The Chieftains / Irish Trad の50年2012/11/02 23:37

 アイリッシュ・トラッド・バンドの雄,ザ・チーフテンズ今月下旬に来日し、ツアーを行う。今年は、結成50周年だそうだ。
 コンサートをさらに楽しむために、チーフテンズを中心として、1950年代に伝統音楽復興のムーブメントが始まり、21世紀に至るアイルランド・ケルト音楽の歩みを解説する講演会があったので、聞きに行った。

 内容はとても面白かったと思う。復興運動以前の状況、いかに復興運動が展開し、チーフテンズが誕生し、さらに60年代,70年代へとさらなる発展をとげ、80年代に大きな曲がり角を迎え、さらに大きな「ケルト」としての文化圏熱の発生 ― そして、90年代に「ケルトの虎」と呼ばれた経済発展と共に迎える、一種の「バブル」状態、そして現在 ―
 なるほど、単にアイリッシュ・トラディショナル・ミュージックと言って私は愛好したり、演奏したりしているが、意外と新しいムーブメントの中の音楽のファンであり、現在に至るまでの様々な「揺れ」の中の、一部が好きなのだと納得した。
 たくさん知らないことも教えてもらえた。ギリシャの民族楽器であるブズーキが、なぜアイリッシュ・トラッド・バンドでよく使われているのか疑問だったのだが、その点も解決した。

 内容はそれなりに良かったと思うのだが、いかんせん講師の方のプレゼンが上手くなかった。トークを主体として展開する講演なのに、話すのが苦手な方のようだし、配布されたレジメもかなりイマイチ。たぶん、こう言った講演形式の活動に慣れていらっしゃらないのだろう。
 かなり期待して出かけたので、その点は残念。

 改めて思うのは、やはり私はボシー・バンドの演奏が好きなのだということ。
 ものすごく精緻で端正、そのくせ土臭さを失わず、アップテンポの曲は怒涛のように突き進む感じが好きだ。



 アイリッシュ・トラッドに関しては、私は圧倒的に器楽が好き。このボシー・バンドの傾向に近い良いバンドがあったら、ぜひとも教えて欲しい。

 一方、チーフテンズ。最近は、様々なミュージシャンとのコラボレーションにも熱心で、最新アルバム [Voice of Ages] でも顕著だ。ディランの中でも大好きな曲、"When the ship comes in" なども登場。



 今回のアルバムはそれほどでもないが、他ジャンルとの共演にも熱心。物によっては、カントリーや、ブルーグラス、はてはジャズとのコラボレーションなどもある。
 正直いって、私はこの手のコラボが苦手だ。なんだか互いの一番エッジの効いた部分を削がれてしまうような感じで、入れ込めない。特に、カントリーやブルーグラスは、それらが苦手だからこそ(私の趣味としては、少し明るすぎる)、アイリッシュ・トラッドへ向かったのであって、そちらにアプローチして欲しくないという気持ちがある。
 やはりいかにもトラッドな楽曲を、トラッドなアプローチでありながら、格好良くキメてくれてくれるのが良い。このリールのように。

The Chieftains "The Dublin Reels"

Richard Ⅲ Song / Subterranean Homesick Blues2012/11/05 21:56

 今朝の日本経済新聞文化面に、「ヨーロッパ宮廷の女性達 十選:エリザベス・ウッドヴィル」という小さな記事が載っていた。
 エリザベス・ウッドヴィル(1437?-1492)の二度目の夫が、イングランド国王エドワード四世(記事では「欠点は女癖が悪いこと。『女のことになると理性を失う』と評され…」となっている)。この国王としては自覚を欠いた結婚は、宮廷内の派閥争いという不幸を招いた。結局エドワードの死後、「末弟(リチャード3世)が王子2人を闇に葬り、兄の結婚を無効として即位する。リチャード3世がヘンリー・チューダーに王冠を奪われ…」と、記事は続く。

 薔薇戦争を解説すれば、そういうことになるのだろう。しかし、リチャード擁護派としては、毎度の事ながら歯がゆい思いをしている。もっとも、歯がゆい思いをしないで済む状況なら、わざわざ「リチャード擁護派」などにはならないのだろうが。
 とにかく、リチャードは幼い甥2人を殺しも、闇に葬りもしなかったのではないか、むしろその責任はヘンリー・チューダー(ヘンリー7世)にあるのではないかという説は、かなりある。少なくとも、シェイクスピアが描き出した容姿まで醜悪な、モンスターではないという点は、間違いないだろう(シェイクスピアに責任があるわけではない)。

 英国BBCの子供向け番組 [Horrible Histories] でも、いくらかリチャード救済的なエピソードがある。
 この番組、本当に子供向けなのだろうかと思いたくなるほど、かなり詳しい歴史を扱い、かつかなり面白い。そしてやたらと歌いまくる。「ぼくは、そんなに悪いやつじゃないです!」という、リチャードも歌う。



 演じるは、ジム・ハウィック。もうちょっとイケメンでも構わないのだが…まぁ、ぜいたくは禁物だ。とにかく、心優しそうなリチャードが、大熱唱。意外に良い曲。高い所が苦手。
「チューダーのプロパガンダのせいだ!ぼくは妻を殺してないし、理想的な夫だった!ぼくってナイスガイなんだよ!」
 壁には「フェアじゃない!」と看板を掲げ、ところどころで、アピールポイントを書いたカードをめくってゆく。そう、これは有名なボブ・ディランの "Subterranean homesick blues" のパロディだ。



 このディラン様の映像は、影響力抜群で、さまざまなコピー,カバー,パロディ作品が作られている。かつて存在した、[PS] という女性ファッション雑誌のCMでも同じようなことをしていたことがある。
 だれもがやってみたくなるディランのまね。リチャード3世も、おおいにアピールして欲しいところだ。
 こちらは、アル・ヤンコビックの "Bob"。映像的には、背後の詩人も含め、ほぼ完全コピー。日本がお好きなのだろうか?

I love you too, baby.2012/11/08 20:55

11月10日情報追記

演奏会:伶楽舎雅楽コンサートno.26
『天の音楽 世間の楽 ~源博雅をめぐって~』

2012年12月27日(木)19:00開演 (18:30開場) 四谷区民ホール

テレビ放映:
 George Harrison Living in The Material World
 WOWOW ライブ 11月11日(日)午前10時

 Tom Petty & The Heartbreakers Live in Gainesville 2006
 WOWOW ライブ 11月11日(日)午後4時

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 先週末は、いつもお世話になっている、日本のTP&HBファンコミュニティ、Heartbreaker's Japan Party さん主催のオフ会に参加してきた。
 10年以上にわたり、年に3回の公式オフ会。幹事さん達にはいつも感謝してもしきれない。TP&HBのみならず、他にも豊富な音楽の話題で盛り上がる。
 興味のある方は、ぜひ参加して下さい。公式以外にも、お花見などのイベントもあります。TP&HBのアルバムを全て持っていなくても、たとえベスト版だけでも、ウィルベリーズだけでも、トムさんとハートブレイカーズが好きなら、お会い出来ると嬉しいです。

 さて。先週のオフ会で、TP&HBのライブで印象的だったことは、という話で、2年前に私と一緒にニュージャージーでライブを見たKさんがこう言った
「日本で見る洋楽のアーチストは、あまりMCを入れる印象がないけど、トムさんがニューヨークの聴衆に『みんな、俺のこと愛してるかーい?!』とやっていた、さらにオーディエンスも大盛り上がりだった…」

 言っていた。確かにトムさんは言っていた。
 前座が始まる前からすっかり酔っ払っているアメリカの聴衆も、愛してる、愛してる!と盛り上がっていた。

 そこで、私は思い出した。ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで撮影した動画の内、ごく短い1本を、YouTubeに上げていなかったのだ。それが、これ。



 まず、女の子の観客が、「トム、愛してる!」
 どっと湧くと、すぐに野太い男子の声で「トム、愛してる!」RAH、大爆笑。
 すかさず、トムさんが「俺も愛してるよ、ベイビー。(歓声)女の子から言われるならいいんだけどね…」(大爆笑)

 何が可笑しいって、男子からのラブコールが起こるや、「あ、きみね。」と客席を指さすマイク・キャンベル。目ざとい。耳ざとい。さすがマイク先生。
 そして、「女の子から言われるならいいんだけどね…」と言った後、地味に自分でウケてしまっているトムさん。男子からのラブコールがツボったらしい。
 なにせここは、UK、ロンドンである。男子からのラブコールもどんとこーい!…で、なきゃね。

正倉院の楽器 / 私は鳥刺し2012/11/11 23:28

 NHKの美術番組「日曜美術館」が先週、第64回正倉院展を「華麗なるシルクロードの調べ」と題して特集し、それに伶楽舎および芝祐靖先生が出演していた。本放送のときはその情報を得ていなかったので見損ねたが、幸い、今夜再放送があった。

 今回の正倉院展に出ているものの内、まず琵琶が登場。教科書にも載っている有名な五絃の琵琶ではなく、四弦,螺鈿紫檀の琵琶。確かに装飾が美しいのだが、背面だけしか映さないというのはどうもいただけない。
 そして、一部が欠損している甘竹簫(かんちくしょう)。要するにパン・パイプと同じ。これは芝先生がよく演奏会でも復元楽器を演奏しておられる。
 三つ目は、複数の金属の板をぶらさげて鉄琴のように叩いたであろうと思われる、方響(ほうきょう)。

 これらを、伶楽舎のお二人と芝先生が解説して演奏してくださる。
 基本的に「日曜美術館」という番組は好きなのだが、私はどうも片方の司会者があまり好きではない。この司会者が音楽家のため、少し解説のようなものをを喋っていたのだが、私としては、芝先生にもっと話してほしかった。

 琵琶に関しては、学生時代あこがれを持って見たものだ。芝先生が演奏する姿は、本当に格好良かった。
 もちろん、私だって希望すれば弾かせてもらえたのだろうが、いかんせん私は体格が悪い。あの大きな琵琶は、まず構えることができなかった。

 甘竹簫は、いわゆる「パン・パイプ」と同じだ。
 パンとは、ギリシャ神話に登場する半身が獣、半身が人間の姿をした神の一人で、葦の茎をつなぎ合わせて笛を作り、それが「パン・パイプ」(もしくはパン・フルート)と呼ばれるようになったということになっている。
 ギリシャ神話にはこの手の才能のある神がもうひとり居る。ヘルメスは赤ん坊の頃に(!)捕って食った亀の甲羅の内側に弦を張って竪琴を発明したと言う。それを兄のアポロンが気に入って、愛用するようになったとのこと。

 ギリシャ神話はともかく、パン・パイプはあまり大きな形態の変更もなく、東西に渡り、一方のはじは極東日本の正倉院に。西はいわゆる近代クラシック音楽の圏内まで伝わった。
 西側のもっとも有名なパン・パイプのシーンは、間違いなくモーツァルトの歌劇「魔笛」に登場する、パパゲーノの商売道具だろう。
 パパゲーノとは、職業、鳥刺し。森雅裕に言わせると「よくわからない職業」。ドイツ語では "Vogelfänger"。Vogel が鳥。Fänger は捕獲者,捕まえる人という意味で、日本語では古風な「鳥刺し」という名称になった。どうやら、自分が鳥であるかのように振る舞って鳥を誘い込み、それを狩る狩人らしい。
 まずは、パパゲーノ歌手としても有名な、ヘルマン・プライの「私は鳥刺し Der Vogelfänger bin ich ja 」。



 "hopsassa!" の所は、日本語訳だとよく「えっさっさ」とか、「ほいさっさ!」になっている。
 パン・パイプの部分は、フルートかピッコロが音を出すことになっているそうだが、どうも音を聞く限り何か実際にパン・パイプっぽい笛(ホイッスル系)でやっているように聞こえる。もちろん、実際の演奏者はオーケストラピットの中で、歌手が吹いているわけではない。

 「魔笛」という作品はファンタジー,おとぎ話のたぐいで、演出は非常に自由が利く。
 こちらは、衣装は18世紀末から19世紀初頭風。演出が面白い。英語の字幕がついているが、英語では bird-catcher という職業名になっている。この方がドイツ語からの直訳に近い。しかし、「鳥刺し」という微妙なネーミングも、語感が良い。

やっと Magical Mystery Tour2012/11/14 21:39

 やっと、[Magical Mystery Tour] のブルーレイを見た。
 そもそも、ビートルズファンにあるまじきことに、発売日には購入していなかった。何せ、モータウンの買いすぎで金欠気味だったのだから。モータウンの二の次にされてしまう辺りで、私の中における [Magical Mystery Tour] の位置が分かるというものだ。
 ダラダラしているうちに、周囲から「デラックス版を買う必要はない!」とのアドバイスを受けた。そのアドバイスを活かし、やっと通常版のブルーレイを購入したものの、観賞せずにかなりの間放置していた。
 そして、やっと観賞。特典映像もクリア済み。

 聞きしにまさる微妙に駄目な映像作品 [Magical Mystery Tour] をそれなりに楽しむには、コツがいる。
 まず、気合いを入れて鑑賞しないこと。飲み物を用意して、画面に集中…はしない方が良い。片手間に見る。つまらない場面は軽くいなし、面白そうな所に集中すればよろしい。
 そして、この事を頭に入れておく。

 ジョージが美形だ!

 ジョージがハンサムだ!

 ジョージがとっても美男子だ!!!


 1967年、ジョージは24歳。当然若くて格好良いジョージ。[Magical Mystery Tour] の中ではやる気があるのか無いのか、よくわからない微妙な映り方だが、明らかに格好良い。バスの中でもひときわ輝いているし、"Blue Jay Way" のオレンジ色のスーツも似合っている。これくらいの髪の長さが好きだ。



 ほかにも、もちろんみどころはある。
 個人的には、ヴィクター・スピネッティ(R.I.P.)のシーンが大好き。それから、車が大激走するマラソンも良い。やっぱりジョージのミニが良い味を出している。
 そして、ボンゾ・ドッグ・ドゥーダー・バンドに、ビートルズの名曲の数々…

 つまるところ、それら以外はやっぱり駄目作品ではないだろうか。
 最初から構成や台詞を決めてしまわずに、アドリブで展開する面白さを狙ったはずが、中途半端なストーリーや演技が宙ぶらりんになってしまっている。やるなら本当にドキュメンタリーにしてしまえば良い。
 中途半端なストーリーや演技を入れてしまったがために、かえってまとまりを欠く結果になり、アドリブも中途半端、演技も中途半端、作品全体も中途半端。完璧なのはビートルズの音楽だけで、当然浮いてしまっている。

 特典に含まれていたポールのコメンタリーをどう鑑賞しようか、迷った。もう一度、一時間あの映像につきあう気になれない。そこはブルーレイ,DVDの良いところ。早送り再生で鑑賞したらちょうど良かった。
 印象的だったのは、ポールが「基本的には basically」と、何度も口にしていたこと。このあたりに、目指す物はあったものの、それは明確ではなく、それを創造する方法が分からなかったという現実が滲み出ている。
 「基本的には、こう言う手法で、こういう作品が作りたかった」― しかし、実際にはそれは実現できなかったのだろう。
 メイキングで、ポール以外の関係者もなんとなく「分かっています、これは不出来です」と認めつつ、コメントしているような雰囲気がある。
 これはかえって、私を安心させた。変に躍起になって、「いや、これは傑作だ!大傑作だ!良さが分からない方が駄目なんだ!」…という風に持って行かれたらどうしようかと思ったが、ポールですら「不出来」を認めているらしいのだ。
 映画学校で教材に使われていたというエピソードが救いのように挿入されていたが、おそらく教材として最高ではなくても、物がビートルズなので取っつきやすいし、学生にも馴染みやすかったからだろう。

 それでも、それほどの期待をせずに眺めれば、面白いシーンもあるし、素敵な音楽も堪能できる。ポールが謝辞を述べていたとおり、評論家たちも、評論するに足りる作品として認めていたのだろうし、そもそも、何事も完璧というものはない。
 酷評されつつも、音楽は有名だし、タイトルはよく使われるし、ビートルズを語る上で欠くこともできない。
 最高の作品ではないけれど、かと言って最低の作品ではないし、楽しいところもある。ビートルズ物の ― いや、ロック全般においても ― 収集するなら後の方のリストに、入れても別に悪くはないのが、私にとっての [Magical Mystery Tour] だ。

アメリカ人のセレブたち2012/11/18 21:23

 F1はいよいよ大詰め。あと2レース。アロンソも良いが、やはり私はビートルズとモンティ・パイソン好きなドイツ人、セバスチャン・ベッテルを応援している。
 今週は、久しぶりのアメリカGPとなった。長いF1の歴史の中でも、一際異様なレースだった、2005年のインディアナポリス以来、7年ぶりのF1のアメリカ開催だ。
 今回の舞台は、テキサスのサーキット・オブ・ジ・アメリカズ。いかにもアメリカっぽいガランとした雰囲気の新しいサーキットだ。メキシコ系の住民も多いはずで、ペレスの応援が目立つ一方、いつものヨーロッパ系のフラッグや、エンブレムはあまり見られない。

 さすがにアメリカということで、セレブのゲストも多い。
 ロン・ハワードやジョージ・ルーカスのような有名映画監督や、マット・ルブランのような俳優の姿もある。そういえば、ジョージが存命のころはジェフ・リンやトムさんがサーキットに姿を現していた。

 アメリカ人セレブ中のセレブと言えば、俳優のジョニー・デップ。言うまでもなく、熱烈なトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのファンである。"Into the great wide open" のPVでは主演だし、ドキュメンタリー映画 [Runnin' down a dream] にも出演している。
 アメリカのトム・ペティ大好きミュージシャンたちが、集まって盛大に行われる「トムさん大好きトリビュートイベント」である、[Petty Fest] に、そのジョニー。デップが登場した。

 Rolling Stone の記事




 ジョニー・デップが登場したのは、"Mary Jane's Last Dance" 。観客大盛り上がり。
 登場したデップさん、いつもの眼鏡に、バンダナ、でかい羽根つき帽子…海賊ですか?そして携えるは、青く燦然と輝くデューセンバーグのマイク・キャンベル・モデル。そうか、あなたも買っていましたか。そりゃ…買うよね。見せたいよね。



 この動画で痛感したのだが、やはりこの曲は女声に向いていない。なんだか窮屈に聞こえる。トムさんの曲では、こういうエッジの効いた曲よりも、メロディの綺麗な曲の方が、女声には合っているだろう。

 最後に "American Girl" をやったようだが、やはり男声はしっくりしている。アウトロに入るところで、ギタリストがほぼ全員、同時に同じあのギターリフを弾き始めてしまったのが可笑しかった。デップさんも例外ではないようだ。




 これまでは、このファンの集いである [Petty Fest] にはあまり興味がなかったのだが、とても楽しそうだし、デップのようなセレブの名前など見てしまうとやはり来年からはちゃんとチェックしてみようかと思わずにはいられない。

Mike Campbell の Tazzy Fund2012/11/21 22:23

 やや立てこんでおり、記事をきちんと書く余裕がない。
 前から気になっていたし、最近またひどく気になっていたことをメモ的に残しておくことにする。

 ハートブレイカーズのCo-Captainにして、最強のギタリスト、ソングライター(曲のみ)、名プロデューサーのマイク・キャンベル。彼は奥さんとともに飼育放棄されるなど、気の毒な境遇におかれた犬などを保護する運動を積極的にサポートしている。
 先月、さらにTazzy Fund なるものを自らメンバーになって作ったそうだが、そのプロモーション・動画が…なんだか凄い。

 ズバリ!

 ベッドの上でバンジョーをかき鳴らしながら、挑発的に手招きする(しかも薄着)って、何をどう狙っての所行でありますか!?



 鼻血で窒息しそうなので見ないことにしていたら、第二弾が…
 今度は、ギターに持ち替える!その上、ディナーのお誘い!あろうことか、ハートブレイカーズの 愛の巣 根城であるクラブハウスに、連れ込む ご招待する気満々だ!途中で、なんだかリゾートチックな金属音まで響いてきた!



 ええと。どうやら、75ドルのチケットを買うと(限定500枚)、抽選で3名が来年1月25日夜の6時から9時までクラブハウスに招待されるということらしい。ディナーとギターレッスンつき。去年はランチだったような気がする…
 ええと。先生!ウクレレでも良いですか?ピアノでも構わなければ、いくらでも弾きますよ!

The Chieftains in Orchard Hall2012/11/23 22:20

 モダン・アイリッシュ・トラッドバンドの雄,ザ・チーフタンズが結成50周年を迎え、来日した。
 私はこのバンドを「チーフンズ」と発音しているが、「チーフンズ」というのが一般な表記らしい。
 今回の来日公演はいくつか行われるが、私は11月22日のオーチャード・ホールを選んだ。場所が良いというのもあるが、主な理由は、オーケストラや、私が特に興味のないミュージシャンとのジョイントは極力避けて、チーフテンズを存分に楽しみたかったからだ。



 印象的だったのは、リーダーのパディ・モローニ。いいお歳だが、若々しくMCをこなし、バンドを引っぱり、ゲストを紹介し、コンサート全体をまとめる。レコーディングはもちろん、長いチーフテンズの活動を引っぱり、チーフテンズそのものを常に作り続けている。パディの存在そのものが、チーフテンズと言っても過言ではないだろう。
 イーリアン・パイプは重みを持ち、ティン・ホイッスルは軽やかで自由。いい加減なのではなく、律儀でありながら軽快。ああいうホイッスルが吹きたい。
曲の構成にも工夫がこらされていて、飽きさせない。ストーンズの “Jampin’ Jack Flash” のリフを挿入するなど、茶目っ気も発揮していた。

 そして、本物の伝説たる、フルートのマット・モロイ。私としては、ザ・ボシー・バンドのメンバーとしての印象が強い。
 横笛というものはあれほど、どっしりとした音を出すものだろうか。フルートなど持っていないかのように、マットという人物そのものが楽器で、生まれた時から、楽器として生きているような印象だった。横笛は音が不安定という概念は、当てはまらない。

 とりわけ格好良い!…という存在だったのは、フィドラーのカナダ人,ジョン・ピラツキ。長く細い脚のイカしたお兄さん。格好良くフィドルを弾いていたと思ったら、楽器を置いてすっと立ち上がり、もの凄いステップダンスを披露した。しかも兄弟のネイサンもステップダンサー。
 フィドルを素晴らしく弾けるというだけでも十分格好良いのに、凄いステップダンスもこなす。どちらが彼にとってメインかも良く分からない。

 和太鼓との共演などは私にとっては無くても構わなかったが、悪くもなかった。ハイランド(スコティッシュ)・バグパイプの登場も、それなりに楽しい。
 そして最後に登場した、レディ・チーフタンズ。日本の女性アイリッシュ・ミューシャンたちが結成したトリビュート・バンドだ。結成から日が浅く、どうなるのだろうかと思っていたら、めでたく本家のステージに呼ばれた。私もなんとなく出るだろうという、予感がしていた。客席にメンバーの姿がなかったので。

 格好良い演奏と、楽しい雰囲気。オーチャード・ホールでのコンサートの模様は、来年2月、WOWOWで放映予定だそうだ。どこまで放映するかは分からないが、とにかく楽しみだ。

Crossfire Hurricane2012/11/25 20:49

 ザ・ローリング・ストーンズの結成50周年ドキュメンタリー映画、「クロスファイアー・ハリケーン Crossfire Hurricane」が劇場公開されたので、見に行った。
 "crossfire hurricane" とは、"Jampin' Jack Flash" の歌詞に登場する言葉。

 今回の劇場公開、全国で20カ所,1週間限定の公開と非常に機会が限られており、ぎりぎりでの観賞になった。思えば去年、ジョージの [George Harrison: Living in the Material World] は、1ヶ月以上も劇場公開されつづけたのだから、恵まれていたものだ。

 さて、[Crossfire Hurricane] は、結成50周年記念ドキュメンタリーとは言っても、描かれるのは60年代から70年代までの、20年である。



 ストーンズのドキュメンタリーというと必ず登場するのが、「ビートルズはクリーンなイメージでみんなに好かれ、ストーンズは嫌われもするワルのイメージで売り出した」という話。
 60年代の大人流ショービジネスでは当然の手法だろうが、当人達にとっては至極迷惑だっただろう。実際、キースに言わせれば「あいつら(ビートルズ)も俺たちと同類」。
 大人達の「対立構造構想」とはうらはらに、ビートルズもストーンズも同じ若くてやんちゃで、音楽が大好きな青年であり、実際両者は非常に仲が良かった。

 それにしても、60年代の熱気の凄さは圧倒的だった。観客達の興奮、混乱、暴力とドラッグ、猥雑で、何もかもが沸騰したような時代。良いとか、悪いとかではなく、そういう時代だった!
 今、私たちが見ると、とんでもない状況だし、当人たちにとっても凄まじかったようだ。それでも、ストーンズの美しくてポップで格好良い音楽だけは頑丈に時代を貫いている。

 ストーンズにおける最大の奇跡は、ミックとキースがソングライティングの才能を発揮したことだろう。
 彼らのデビュー当時はまだ顕在化していなかったが、ビートルズがデビュー前からそうであったように、これからのロッカーは自らソングライティングをしなければならないという、大きなハードルが存在していた。
 ミックとキースはピンと来ていなかったようだが、そこは気の利く大人が導いてくれた。この点はさすがに感謝するべきだろう。若き60年代のミックとキースが、ふたりでアイディアを出しながら、曲作りをする様子は、創造的、建設的、健康的で、とても美しかった。ステージの混乱や、ドラッグでグチャグチャになった乱痴気騒ぎより、ずっとイカしている。

 一方、自分が作ったストーンズに取り残される結果になったブライアン・ジョーンズ。その死の下りは、ひどく胸が痛む。特に、彼の葬儀の時。
 ごく普通のブライアンの家族。ごく普通のブライアンの葬列、ごく普通のブライアンの棺。どんなにぶっ飛んだ、イカしたバンドマンでも、結局ほかの誰とも変わらない。生まれて、死んでゆく。

 オルタモントの悲劇のくだりは、なかなか丁寧に描いていた。それだけではなく、ドキュメンタリー映画にしては、ライブシーンや音楽の尺が長めに取ってあるのが嬉しい。
 その代わり、端折りも大胆だった。そもそも、2時間に50年のキャリアを詰め込むのが無理なのである。ロニーが出てくると、すぐに終わってしまったという印象だった。
 映画は、1980年代初頭のツアーシーンから、[Shine a light] のライブシーンにひとっ飛び。これは仕方がないのだろう。
 ストーンズはやはり60年代ロック黄金期に大爆発を起こし、その長い長い燃焼が続いているバンドなのだと思う。この映画のように、割り切って60年代と70年代にのみ集中してしまっても、構わない。あとはそれぞれのライブ映像作品や、音楽を聞けば済むのだろう。

 劇場公開では、本編の前にロンドンで行われたプレミアの様子を流していた。



 どういうわけだか、ストーンズは年を取った後の方が、メンバー同士がイチャついている。
 ロニーは、「ぼくの登場まで、そんなに待たせないよ!」などと言っているが、あれは嘘。ロニーは最後の最後に出てきて、映画がすぐに終わってしまう。…そうだ、ロニー好きな私としては、その辺りが不満。
 あとは、ストーンズの広い交友関係はあまり描かれていなかったのが惜しい。なにもかも、時間が足りないとしか言いようがない。
 いっそのこと、ビートルズのような8時間くらいのアンソロジー・ドキュメンタリーを作って良さそうな物だが、なにせ未だに現役のストーンズ。なかなか実現しにくいだろう。
 それで良いんだよ、ストーンズは。いつも不満の残る、未完のドキュメンタリーしか出来ない、転がり続けるストーンズで。

CFG: 10th Anniversaty (追記あり)2012/11/28 21:43

 追記:11月29日24時間限定、CFG 劇場公開版がYouTube観賞できます!

Concert for George Documentary film

 リハーサルや、インタビューも交えた編集バージョン。これも十分感動的!さらに完全バージョンはさらに感動的なので、DVD, BRを買おう!

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 明日11月29日は、ジョージ・ハリスンが58歳で亡くなってから、ちょうど11年目にあたる。日本では、30日の午後にそのニュースが流れた。
 それから1年後、つまり今から10年前、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで、ジョージの追悼コンサート「コンサート・フォー・ジョージ」が開催された。略して、"CFG"。
 そう、今年はあのCFGからちょうど10年目の節目の年なのだ!これを期に、まだ見ていない方は是非とも観賞してほしい。私が自信を持ってお勧めする素敵なコンサートだ。
 たとえ、ジョージのファンでなくても、出演者の誰のファンでもなくても、すごく良かったと思えるほど、素晴らしい。実際、私はモンティ・パイソン布教の過程で(そんなこともしている)、このCFGを友人に見せたことがあるのだが、パイソンを抜きにしも、「このコンサート、良いね」と言われたのだ。
 ジョージのファンたちの中には、「ジョージは出てないから、興味ない」と言う人もいたが、その連中にも、「私に騙されたと思って、見ろ!」と言ってきた。実際、そんな人のうち男子二人が、私に次に会った時、「泣いちゃったよ…」と告白した。



 CFGの良さは語っても語り尽くせないが、何度見ても新しい発見があるということもその一つに挙げられるだろう。そこいらじゅうに、ビッグネームのミュージシャンがあふれかえり、片時も油断できないのだ。
 それから、私が近年非常に評価を下げているエリック・クラプトンが素晴らしい。彼の92年以降の仕事はどれもあまり好きになれないが、このCFGだけは例外だ。あの旗振りぶり、演奏の素晴らしさ、どれをとっても本当に良い仕事をしたと思う。

 CFGに関しては、豪華本も出ている。あのロック関係の豪華本出版で有名な、ジェネシスからだ。CFGマニアの私はもちろん、即購入。とんでもない金額だったが、CFGのためならたとえ火の中、水の中。
 どこかに日本語訳があるとか無いとか、ちらほら聞かないでもないが、時々私も部分的に訳したりもしている(特にTP&HB)。
 今回はクラプトンの働きを称え、本の冒頭の方に出てくる彼のコメントを翻訳することにした。

 ぼくはブライアン・ロイランスと夕食を共にした。ぼくはずっと日本に行っていたので、帰国して、最新情報を得うとした。ジョージの死は、まだつい最近の出来事だったので、その後の状況がどうなっているのか、知りたかったのだ。
 ぼくは彼に尋ねた。「誰か何か、ベネフィットを計画するとか、何かコンサートをやるとか、言い出している?」
 すると彼は答えた。「いや、誰も。きみが動かない限りは。」  「まいったな」ぼくは思った。「自分で何とかしなきゃならないなんて。」それと同時に、こうも思った。「ぼくがやらなきゃならないとしたら、いったい自分はどうしたいんだろう。」我ながら身勝手だとは思うが。
 「何にせよ、大好きな仲間たちと、歌を演奏して、記憶に残るようなものにしよう。
 ぼく自身の曲は、必要ない。実のところ、ジョージの曲にくらべれば、ぼくの曲なんてそれほど好きじゃない。ジョージの曲こそ、永遠の名曲だ。

 これは素晴らしいことになると思いつつ、どの程度の規模で形にすれば良いのか、見当もつかなかった。ぼくたちは、ロイヤル・アルバート・ホールが良いだろうと考えた。人を集めるにも便利だ。ジョージの人生に関わりのあった人々が、一つのステージに集まるには、ちょうどいい。
 ぼくがしたかったのは、ジョージと、ジョージの音楽に対する愛を、みんなでシェアすることだった。


 クラプトンが夕食を共にしたブライアン・ロイランスとは、ジェネシス出版の創始者。ジョージとは、1980年の豪華本 "I Me Mine" のころから、懇意にしていた。
 確かにジョージが亡くなったとき、クラプトンは東京公演中だった。帰国して、さて追悼コンサート話はどうなっているかと思ったら…「あんたが旗振りだろう!」…という空気になっていたというのが面白い。
 確かに、旗振りはクラプトンだろう。他にもいくらでもジョージが愛し、ジョージを愛していた友達ミュージシャンもいるが、ポールもジェフも「旗振り役」という柄ではない。トム・ペティにならその能力も十分にあるだろうが、さすがに違うだろう。
 ここは生前からの関わりの深さ、かけた迷惑分も入れて、「エリックが旗振り役な、サポートはいくらでもするから!」…という雰囲気になるのは当然だ。
 その後のコメントは、べつにどうというものでもない。豪華本の中に収録されているクラプトンのコメントは、おそらくこれだけだ。他の人のコメントに何度も彼は登場するが、彼自身の言葉は、これだけだと思う。
 エリックの気持ちは、コンサートを見れば分かる。その演奏、活躍が全てを如実に語っている。

 ジョージが好きな人なら、絶対、そうでなくても、音楽さえ好きな人なら、きっとCFGを見て良かったと思うだろう。登場するアーチストのたった一人でも、モンティ・パイソンが好きなだけでも、インドに興味があるだけの人でも、とにかく、このCFGは見るべきだ。
 本当に、友達って、良いものだね ― 心からそう思える、感動が約束されている。