EXTERNAL COMBUSTION2022/03/06 14:14

 マイク・キャンベル&ザ・ダーティ・ノブズの新譜,[EXTERNAL COMBUSTION] が届いた。
 まず、前作よりジャケットが格好良い。マイクがクールにフィーチャーされており、横には合成と思われるの最近愛用の白いギター。背後には燃えるリッケンバッカーが描かれているが、何かの暗示だろうか?



 最初は既に発表されていた "Wicked Mind" 格好良いロックンロール。
 次に古風なブギー "Brigitte Bardot" が来たのは意外性があって良かった。
 3曲目の "Cheap Talk" はゲスト女性ヴォーカルを迎えての、ちょっと不穏な曲調。マイクにしては珍しい感じだ。
 4曲目の "External Combustion" は、TP&HB の [MOJO] にあるような、ずしんとくるリフを展開して、ちょっとビートルズ風で格好良い。
 5曲目の "Dirty Job" もまた、マイクお得意のリフからの成立だろう。緊迫感のあるサビが辛口に響く。ゲスト・ヴォーカルとして参加しているのは、イアン・ハンター…ってモット・ザ・フープルのイアン・ハンター?!マイクより10歳以上年上だからびっくりしたが、写真を見るとちゃんと居るので、本物だ。こいうところにもつながりがあるとは意外だった。
 6曲目はガラッとかわって、穏やかな "State of Mind" 。女性カントリーシンガーのマーゴ・プライスを迎えて、味わい深く、しみ通るように盛り上がっていく様子が感動的だ。ブラスの使い方なんかが、ちょっとザ・バンドっぽくて郷愁を呼ぶ。
 7曲目は "Lightning Boogie" ―― 端からゴキゲンなブギーである。なんと言っても、ベンモント・テンチの参加が嬉しい。こういうときこそのベンモント登場で、マイクも楽しそうだ。しかもベンモントの存在感もたっぷりで、ピアノとギターの絡み合いも抜群に格好良い。
 8曲目の "Rat City" は格好良いギターのリフを中心に、ミドル・テンポに、ちょっとヘヴィメタルっぽく決めている。そこに早弾きではなく、あくまでもゆったりとギターを響かせるところがさすがである。これもTP&HBのアルバム [MOJO] を彷彿とさせる。そしてアウトロはビートルズ風。
 9曲目 "In This Lifetime" は、ちょっと変わったエキゾチックな音階を使っている。こういうのは、ギターをそういう風にオープンチューニングにしているのかなぁと、そちらの興味が湧く。歌詞もなんとなく暗示的で、"I'll never understand her in this life" というところが、輪廻とかそういうこと、ジョージの世界のサウンドも感じられて、素敵だった。
 10曲目 "It Is Written" は軽い手触りだが、ロードムービーにぴったりくる感じ。根拠は曖昧だが、この曲に出てくる "you" が、なんとなくトム・ペティのことのように思われた。
 そして最後の11曲目、"Elecyric Gypsy" ―― これも既に発表されている。これぞいかにも、TP&HB で、知らない人が聞いたらオマージュか何かかと思うだろう。ギターがゆっくり浮遊するようで、ガツンとした低音と漂う虚無感が、人生の達観をしているようで、どこか開放感がある。

 前作からそうだが、驚くのはマイクの作詞家としての成長である。20年前は「頭に穴が空きました!」とか言っていたのに。まさに必要は発明の母。
 自ら歌う必要の無かった頃というのは、詞も必然的に湧いてこなかったのだろう。それがカバーなり、なんなり自分で歌い始めると、口をついて歌詞が出てくるようになるのだろうか。

 マイク・キャンベルのミュージシャンとしての人生は、示唆に富んでいる。学校に残るか、せいぜい兵役にでもつくのかと思っていたギター好きの少年が、ひょんなことから金髪男のバンドに加わり、何十年も活動して大成功を収め、その相棒を亡くして、静かに立ち去るのかと思ったら、これである。
 人生は長い。芸術も長い。彼の生き様は、何かを犠牲にして打ちひしがれて何もしない、もしくは勇をふるって戦い続ける、どちらでもない、ごく自然体で穏やかで、それでいて楽しい生き方を教えてくれる。

Gary Brooker2022/02/25 21:43

 2022年2月19日、ゲイリー・ブルッカーが亡くなった。76歳だった。

 とにもかくにも、まず [A White Shade of Pale] の CD かレコードを取り出し、大音量で聞かなければならない。大きな音が出せないなら、イヤフォンを使って。持っていないなら、ストリーミング・サービスからでもいいから、とにかく大きな音で聞く。
 最悪でも、この YouTube で聞く。パソコンやスマホのスピーカーを使ってはいけない。外部スピーカーか、イヤフォンを使うのだ。
 何もかも、文句のつけようのない完璧な、完全無欠の名曲を浴びるように聴かなければならない。
 「ほかにも良い曲がある」などと、ひねくれたことを言ってはいけない。ゲイリー・ブルッカー,プロコル・ハルムと言えば、この曲、一曲だけで音楽史にその名を刻むのである。



 世にも難解な歌詞で(ブルッカーが作ったわけではない)、なおかつ超名曲という珍しい作品だ。叩きつけるようなドラムス、引きずるようなベース、靄のかかったようなブルッカーの声と重厚で胸を刺すようなオルガン。これ以上、何を望むというのだろうか。

  [A White Shade of Pale] のアルバムを持っていたら、"Repent Walpurgis" も、なかなかの聴き応えのある曲だ。私はインストゥルメンタルが嫌いなのだが、この曲はなんとなく最後まで聞いてしまう。途中で、バッハの平均律第1巻1番のプレリュードが挿入される。



 「カンタータ・ロック」というネーミング・センスはともかく、バッハに非常に強い影響を受け、それをロックで昇華したことは間違いない。

 ゲイリー・ブルッカーと言えば、ジョージとも親しい仲だったことも重要だ。
 [Concert for George] では終始ステージ上にあって、存在感を発揮していた。彼が歌った "Old Brown Shoe" はエンディングに使われたが、その格好良さは絶妙だった。
 また一人、ジョージのところへと旅立った。

Electric Gypsy2022/02/22 22:48

 マイク・キャンベル&ザ・ダーティ・ノブズの新譜収録曲 "Electric Gypsy" が公開された。
 なんだか、既視感満載なのだが、それ故の安心感が満点である。



 楽曲的には、完全にボブ・ディランに後期ハートブレイカーズをブレンドした感じ。ディランよりはポップに仕上がるのが、マイクのマイクたるゆえんだろう。たまらん。

 それにしても…マイクは、トムさんにそっくり過ぎである。
 ちょっとあり得ないことではあるが、もし「トム・ペティだけ」が好きな人がいるとする。トムさんの大ファンだが、他のバンドメンバーのことは知らない。
 その人がこのビデオを見たら、「完全なトム・ペティのパロディ,オマージュ」と思うに違いない。
 一番近い存在は、ビートルズに対するラトルズだ。

 歌い方が似るのは仕方が無い。マイクにとって最高のヴォーカリストであり、一番よく聞いた声だから、親子の話し方や訛りが似るのと同じように、マイクがトムさんとそっくりな声、歌い方になるのは当然だろう。
 しかし、容姿まで似てくるのはびっくりである。まぁ、確かにトムさんにはサラサラ・ロング金髪という目立つ特徴があったのだが―― トムさんもマイクも、あまり押し出しの強い顔をしていないのは確かで、ちょっとつかみ所の無い、不機嫌そうな、目鼻の作りの控えめな人ではある。
 歩き方、歌いならの仕草とかも、ドキッとするほど似ている。変なたとえだが、お通夜とかに行って、故人の兄弟姉妹に会ったりすると、故人にそっくりでぎょっとする感じ。その点、トムさんとマイクは赤の他人なのだが…

 トムさんが急に亡くなったりするから、びっくり展開が始まるのだが、マイクがフリートウッド・マックの人になったのもびっくりだし、普通に「もう30年やってます」みたいな顔で「マイク・キャンベル&ザ・ダーティ・ノブズ」が新譜をしれっとだして、全米ツアーをするっていうのも、びっくり展開。
 いまだかつて、フロントマンが亡くなって、こんな展開になったバンドってあるだろうか…?!

2022 Winter Olympics Figure skating2022/02/18 21:16

 私が好きなスポーツは、野球,F1, フィギュアスケート。
 そう、オリンピックが始まって以来、フィギュアスケートをチェックするのに忙しく、テレビにかじりついている。
 団体が日本悲願の銅メダル獲得で始まり、もう連日泣いたり、叫んだり、心の余裕がない。このブログには珍しく、前の記事から日にちが空いているのには、そういう事情があったのだ…

 女子は表彰台をロシア勢が独占することが大前提だった。誰がどこに立つのかはともかく、独占は間違いなかった。
 それが、試合が始まる前に混乱が起きた。不穏な空気のままロシアの三人は出場することになり ―― やっぱり表彰台は三人で決まりだろう。だから大好きな坂本花織が、満足のいく演技をして4位に入ってくれれば、私としては満足だった。
 ところが、ショートが終わってみると、なんと坂本が3位。滑らかでスピードが速く、颯爽とした基礎的スケーティング、びっくりするほど高く跳び出し、「それじゃ降りられないよ!」と心配になるほど滞空時間と移動距離が長いジャンプ。そして着氷したその瞬間にまた凄まじい速さの滑りが切れ目無く流れる ―― あのダイナミックさ、雄大さ、ある意味雄々しくさえある。男子でもあんなジャンプを跳べる人は居ない。ただ四回転や3A のような大技がないだけで、ジャッジの評価はそれなりに高かったのだ。
 そんな訳で、スコアは坂本自身が「わぁあああ!」と叫ぶほどの高得点。彼女はプレッシャーに押しつぶされそうで泣いていたが、テレビの前の私も号泣していた。織田信成なみの大号泣。スケートでこれほど泣けたのは、2013年全日本選手権の鈴木明子以来だった。

NHK | 坂本花織は自己ベスト更新 3位 | フィギュアスケート女子シングルショートプログラム | 北京オリンピック

 そして完璧なフリーの先に待っていたのは、銅メダルというご褒美だった。こういう銅メダルというのは、神様がくれるのだと思う。ソチのコストナー,テン。ピョンチャンのオズモンド ―― そして今回の坂本だ。
 これは私見だが、坂本のフリーは、曲も良かった。女性であること、女性解放というテーマの映画からの選曲で、社会的な主張が入っている。あまり強く主張すると説教臭くなるが、坂本の爽やかな笑顔と、軽やかなステップ、ジャンプが聞く人の心を素直にしてくれた。ノーベル文学賞と同じで、何事か社会的なことを世の中に伝えるという要素も、重要かも知れない。

 男子の方は、悲願のネイサン・チェン金メダル,それもダントツの出来映えだった。心底ほっとした。四年前、金メダルは本来彼の物だった。それがなぜかこぼれ落ち、その心の痛みはいかばかりかと思っていた。
 去年の暮れ、それこそ私が応援するルイス・ハミルトンの手から、なぜかチャンピオンシップがするりとこぼれ落ちて、私はひどく心を痛めた。そういう色々なことから、ネイサンの金メダルは本当に私にとっても悲願だった。
 羽生には四回転アクセルに期待をしていたが、まぁ、楽しみが先に伸びた訳だし、彼が現役を続ける理由が出来て良かったのでないだろうか。
 鍵山は、前回の宇野と同じで、怖い物なしで思い切り滑ったら銀メダルという、勢いだった。
 悩ましいのは、今後彼はどういう指導を受けて更に上を狙うのかと言うことだ。今は父親に師事している。そのままでいいのか、それとも新天地を求めるべきか…悩むだろうか。悩んで出した結論の末に出た結果ならなんでも良いが、何も考えずに現状に満足していては、これ以上伸びないかも知れない。
 そういう意味では、この四年間で色々考え、悩み、幼い頃から馴染んだ居心地の良いところから旅立ち、迷い、転び、どん底を味わった宇野が、ランビエールと出会い、銅メダルを獲得したのは本当に良かった。私は個人的にも宇野昌磨というスケーターが好きなので、とても嬉しかった。おめでとう。

 音楽ブログなので、音楽の話を。
 以前の記事で、エアロスミスの "I Don't Want to Miss a Thing" を使っている人がいて、なんだかこっぱずかしいみたいなことを書いたが ―― イタリアのグラスルという選手である。
 これが中々良いスケーターで、四回転ルッツ(現時点で実現可能な最高難度のジャンプ)を得意としている。オリンピックでも立派にまとめていたし、けっこうエアロにも感動してしまった。断っておくが、この曲がちょっと恥ずかしいだけで、私はエアロのファンである。
 今回のオリンピックの適当な動画がないので、ここはヨーロッパ選手権の映像で、なんと二位になった。立派である。



 それから、カナダのキーガン・メッシング。今回は北京入りが遅れて大変だったらしい。もともと個性的なスケーターで、好きなのだ。「四回転もちゃんとショートから入れるジェイソン・ブラウン」みたいなものかな?(今シーズン、私が贔屓にしているナム君はCOVID-19の影響をもろに受けてだめだったらしい。残念)
 そのメッシングがフリーで使った、フィリップ・フィリップスの "Home" と言う曲が凄く良かった。こういうのに弱いのだ!いかにもトム・ペティのファンだった人が、自分でも音楽をやって、アコースティック・ギターを多用して、ハートランド・ロックみたいな事をする…こういうはホイホイ買ってしまう。実際買った。これから聞くのが楽しみだ。
 こちらの動画は、カナダ選手権から。



 私はアイスダンスも好きだ。前回のピョンチャンでは、シブタニ兄妹を応援していて、見事銅メダルだった。今回は特に好きなカップルというのはいないが…なにせフリーの生放送がなかったので、まだ録画をチェックできていない。
 日本代表はフリーに進めなかった。この2年で、日本でのアイスダンスへの注目度は格段に上がった。それが競技レベルの向上に繋がったと信じたかったのだが…同じフリーに進めないのであれば、村元・高橋組の方が、世界の人々が、『高橋大輔がアイスダンスで帰ってきた!』と注目しただろう。そういう楽しみは大きかった。
 しかし村元・高橋組の、全日本,四大陸でのミスは大きすぎた。あれをオリンピックでやらかしたらと思うと、小松原組に申し訳なさ過ぎる。
 ともあれ、今シーズンを期に、日本のアイスダンスもレベルが上がってくれると嬉しい。

 今シーズンはあと一試合、世界選手権がある。オリンピックメダリストが何人出るかは分からないし、盛り上がらないかも知れないが ―― どうせ私は、結局おおいに盛り上がるのだろう。

Mike Campbell and the Dirty Knobs2022/01/28 21:43

 マイク・キャンベルのバンド、ザ・ダーティ・ノブズの新曲が YouTube 公開され、同時にセカンドアルバム [External Combustion] が3月2日に発売されること、更に3月から7月にかけて、全米ツアーを行うことが発表された。
 うわぁ!2020年にファースト・アルバムを出して、もうセカンド・アルバムだなんて、凄い!マイク、よっぽど曲想が尽きないんだな…

 全米ツアーなんてアメリカ人が羨ましすぎる。まぁ、この時期に本当に出来るのかどうか分からないが、ワクチン・パスポートや、陰性証明などを活用するのだろう。いいな…いいな…行きたいな…こっちは家からも出られないというのに。思いはアメリカに飛ぶ。ブルックリンの会場の地図見たりして。ああ…近くに良い感じのホテルもある…!
 ツアーのライブ会場は主にライブハウスだが、時々けっこうな大きさのころがある。カリフォルニアの Shoreline Amphitheatre なんて、私が生まれて初めてトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズを見た、野外円形音楽堂ではないか。
 埋める自信があるんだな…思えば、マイクはどんどん「トム・ペティ化」しているし、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの曲もけっこう演奏してくれる。バンド名だって、ただの「ダーティ・ノブズ」から、「マイク・キャンベル&ザ・ダーティ・ノブズ」に改めたらしい。下手したら、ゲストによっては "Handle with Care" すらやりかねない。
 「国の宝:トム・ペティ」を失ったアメリカ人や、その他の国のロック・ファンたちは、意外にも未亡人のマイクが大活躍して、しっかりハートブレイカーズ・ファンの心を掴んでくれたことに、感謝しているのだろう。少なくとも、私はそうだ。

 さて、新曲の "Wicked Mind" である。イカしたゴキゲン・ロックンロールに、珍妙なミュージック・ビデオ。マイクの微妙な演技!若いハートブレイカーズ時代の、恥ずかしそうで控えめな青年と同一人物とはとても思えない
 そしてノブズのバンド・メンバーも、表情豊かに演じてくれる。



 完全に TP&HB 楽曲のオマージュのようで、そのくせ統一感があって、格好良い。エンディングなんて完全に "You Wreck Me" だ。
 これでよく分かるのは、マイクがギターという楽器の力を心底信じていて、その響きの良さを誰よりも理解し、愛していると言うことだ。
 格好良いコードをガシャガシャ弾きまくって、切れよく決めれば、極上のロックンロールになる。ことは単純だが、意外とギターを信じ切らないと出来ない。マイク・キャンベルという希有のミュージシャンだからこそ出来たサウンドかも知れない。
 面白いことに、マイクはけっこうブリッジ(トムさんは小節数に関係なくミドル・エイトと呼んでいた)に特色があることが分かる。後にギター・ソロの見所になるのだが、やり過ぎずに済ませる潔さとのバランスの絶妙。

 もう最高。このクォリティのアルバムが届くのかと思うと、待ち遠しくて仕方がない。
 ありがとう、マイク。マイクのおかげで、どれほどトムさんを失った喪失感から救われているか、計り知れない。

German Metal2022/01/24 20:17

 NHKラジオのドイツ語講座で初級編を去年の春から始めて、もうすぐ1年になる。もちろん、ドイツ語が話せるようにはなっていない。
 講師は、高橋亮介先生。毎回、ドイツ留学時代のエピソードを披露してくれるのだが、これがすごく面白い。ドイツということで、オペラやバレエの話もあるのだが、音楽的には圧倒的にメタルの話が多い。先生自身が「メタラー」で、メタル・フェスティバルに遠征して出会う、ドイツ語圏人たちの面白エピソードがあれこれ出てくる。
 中でも面白かったのは、「メタル・トレイン」。
 先生の留学先からはちょっと遠いし、宿泊もどうすれば良いのだろう、でも行きたい…という、あるメタル・フェス。なんと、アクセスの良い駅からフェス会場まで連れて行ってくれる、寝台列車があるという。その名も、「メタル・トレイン」!おお、これは素晴らしい!車中で寝れば、宿泊代が浮く上にフェスに参加できて、そのまま帰れる!…と、思ったら甘かった。列車は至る所で停車しては、待ちわびたメタラーを乗せ、そのたんびに車内は盛り上がる。盛り上がるもいいけど、ゆっくり寝ていられない。そしてフェス本番を堪能したら、またその列車に乗って、ゆっくりゆっくり各町でメタラーを降ろしてゆく…という、長く辛い旅だった!
 なんだか、わかるなぁ…好きな音楽のためなら山越え、谷越え、海越えて…一泊三日で LA にTP&HBを見に行った身としては、分かりすぎる。
 それにしても、「メタル・トレイン」?なんか凄そう…



 ドイツ語レッスンの会話の中には、将来の夢を語る少年が登場する。
 "Ja, ich werde später Gitarrist, so wie Kai Hansen!"
「うん、カイ・ハンセンのようなギタリストになりたいんだ!」

 高橋先生曰く、カイ・ハンセンはジャーマン・メタルの超大物。国際的な活躍をしているので、英語で歌ったり話したりするのに慣れていたので、いざドイツ国内でドイツ語を話すのを聞くと、急に普通のおじさん感が増したと言う話が面白かった。

 ジャーマン・メタル…そもそも、メタルって知らないんだけど。一度見てみないとね…



 わぁー!なんか凄い!これがあの有名な、「ヘドバン」だな!
 メタルだって、TP&HBだって、元をたどれば同じ音楽から派生したのだから、親戚みたいなものだが…それにしても、ロックの多彩さというものを思わずにはいられない。

You've Really Got A Hold On Me2022/01/16 20:30

 ウクレレは、いつも私と先生が一緒に曲を選び、先生がコードやメロディの弾き方を教え、私が楽譜に起こして練習するという流れになっている。既存のウクレレ楽譜はまったく用いない。
 曲は私の好みなので、ジャンル的にロック的なものが多く、当然ギターの使用が前提になっている。そうするとウクレレでの再現は色々制約がある。しかも先生と私は、"No Low G" 派なので(Low G を張るのは、ウクレレの特性を無視しているから)、その制約がさらに大きく、先生にとっても、けっこうチャレンジングである。
 一方で、私はウクレレとして望める最高品質であるコリングス使用者なので、普通のウクレレだったら不可能な音域までカバーできたりもする。

 今回の選曲は、"You've Really Got a Hold on Me" ―― もちろん、ビートルズのバージョンである。
 1962年にスモーキー・ロビンソンが作った曲なので、正統的な味わいのする曲だが、いざ自分で演奏し、譜面を書こうとすると、意外とトリッキーなので驚いた。
 まず、イントロがちょっとおかしい。一拍一拍は三拍子で刻んでいるくせに、出だしが7音なのだ。計算が合わない。厳密に言えばイントロ2拍だけは16分音符刻みで、冒頭が1休符+7と、とらえるか、もしくは大きな1拍に、7連符と考えてもいい。
 Aメロに入ると一見、4小節が二回の繰り返しのようだが、実はAメロの冒頭3小節だけが、後ろにくっついてから、本当のAメロに戻る、もしくはコーラスに進む ―― つまりは、Aメロが11小節あるという、クラシック人間的にはかなり妙な構成になっているのだ。モーツァルトには「冗談の音楽」といって、故意に小節数を狂わせている曲があるくらいだから、私は Aメロ11小節を理解するまで、ちょっと時間が掛かった。
 そのため、まだサビには進んではいないが、こちらも変拍子を使っているので、すんなりとは行かないだろう。

 オリジナルはスモーキー・ロビンソンの美声、ビートルズはジョンとジョージのツイン・ヴォーカルがイカした、シンプルな曲かと思いきや、実は様々なフレーズ、リズム上の工夫のある、興味深い曲なのだ。
 改めて聞いてみると本当に名曲で、ビートルズのカバー曲の中では、"Twist and Shout" に次ぐか、肩を並べるくらい好きだ。



 アルバム "with the beatles" のジャケットの素晴らしさも、象徴的だ。アストリッド・キルヒアの手法をビートルズのリクエストで再現したものだが、あまりの格好良さに、似たようなジャケットが雨後の竹の子のように出現した。
 しかしそういうコピーのいずれも、ビートルズには遠く及ばなかった。それは、ビートルズの四人の容姿の良さが群を抜いているからである。
 特に、ジョージの美形加減ときたら!若いし、モノクロだし、影があるしで、もう言うことないほどの素晴らしい造形。ギリシャ彫刻のような美しさとは、コレのことを言うのだろう。

I Fought the Law2022/01/12 12:25

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ,1978年のライブで、"I Fought the Law" が、動画サイトにあがっている。これが凄まじく格好良い。



 こういうのを聞くと、心底スタン・リンチがドラマーだった時代が懐かしい。もっとも、私は現役ファンとしてスタンの時代を知っているわけではないのだが。あのドタバタした疾走感、上手さより熱さと無邪気さが輝く感じで、これぞロックの青春!という醍醐味があって高なのだ。
 1978年だから、コーラスもスタンだろう。ベンモントやロンの声とは思えない。遠慮の無い大爆発的な演奏で、ギターとオルガンの容赦ない響きも、イカしてるとしか言い様がない。

 私はてっきり、この曲はザ・クラッシュがオリジナルの曲だと思い込んでいた。テレビ・コマーシャルの影響が強いのだろう。しかし、クラッシュがカバーしたのは、1979年だそうだ。だから、ハートブレイカーズのこの演奏より後、ということになる。クラッシュがハートブレイカーズの演奏に影響を受けた可能性は、排除できない。



 そもそものオリジナルは、バディ・ホリー亡き後のクリケッツで、ヒットさせたのは、1965年のボビー・フラー・フォーだそうだ。トムさんたちが聞いたのは、こちらの方だろう。



 他にも、ロイ・オービスンや、ストレイ・キャッツなどのカバーがある。
 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの、カバー曲集というアルバムがあるといいと思う。ストーンズやキンクス、ビートルズのカバーなどは、まだ公式になっていないが、ブートではけっこう出回っている。それこそ、ハートブレイカーズ、デビュー当時などのカバー・ソング集なんて、すごく聴き応えがあると思う。2,3枚組にしても喜んで買う。

Tom Petty & the Heartbreakers Up on the Roof2022/01/08 21:11

 ビルの屋上でライブをするロック・バンドのことが、去年から話題に上っているが、あきらかなコピーをした人も多い。1985年のトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズもその一つである。
 場所はフロリダ州中部、セント・ピーターズバーグのリゾート・ホテル,ホテル・セザールの屋上である。



 元祖ビートルズのルーフ・トップとは対照的すぎて面白い。
 本家が真冬のロンドンの曇天のもと、寒さに震えてコートを着込み、鼻を赤くし、こわばった表情で演奏していたのに対して、こっちは常夏のフロリダ!青い空と海、輝く太陽、ピンク色の軽薄なホテルで、短パンにサングラス!夏だぜ、Yeah!
 最後に登場する警官(?)も明らかに緊張感がなく、本家ロンドン・スコットランドヤードの青年警官とは正反対の、おなかがまん丸く突き出したおじさんではないか。

 曲目は、まずデビューアルバムからの "Strangered in the Night"。故郷フロリダを案内する画像を挟んで、最新アルバム [Southern Accents] の "Dogs on the Run"――
 1985年なので、女性ファンの間で史上最悪と評判のもみ上げスタイルだが、幸いにもトップハットを被ってサイドが抑えられているので、美人な「女優」トムさんである。
 ハウイがヘフナーのベースを使っているのは、比較的珍しいのではないだろうか。少し変わったカラーリングで面白い。やっぱりルーフ・トップなので、選ばれたベースなのかも知れない。

 こっちなんて、カナダ,オンタリオの「ロンドン」での、本家ルーフ・トップ40周年演奏なので、雪である。見ているだけもぞっとする!(そう、私はあの程度の雪で混乱する首都圏在住。雪かきで背中が筋肉痛)
 しかし、根性は見上げた物で、TP&HBの南国ルーフ・トップなんて、軟弱この上ないのではないだろうか。

George in Australia 19822022/01/04 20:18

 以前の記事で、今年2022年はジョージの [Gone Troppo] の発売から40周年だということに言及した。
 本当に名作アルバムなので、多少なりとも注目してもらいたいと思う。
 このアルバムは、とにかく「売れなかった」と言われすぎである。ほかに言うべきことは山のようにあるのに、元ビートルズともなると、売れなかったこと自体が事件なのだろう。
 ジョージはまったくプロモーションをする気が無かったし、レコード会社もそのジョージの態度に合わせたと、私は解釈している。ワーナー・ブラザーズ・レコードのトップにいた、モ・オースティンはジョージの理解者だったのだろう。1982年はジョージの好きなようにさせて(要は積極的に売らなかった)、5年後にはもの凄い商業的な成功をするのだから、悪い判断ではなかったと思う。

 この時期 ―― 1982年のジョージというのは、アルバムを出した以外はメディアへの露出が極端に少なく、その後の「引退説」へとつながる。
 当人は別にガツガツ稼ぐ必要も無し、好きに過ごしていただけで、家族とオーストラリアのハミルトン・アイランドでの休日を楽しんでいる。
 オーストラリアの朝の情報番組、Good Morning Australia が、ジョージの単独インタビューに成功しており、その動画が動画サイトに上がっている。
 かなり画像が悪く、途中で音声が切れるが、貴重な41歳のジョージの姿だ。



 若いし、髪が短いから、まじめにデイモン・ヒルかと思った。Damon Hill と字幕をつけられたら、信じてしまう。ジョージ曰く今の自分は、「元ポップ・スター、平和主義者(peace-seeker)、庭師(笑)」
 インタビューした女性キャスターによれば、ジョージは「静かなビートル」というより、ジェントルマンで、誠実で、ユーモアがあったとのこと。最近はあまり使われる言葉ではないが、この頃はまだ、ジョージというのは「静かなビートル」とカテゴライズされていたようだ。

 やはりジョンが亡くなってから1年と少ししか経っていないので、その話題になる。自分の身の安全的にも、精神的にも大きな影響があり、どんな人も殺されて良い理由などない。
 ジュリアン・レノンについてのコメントを求められているのも興味深かった。ジュリアンのデビューは1984年だが、その前から既にミュージシャンになる(らしい)ことは、知られていたようだ。ジョージ曰く、見た目こそジョンに似ているが、ジュリアンはジョンよりずっと優しくて穏やかだとのこと。ジョンにはちょっとタフできついところがあったが、ジュリアンはお母さんに似たらしい。だから、ジョンとジュリアンを比べることは出来ない ―― 
 確かに、[Get Back] と見ていても、ジョンって時折、ややきつい感じがする。そういう所も含めて格好良かったのだろう。

 後半では、ジョージの宗教観、死生観が語られるが、ちょっと内容に(英語に?)ついていけない。
 超常現象を信じる?という話になると雨が降ってきて、話がまとまらなくなった。

 ジュリアンの話になったので、ついでに "Saltwater" を貼り付けておく。凄く良い曲だし、ジョージのスライド・ギターも完璧に調和している。