Jeff Beck2023/01/12 19:42

 ジェフ・ベックが亡くなった。驚いたが、残念ながらそういう時代に入っているのだろう。早弾きとか、技巧とか、そういう空々しいこととは無縁で、すごく歌心のあるギタリストだった。
 ジェフ・ベックのライブは少なくとも1回は見ているという認識があった。自分のブログを確認してみると、どうやら2回見ているらしい。インストゥルメンタルに興味が無い私にしては、珍しいことだ。ライブでは、"Beck's Bolero" や、"A Day in a Life" がとても印象深かった。

 CD は [Truth] と [Beck O-La] が一枚になったお買い得盤だった。昨今の CD 売り飛ばしを免れて、ちゃんと保管されている。
 聞き直したが、ジェフ・ベックだけでも凄いのに、ヴォーカルはロッド、ベースはロニー、ピアノはニッキー・ホプキンズである。とんでもないメンバーで、バランスのとれたウィルベリーズ状態だ。
 中でも、"Jailhouse Rock" が凄かった。ジェフ・ベックを聞くつもりが、ニッキーのパワー・プレイのすさまじさに圧倒されてしまった。



 名だたるミュージシャン達が追悼コメントしている。マイク・キャンベルもその一人で、写真のチョイスが良い。



 YouTube でジェフ・ベックの動画を色々見ていたら、こちらの動画に出くわし、すごく良かった。



 どうやらロッドは飛び入り(?)だったらしく、本気で驚いているジェフ・ベックが笑える。一瞬かたまり、え?!なんでお前、ここに居るの?!曲が終わっても「いやーん!」という仕草が可愛い。もうこんなシーンも見られなくなるのだと思うと、とても寂しい。

いくつかの Walls2023/01/07 20:41

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの名曲 "Walls" は、"Circus" と "No.3" の二バージョンあり、1996年にリリースされた。だから、1997年のフィルモアでのライブでは、新曲だったわけだ。
 今回、ボックスセットで公式にリリースされた音源は、あきらかに "No.3" のアコースティック・バージョンで、マイクがマンドリンを弾き、ベンモントは主にアコースティック・ピアノを主に鳴らしている。



 しかし、つい先日 YouTube に投稿されたオーディエンス録音によると、このフィルモアでの連続ライブの間に、"Walls" のエレクトリック・バージョンも演奏されたというのだ。



 確かに、マイクはエレクトリック・ギターでソロを弾いているし、ベンモントも主にオルガンを鳴らし、テンポはやや速くてドラムのリズムも強い。
 かと言って、これが "Circus" かというと、それはそうでもないと思われる。飽くまでも、"No.3" のエレクトリック・バージョンの域を出ていない。
 後年 ―― トムさんにとって最後のツアーとなった2017年のツアーでもこの "Walls (No.3)" のエレクトリック・バージョンは演奏された。ウェッブ・シスターズの参加でバックコーラスこそ分厚いが、"Circus" ほど立体的ではなかった。

 いくつかある "Walls" の中で、どれが一番好きかというと、公式レコーディングである、 "Walls (Circus)" がダントツだ。テンポは遅めであり、リンジー・バッキンガムも参加した、複雑で立体的なコーラスが特徴的。なおかつ分厚いインストゥルメンタルが何重にもオーバーレコーディングされている。これぞ、ライブでの再現不可能曲。その不可能加減がまた好きなのだ。
 一応、公式ビデオの動画を貼り付けておくが、ぜひとも公式オーディオを買って、大きな音で聞いて欲しい。
 ついでではあるが、Heatbreakers Japan Party さんが次に Project X を決行するとなったら、"Walls (Circus)" だろうと思っている。

You Ain't Goin' Nowhere2022/12/22 21:59

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの [Live at the Fillmore 1997] の、ロジャー・マッグインとの共演 “You Ain't Goin' Nowher” を繰り返し聴いていて、ふと思った。この曲はすっかりザ・バーズによる演奏がすり込まれているが、オリジナルはボブ・ディランのはずである。そのオリジナルって、どのアルバムに入っているのか、ピンとこないのだ。
 確認してみると、公式に発表したのはザ・バーズの方が先で、ディランの公式録音は “The Greatest Hits II” (1971) に入っていた。私はこの二番目のグレイテスト・ヒッツを持っていなかったので、ピンとこなかったらしい。
 その後、”The Basement Tapes” そのまたブートレッグシリーズなどに収録されたが、公式なオリジナルはこのバージョンということになるようだ。



 1992年のボブ・フェストでは、三人の女性による演奏が印象的だった。改めて見ると、豪華なバンドで、G.E. スミスのリードギターもかなり華やかだ。
 この時のライブの特徴なのだが、ホスト・バンドとゲストとのリハーサルがやや不十分だったようで、この曲も終わり方で一斉にスミスを振り返るのがおかしかった。




 [Live at the Fillmore 1997] では、ハートブレイカーズによる豪華なコーラスがかなり控えめにミックスされ、ロジャー・マッグインの声を引き立てるように響き、この上なく美しい。ギター・ソロはたぶんマイクだと思うが、彼の個性を押し出す感じはせず、あくまでもザ・バーズへのリスペクトに溢れていて、とてもすがすがしい。

Fillmore with Roger McGuinn2022/12/18 21:20

 もし、できることなら。時を遡り、好きなところに行けるとする。でもただ一日一か所。1997年2月サンフランシスコ。トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのライブを見られるとしたら、どの日にするだろうか?
 "Heartbreaers Beach Party" の日も楽しそうだし、"American Girl" の感動もぜひ味わいたい。

 曲目もさることながら、ゲスト・アーチストは誰の日が良いだろうか?カール・パーキンスか、ロジャー・マッグインか、ジョン・リー・フッカーか。私がこの三者で選ぶなら、だんとつでロジャー・マッグインがゲストの日にしたい。
 ハートブレイカーズとロジャー・マッグインなんて、ウィルベリーズ並みの豪華さだ。特に今回のライブ・アルバムに収録された "Eight Miles High" は、どのバーズ自身のライブアルバムよりも、素晴らしい演奏で、一番好きだ。
 ロジャー・マッグインと、トムさんだけでも豪華なのに、その上トムさんもう一人分であるハウイに、スコット、されにはベンモントもいるのだ。しかもギター専任がマイクなのだから、こんなに豪華な演奏はないだろう。
 "Eight Miles High" にはインド音楽や、ジャズの要素が取り入れられ、一説にはサイケレリック・ロックの最初の一曲とも言われているらしい。確かにそういう曲だし、同時に複雑で不可思議な演奏に対して、コーラスの美しさの対比も素晴らしいと思う。



 もちろん、純粋な(?)フォーク・ロックである "It Won't Be Long"も素晴らしい。コーラスの完璧なハーモニーもさることながら、奏でられてるギターが何なのかも気になる。ロジャーは例のリッケンバッカーだろうか?まさかトムさんとマイクもリッケンバッカー?スコットは何を選ぶのか?
 実際にその場に居てステージを見たら、きっとそんなこともわかっただろう。

Johnny B. Goode / Bye Bye Johnny2022/12/14 22:16

 ブッコロー柄のブックカバー、ゲット!!
 普段、ブックカバーは使わないのだが、これだけは欲しかった!



 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの [Live at Fillmore 1997] に関して、日本のファン組織である Heartbreakers Japan Party さんの解説するところによると、あの刷り物に "Bye Bye, Johonny" と印字さてしまった "Johnny B. Goode" だが、実は歌詞が "Bye Bye, Johnny" と "Johnny B. Goode" のミックスになってしまっているとのこと。
 そこで歌詞を確認するために、まずはオリジナルのチャック・ベリーから聞いてみる。





 うーん、これは混同するなぁ。コーラスはともかく、Aメロは意図的に音節もコード進行も同じにしているから、ごっちゃになる気持ちもわかる。トラディショナル・アイリッシュの楽曲でも同じようなことが良く起きる。



 Aメロの1番はちゃんと "Johnny B. Goode" だが、2番から "Bye Bye Johnny" になり、3番は "Bye Bye Johnny" の断片がミックスされて、一部何を歌っているのかもよくわからなかったりする。
 トムさんの歌詞の記憶が曖昧だったために、リハーサルでの確認が必要だったらしい。多分トムさんはみんなに「俺が何を歌っても構わずに Jonny B. Goode で押し通してね!」と言ったに違いない。だからバンドの演奏も、コーラスも微動だにせずに突き進んだのだろう。

 もう一つ気になるのは、この曲のイントロだ。どうも1ヴァーズ分長いような気がする。映像が無いので確認できないが、本来の歌い出しでトムさんがマイクロフォンに付かなかったのではないだろうか。「あー、ちょっとまった」みたいな。それで慌てず騒がず、ベンモントがソロを弾いて、おもむろにトムさんが歌い出したように思われる。
 ハートブレイカーズが腕の良いバンドマンたちだったということでもあるし、同時に入念にリハーサルをやった結果でもあると思う。Practice, practice, practice. やるべきは練習である。そこらの素人でも、伝説のロック・バンドでも。

Heartbreakers Beach Party, Yeah!2022/12/10 21:26

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのライブアルバム [Live at Fillmore 1997] を何度となく繰り返し聴いているが、いつまで経っても他のアルバムを聴こうという気が起きない。素晴らしい。

 色々と新しい発見があるが、その中でひとつ、へぇと思ったのは、ハートブレイカーズのローディ,ギター・テックの Alan "Bugs" Weidel という人の名前である。「バグズ」という呼び名で親しまれているが、私はずっと彼の姓は「ウィーデル」だと思っていた。
 ところが、"Knockin' on the Heaven's Door" の前に「ごめん、アンプが壊れた」というトムさんの話しで、読みは「ワイデル」であることがわかった。なんだかドイツ語みたいな発音だ。
 ともあれ、バグズはトムさんの命を救った(舞台から落ちて押しつぶされそうな所を助け出した)こともある。ハートブレイカーズにとって欠かすことの出来ない人物だ。



 [Fillmore] の発売が公式発表されたと共に公開された、「ちょっとまった、誰か "Heartbreakers Beach Party" って言った?」からの "Heartbreakers Beach Party" ―― 「ベンモン、キーは?」と確認して演奏が始まるのだが、ベンモントが E! と言っているのに、A?と訊き返すとかトムさんはわざとぼけているのか…
 実際は、Eマイナーの1コードだけで終始する変な曲である。聴衆の前で演奏するのは初めてだが、リハーサルはそれなりに入念にやったようで、演奏に隙はない。聴衆とのやりとりも楽しい素晴らしい瞬間になった。

Tempo of Satidfaction2022/12/06 19:48

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの待望のライブ・アルバム [Fillmore 1997] の聴き所はたくさんあるが、ザ・ローリング・ストーンズ・ファンも必聴である。ストーンズのバージョンで有名な曲もあるし、なんと言っても "(I Can't Get No) Satisfaction" の演奏があるのだ。これがもう最高。



 Heartbreaker's Japan Party さんによる曲目解説によると、「(ストーンズの)オリジナルではなく70年代以降の速い演奏」とのこと。
 確かに、"Satisfaction”は年を追うごとに速くなっているという印象がある。1965年、オリジナルの演奏は、だいたい四分音符=132くらいだ。(だいたいというのは、私がデジタルのメトロノームを持っていないため、アナログの刻みでしか確認できないのである。)同じく、1965年の BBCレコーディング [On Air] でも同じテンポだ。



 それが1981年になると、なんと約168という、ぶっ飛んだテンポになる。これはかなり極端。ライブ会場が巨大スタジアムになったりして、ストーンズのライブ観の変化が反映されているのだろうか。ほとばしるアドレナリンのなせる技か、いかにも乱入者をギターでぶん殴りそうな速さだ。



 1989年の [Flash Point] になると少し落ち着いて、144になる。トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの [Fillmore 1997] もだいたい144だ。ハートブレイカーズの場合は、オリジナルをちょっとノリ良く、軽やかに演奏としているという感じだろうか。ハウイという優れたハイ・トーン・ヴォーカル兼ベースの存在が大きいだろう。

 それで、一番最近はどうなのかと思って、今年のヨーロッパ・ツアーの動画を見てみた。
 これがびっくりするほどゆっくり。オリジナルの132より更に遅くて、128~129くらいではないだろうか。これもまた、彼らのライブ観の変化かも知れない。
 それにしてもこの動画、キースが長い間映っているので思うのだが…やっぱり老いたなぁと思う。ミックがちょっと異常なのであって、キースの佇まいが「お若い79歳」というところで、ロニーもまた、「お若い75歳」なのだろう。

I Need You2022/12/01 21:45

 11月29日はジョージが亡くなった日ということになっているが、私の実感では30日である。2001年のあの日、11月末日だった。翌日にはお能を見る約束をしていた。やはり実体験として記憶すると、日本時間で意識するようだ。逆に実体験していないジョンの亡くなった日は12月8日である。

 亡くなった翌年の2002年の11月29日には、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで、史上最高のトリビュート・ライブ [Concert for George] が開催された。当時からそのメンバーからして凄いということはわかっていたが、その全容が明らかになったのは、そのまた翌年2003年11月末に発表された映画、フル・パフォーマンスの映像、そして CD によってだった。
 この [Concert for Goerge] ―― CFG が良すぎて、何回見たのか、そして買ったかすらもわからない。DVDを何セットも人にプレゼントしているし、モンティ・パイソン布教(そういうこともしていた)にも使った。パイソンの総仕上げで CFG を見た人は、特に音楽好きでもなかったが、CFG にはいたく感動していた。

 CFG をまだ見ていない人も、だまされたと思って見て欲しい。ジョージ・ファンではなくても全然大丈夫。映画ではなく、フル・コンサートがお薦めだ。びっくりするほど素晴らしく、感動的で、友達って、人間っていいなと思える。

 CFG で名曲を一つあげるというのは、とても難しい。全てが名演だからだ。
 でも、あえて今年一曲挙げるなら、"I Need You" にしておく。この曲は、私が音大時代、図書館の映像資料室で何十回も 映画 [Help!] を見ていた最中に、ビートルズの中で実はジョージが一番美男子であることに気付いた曲だ。映画全編にわたって、ジョージは格好良いのだが、特にこの "I Need You" のシーンのジョージに魅了された。
 その場面を切り取った動画もあった。ちなみに、なぜミリタリー・ファッションに戦車、狙撃兵なのかというと、カルト集団がビートルズの(と、いうかリンゴの)命を狙っているからである。地下では爆弾の設置が着々と行われている。カイリー!



 素晴らしいラブ・バラードだ。
 これだけの名曲なのに、意外とカバーが少ない。調べてみると、スティーヴ・ペリーがカバーしているとのこと。ステゥーヴ・ペリー?それってちょっと違わない…?と思って動画サイトで確認したけど。やっぱりちょっと違った。あれは違う。そうじゃない!
 やはりここは、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの出番だろう。なんと言っても、まずこの曲を選曲したトムさんたちのセンスが最高だ。CFG で演奏された曲の中で、もっともジョージの作曲年代が古いのがこの曲だ。
 トムさんの健気で、可憐で、繊細な面が良く出ていて、女子はこういうところにキュンとくるし、たぶん男子もキュンとするのだと思う。何も特別なことはない素直な演奏だが、限りなく美しく、ジョージへの愛情に溢れていて、泣き所の多い CFG の中でも、かなり感動的で心を揺るがす演奏だ。
 よく見るとマイクとスコットがエレキなので、アコースティックなのはトムさんだけ。よくある「アコギ押し出し&しんみり強調系」でもない。ちゃんとロック・バラードしているところが良い。

Fillmore 19972022/11/26 22:18

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのライブアルバム、[Fillmore 1997] が発売になった。私は4枚 CD のボックスセットを注文している。
 もっとも、現物がいつ手元に届くかはわからない。しかし、ダウンロードも商品に含まれているので、さっそく今日から聞いている。

 有名なブートレグが耳なじみだが、やはりそれよりもずっと音が良い。特にトムさんやスコットのアコースティックギターの音、一粒一粒が弾けていている。そしてベンモントのピアノもはっきりと浮き立っている。
 思えば1997年といえば、[Full Moon Fever] や [Into the Great Wide Open] から10年経っていない。[Echo]以降の重厚でハードなライブ・バンドとは、またひと味違う感じがする。若く弾けるような青いハートブレイカーズが、いぶし銀になろうとする、その端境期が [Fillmore 1997] と言えるだろう。
 即ち、若さ、もしくは重厚さへの偏りが少なくて、とてもバランスのとれているライブ・パフォーマンスということだ。全20公演で取り上げた曲目数も多く、ゲストも豪華。様々なカバー・ソングも楽しめる。これからTP&HBを聴こうとしている人にも、お薦めできるライブ版ではないだろうか。

 このライブ・アルバムを語ろうとしたらいくら記事があっても足りないのだが、今日は2曲とりあげる。両方ともカバーだ。
 まずは、"Johnny B. Goode" なんと刷り物(ジャケットやスリーブなど)には、誤って "Bye Bye Johnny" と記載されてしまったというレアなエピソードつきだ。
 確かに、TP&HB というと、"Bye Bye Johnny" を歌っている印象が強いくて、誰も間違いに気付かなかった可能性がある。演奏が始まってもしばらく違和感なく "Bye Bye Johnny" のノリでいたら、あれ?これ、"Johnny B. Goode" だ!というオチ。ちょっと面白くて、こういうハプニングは好きだ。
サビでのハウイ、スコット、ベンモントのシンプルなコーラスが格好良いし、マイクのギターソロもやり過ぎない手加減が絶妙。



 もう一曲は、このアルバムの発売が発表されてから一番楽しみにしていた、"Knockin' on the Heaven's Door" である。ディラン様とのライブでも披露されているが、あれは女声コーラスがちょっとうるさい。マッドクラッチの名演も素晴らしいが、こっちはドラマーが上手くないし、上手くない癖におかずを入れすぎなのが耳に付く。
 そういう意味で、純粋にトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの演奏が公式でずっと聴きたかったのだ。
 ディランとのツアーですっかり馴染んでいる曲なので、演奏に余裕が感じられる。ディランのようにハーモニカのソロが無いぶん、ロック・バラードっぽさが強調されていて良い。
 注目は、サビの歌詞。"Knock knock knockin' on the heaven's door" を4回繰り返すのが、ディランのオリジナル録音だが、ディランとトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのツアーから、四回目を "Just like so many times before" と歌うようになり、それがディランの通例となった。このアレンジ詞をライブで歌う人と言えば、ディラン自身以外には、トムさんくらいしかいないのである。マッドクラッチの演奏でも、アレンジ版だった。
 では、この1997年 Fillmore ではどうだったかというと?なんと、1番と2番では"Knock knock knockin' on the heaven's door" を四回繰り返し、3番になって初めて最後に "Just like so many times before" と歌うのだ。コーラスもちゃんと合っているので、これはハプニングではなく、前もってそのようにリハーサルをしていたのだ。
 ああ、やはりトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズは、このディランの名曲をディラン以外で最高に演奏してみせる唯一無二の存在だなと、再実感した。

Call Me the Breeze2022/11/06 20:52

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの [Live at Fillmore 1997] から、公式ミュージック・ビデオ "Call Me the Breeze" が発表された。
 残念ながら全編アニメーションで、彼らの実写映像は一瞬たりとも現れない。やはり1997年のフィルモアは、映像がちゃんと残っていないことの証左のようだ。
 こういう、アニメや文字のコラージュだけの公式ミュージック・ビデオというものには、あまり興味をそそられない。"Taxman" の公式動画とか…アレはなんだろうか。音楽はいいけど、動画としての魅力はあまりないと思う。



 もう一点、この1997年のバージョンがやや残念なのが、ベンモントのピアノ・ソロが長すぎることだ。もちろん、これを最初に聴く分には、彼のピアノのスキルを満喫できるので良いのだが、後年 ―― 1999年に、ベンモントのピアノ・ソロもありつつ、最後はトムさんとマイクのダブル・リード・ギターで締めるバージョンが登場するのだ。それがもの凄く格好良く、断然好きだ。



 何が良いって、ツイン・リード・ギターその物もさることながら、トムさんとマイクが息を合わせて、完璧に揃えられるように、すごく練習したのだという跡がよく分かることだ。私は音楽を演奏する人間なので、もの凄く練習して上達した部分というのは、分かる物だ。フィギュアスケートの振り付けなども同様。そういう、猛練習の跡とその結果が素晴らしいと、満足感のレベルが違うのだ。
 トムさんがちょっと緊張しながらも、マイクに近づいてきちんと弾き、マイクは余裕を持ってトムさんに寄り添い、微笑みながら演奏を楽しんでいる様子もたまらない。こういうのを、私は眩しいと思うのだ。