Sitting in My Hotel2024/04/13 20:14

 ザ・キンクスはデビューからレコード会社がパイだったころが最高で、RCAに移籍した頃から聞かなくなり、私が持っている最後のアルバムは 1972年の [Everybody's in Show-Biz] だ。アルバム全体としてはそれほど好きでは無いが、曲を単体で捕らえると、良い曲もある。
 その代表が、"Sitting in My Hotel" である。



 ピアノのシンプルな伴奏から静かに始まり、穏やかで淡々とした歌唱。やがてオルガンが加わると、バンド編成になってぐっと力がこもる。さらにトランペットの輝かしい響きが重なり、壮大な曲想へと膨らんでゆく。その割にはせいぜい3分程という、短さがちょっともったいないくらいだ。

 それほど複雑ではない。音楽は単純であっても、情熱と感情の表現でいくらでも芳醇なものになるという好例が "Sitting in My Hotel" とも言える。その後のキンクスがたどるみちのりは、私にはついていけなくなる。ロックは、横方向に繋がりを求める「ロック・オペラ」や演劇的な試みには向いていない。小さな、一つ一つの曲のパワーが縦方向に、心に突き刺さる。それがロックの持つ力だと信じている。

ジャクシン教の予言の書2024/04/01 00:00

 ジャクシン教は、オタマジャクシを崇める民間信仰である。実に無害で穏やかな信仰で、単に池に泳ぐオタマジャクシを愛でるだけで、2000年以上その命脈を保っている。
 玩具楽器であるオタマトーンが発表されたとき、ジャクシン教徒は驚喜したが、明和電機は関係性を完全に否定している。
 ジャクシン教には、2000年以上伝えられてきた予言の書がある。オリジナルは木簡に記され、日本に和紙が普及してからは、奈良時代の写本が現在に残るという。
 最大の謎は、予言が未知の言語で記されてことだ。文字こそ読めないが、ジャクシン教の教祖以来、その内容を代々の主教が暗記して伝えていた。しかし約450年前の主教がミョウガを食べ過ぎて内容を完全に忘れてしまい、その内容は謎とされていた。

 このたび、ジャクシン教の「予言の書解読チーム」はその内容の解読に成功したと発表した。
 それによると、予言は驚くべき事に20世紀後半に起きた出来事を伝えていたという。
 まず、若者を熱狂させる音楽がこの世を揺るがす。その熱狂は数年で終わるが、島国から美しく輝く四人の少年が現れ、再び世界を揺るがせ、沸騰させるのである。同時に海の向こうに偉大な詩人が現れ、少年達とともに世界をさらなる高みへと導く、というのが予言の内容であった。

 ジャクシン教では、これはロックンロールの発生、ビートルズ、ボブ・ディランの登場を予言していると解釈している。
 しかし、500年前にジャクシン教から分派したケロケロ教は、これを完全なねつ造だとしている。ケロケロ教の予言解読学者は、世を揺るがすのは音楽ではなく、味噌汁の具としている。四つの輝かしい具は豆腐とワカメまでは解読されているが、あと二つはいまだに分かっていない。海の向こうから現れるのは、ラーメンどんぶり大の味噌汁椀だとしている。

 ジャクシン教の予言は、果たして20世紀の音楽史を予言しているのか、はたまた夕食の献立なのか。さらなる研究が待たれる。

Lucille2024/03/22 21:48

 リトル・リチャードの映画が見たいのだが、なかなか都合の合う場所の、都合の合う時間に上映されていない。うかうかしていると見逃してしまう。

 リトル・リチャードの数ある名曲の中でも、"Lucille" は完全にトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのバージョンですり込まれている。彼らのファンになったばかりの頃にフィルモアの音源をブートで聴いていたので、そのあまりの格好良さに、ほかのバージョンは、本家リトル・リチャードですら、かすんで聞こえたのだ。
 公式発売された [Live at Filmoe 1997] にも収録されているが、ここは1999年のライブ映像で見てみよう。



 何が良いって、他の誰よりも、TP&HBのバージョンがスローで、低音がどっしりした演奏であることと、ほぼ全てのヴォーカル・パートを、トムさんとハウイのツイン・ヴォーカルで聴かせてくれること。トムさんのリズムギターが常人で無いほど上手いこと。
 そして最初は手しか映らないベンモントの、ピアノのシュアな演奏がしびれる。簡単そうに見えて、ああいう連打は実はものすごくきついのだ。しかもテンポが抑えられて、重い演奏。手首にきそうだ。

 ほかにも色々なカバーを聴いてみたが、どれもピンとこない。TP&HBのカバーは、エヴァリー・ブラザーズのカバーとも言えるのだが、気の抜けた感は否めない。でも、エヴァリー・ブラザーズのファンであるトムさんのために、ご兄弟にお出ましいただく。聞いた話によると、トムさんの孫娘はトムさんの大好きなエヴァリー・ブラザーズにちなんで、エヴァリーちゃんだそうだ。

Backing Vocal by Mick Jagger2024/03/13 20:37

 ピーター・ウルフのソロ曲で、"Nothing but the Wheel" というものがあり、それが素晴らしく名曲だと思った。そして、バッキング・ヴォーカルにいる人が、ちっともバックになっていなくて、それはそれで良いと思う。



 もちろん、ミック・ジャガーである。ハーモニカも吹いている。この曲、フォーク・ロック色が強くて私の好みに合致するのだ。そしてディラン様のお気に入り曲でもある。作曲は、ジョン・スコット・シェリルというナッシュヴィルのソングライターだそうだ。

 ピーター・ウルフというか、J・ガイルス・バンドというか。決して私と相性が悪いわけではなさそうに思えるが、今のところ特にハマってはいない。JGBのライブを最初に聴いたのだが、何かがズレていた。あの熱過ぎる感じがイマイチなのだろうか。考えてみればビートルズやトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズにはスマートさ、クールさ、そしてちょっとだけ華奢な感じががあって、そこにぐっとくるのだ。

 ちっともバックになっていないミックのバック・ヴォーカルといえば、ロニーの最初のソロ・アルバムでの "I Can Feel the Fire" である。ロニーは典型的なギタリスト声の人で、けっしてヴォーカルがうまいわけではないので、そりゃあミックに圧倒されて当たり前だ。



 「俺と仲間」という邦題で有名な [I've Got My Own Album to Do] というこのアルバムは、録音が1973年から74年頃で、フェイセズ末期の頃。翌年にはロニーはストーンズに加入するので、その辺りで人の行き来があったし、ミック、キース、ロッドが揃って参加している。そんな素敵な70年代の雰囲気を湛えている。
 仲間の何人かはもうこの世を去ったりして寂しいが、生きている人は生きている人で、友情の素晴らしさを精一杯楽しみ、味わって欲しいと思う。

Steve Ferrone of Tom Petty & the Heartbreakers - Full Interview2024/02/23 20:51

 Secret Chord というYouTube チャンネルに、スティーヴ・フェローニの長いインタビューがアップされている。
 中々興味深い内容だ。字幕も出せる。たぶん、Heartbeaker's Japan Party さんがメルマガで日本語訳を出してくれる…と思う。



 スティーヴはイングランド南部海辺の保養地としても有名なブライトンの出身。12歳の時、町にやってきたバンドのドラマーを見て、その手さばきを見よう見まねし始めたのが、ドラマーとしての出発点だったとのこと。
 エリック・クラプトンのバンドで活動していたときの話も興味深かった。エリックには、ロンドンのハーロドック・カフェでフィル・コリンズを介して出会ったとのこと。クラプトンは飲んだくれているか、しらふでいるか、とにかく行ったり来たりだったとか。でもスティーブもかなり飲んだくれていたのでそれなりの時代だったらしい。
 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズがスタンと上手くいかなくなってドラマーを探しているときに、スタジオに呼ばれたスティーヴ。マイクとジョージのバックバンドで一緒になった以外は、トムのこともよく分からず、心ぼそかったところ、スタジオのガラスの向こうで、録音を聴いたトムさんとマイクが顔を見合わせるのを見て、「なに?!なに?!なんなの?!」とドギマギしてたら、トムさんがひとこと。「心配するな。あんたで決まり。」
 スタンのことはまだ未解決の時期だったが、スティーヴの希望としてはハートブレイカーズの一員になりたかった。結局、その通りになったというわけ。

 最近も時々エリックに会うけど、そのたびに彼は「また一緒にやろうよ」というけど何も起きない。
 ハートブレイカーズのスタンや、ストーンズのチャーリーのように、バンドにとってオリジナルのドラマーがいて、その後に座ることについて。オリジナルドラマーをコピーすることは出来ない。彼らの演奏は彼らの演奏。そして後釜の演奏は後釜自身の演奏。それは知った上で割り切るしかないとのこと。示唆に富んでいる。

 終始笑顔でにこやかなスティーヴ。また日本にも来て欲しい。

(Get Your Kicks On) Route 662024/02/16 20:15

 元同僚の友人が、仕事でオクラホマに行っている。
 オクラホマ!その響きだけで気分が上がる。出張先の最寄り都市はタルサで、そこから通うのだそうだ。カウボーイ・ブーツ買わなきゃ!

 オクラホマ州。アメリカ中南部、州都はオクラホマ・シティ。ナット・キング・コールによるジャズの名曲 "(Get Your Kicks On) Route 66" には、"And Oklahoma city is might pretty" と登場する。



 もちろん、私がこの曲を知っているのは、オリジナルのジャズではなく、ロックンロール・バージョンである。
 最初にこの曲をロックンロールにした最大の功労者は、チャック・ベリーである。まさにロックンロールの父、神。



 さらに、ザ・ローリング・ストーンズや、ゼムがカバーして大爆発させた。どちらも素晴らしいが、ここはゼムのバージョンを聴いてみたい。



 まぁ、そうはいってもやはり最高なのはトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズである。私が最初に聴いたのは [Pack up the plantation: Live!] の演奏だと思う。
 そしてここに貼り付けるのは、デビューして間もないころの、ロックプラストでの演奏。注目するべきは、トムさんとマイクが揃ってフライング V を弾いているところだ。リッケンバッカー二本もやらかし感があるが、ダブル・フライング V はもっとやらかしている。たぶんバンドのロゴの関係で、デビュー当初はフライング V を前面に押し出す必要があったのだろう。
 そもそも、この二本のフライング V、トムさんとマイクの所有物なのだろうか。この二人のギターは時として所有者がよくわからない。共有というか、互いのギターは互いの物という感じ。一本はともかく、もう一本は現地での借り物かも知れない。

ルイスがフェラーリにやってくる ヤァ!ヤァ!ヤァ!2024/02/05 19:53

 2025年から、ルイス・ハミルトンがフェラーリに移籍すると発表した。

 「フェラぁ~リ?!」
 声が裏返ってしまった。

 いやいや、待て待て。確かに一昨年来、ルイスがメルセデスに不満を持っているということは分かっていた。だがしかし。フェラーリだけは!フェラーリだけは無いと思っていた。アロンソやキミ(出戻り含む)、セバスチャンはアリだったが、ルイスだけは無いと。
 アロンソやセバスチャンだってチャンピオンシップで善戦した年もあったから、フェラーリにだってそれなりの戦闘力は期待できるだろう。ルイスが加入して、化学反応が起きて、びっくりな展開になったら…?!面白いだろうな。いや今年のうちに、勢力図が変わっても構わないのだが。私は今のチャンピオン以外が勝ってくれればそれ良いのだ。(6月にオランダに行く予定なのだが、これで良いのだろうか)

 フェラーリの動画を探したら、トム・オデール の "Time to rise again" のイケてる動画があった。



 それにしても、ルイスがメルセデス・エンジンから離れる日が来るとは思わなかった。彼はマクラーレンでデビューしてから、2チームにしか所属していないし ―― しかもメルセデス初年に、マクラーレンのピットにはいってしまったことがある ―― エンジンは一貫してメルセデスだった。
 おかげで「ルイスの穴は誰が埋める?!」という話題が熱い。だれもが「欲しい」ランド・ノリスはマクラーレンと契約済みだし…まぁ、F1 の世界は契約アクロバットがいくらでも跋扈するので、何が起るのか分からない。
 一番おもしろい説は、「セバスチャンのカムバック」である。しかも真っ先に名前が挙がったから笑ってしまった。トト・ウルフは明確に否定しているし、まぁ無いんだろうけど、みんなセバスチャンが帰ってきてくれるといいなと、期待しているのだ。言うなれば、「ディラン,ノーベル賞受賞」のような一種のネタである。現実になる事もある。

 最後に、BBC の古い映像を貼り付けておこう。12歳のルイスがカートを操る姿が ―― 特に背中の筋肉の動きが ―― 既に一流ドライバーだ。当時セナを模したヘルメットを被っており、なぜ今のカーナンバーが44なのかが分かる。そして本当に彼は「ロン・デニスの秘蔵っ子」であったことがよく分かる。

When 12 year old Lewis Hamilton dreamt of F1 stardom, 1997

Blue Sky2024/02/01 21:43

 そういえば、しばらくシスター・ヘイゼルをチェックしていなかったなぁと思ったら、新曲を出していた。そのうちニュー・アルバムが出るかも知れない。
 そして相変わらず活発なライブ。故郷ゲインズヴィルでも複数回公演をする。
 ふむふむ、ヘイゼルも元気だなぁと思っていたら、去年のライブでオールマン・ブラザーズ・バンドの "Blue Sky" をカバーしていた。しかもライアン・ニューウェルがリード・ヴォーカル!!
 これはびっくり。ヘイゼルはコーラス・ワークの美しいバンドで、リード・ヴォーカルのケン、ドリューも同等で、そこにジェットとライアンの二人がコーラスをつけるが、ライアンが独りでリード・ヴォーカルというのはとても珍しい。



 ライアン、歌うまい!いつもコーラスは担当しているのだからあたり前だが、ちゃんとしたリード・ヴォーカルも歌えるんだ!
 ライアンがこの曲を選んだのは、もちろん ABB のギター・サウンドに惹かれてのことだろう。
 "Blue Sky" のオリジナルはは1972年で、作曲はディッキー・ベッツ。デュエイン・オールマンとのツインギター作品で、リード・ヴォーカルもベッツである。要するに、この曲はバンドのギタリスト用の曲というわけか。脈絡があるのか無いのか、なんとなくマイク・キャンベル先生に歌って弾いてもらいたい。

A Hard Day's Night2024/01/27 22:49

 私のウクレレの腕はショボい物だが、ウクレレのレッスンの時間はクリエイティブで、とても好きだ。
 まず、普通はウクレレ・ソレでは弾かない(弾けない)ような、ロックの曲を私がリクエストする。先生はネットや市販の楽譜のコードやタブ譜をあまり見ないので、まず音を聞き、ギターでおおまかなコードを決める。このとき、私は「そのコードはちょっと違う」と突っ込みを入れることがある。
 先生はギターから4弦しかないウクレレ(しかもG線は Highである。Low G 邪道連盟なのだ)に落とし込む。さらに私が「それはちょっと違う」「そんなに明るくない」「そんなに脳天気なじゃない」「もっと閉じている」などと突っ込みを入れる。
 さらにやっかいなのは、私が極小の手の持ち主で、ウクレレですら抑えられないことが多い。そのくせギターソロはちゃんと再現したいという。
 そうやって先生と一緒に作ったロック・ウクレレ・ソロ曲の数々は、先生曰く「売れる」そうだ。

 さて、最近の課題曲は "A Hard Day's Night" である。例によって私は歌わないので、ウクレレ・ソロである。
 今日ちょっと気になったのが、 A メロ最後のコードである。キーが G なので、まぁGというのは普通なのだが、実際ジョンが歌っているのを聞くと、メジャーのGに聞こえないのだ。ちょっと影のあるマイナー気味に聞こえる。
 歌詞で言うと、"will make me feel alright" の "alright", "you know I feel okay" の "okay" のところだ。



 何度も先生と一緒に聴いて頭をひねったのだが、どうしてもギターやウクレレのコード的には、G になってしまうが、ジョンの声がフラット気味なのだ。そのため、サウンド全体的にはマイナーに聞こえてしまうし、対照として続くブリッジの、ポールの高音が輝くように響くのだ。
   このサウンドの妙はさすがビートルズ。こういうところが、彼らを世界最高のロックンロールバンドたらしめている。リッケンバッカーの響きを最高に使いこなしているという意味でも、特筆するべき名曲で、これをせいぜい21歳か23歳の彼らがやってのけたのが超のつく奇跡であった。

 オリジナルが良すぎて、あまり名カバーの多い曲ではないが(ピーター・セラーズのローレンス・オリヴィエ・リチャード3世風はともかく…)、動画サイトを見ていたら、ザ・ナックがライブでカバーしていた。
 これが文句なしに格好良い!さすがナック。どうせならギター・ソロは手元のアップが見たかった。

You'll Never Walk Alone2024/01/22 20:56

 電車に乗ったら、向かいに座った少年が、真っ赤なスマホケースを持っており、そこには大きく "You'll Never Walk Alone" と書いてある。どうやらイングランド・プレミア・リーグ、リヴァプールのファンらしい。
 "You'll Never Walk Alone" はもともとミュージカルの一曲だったが、その後フランク・シナトラなどがカバーし、リヴァプール出身のバンド,ジェリー&ザ・ペースメイカーズがヒットさせた。その後リヴァプールFC の代表的な応援歌となっている。  と、ここで普通ならジェリー&ザ・ペースメイカーズの演奏動画を貼り付けるのだが、あまりにも私の好みの音楽からはかけ離れているので、ここではしない。
 むしろリヴァプールFCファン(KOPなどと呼ばれる)が歌う様子を見た方が感動的だ。



 ヨーロッパの、とりわけイングランドのフットボールファン、スタジアム観戦というとちょっと緊張してしまうが、見るかぎり子供や女性の姿もある。チケットが高くなっても、せっかくの楽しいスポーツなのだから、安全に観戦できると良いと思う。

 "You'll Never Walk Alone" はまったくギター・グループ向きの曲ではなく、BBC プロムス向きだと思ったら、やはり演奏した年があった。



 リヴァプールFCファンのチャントとしては、ビートルズも当然レパートリーの一つで、"Yellow Submarine" の替え歌 "Red and White KOP" がある。red and white というのは、もちろんリヴァプールFCのチームカラーである。



 ちなみに、"Yelloe Submarine" の主な作曲者であるポールは、エヴァートンのファンである。