Long After Dark2024/05/16 21:44

 ザ・ウォールフラワーズが、10月2日に彼らの大ヒットアルバム [Bringing Down the Horse] を LA でパフォーマンスするという。10年ほど前から流行っている、代表的なアルバムを、そっくりそのままライブ演奏するという趣向だろう。
 さらに、彼らのお気に入りである、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの [Long After Dark] もパフォーマンスするというのだからびっくり。これは見物だ。

Jakob Dylan and co. will also pay homage to Tom Petty & The Heartbreakers by playing Long After Dark

 ジェイコブ・ディランは1969年暮れの生まれなので、彼のヒーローである TP&HBが [Long After Dark] を発表したのは1982年11月、彼がもうすぐ13歳になろうとする時期だった。13歳の感性であの [Long After Dark] を訊いたと思うと、ちょっとゾクっとする。
 真っ赤なジャケットには、革ジャンを着てギターを掲げる、ちょっと中性的なトム・ペティ。これだけでジェイコブ少年の心臓は射貫かれたことだろう。
 冒頭の "A One Story Town" という選択も良かった。疾走感があって、ポップなロックンロール。いかにもTP&HBという曲調で絶対に裏切らないという保証がある。



 微妙なのは2曲目。"You Got Lucky" は有名なビデオがあるし、人気のある曲の方だが、実のところファンの間でも意見が割れるのでは無いだろうか。実は私、この曲はそれほど好きではないのだ。やはりシンセサイザーへの拒否感が強いのと、コードが開ききらない感じの曲調で、やや物足りない。ただ歌詞はさすが。それであのビデオが出来たのはどういうわけなのか、よく分からない。
 ただ、"You Got Lucky" の消化不良感を、次の "Deliver Me" で払拭してくれる。ギターの小気味良いサウンドはさすが。

 そしてこのアルバムのなかで私が一番好きな曲、"Change of Heart" ―― 軽快かつ爽快なギターリフ、美しいコーラス、キャッチーなサビ、シンプルで歌を最大に引き立てるギターソロ。絶妙に気持ちを引きつけるブリッジ。何もかも完璧な、"The Waiting" に匹敵する名曲だと思う。
 トムさん自身もこの曲は気に入っていたし、ライブ向きだと考えていたらしいが、なんの呪いが掛かっているのか、なぜかこの曲を演奏するとバンド内の緊張感が高まり、ちょっとしたケンカになるという。面白い曲もあるものだ。



 いかにも80年代という "Finding Out" の速さも軽快に、A面が終わる。私はCDでしか聴いていないが、ジェイコブ少年は次は何が来るのかワクワクしながらB面に返したことだろう。

 B面はA面に比べてややヘヴィ。"We Stand A Chance" はハンドクラッピングにかかるリヴァーヴが大袈裟なところが80年代っぽくて笑える。

 "Straight Into Darkness" は決してスロウな曲ではないが、雰囲気としてはスローバラードのような流れがあって好きだ。それほど有名な曲というわけでもないが、カバーされることが多いのも頷ける。



 "The Same Old You" はオリジナル・マッドクラッチを彷彿とさせる曲だ。トムさんのある意味「無理のある」けど、「すごく愛しくなる」声の聴かせどころだ。
 "Between Two Worlds" はマイクとの共作だけあって、マイクの曲の特徴の一つである、エレキの響きを生かした重さが格好良い曲だ。面白いところでは、最近マイクはダーティ・ノブズでもこの曲を歌っていて、かなりサマになっている。

 最後の "A Wasted Life" は、唯一と言って良い、アコースティック・ギターが大きくフィーチャーされた曲だ。それだけにシンセサイザーはイマイチ。ここはベンモントの生ピアノか、思い切ってストリングスでも良かった。

 改めて聴いてみると、[Long After Dark] はまさにエレキギターの響きの魅力的なアルバムだ。ジェイコブとザ・ウォールフラワーズがどんなギターで演奏するのか、とても見てみたい。
 それを言うなら、TP&HB自身がどんな楽器を使っているのかも気になる。スタジオ録音もさることながら、ライブではどんなギターを使っていたのだろう?また動画あさりの日々となりそうだ。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
このブログの制作者名最初のアルファベット半角大文字2文字は?

コメント:

トラックバック