ジャクシン教の予言の書2024/04/01 00:00

 ジャクシン教は、オタマジャクシを崇める民間信仰である。実に無害で穏やかな信仰で、単に池に泳ぐオタマジャクシを愛でるだけで、2000年以上その命脈を保っている。
 玩具楽器であるオタマトーンが発表されたとき、ジャクシン教徒は驚喜したが、明和電機は関係性を完全に否定している。
 ジャクシン教には、2000年以上伝えられてきた予言の書がある。オリジナルは木簡に記され、日本に和紙が普及してからは、奈良時代の写本が現在に残るという。
 最大の謎は、予言が未知の言語で記されてことだ。文字こそ読めないが、ジャクシン教の教祖以来、その内容を代々の主教が暗記して伝えていた。しかし約450年前の主教がミョウガを食べ過ぎて内容を完全に忘れてしまい、その内容は謎とされていた。

 このたび、ジャクシン教の「予言の書解読チーム」はその内容の解読に成功したと発表した。
 それによると、予言は驚くべき事に20世紀後半に起きた出来事を伝えていたという。
 まず、若者を熱狂させる音楽がこの世を揺るがす。その熱狂は数年で終わるが、島国から美しく輝く四人の少年が現れ、再び世界を揺るがせ、沸騰させるのである。同時に海の向こうに偉大な詩人が現れ、少年達とともに世界をさらなる高みへと導く、というのが予言の内容であった。

 ジャクシン教では、これはロックンロールの発生、ビートルズ、ボブ・ディランの登場を予言していると解釈している。
 しかし、500年前にジャクシン教から分派したケロケロ教は、これを完全なねつ造だとしている。ケロケロ教の予言解読学者は、世を揺るがすのは音楽ではなく、味噌汁の具としている。四つの輝かしい具は豆腐とワカメまでは解読されているが、あと二つはいまだに分かっていない。海の向こうから現れるのは、ラーメンどんぶり大の味噌汁椀だとしている。

 ジャクシン教の予言は、果たして20世紀の音楽史を予言しているのか、はたまた夕食の献立なのか。さらなる研究が待たれる。

Tomorrow Is a Long Time2024/04/07 19:26

 初めての春開催となった F1 日本GP も無事終了。角田くんが入賞して、めでたしめでたし。本当によかった。来日したご一行様も秋とはひと味違う ―― しかも幸運にも桜の満開と重なった、日本での開催を楽しんでくれたのではないだろうか。
 GPの週末が始まる前は、やたらと「あなたが読みそうな記事」に、セバスチャン・ベッテルのF1 復帰か、はたまたポルシェなのかと、そういう記事が上がってきて、いちいち「いやいや、それは無いから」と、自分を落ち着かせていた。
 困るのは、世の中には「エイプリルフールのネタ」としか思えないほど、突拍子も無いことが起きることだ。もっとも顕著な例は、「ボブ・ディランのノーベル文学賞受賞」と、「高橋大輔のアイスダンス転向」。話題になっては「冗談」として扱われてきたのに、実現してしまうのだから世の中わからない。
 私にとっての、いまのところ実現しないであろうというネタは、「セバスチャンの現役復帰」、「坂本花織の4回転ループ」、「トラヴェリング・ウィルベリーズ再結成」の三つだ。

   最後の一つは、難しいが意外と不可能でも無いような気がする。そもそもウィルベリーズはオリジナルから一人欠けた状態でも二枚目のアルバムを制作しているのだ。
 ダニーがジョージの代理を務めるのはまずハードルが低いと思うし、トムさんの代役はマイクがつとめて全然不自然ではない状況になっている。そうなったらあとはジェフ・リンを引っ張り出すのはこれまたハードルが低く、最終的にはディラン様次第ということになる。
 そりゃあ無理だ ―― というのは当然だが、去年はディラン様とハートブレイカーズの共演という、とんでもないことが実現したことを忘れてはいけない。ウィルベリーズ再結成と言いつつ、私としてはハートブレイカーズ込みである。

 80年代のディラン様とハートブレイカーズ。"Tomorrow Is a Long Time" を演奏している珍しい動画を発見。これはほとんどベンモントとディラン様の二人だけ ―― マイクのナイスアシストあり ―― で成立した、しっとりとして美しいパフォーマンスだ。思わず息を詰めて聴き入り、終わるなり「素晴らしい!」と声を上げずにはいられなかった。

Sitting in My Hotel2024/04/13 20:14

 ザ・キンクスはデビューからレコード会社がパイだったころが最高で、RCAに移籍した頃から聞かなくなり、私が持っている最後のアルバムは 1972年の [Everybody's in Show-Biz] だ。アルバム全体としてはそれほど好きでは無いが、曲を単体で捕らえると、良い曲もある。
 その代表が、"Sitting in My Hotel" である。



 ピアノのシンプルな伴奏から静かに始まり、穏やかで淡々とした歌唱。やがてオルガンが加わると、バンド編成になってぐっと力がこもる。さらにトランペットの輝かしい響きが重なり、壮大な曲想へと膨らんでゆく。その割にはせいぜい3分程という、短さがちょっともったいないくらいだ。

 それほど複雑ではない。音楽は単純であっても、情熱と感情の表現でいくらでも芳醇なものになるという好例が "Sitting in My Hotel" とも言える。その後のキンクスがたどるみちのりは、私にはついていけなくなる。ロックは、横方向に繋がりを求める「ロック・オペラ」や演劇的な試みには向いていない。小さな、一つ一つの曲のパワーが縦方向に、心に突き刺さる。それがロックの持つ力だと信じている。

Slide Guitar2024/04/21 19:32

 ウクレレの先生(プロのギタリスト)に、スライドギターについて訊いてみた。
 どの指にスライドバー,ボトルネック(にあたる道具)を装着するか。アコースティック・ギターの時は小指に、エレキの時は薬指だそうだ。アコギは小指以外の四本の指でミュートしたいからだそうだ。

 ジョージはどうかしらと、日本公演時の "Cheer Down”を見てみると、薬指だった。



 では、もっともジョージに近いスライドを奏でる、マイク・キャンベルはどの指に装着しているのだろうか?マイクが自宅でファンからの質問に答える動画を参考にしよう。
―― と、その前に!マイク、部屋を片付けろ!なんだその chaos な部屋は!!性格も音楽性も完璧なマイクだが、数少ない弱点は、片付けが出来ず、部屋もスタジオもめちゃくちゃなことである。



 マイクは小指とのこと。同時に四本が使えるからだそうだが、器用な人は違う。

 なにを指に装着するのかという点で面白かったのが、デュエイン・オールマン。当時アメリカで一般的だった風邪薬,コリシディンのビンをそのまま使っていたという話。
 コリシディンの瓶は、今となってはすっかり「ギターのスライドバー」としてして売られている。みなさん、どうも形から入るようで…
 ちなみに先生によると、日本でのスライドバーの定番は、七味唐辛子の瓶だそうだ。たしかに丁度良い大きさだ。何十年か経って七味のパッケージ素材が変わったら、古い七味の瓶がスライドバーとして売り出されるのだろうか。今のうちに大量に保管しておくか。

odd Concertina effect2024/04/24 19:46

 先日の F1 中国GP は色々なことがあったが ―― ノリスくんの多数2位ぶりは、キミ・ライコネンと、全米2位の長期間記録を持つトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズを彷彿とさせる ―― レース後のニュース記事の一つに、私は目が釘付けになった。
 
Ricciardo blasts Stroll after Chinese GP collision

 セイフティ・カー・エンディングになったとき、全開になる前はだれもがぐっとスピードを落とし、車間が縮まるのは見慣れた光景である。そんな中ランス・ストロールは前のダニエル・リカルドに追突し、リカルドが激怒しているのだ。それに対して、ストロールのコメントは、
"It was a really odd concertina effect"
 日本語の記事では、「アコーディオン効果」と日本人にも分かりやすいようにしているものもあるが、とにかくストロールはコンサティーナを選んだのが、とても興味深かった。
 ストロールの言う「コンサティーナ効果」とは、一般道でも起きる渋滞のメカニズムのことで、それこそ「アコーディオン効果」とも「のびのびバンド効果」という言い方もあるそうだ。

 ついでに、決勝後のクールダウン・ルーム。追突を見て OMG!! なマックス。「My fault. 俺のせいです」まぁ、そうと言えばそうかもね。



 日本は学校教育の現場で、鍵盤のついた大きな鍵盤アコーディオンがよく用いられていたため、蛇腹のついたフリーリード楽器の中ではアコーディオンが一番良く知られている。逆にコンサティーナではイメージが湧かないほど、その楽器の名は知られていない。むしろ、バンドネオンの方が知名度があるくらいだ。

 私はアイルランドの音楽をやっているので、だんぜんコンサティーナに憧れがある。鍵盤ではなく、左右の手を固定して指先だけを動かして音程を出すため、早弾きも訓練すれば可能。
 近年もっとも素晴らしいコンサティーナ奏者の一人は、タリスクのモーゼン・アミニで間違いない。"Echo" があまりにも素晴らしすぎて、うっかりこの楽器に手を出しそうになってしまったほどだ。
 そういえばタリスクは最近どうしているのだろう?最新アルバムはちょっとテクノっぽくて好きではないが…ライブがあったら見に行きたい。

John's 12-string acoustic guitar, Hootenanny2024/04/28 20:08

 ジョン・レノンが [Help!] などのセッションで用いた12弦アコースティック・ギターが50年ぶりに個人宅の屋根裏部屋から発見され、オークションにかけられることになった。
 「フータナニー」というモデルだそう。「フータナニー」とは、フォーク・ソングをその場のみんなで合唱すること(ピート・シーガーみたいのか…)だそうで、ジョンの「ディラン期」を象徴するギターというわけだ。
 アコースティック・ギターの最高額が期待されているそうだ。うーん、ジョンを象徴するギターかって言われると、さすがにそこまでは行かないと思う。ジョンのアコギだったら、ギブスン・ジャンボとかのほうが印象的ではないだろうか。
 それに、ロックンロール・ヒーローの愛器としては、やはりエレキの方が価値がありそうだし、どうせなら黒いリッケンバッカーがもっともジョンを象徴していると思う上に ―― 私も欲しい。

 ところで、今回のオークション・ハウス、Julian*s が公表した写真、突っ込んでくださいと言わんばかりなのだが…



 ジョンの愛器として売り出すのに、どうしてジョージが弾いてる写真なの?!むしろジョージの楽器じゃないの?!そもそも、50年間譲られた先で忘れられていたというのがどうもしっくりこない。当時、Fab4 の楽器をもらっておいて、しまい込み、しかも忘れるってあり得る?謎だ。

 このギターが使われた曲も何曲か紹介されているが、どれもジョンにしてはちょっとイマイチ。かろうじて、"Norwegan Wood (This Bird Has Flown)" だけが好きな曲だった。もっとも、これも今回の「フータナニー」が実際に、「ジョンが」弾いたのかどうかはよく分からないのだが。