられてアメリカでもシングルカット,これまたナンバーワン・ヒットになったという、少し変わった経歴を持っている。
 作曲者は複数居るが、主にスティーヴィー・ワンダーが作ったらしい。制作当時、彼はまだ16歳か17歳の少年だったはずで、その点については、マーティン師匠も[Made to Measure] の解説で指摘している。
 楽曲とアレンジの素晴らしさもさることながら、スモーキーによる歌詞も良い。あっけらかんとした曲調だが、詞は常に人を笑わせなければならない道化師に隠された悲しみを歌っており、同じテーマであるオペラ「道化師 I Pagliacci」(レオンカヴァッロ)にも言及している。

 実はこの "The Tears of a Clown"、アルバム・バージョンと、シングル・バージョンが存在する。ビートルズの "Let It Be" にアルバム・バージョンとシングル・バージョンがあるのと同様なのだが、"The Tears of a Clown" 両者の違いは、"Let It Be" ほどは分かり易くない。
 記事にアップしたYouTube の "The Tears of a Clown" はどうやらシングル・バージョンのようだ。YouTubeで他の動画も確認したが、なにぶんにもシングルとアルバムの違いは、ミックスの具合の違いが殆どで、音質が悪いと聞き分けにくい。
 私の耳には、アルバムの方が音のエッジがシャープに立っている、エコーが高音に特に利いている、ややテンポが早い。一方、シングルの方がテンポに落ち着きがあって、角のとれたサウンドになっているような気がする。私は先にシングル・バージョンになれたので、こちらの方が好きだが、そう大きな差ではない。
 マーティン師匠のアルバム [Made to Measure] には、アルバム・バージョンが収録されている。彼はアルバム・バージョンを特に指定したのだろうか。[Goes to Motown] のラストも、アルバム・バージョンに聞こえるが、さて、マーティンが指定したのか?とても気になるところだ。凄まじいマニアである彼のこと、両者の違いは分かっているに違いない。

 名曲 "Tears of a Clown" を語ると幾らでも続きそうだが、ここではもう一点だけ。
 あのイカしたイントロ・リフの背後、ファゴットの印象的な音色で素晴らしい対旋律が鳴っている。あれほど効果的なファゴットの対旋律を他に挙げるとしたら、ベートーヴェンの第九交響曲の第四楽章しか思い浮かばない。
 そもそも、ポップスでこれほど格好良いファゴットというものを聞いたことがない。ビートルズの "For no one"(ホルン)や、"Penny Lane"(ピッコロ・トランペット)に匹敵するだろう。
 このファゴットを吹いているのは、Charles Sirard さんという、当時デトロイト・シンフォニー・オーケストラの主席ファゴット奏者を務めていた人だそうだ。国際ダブル・リード協会(International Double Reed Society)のページにも載っていた。
 インターナショナル・ダブル・リード・ソサイアティなるものが存在することに、驚いてしまった。わぁお。

Mr. Tambourine Man2012/10/30 21:37

 私にとっての新ジャンル、モータウンのアルバムは、コツコツと買っては、コツコツと聞いている。
 モータウンの中でも、私の重心は主に、60年代から70年代前半のスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ,スティーヴィー・ワンダー,ジャクソン・ファイブ、そしてマーヴィン・ゲイに置かれている。やはり、男声好きには変わりない。

 ロックとの違いとして驚いたのは、同一の曲を同時期に複数のモータウン・アーチストが歌っていること。
 いわゆる「カバー」とはちょっと違う。モータウンは、ソング・ライティングを担当する専門チームがあり(スモーキーや、スティーヴィーはこのチームの一員でもあった)、その作品をいろいろなアーチストが録音するのだ。
 その一方で、本当の意味でのカバーもある。当時、はやったロックなどもカバーしているのだが…さすがに、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズの "Hey Jude" はちょっと違う。ロックはアーチスト当人が演奏するという要素の重さがやはり、違うのだろう。
 スティーヴィー・ワンダーの "Blowin' in the wind" も有名だが、私の感想はいまいち。ディランの原曲はまだ「フォーク」というカテゴリーの頃の作品だが、やはりロック寄りの性質があるのではないだろうか。

 そんな中、スティーヴィー・ワンダーの "Mr. Tambourine Man" は、なかなか良かった。タンバリンのリズムカルなイントロが、ストレートで良い。



 ディランの "Mr. Tambourine Man" オリジナルも、もちろん名作だが、やはりザ・バーズの演奏を聞いてしまうと、こちらの格好良さが圧倒的。



 そして、もちろん「ボブ・フェスト」での、ロジャー・マッグイン with TP&HB…最高!スタンや、ハウイの居る、一番好きな時代のハートブレイカーズ。
 イントロがマディソン・スクェア・ガーデンに鳴り響く瞬間は、60年代ロック黄金期から息づき続いた全ての時間が、一瞬に凝縮されたような感動がある。そして、私は特に、2分25秒くらいからが好き。さらに、必殺!トムさんウィンク!ズキューン!



 バーズによる "Mr. Tambourine Man" はとても有名だが、ウィキペディアによると、1965年だけでも、13ものカバーが発表されたそうだ。そういう時代とは言え、これは凄い。
 中には、こんな物もある。(フランキー・ヴァリ &)ザ・フォー・シーズンズ。これは何というか…彼ららしいと言えば、彼ららしいが、かなり脱力系。



 そういう物もあるのかと印象的だったのは、1984年の、ジーン・クラークによるカバー。20年後の元バーズ。全く異なるアプローチだが、とても感動的で良い出来のカバーだ。ちょっとアルバムを買おうかという気持ちにさせられる。

Ain't No Mountain High Enough2012/09/28 21:49

 そろそろ、カテゴリーに "Motowon" を設けようかどうしようか、迷っている。今はモータウンに熱を上げているから良いが、すぐに飽きてしまったらどうしよう。変なところで小心者だったりする。

 最近、目にする国際ロジスティックス会社DHLテレビ・コマーシャルでは、モータウンの名曲 "Ain't No Mountain High Enough" のカバーバーションが使われている。



 こういう映像を見ると、ニューヨークに行きたくなる。
 ちなみに、DHLとは、創業者であるドイツ人三名の頭文字だそうだ。そのうちの一名は、飛行機事故で亡くなっているとのこと。皮肉だ。
 DHLにはお世話になった。ロンドンのフォートゥナム&メイソンで大量の紅茶を買い込み、DHLで郵送したのだが、私が帰国して自宅に到着すると、同時に黄色いトラックも到着していた。実は前日にも来ていたらしく、不在票があった。「差出人:Piccadilly様」になっていた。それは、差出人ではなくて、住所ですよ。

 "Ain't No Moundain High Enough" のオリジナルは、もちろん1967年、マーヴィン・ゲイと、タミー・テレルのデュエット。



 モータウンはロックと違って、ベスト版ばかりでオリジナル・アルバムが手に入りにくい…と、そこが不満なのだが、さすがにマーヴィンは別格で、タミーとのデュエット・アルバムも三枚組+ボーナストラックの豪華版で手に入った。このデュエットがマーヴィンの醍醐味かどうかは分からないが、とても良いと思う。

 これほどの名曲となると、カバーも多いのだが、私の印象に強く残っているのは、映画「永遠のモータウン Standing in the Shadow mo Motown」での、モンテル・ジョーダンと、チャカ・カーン。最後のコーラスも格好良い。
 この動画は、最後が切れているのが残念。この後の "Dancing in the street" もまた素晴らしい。



 変わったところでは、映画「天使にラブソングを2 Sistre Act2」のエンディング。高校生達と、ブラザー・シスター、そしてもちろんウーピー・ゴールドバーグのカバー。

緊急!この曲は何?!(マーティンからの出題だ!)+解決した!2012/09/22 21:49

9月23日追記

 本件、コメントをいただき、解決しました!BBCにしてやられました…。回っている盤と、音が別だったとは!詳しくはコメント欄をご覧下さいませ♪
 正解は、ジャズ・フルート奏者,ハービー・マンによる、"Comin' home baby" でした。

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 緊急 ―  というのは、嘘。ここ数ヶ月、悩んでいるはなし。

 英国の俳優マーティン・フリーマンがモータウン・ファンであることがきっかけになって、私も最近モータウンを聴き始めたというのは、何度か記事にしたとおり。
 こっちにはまるっきり知識がないので、人が勧めるものを素直に入手して聞くことにしている。そこで、当然マーティンがお勧めしている ― そして、彼が聞いているモータウンも、参考にしている。

 そこで、音楽に詳しい皆さんにお尋ねします。
 この動画の冒頭で、マーティンがかけるレコードの曲は、ズバリ誰の、何?!



 このほんの数秒のイントロのみ!
 目を皿のようにしてラベルを見極めようとするのだが、分かるのは黄色の ― つまり、モータウン(タムラ?)であること。それ以外は謎。歌い出しもないので、歌手も不明。
 マーティンが好きそうなアーチストのアルバムの一曲目をいくつか確認したのだが、分からない。モータウンは、コンピレーションやら、ベストやらが多く、必ずしもオリジナル・アルバムの冒頭とは限らない。

 さぁ!この曲にピンときたら110番…もとい、NI ぶちへお知らせを!当記事にコメントを下さっても良いし、Cool Dry Place のトップにある、メルアドにメールを下さっても、構いません。ぜひとも、教えて下さい!
 こういうのって、分かる人は何の苦も無く、すぐ分かるんだろうなぁ…

 このマーティン・フリーマンの動画は、BBCが制作した、[Who do you think you are] という番組で、数人の有名人が、自分のルーツを探るという趣向。
 マーティンの場合、第二次世界大戦中に亡くなった、自分の祖父について調査するために、国防省に問い合わせたり、直接出向いたりしている。曾祖父の経歴を調べるために、防衛省に出向いた私と同じ事をしているので、笑ってしまった。
 この番組、いろいろ面白い。マーティンの私服がすごくオシャレだったり、兄弟の名前がベネディクトやティムだったり、お母さんがマーティンの生き写しだったり、家で使っているマグカップが、ドラマの現場で使っていたものだったり…

 日本時間月曜日の朝、アメリカではエミー賞の授賞式。マーティンが出演していた例のドラマも、べらぼうな数の部門でノミネートされている。
 スコセッシ監督のジョージ映画も、四部門でノミネートされているので、注目だ。

Martin Freeman: Made to Measure2012/09/08 21:57

 自分にとって新しいジャンルの音楽を聞き始めようと思ったら、何から聞けば良いのか。私にとってのモータウンが、その対象である。
 音楽に詳しい友人には、マーヴィン・ゲイのアルバムと、映画「永遠のモータウン」とそのサントラを勧められた。自分が好きなアーチストが勧めるモータウンという手もある。その方面で行くと、ジョージがスモーキー・ロビンソンのファンなので、これも購入する。

 ミュージシャンではないけれど、馴染みの俳優であるマーティン・フリーマンがモータウンのファンあることは、何度か記事にしたとおりだ。
 そのマーティンが、お気に入り,聞いて欲しい20曲を選び、コンピレーション・アルバムにしたのが、2006年発売の[Made to Measure] である。「おあつらえ向け,オーダーメイド」という意味。



 新品ではもう手に入らない。そこで、曲目リストを元に、iTunes (USA)から1曲ずつ購入し、ジャケットもネットで手に入れてiPodで楽しんでいた。しかし、やはり現物の盤が欲しくなって中古で入手したところ、インナーが面白かった。マーティンによる全20曲の解説が載っているのだ。
 これはモータウンの勉強がてら、全文を翻訳したので、Cool Dry Place にアップした。マーティンの豊かな音楽知識や、独特の語り口、何と言っても音楽オタクっぷりが面白い。

 まず曲目は、ジャクソン5の "I want you back" や、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズの "The Tears of a Clown" など、モータウンの中でもとびきりの有名ヒット曲から、iTunes のリストでもかなり下の方まで行かなければ見つけられないほど、非常にマイナーな曲まで、かなりバラエティに富んでいる。
 1971年生まれのマーティンがモータウンを聴くようになった頃に、彼の姉の友人二人(男子)からもらった、編集カセットテープの話が面白い。どうやらこの二人、マーテインに布教して、成功したようだ。
 レコードショップでレアな盤を手に入れた喜びなど、実に可愛らしい。ロンドンのJB's Recordsは、Hanway Street 大英博物館の近くだ。もっと早く知っていれば、絶対に行ったのに。残念。

 どうやら、マーテインの音楽好きはかなり広範囲かつ深いらしく、出てくるミュージシャンの名前が軒並み私には分からない。何度もググることになった。
 そんな中で、"It's a Shame" のソングライターの名前を、微妙に間違えたようだ。マーティンが間違えたのか、編集者が間違えたのかは分からない。ともあれ、R&Bのアーチストと、80年代ティーン・アイドルを間違えるのは、止めてほしい。しばらく何が何だか分からなかった。

 とても興味深かったのは、ブレンダ・ハロウェイの "You Made Me So Happy" に関するコメント。音楽産業の商業性に言及している。
 莫大な利益を得るビジネスを、「金儲け主義」という言葉を使って非難するのは、私たちにとって簡単だし、格好良い事だ。しかし、20世紀におけるポップスの隆盛は、このビジネスとしての音楽,もっと直裁に言えば「金儲け主義」がもたらした。ただ芸術だけを無欲に追求していたら、私たちはポップスの喜びを享受していなかっただろう。
 マーティンもその点に「肯定的」な思いを述べている。彼はいかにもUK人らしいシニカルなところがあり、このコメントもそういう面と、音楽に対する真摯な思いが同居していて面白い。

 マーティンが特に好きなのは、マーヴィン・ゲイ,スティーヴィー・ワンダー,そしてスモーキー・ロビンソンだ。私はスモーキーにはまった。モータウンはベスト版ばかりで、なかなかオリジナル・アルバムは手に入りにくい。まだまだこれからだ。
 ジャクソン5 の良さも、このアルバムで認識した。映像無し,ただ純粋に音だけで聞いたのは初めてで、いたく感動した。声変わり以降,大人になって踊るマイケル・ジャクソンには興味は湧かないのだが、ジャクソン5のアルバム,最初の2作品は早速購入した。

 素晴らしき先導役になってくれたマーティン・フリーマンに感謝。そして、お誕生日おめでとう。翻訳アップが今日になったのは、偶然。

What Becomes of the Brokenhearted2012/09/05 22:34

 最近、モータウン・ミュージックにはまっている。
 そもそも、ジョージ・ハリスンがスモーキー・ロビンソンの大ファンということで、せめてスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズくらいは聴こうかとは思っていたし、そのベスト版くらいは購入していた。
 その程度の認識だったのに、ここに来て、DVDこそ2タイトルにとどまっているものの、CDは10枚以上買い込むに至り、まだまだ買う気でいるのは、2012年7月15日の記事 Martin Freeman Goes to Motownのせいだ。
 その詳細はそのうちまた、記事にするとして…

 最近、特にヘヴィ・ローテーションで聴いているのが、映画「永遠のモータウン Standing in the shadow of Motown」のライブシーンに登場,サウンドトラックにも収録された、"What Becomes of the Brokenhearted" 、歌はジョーン・オズボーン,バンドはザ・ファンクブラザーズである。



 最初にこのシーンを映画で見たときは、衝撃的なほど鳥肌が立った。良いとか、素晴らしいとかではない。凄まじい曲の良さ、凄まじい熱唱ぶり、凄まじいパフォーマンスの迫力に圧倒された。
 歌詞の内容が、ひどく悲しいのも良い。私は悲しい音楽が好きだ。最初は比較的淡々と歌い進んでいたジョーンだが、しだいに切羽詰まったような、絶唱になってゆく。それに無理がなくて、余裕があるのに、聴く方には余裕を与えない、胸がいっぱいになる、感動することしかできなくなる ― 
 私は、ジョージの "Isn't it a pity" や、TP&HBの "Echo" のような、切なさがどんどん重なって、押しつぶされそうなくらい悲しくて、そのくせ力強くて感動的な曲に弱い。

 不思議なことに、この曲の構造はやや中途半端だ。しっかりとした「構成」が好きな私にしてみると、サビは二小節か四小節足りないように思える。そこを、かなり微妙な転調で無理に終わらせている感があるのだ。
 しかし、この宙ぶらりんな感じを、逆に先へ進めてゆく ― 前につんのめらせるような推進力にしている。不安定な転調もおなじ働きをしているのだろう。ジョーンとファンク・ブラザーズの演奏は、その推進力を目一杯使い、最後にコーダを引き延ばし、壮大に締めくくるところが、最高に格好良い。

 オリジナルは、1966年のジミー・ラフィン。もちろん、良いと思う…が、先にジョーン・オズボーンを聴いてしまうと物足りない。



 本来は、オリジナルの薄味な演奏の方が良いのかも知れない。しかし、基本的にロックの切なさやその上でのダイナミックさに慣れている私には、どうしてもジョーンの方が圧倒的に良く思われてしまう。
 この曲は多くのカバーバージョンを生み出しているそうだが、YouTubeでいろいろ聴いてみる限り、どれもジョーンには及ばない。ロッド・スチュワートは良い線かもしれないが…ロッドならもっと凄く良くできそうだと思ってしまう。こういう懐メロをサラリと歌っているだけのロッドはどうも退屈だ。
 ジョー・コッカーのバージョンもあり、これはかなり期待したのだが、どうも年代的な状況(1998年)もあってか、期待はずれだった。

 モータウンにはまったとは言うものの、少なくともジョーン・オズボーンの 、"What Becomes of the Brokenhearted" は、ロック的な耳で聞いているようだ。いや、今更、ロック的な耳以外でポップスを聴くこと自体が、無理なのか。

Martin Freeman goes to Motown2012/07/15 22:01

 Cool Dry Placeにアップした、ロンドン・ツアー・レポートに、何かを書き忘れていたと気になっていたのだが、思い出した。
 ホテルで見たテレビのCMに、ELOの "Mr. Blue Sky"に使われていた。それが、このBritish GasのCM。ガス会社ではなく、プールらしい。

 本題。イングランドの俳優、マーティン・フリーマンはかつては [The Office] や、[Love Actualy]そして私も大好きな「銀河ヒッチハイクガイド」などで活躍して、コメディ俳優として有名だったが、最近は[Sherlock]が大ヒットし、さらに「ホビット」では堂々主役に抜擢されたとのこと、どんどんビッグになってゆく。
 彼はかなりマニアじみた音楽ファンで、自宅にはアナログ版がたくさん並んでいる。ロックでは、ビートルズや、ザ・バンドが好きとのことで、私とも趣味が合うだろう。
 さらに、彼は50年代から70年代頃にかけての、モータウン・ミュージックの大ファン。特に好きなのは、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズや、マーヴィン・ゲイなどなど。

 そんなマーティンの趣味が功を奏したのが、2009年。BBCが、モータウン・レーベル設立50周年記念番組として、"The Culture Show: Martin Freeman goes to Motown" を制作。マーティンをナビゲーターとして、デトロイトや、LAのモータウン関連の場所を訪ね、人々にインタビューを行った。
 YouTubeにも5パートにわかれてアップされている。



 デトロイトでは、モータウンレーベル縁の地(今は博物館にもなっている)や、マーヴィン・ゲイ,スモーキー・ロビンソン,スティーヴィー・ワンダーが録音したスタジオを見学して、テンションがあがり、さらに縁の人々にもインタビュー。かなりマニアなレコードショップでは、大量のドーナツ盤と首っ引きになって、夢中になっている。
 このデトロイトでは、いかにも「マーティンだな」と思わせるファッションが可愛く、特に私物らしい(他の番組でもみたことがある)、ユニオンジャックのバッグが可愛い。
 音楽もよく耳にする名曲が目白押しで、特にロックファンとしては、"You've Really Got a Hold on Me" や、"Dancing in the street" にテンションがあがる。

 場所をLAに移すと、マーティンのファッションもガラリと変わって面白い。こういう格好、UKではしないんじゃないかな。
 この番組が制作放映された当時、まだマイケルは生きていたと思うが、ともあれジャクソン・ファイブの3人にも対面。インタビューの最後には、逆にマーティンが「モータウン・ミュージックのどんなところに惹かれたのか」と聴かれて、熱弁を振るっていた。曰く、「完璧なポップである」とのこと。私もまったく、その通りだと思う。
 別に揃いのピカピカしたドレスやスーツを着なくても、マイケルが軽快に踊らなくても、モータウンは、音楽そのものだけで、ポップとして完璧なのだ。本当に、隙が無く、よくできている。ロックがある程度素人仕事の良さを反映させるのに対し、こちらはどのスタッフも立派なプロで、素人臭さを排除した質の良さを追求している。ある意味、クラシックの世界に近いのではないだろうか。

 番組の最後に、マーティンはスタッフに、「今、お気に入りの一曲を選ぶとしたら?」と尋ねられる。そして少し考えて、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズの "The Tears of a Clown" を選んだ。
 偶然だが、私の机の上にはスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズのベスト盤があり、その1曲目が、"The Tears of a Clown" なのだ。素敵な選曲。残念ながら、番組の動画の最後が切れているので、ここではフルで上がっている動画をあげておこう。