CFG: Fashion Check !2018/02/16 22:31

 何度でも言うが、私は [CFG] こと、「コンサート・フォー・ジョージ」が大好きだ。
 どのくらい好きかと言うと、[CFG] のポスターを1万円で買ったくらいだ。
 ビートルズグッズ専門店に問い合わせた当初は、無いとのことだった。その後、店から入手できたが、1万円でどうかというオファーが来たのだ。即購入。5万円でも買っただろう。

 さて、今日は [CFG] のファッション・チェック!

 まず女性陣から言えば、サム・ブラウンの圧勝だろう。大胆なドレスで、圧倒的な歌唱力。帽子も格好良いし、それを拾う仕草、小さい頃からよく知っているダニーの手を取る仕草、どれも姐さん、貫禄十分です。
 オリヴィアはこのコンサートのために、ドレスをあつらえたのだろう。雰囲気に合っていて、とても素敵だ。

 さて、男性陣。
 一番多いのは、スーツでびしっと決める面々。ジェフ・リン,ポール、そしてトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズは細身のスーツで格好良い。マイクがちょっと怪しい感じだが、でも格好良い。
 アメリカのツアー中にロンドンに飛んでくれたハートブレイカーズ。そういえば、トムさんの脂肪吸引疑惑が囁かれたのはこの頃だったか。
 アメリカからびしっとスーツで、気合い十分で乗り込んできたハートブレイカーズ、その前に現れたのは…

 カジュアル勢。
 まず、クラプトン。…ユニクロ…?ユニクロ?そして覚えておかなければならないのは、クラプトンのソックスは、白いということ。どこで分かるのか?それは見てのお楽しみ。ヒント、前半。
 そしてダニー。インド風の上下でとても清楚で可愛い…すごくセンスのあるチョイス。哀れな感じなんて微塵も無くて、天使…?!というか、ジョージ…?彼の佇まいも、このコンサートを温かく、心地よいものにしている一つの要素だろう。
 そして、なぜかひとり南国気分の、ジョー・ブラウン。娘とは正反対の、アロハー!な、リラックス・スタイル。このアロハがコンサートのトリで、号泣させる。

 そして、どう分類すれば良いのか分からない、大ボス。それがリンゴ。
 追悼コンサートなのに、真っ赤なジャケットにハデハデ刺繍、カジュアルなボトムズ。リンゴだから合っているファッションなのだろう。
 若い頃からそうだが、リンゴは何を着ても様になる。

 さぁ、「コンサート・フォー・ジョージ」を買うのです…見るのです!ジョージ・ファンならずとも、ぜひ。

Multi-Format [Concert For George] Reissue2018/02/10 20:12

 2018年2月23日、[CFG] こと 「コンサート・フォー・ジョージ」のリイシュー版が、世界同時発売される。

 さぁ、いまこそ!名作 [CFG] を買うときです!

 今回のリイシューは、ジョージの生誕75年を記念してのもの。形態によって四つのバリエーションがある。これまでもBlu-ray化や、期間限定のフリー視聴などなど、様々なかたちでCFGは送り出されてきた。まるで "The Last Waltz" だ。それほどの価値のある、極上のコンサート、[CFG]。

 今回は初めてアナログ盤が出る。私はアナログ盤を集める趣味がないのでこれは遠慮する。さらにデラックス・ボックスは、コンサート当日に飾られたタペストリーの断片が入るという、マニア向けのシロモノだ。
 私は、CDとBRボックスを予約した。すでにDVDも、BRも、CDも持っているが、CFGはいくらあっても良い。買って人にプレゼントしたことも、一度や二度ではない。
 そもそも、トレイラーからして既に名作。



 クラプトン,ジェフ・リン,TP&HB, ポール,リンゴ,ビリー・プレストン,ゲイリー・ブルッカー,ジョー・ブラウン,サム・ブラウンなどステージの中心に立つミュージシャンたちのみならず、バンドを構成する大物ミュージシャン ― ジム・ケルトナー,レイ・クーパー,ジム・キャパルディ,ジュールズ・ホランド,マーク・マン,アルバート・リー,ジム・ホーン,そしてクラウス・フォアマン…その他大勢 ― 豪華すぎて舞台の床が抜けそうで、しかも若かりし頃のジョージとまったく同じ容姿(少し小さいだけ)のダニーがいる。
 ついでに、客席にいるスティーヴ・ウィンウッドとビル・ワイマンを捜すという、おまけつき。
 インド音楽のパートもかなり魅力的で、CFGのBRをウクレレの先生(ギタリスト)にプレゼントしたら、インドパートにはまっていた。
 忘れてはいけない、モンティ・パイソン!私はこれでパイソン・ファンになった。
 映像作品としては、コンサートの完全版はもちろんだが、劇場上映版のインタビューや、リハーサル風景なども必見だ。

 「でも、ジョージ本人はいないじゃん?」と言った友達がいた。
 私に騙されたと思って、とにかく見ろ!…と言ったら、次に会ったとき彼は「泣いちゃったよ…」と報告してきた。
 そう、ジョージの追悼コンサートでジョージ本人はいないのに、ジョージはまちがいなく「いる」のだ。絶対そう確信できる。
 何度見ても、ボロボロ泣ける。

 今回のリイシューを見たら、今までとはまた違う感慨だろう。当時52歳だったトムさんと、ハートブレイカーズが「若手」として活躍している。
 "Taxman" はこのコンサートで一番にロックな格好良さであり、"Handle with Care" はまさに夢の実現。そして、ここでは "I Need You" をあげておこう。CFGで演奏された中で、ジョージのもっとも初期の曲だ。
 いわゆる、「ギタリスト声」というそうだ。ああいう、ジョージやトムさんのようなやや薄くて、儚げで、でも説得力のある声。ビートルズでの録音時、ジョージは23歳くらいだったと思うが、52歳のトムさんが、あの若さ、若さ故の苦さ、胸がいっぱいになるような切なさを、完璧に再現している。
 ロイヤル・アルバート・ホールの天井 ― そしてその上の空を見上げ、歌を捧げるトム・ペティ。歌い終わり、ちょっとだけうつむくトム・ペティ。ああ、きっとジョージとトムさんは一緒に歌っていたのだろう。そして今もきっと、一緒に歌っている。



 ことが [CFG] となると、もはや落ち着いてなどおられず、片っ端から人をつかまえて、勧めたくなる。ジョージや出演者のファンでもなくても、勧めたくなる。音楽が好きなら、きっと何かを得るはず。 ― いや、音楽に特に興味のない友人に、「パイソン物」として貸したら、「あのコンサート、いいね」という感想が返ってきたことすらある。
 きっと、音楽を抜きにしても、人間が生きていること、友達がいるということ、友達への愛情を表現するということが、どれほど人の心を動かすのか ― そして、それをいきいきと、明るく、そして感動的に伝えきっているものこそ、[CFG] だからだろう。

 さぁ、いまこそ!「コンサート・フォー・ジョージ」を買うのです!見るのです!本当に、本当に素晴らしいから!

When Prince Met Tom Petty2018/01/27 22:33

 「俺の二大スターは、デイヴィッド・ボウイと、プリンス」 ― と、いう同僚がいる。彼にとって、去年はショッキングなことが立て続けに起こったわけだ。
 プリンスが亡くなってから少しして、彼が私にふと話しかけてきた。

 「トム・ペティって……」

 ああ、あれを見たなと悟った。
 2004年、ジョージのロックンロール・ホール・オブ・フェイム授賞式。"While My Guitar Gently Weeps" ―
 プリンスのファンとしてこれを見て初めて、まともにトム・ペティを認識したというわけだ。



 何度見ても凄い。この曲に関して、クラプトンとジョージ以外のソロ奏者としては、プリンスが一番だろう。トムさんとジェフ・リン、プリンスがもの凄い存在感を発揮しているが、さらに贅沢なことに、スティーヴ・ウィンウッドとジム・キャパルディ,そして二人のハートブレイカーまで揃っている。特にウィンウッドのオルガンがふるっている。この曲はギターだけではなく、オルガンも非常に重要なサウンド・ファクターなだけに、最高の布陣だ。
 ダニーもこういう豪華な場には慣れているだろうが、プリンスのファンだけに、とりわけ楽しそう。プリンスのソロが始まろうとするときに、彼の顔を見て顔一杯に笑うダニー。そしてプリンスが観客席へ倒れ込むのを圧倒されたような顔で見て、おそらくジェフ・リンに向かって「あれ、見てよ!」という表情をしている。

 プリンスのギター・ソロもさることながら、私はこの演奏に関して、トム・ペティのヴォーカルも抜群だと思っている。これまた、ジョージっぽい憂いを帯びた、でも自信に溢れたヴォーカル。プリンスがソロを弾いている間にも、"Look at you all..." と歌っているのが最高にエレガントで、格好良い。

 例の同僚は、実は去年10月3日の早朝、私の次にオフィスに入ってきた人だった。思わず呼び止め、トム・ペティの悲しいニュース(この時点では情報が混乱していた)を話さずにはいられなかった。
 そして先日、その死因の公式発表があり、それがプリンスと同じであったことを話すと、「そう!俺も見ました!」との返事。
 「記事で読んだんですけど、トム・ペティが、プリンスが亡くなる数日前に電話しようと思ったって言うんですよね…」

 この話は初耳だったので、確認してみると、たしかにあった。トムさんがプリンスの死を受けて、Times紙に語っているのだ。

 When Prince Met Tom Petty for ‘While My Guitar Gently Weeps'

 "I almost told myself I was going to call him and just see how he was," he mused. "I’m starting to think you should just act on those things all the time."
 「ぼくは、彼(プリンス)に、元気か、って電話しようかなと思っていたんだ。」彼(ペティ)は思いにふけった。「それからは、やろうと思ったことは、すぐにやろうって考えるようになったよ。」



 賢者の言葉だ。

Christmas All Over Again2017/12/21 21:49

 クリスマスと言えば、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの "Christmas All Over Again" ― ポップスのクリスマス・ソングでは、これが一番好きだ。
 録音版は、ジェフ・リンがサポートしており、リッケンバッカーが高く鳴り響き、TP&HBの楽曲では唯一ではないかと思われるドラム・ソロが効果的。ウィルベリー兄弟の化学が素晴らしいものを作りあげた見本だろう。

 2000年には、ホワイトハウスで演奏しており、その動画も有名。
 何が有名って、トムさん史上もっとも短い髪の毛。ついでにマイクも短い。トムさんはちょっと太り始めている…でも楽しそうで可愛い。
 そして私のお気に入りは、トムさんとマイクが、揃いも揃ってゴージャスなリッケンバッカーを鳴らしまくること。私もプレゼントにリッケンバッカーが欲しい。弾けないけど。



 この時について、「カントム」こと、[Conversations with Tom Petty] では、このように述べている。

 いったい誰が、ゲインズヴィルから出てきたガキどもが、大統領の前でプレイするなんて想像した?大統領と、ファースト・レディが最前列に並んでいるんだぜ。
 ぼくは数度、ホワイトハウスに行ったことがある。大統領に会って、執務室に入れてもらった。ゴキゲンだった。子供の頃はこんなことになるだなんて、想像もできないだろう。単にバンドが好きで、ギターを弾いていただけなんだから(笑)。それがノコノコと執務室に入っていくのだから。
 そうしたら、アル・ゴアが言ったんだ。「大統領と、トラベリング・ウィルベリーズをやろうじゃないかと、話し合ったんですよ。」(笑)でもウィルベリーズは却下されちゃった訳で。とにもかくにも、どえらい事がやたらと起こったものだった。


 この曲に関しては、ウクレレで作ったというエピソードも忘れてはならない。
 ジョージがウクレレをくれて、その日の午後はつきっきりで弾き方を教えてくれたという。この世でもっとも幸運な人、トムさん。そのウクレレを真夏のフロリダに持っていき、このクリスマス・ソングを書いた。
 トムさんがウクレレを弾いているところは見たことはないと思うが、きっとロックでクールなユークだったに違いない。

 私には宗教心もないし、神様も信じていないけど。どんな人にも良いことがありますように。トム・ペティの魂が安らかで、しかもロックンロールでありますように。

レコード・コレクターズ 2017年12月号2017/11/17 20:25

 もはや、「キミはもう見たか?!」状態の、レココレ。第二特集が、トム・ペティの追悼記事である。
 私も購入。レココレを買うのは何年ぶりだろうか。もしかしたら、ウィルベリーズ・リイシューの時以来かも知れない。
 私は音楽好きな割に音楽雑誌を買わない。音楽を「読む」という習慣がないし、モノを増やしたくない。そして、私は音楽好きではあっても、コレクターではない。
 しかし、今回はさすがに購入必至だ。内容も素晴らしい。



 買ってみて驚いた。これほど紙数を割いているとは思っていなかったのだ。こんなにたっぷり載せてくれて、とても嬉しい。
 ヒストリーはトム・ペティのキャリアを簡潔、かつ的確な表現で書いていて、とても読み応えがある。
 ディスコグラフィーも、さすがはレココレという充実ぶりではないだろうか。

 第一特集であるディランのゴスペル時代の解説も、面白かった。ファンとしては「何だったんだ」というボンヤリとした時代が、一定の形になって掴めるようになっている。

 今回の2017年12月号で、もっとも重要な点は、結局、表紙ではないだろうか。1986年。ボブ・ディランと、トム・ペティの、信じられないほど素晴らしい共演。べつにワン・マイクにする利点はないだろうに。でもワン・マイクに憧れる永遠のロック少年たち。
 この二人がロックバンドとしてツアーをしていたという、およそ現実離れしているような、でも本当に起きた出来事。素晴らしい出来事というものは、起きるものなのだ。

 急に思い出したことがある。
 私はピアス・ホールを両耳にあけて、外出時には必ずピアスをする。忘れて外出しようものなら、外出先でピアスを購入する。予備のピアスも常備している。
 ピアスのきっかけは、このTP&HBとの共演時の、ディラン様のピアスが格好良かったから。男性に憧れて、あけたのだ。今でも、すごく格好良いと思っている。

 ピアスを揺らし、ニヤニヤしながら、金髪くんはどこだと見回すディラン。そして飛び込んでくるトムさん。最高に輝いている。


Trouble No More2017/11/11 22:16

 ボブ・ディランのブートレッグ・シリーズ Vol. 12 [Trouble No More] が届いた。私が購入したのは、2枚組アルバムの方。ボックスで買っても、結局聴かないというのが、[Another Self Portrait] と [The complete Basement Tapes] の教訓である。

 これはかなりロックで格好良い。大好きなディランの一面だ。
 これまでのブートレッグ・シリーズのジャケットがいずれも「静」のイメージだったのに比べて、この弾けぶりからして、いかに力強くロックンロールをぶちかましているか、分かるというものだ。



 1978年にクリスチャンになってから、いわゆる「ゴスペル時代」と呼ばれる時期に入ったディラン。[Slow Train Coming], [Saved], [Shot of Love] というキリスト教色の強いアルバムを発表し、ライブもその流れの選曲となった。
 今回のライブ・アルバムは、この「ゴスペル時代」, 1979年から1981年のライブを収めたものだ。

 当時、このキリスト教への強い傾倒は、不評も買うことになった。
 ところが、私はこの時代のディランも、大好きなのだ。それは、私がそもそも宗教とは縁遠い人間であり、キリスト教には知的な興味こそあるものの、心の問題としてはまったく捕らえていないからだろう。
 クラシック音楽では、宗教音楽はかなりの部分を占める。私にとって、信仰の核心は客観的な事象でしかなく、素晴らしい音楽の原動力として理解している。
 当時のディランがこういうコメントを見たら怒るだろうが、これが現実である。格好良い、力強いロックンロールでありさえすれば良い。
 最近の「シナトラ時代」の方がよほど私には ― 拒否感はないが ― 楽しくはない。ディランはこういう、自分の中での「流行」をまとまった形にすることで、そのキャリアを積み上げ、ディランという人を形勢してきたようだ。それがどう受け取られるか、好評か、不評かは気にしない。それこそがディランの良さだ。

 自分が書いた曲を、自分の口調で、確信を持ってロック・バンドで表現するディランの格好良いこと。ジム・ケルトナーのドラムがどんどんロックを加速させてゆく。エレキが鳴り響き、ディランのハーモニカが吹きすさぶ。こんな至福のロックが、評価されないだなんて、もったいない話だ。
 ミュージシャンもアラバマのマッスル・ショールズから来た、サザン・ロックの猛者ぞろい。サウンド的にもとても好みだ。
 ただし、多少惜しいところもある。
 全体に、女声コーラスがうるさい。私にとって基本的にロックンロールは、異性である男性の魅力の音楽なので、女性はあまり登場しなくて良い。「ゴスペル時代」サウンドの特徴でもあるのだが、やり過ぎ感が否めない。
 面白いことに、Disc2 の方が、女声コーラスが整理されていて、聞きやすかった。演奏年の違いの問題かと思ったら、そうでもないらしい。ライブごとにコロコロと手法を変えるディランらしい現象なのだろうか。

 Vol.12 まで来たブートレッグ・シリーズ。次こそは、TP&HBとの共演時代が出るだろうか。とても期待している。

The Good Old Days May Not Return2017/10/23 20:26

 ボブ・ディランが、トム・ペティの誕生日の翌日,10月21日にトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの "Learning to Fly" をカバーした。



 ディ、ディ、ディ、ディ、ディラン様が!ディラーン様が!!! LLLL Learning to ffflyyyy!凄い!凄すぎる!凄すぎて、現場にいたら卒倒する自信がある!もちろん、聞き終わってから!!
 やだもう、ディラン様ったら、かわいい。アマノジャクに見えて、急に素直になって、キュンとさせる。もう、大好き。
 ロックなカバーで最高。やっぱりディラン様、ロックなんだよ…シナトラ大会はそろそろやめて、ロックなディラン様で行こうよ!

 そもそも、"Learning to Fly" が大好きなのだ。オリジナルのエレクトリック・ロック・バンド仕様が。Heartbreaker's Japan Partyさんの第30回記念オフ会の時、ガチで好きな3曲を選ぶという企画があり、"American Girl", "Echo" そして "Learning to Fly" を選んだほどだ。
 "Free Fallin'" と迷ったのだが、歌詞の良さで "Learning to Fly" がまさった。

Well good old days, may not return
And the rocks might melt and the sea may burn ....
Learning to fly, but I ain'd got wings...


 私はどうしても悲しい曲、歌詞が好きになる。この切なさ、悲しみ。でも強がってロックンロール。抱きしめたくなるような愛しさ。胸が一杯になる。

 アコースティック・バージョンで、観客と一緒に歌うスタイルがすっかり定着してしまったが、私はオリジナル・バージョンのライブがいい。[Take the Highway] の時も演奏しているはずだが、ビデオには収録されなかった。是非とも公式で出して欲しい。

At First Sight2017/10/19 20:25

 あの日の朝、最初にトムさんのことを知らせてくれた友人が、私のために「偲ぶ会ランチ」を開いてくれた。友人はロックに興味はないが、私のよき理解者である。

 一通り、トムさんの活躍と、あの日前後のことをしゃべると、友人は言った。

 「ミュージシャンとしては幸せな人だね。バリバリの現役でツアーもしてて。翌週に自宅で眠ったまま、奥さんに発見されて、家族と長年のバンド仲間に看取られるなんて、そんなラッキーな人、ほかにいる?」

 確かにそうだ。あれほど幸せなロックンロールスター人生はないかもしれない。

 その幸運なロックンロール・スターに出会ったときのことは、良く覚えている。

 12歳でビートルズにはまった私は、数年後 ― 音大時代に突然、ジョージが一番格好良いことに気づいた。そしてジョージのソロ活動について調べ、トラヴェリング・ウィルベリーズなるバンドと、”Handle with Care” という名作ビデオがあることを知った。
 そのビデオを見るために、私は毎日 [Classic MTV] という番組を録画し始めた。80年代ごろまでのミュージックビデオばかりを流す30分番組だ。登校中に録画し、帰宅すると確認するということを繰り返しているうちに、ウィルベリーズとやらを捕まえるにちがいないという狙いだ。

 その日も録画を一通り見たが、ウィルベリーズに関しては収穫なしだった。ただ、ひとつ印象的なビデオがあった。
 ロックのライブ映像で、金髪,長髪のフロントマンが目立っていた。恐ろしくダサい服を着ている。でも格好良かった。金髪はタイプではなかったが、瞳の輝きが良かった。演奏している曲も素晴らしい。
 一目見て気づいたことが、いくつかある。
 フロントマンと、ギタリストがリッケンバッカーを使っていたこと。これはビートルズ・ファンには強烈な印象を残す。
 そして、フロントマンはソロ・アーチストではなく、これは数人のロックバンドであることも分かった。ギタリストとはとても仲が良さそうだし、ほかのメンバーも和やかな雰囲気だ。素敵なロックバンド、そういう感じだった。そして、トランペッターと、女性コーラスはバンド外の人だということも、なんとなく分かっていた。

 予備知識の全くなかった私は、一体彼らの何に魅了されたのだろうか。
 曲の良さ、アレンジの良さ、演奏の上手さ。クールで、媚びない、気の強そうな、でもちょっと多感で、意地っ張りで、可憐な。
 そういう印象だったのかも知れない。

 そのビデオのことはしばし忘れていたが、数日後だったのか、数週間後だったのか、とにかく私はウィルベリーズを捕らえることに成功した。
 とうとう見つけた、"Handle with Care" ― ものすごく興奮して、その魅力に完全にノックアウトされた。そして、ジョージが一番 ― ビートルズのみならず、全てのなかで一番格好良いということを確信した。それと当時に、ウィルベリーズの一人である金髪の青年が、「あの金髪の青年」と同一人物であることも、認識したのだった。

 そういう、トムさんとの出会いだった。彼のことを、本気で二十代だと思っていた。

6th Avenue Heartache2017/09/28 20:24

 9月16日に記事にしたザ・ヘッド・アンド・ザ・ハートが思いの外良くて、何度もリピートしている。特に3枚目のアルバム [Signs of Light] が良い。
 そんなつながりで、同様のテイストのアルバムを聴いているうちに、ザ・ウォールフラワーズの [Bringing Down the Horse] に回って来た。

 名作 [Bringing Down the Horse] が発売されて、もう20年以上経つ。
 2曲目の "6th Avenue Heartache" を聴いて、思わずため息が出た。あの冒頭の、マイク・キャンベル ― まるで、ジョージ・ハリスンが憑依したようなあのスライドギター、至高のサウンドと言うべきだろう。



 ジェイコブ・ディラン、さすがに若い。

 マイク・キャンベルはこの曲でリードギターを弾くに至った経緯について、2003年にSong Facts のインタビューに答えている。

 T-ボーン・バーネット( [Bringing Down the Horse] のプロデューサー)がある日電話してきて言ったんだ。「こういう曲があるんだけど、ギターを入れてくれるか?」
 ぼくは答えた。「今は、本当にスタジオに行って録音する時間が無いんだ。」そしたら彼は、「テープを送ったら、きみの家でオーバーダブしてもらえる?」と言うので、ぼくはOKした。
 それでバーネットがテープを送ってきて、そいつには、いくつかのリズムトラックに乗ったオープン・トラックが入っていた。ぼくはある日の午後、何時間かでギターを持ってきてつなぐと、幾つかのパートに、複数のオーバー・ダブをしていった。良さそうなのができたので、テープをバーネットに送り返した。ぼくは一度も(ウォールフラワーズの)連中には会わなかったよ。
 そうしたら、バーネットがぼくに電話をよこして言った。「やぁ、すごく良かったよ。」それで、あの曲がラジオで流れるようになった。

 この曲のあるギターのラインが、ほんとうに好きなんだ。すごくジョージ・ハリスンっぽいサウンドで。スタジオであのサウンドをモノにしたとき、すごく誇りに感じたよ。バーネットたちがあれを採用してくれたのが、とても嬉しかった。
 可笑しいのは、その後なんだ。ぼくはジョージに偶然会って ― ジョージっていうのは、本当に気まぐれで、シニカルな人なんだけど、ぼくを見て、クスクス笑いながらこう言ったんだ。「やぁ、あの曲をラジオで聞いたよ。今度は、ぼくっぽくやる事にしたの?」


 ジョージはどうして、あのギターがマイクと分かったのだろうか。ラジオでコメントがあったのか、例によって電話魔の彼のことだから人に訊いたのか。もっともジョージらしいとしたら、「マイクだと、分かってしまう」のかも知れない。
 ジョージを知る人たちには、それぞれに「俺のジョージ・エピソード」がある。それを語る彼らは幸せそうで、誇らしげだ。
 マイクにも、初めてジョージに会った時、両手で握手してもらったことが嬉しかったことをはじめ、色々な「俺のジョージ・エピソード」があり、この "6th Avenue Heartache" の話は、すごく素敵だと思う。
 クラプトンも言っていたが、ジョージのスライド・ギターは本当に独特で、彼の演奏だとすぐに分かる。そしてなかなか真似できる人が居ない。マイクはその数少ない、ジョージに限りなく近づく領域のギタリストだ。

 ウォールフラワーズのことだから、もしバーネットがジョージにテープを送っても録音してもらえたかも知れない。
 かなえられない夢を見るなら、ジョージとマイクのスライドギター共演を、夢に見たい。

Handle with Care / Stills & Collins2017/09/23 19:27

 クリス・ヒルマンの新譜 [Bidin' My Time] の発売日は9月22日なので、今日には届く物だと思って、ワクワクしていたのだが、一向に届かない。確認してみると、どうやら輸入の都合らしく、届くのは再来週以降だというのだ。
 ここはぐっと我慢。いちいち、ディスクとダウンロード両方で購入していたら、破産してライブ遠征ができなくなってしまう。

 一方、スティーヴン・スティルスとジュディ・コリンズの新譜 [Everybody Knows] もまた、22日が発売日だった。
 こちらは購入予定ではないが、さすがにトラヴェリング・ウィルベリーズの "Handle with Care" のカバーは気になる。ダウンロードで1曲買いした。



 音楽は決してパソコンのスピーカーで聴いてはいけない。高性能のスピーカーを備えている機種もあるだろうが、大抵はそうではない。きちんとした外付けスピーカーか、ヘッドホンで聴くべきだ。
 このスティルスとコリンズのカバーでは、重いベースラインがまず印象的なので、スピーカーの良さは必須。

 オリジナルの "Handle with Care" と言えば、アコギサウンドと、滑らかなスライドギター、そしてハーモニカがサウンドの特徴のフォーク・ロック調。一方、スティルスとコリンズのカバーでは、まず重いベースとドラム、そして熱いオルガンが鳴り響き、よりソウルフルな仕上がりになっている。
 このソウルフルでパワフルなアレンジも格好良い。
 それに乗るスティルスとコリンズの声だが、こちらはちょっとパワー不足。そもそもが男の友情の曲なので(歌詞がという意味ではなく、曲そのものの存在が)、コリンズの声は曲をリードする方ではなく、ロイ・オービソン・パートだけにフォーカスしても良かっただろう。
 もしくは、スティルスの [Love the One You with] のようにもっと大勢を揃えてきたら、このソウルフルなバージョンの良さが生きたに違いない。

 今回のカバーで改めて思ったのが、ジョージ独特の節回しの妙だった。ジョージはAメロのほとんどで、拍の頭を一瞬空けて、後ろへつんのめるように、言葉の頭を歌う。一方、スティルスとコリンズは、たびたび言葉の頭を拍にぶつけている ― オン・タクトなのだ。こちらの方が簡単だが、オリジナル独特の軽やかさと爽やかさが損なわれてしまう。
 ジョージのあの歌い方はもちろん、ディランの影響が強い。オリジナルはディランとジョージの、一瞬間を取る歌い方と、オン・タクトなロイ・オービソンの歌い方とのコントラストが、鮮やかに発揮されていたのだと、再認識させられた。

 ともあれ、スティルスとコリンズのカバーは、"Handle with Care" の新しい解釈として、とても面白い。そして原曲の良さがさらに分かる。
 友情というものを思うとき、いつもこの曲が思い浮かぶ。損得でもないし、何かを目指すわけでも無い。ただ、友人の事が好きだと思うとき、この曲がぴったりくるのだ。スティルとコリンズも、きっとそうだと思ったに違いない。