Dawn2022/09/01 20:41

 iPod の代替機として、Waklman A107を導入。あれこれしていじくって、やっとまともな曲目の揃ったプレイヤーになった。
 約1万曲あったファイルのうちほとんどは、2台目として使っていたiPod 第五世代にかろうじて残っていた。この機体以降に入れたファイルは、パソコンのハードドライブの iTunes にある程度残っていたので、そこですくい上げた。
 そうは言っても、実の所かなり苦労した。iPod からのファイル抽出というのは、そう簡単ではない。サード・パーティによるアプリケーションを使えば iPod からのファイル移動も可能なのだが、相性の良し悪しがある。私の場合 iPod が古いタイプだったため、余計にアプリケーションを選ばなければならず、結局三つ試してそれなりに散財した。

 Walkman の使用感だが…う~ん。どうなんだろう。こんなものかなぁ。
 iPod Classic にあった、「音楽を聴くためだけの単純なガジェット」というコンセプトを思うと、不満というか、何と言うか。要するにアンドロイドなのである。アンドロイドOS上で、音楽プレイヤーのアプリを使うのであって、Google関連のいくつかのアプリも使えるようになっているし、設定もアンドロイドそのものなのだ。便利かも知れないけど、別にそんな機能は欲しいと思っていない。
 しかし、世はサブスクリプション。ネット接続を前提で音楽を聴こうとしているらしい。そうすると小さな OS を持ち歩くという発想になるのだろう。
 高機能はけっこうだが、操作性がいまいち。バッテリーの減り方の凄さにも、最初はびっくりしてしまった。あわてて長持ちさせる方法をググってみたが、やはり iPod Classic には及ばないようだ。
 もう一つ不満なのが、シャッフル機能である。iPod にあった、「アルバム単位でのシャッフル」が出来ないのだ。アルバムはアルバムとして最初から最後まで通して聴きたい派としては痛い。

 Walkman に関しては慣れるしかない一方、Bose の Blutooth スピーカーはすこぶる使い勝手が良い。なんと言ってもスピーカーの機能しか無いのである。いわゆる「スマートスピーカー」といったような余計なお世話がないので、至って単純明快。操作は簡単、音質も言うことなしだ。

 取り込みをサボっていた CD を片付けたので、今度はディスクの発売されていないアルバムを購入。
 モーゼン・アミニを中心とした、スコットランドのフォーク・バンド,タリスクの新譜 [Dawn] である。ディスクが出るのを待っていたのだが、いつまで経っても出てこない。仕方が無いので MP3 ダウンロードで購入した。
 これってどうなのだろうか?ディスクが無いととても不安になる。クレジットとかも読めないし…フィジカルなディスクのない形態はできるだけ避けてほしい。

 その新譜 [Dawn] だが、この内容もまた、うーん。いまいち。そもそも物理ディスクもないくせに、アートデザインがダサいときている。彼らのファースト、セカンド・アルバムのアートワークは良かったのに。
 演奏そのものの技術は相変わらず凄い。こちら "Aura" はまだ前任のフィドラー,ヘイリー・キーナンが居た頃だ。



 ちょっとポップに振れすぎているきらいがある。
 こちら "Distopia" になると、バウロンにしてよ!という所で、ドラムマシーンがうるさい。ベースもうるさい。完全にテクノっぽくなってしまって台無し感がある。せっかく演奏は上手なのに、もったいない。
 この路線は続かないでほしいと思う。デビュー時から、とにかく凄まじい実力を示したタリスクだ。売れるだろうし、いろいろ試している中の一枚(ディスクがないのに「枚」?)ということになるだろうか。

The Deep End2022/09/05 21:15

 ファストボールは今年6月、8枚目のアルバム [The Deep End] を発売した。ありがたいことにちゃんとディスクがある!やっぱりこうでないとね。

 アルバム・ジャケットが表すように、海沿いのリゾートの緩い雰囲気もあって、お気楽な空気も漂う。
 だがしかし!ファストボールと言えば、正統派ロックンロールである!
 冒頭の "Soundtrack" こそややおとなしめだが、二曲目 "Electric Cool-Aide" はビートルズ系のポップ・ロック。これぞファストボール。安定のクオリティである。



 ポップで聞きやすいのもこのバンドの良いところだが、彼らのファースト・アルバムなどは、かなりパンク風のパワー・ポップ寄りでもあった。その点、アルバム最後の [Chump Change] はそのルーツに根ざしていて、原点回帰。
 ミュージシャンも長く活動していると、あれこれ模索して路線が惑うことがあるだろうが、いつかは自分たちが愛聴して、憧れた音楽に帰ってくる。そのときの安定感はこの上ない。ファストボール、これからも良い音楽を届けて欲しい。そしていつか、ライブにも行きたいものだ。

Her Majesty2022/09/09 21:33

 広く報道されているように、英国のエリザベス女王が亡くなった。イングランドではエリザベス二世。スコットランドではエリザベス一世。ランカスター公爵、およびマン島領主。そのほかにも色々。英国史に興味のある者として、多少の思うことがある。
 96歳。つい先日まで新首相を任命していた。まさに、自らが誓ったように、一生涯を女王としての責務に投じた。

 在位70年 … 途方もない長さである。ビートルズも、ストーンズも、どの UKロックも、モンティ・パイソンも、映画も、ドラマも、コメディも、みんな英国に女王陛下が君臨していることを基本背景としていた。
 女王陛下のネタ、好きだったなぁ。モンティ・パイソンズ・フライングサーカスのシーズン2エピソード13が、ロイヤル・エピソードと言われ、「女王陛下がご覧になる」…ことになっていた。ローワン・アトキンソンも、映画で殺し屋と間違えて襲いかかっていた。「ミニオンズ」でキンクスに乗って大爆走する女王陛下も良かった。
 ヴィクトリア女王が在位した時代、そのヴィクトリア朝文化が思い浮かぶように(ディケンズとか、シャーロック・ホームズとか、ボートの三人男とか)、きっとエリザベス二世の時代は「ロックの時代」として後世に記憶されるのだろう。

 動画はまず、"God save the Queen" ―― 2009年プロムスのザ・ラスト・ナイトから。



 そして、どうしても外せないのはビートルズの、 "Her Majesty" だろう。ビートルズのというか、ポールのなのだが、とにかく超名作アルバム [Abby Road] の最後にそっと添えられた短いラブ・ソングは、とても愛らしくて、お茶目で良かった。

George Harrison's Ransom Les Paul2022/09/13 19:20

 ジョージに関連するギターがオークションに出るというので、記事を読んでみたのだが…これはジョージゆかりのギターと言えるのだろうか?

ジョージ・ハリスンがルーシー・レスポールを取り戻すために交換として引き渡した身代金レスポールがオークションへ

 盗難にあったレス・ポール "ルーシー”(クラプトンから譲られた)が転売された末、所有者を知ったジョージが、ルーシーを取り戻すために、交換品として提供したのが、今回オークションに出される "ランサム(身代金,人質)・レス・ポール”というわけ。あくまでも交換されたレス・ポールであって、ルーシーそのものではない。
 この話は、ノーマン・ハリス自伝にも登場した。ルーシーの所在を知ったジョージが、交換する「同等の」レス・ポールを調達するために、ハリスの協力を得たと言う話だ。ノーマンにとっては「大物」を相手にする最初の機会だったため、まさか本物のジョージのはずがないと疑っていた。ところが、会ってみると本当にジョージ当人だったので飛び上がってしまい、ご近所さんも大騒ぎになったという。つまり、ハリスが調達したレス・ポールが、オークションに出るというわけだ。



 ジョージやビートルズの曲を演奏している辺りは、先だっての「ロッキー」のレプリカの動画よりは何倍もマシである。あれはひどかった。

 それにしても、George Harrison's とうたうのはどうなのだろうか。確かにジョージが一度購入して、ルーシーと交換したのだろうが、だからといって、ジョージが所有していたギターとは言えないと思う。
 ハリスが周旋した1958年のレス・ポールなのだから、良い楽器なのだろう。それにしても最低入札価格が25万ドルというのはとんでもない金額だ。
 最近、ヴィンテージ・ギターの価格は天井知らずだという。投機目的で買い漁られているらしい。なんともはや。しかも、ヴィンテージ・ギターを上手くコピーした1970~80年代の日本製のギター(ジャパン・ヴィンテージと言うらしい)も高騰しているというのだから、こういう世界はよく分からない。
 良い楽器であるのなら、良い演奏家に弾いてもらいたいと思う。マイク先生はもう良いレス・ポールを持っているが…一度でもジョージが握ったかも知れない物なら、欲しがるだろうか?25万ドルなんて出す気は無さそうだな…
 そうだ、ダニー!ダニーが買えば良いのだ。ダニーが競り落として、誰か友達にプレゼントすれば良い。「ランサム」の物語が増えて良いではないか。我ながら妙案である。

Night Visions (Imagine Dragons)2022/09/17 20:46

 音楽を知るきっかけは色々だ。元々自分が好きなミュージシャンの関係者だったり、そのミュージシャンのフォロワーであることを公言していたり。ラジオやテレビ、映画で偶然耳にする音楽であったりもするし、フィギュアスケートの曲に使われた曲だったりもする。
 長洲未来がかつて使用した曲が凄く良くて、記事にしたことがある。

 Demons 2016/04/05

 この "Demons" のオリジナルは、2012年のイマジン・ドラゴンズで、彼らのファースト・アルバム [Night Visions] に収録されていた。オリジナルも凄く良い曲だ。



 "Demons" を知ってからだいぶ経つが、このたび何の気なしにそのファースト・アルバムを買ってみた。私の好みにしてはドスドスしすぎ、アコースティック気がなさ過ぎのような気もしたが、いざ聴いてみると、かなり好きな良いロック・アルバムだった。
 この "It's the Time" などはフォークな音の使い方もしていて、人懐こい感じが気持ち良い。



 曲のポップさ加減も良いさじ加減だし、それはやはりビートルズっぽさが濃いのだと思われる。"On Top of the World" のビデオを見ると完全にビートルズへのオマージュだ。そしてかなり笑える。



 良いなと思うバンドに出会うと、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのカバーをしていないかどうか確認するのが常なのだが、イマジン・ドラゴンズの場合はズバリ、カバーをしているバンドである。しかもトムさんが亡くなる前から "I Won't Back Down" をレパートリーにしていたので、かなりのファンだと思われる。
 セカンドアルバム以降も、聴いてみようと思う。

Queen's Piper2022/09/21 21:39

 UK史、UK文化に興味のある者として、エリザベス女王の国葬は必見であった。がっつりテレビにかじりつき、NHKが中継を終えても、CNNで引き続き追っかけ、結局ウィンザー,セント・ジョージ・チャペルでの礼拝までつきあった。
 ウェストミンスター・アビーも見所だし、紋章官たちや、ビーフィーター達が居並んでいるのも壮観。紋章官といえば、紋章院(College of Arms)の総裁は代々のノーフォーク公爵だが、現公爵の長男(アランデル伯爵。これまた中世以来の由緒あり)ヘンリー・フィッツアラン=ハワードは、2000年代にカー・レーサーをしていて、ライコネンのチームで走ったりもしていた。彼も葬儀の席のどこかに居ただろう。
 女王の棺はウェリントン・アーチで車に乗り換えたのだが、ケンジントン・ロードを西にたどったので、ロイヤル・アルバート・ホールの前(厳密には裏)を通ったときも、おお!と思った。私はここでハートブレイカーズとディラン、計5回コンサートを見ていて、とても思い出深い。

 音楽的にも何か興味深いことがあるのではないかと期待していたが、こちらの方はそれほどサプライズもなかった。お祝い事の時は何でもありだが、さすがに葬儀となると、そうは行かないか。ヘンデルの曲くらいは聴きたかったかも知れない。
 しかし葬儀全体を通しても、もっとも印象深かったのは、"Queen's Piper" という、「女王のためのハイランド・バグパイプ奏者」の演奏だった。物の記事を読むと、女王のお目覚めのために窓の外で演奏する人が居たらしい。本当に日常的にそうしていたのかどうかはともかく、「スコットランド」のパイパーが、UK国王の棺が地下に降ろされようとするときに、別れの一曲を奏で、そして去って行ったのはかなり良かった。



 ところで、「70年ぶりの英国王の国葬」というが、果たしてそうなのだろうか。2015年にレスターでリチャード三世の葬儀が執り行われたではないか!現グロースター公爵(エリザベス女王の従弟)も出席したし、ベネディクト・カンバーバッチも来てくれた(そこか!)。リカーディアンの端くれとしては、一応強調しておかないと。
 厳密に言うと、これは funeral ではなく burial だったので、「埋葬式」とでも言うべきだろう。



 そんなこんなで、色々と動画を見ていたら、プラチナム・ジュビリーの時のオープニング映像,「女王陛下とくまのパディントンのお茶会」を改めて見て、気付いたことがある。
 女王とパディントン、そしてもう一人の登場人物である給仕。この給仕、サイモン・ファーナビーではないか!
 思えば、あの可愛くなくて、やや不気味 ――「そうじゃない感」満載 ―― でもUKカルチャー好きとしては、けっこう楽しめる映画「パディントン」の監督は、ポール・キングだ。「ザ・マイティ・ブーシュ」に、「バニー&ザ・ブル」の監督でもある。そうなると、この辺りのコメディ作品でお馴染みのファーナビーは自然なキャスティングだったわけだ。それこそ、リチャード三世の発掘ドキュメンタリーの案内役も、彼だった。
 ブーシュ・ファンとしては、ジュリアン・バラットだったらもっと面白かったな!

Listen To Her Heart (Live at the Fillmore, 1997)2022/09/25 20:13

 かねてから噂になっていた、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ 1997年フィルモアでのライブ音源が発売されることになった。早速4CDデラックスボックスを注文。たしか前回、[An American Tresure] を公式から注文したときは、仲間内で一番早く手元に届いたと思う。今回もそうだと嬉しい。
 アナログを購入する習慣が無いので何も考えずに4CDセットにしたが、限定版の6LPセットは、なかなかこっている。独特の外箱がついているのだが、これがちゃんとしたハードケースなら、グラミーのボックスセット賞も狙えるのではないだろうか。そもそも、最優秀ライブ・アルバム賞だって狙える。

 1997年のフィルモアは有名なブートレグがあるが、そちらにはない曲目もリストに載っていたりしてワクワクする。"Heartbreakers Beach Party" なんて楽しそうだし、ロジャー・マッグインとの共演はまだ聴いたことがない。そして、"Knockin' on the Heaven's Door" はまさにハイライトだろう。

 発売のアナウンスと共に、"Listen to Her Heart" のビデオが公開された。なかなか可愛くて凝った作りだ。逆に言うと、1997年フィルモアはあまり良い映像が残っていないのかも知れないという憶測も成り立つ。
 私はハウイとトムさんのツイン・ヴォーカルが好きなので、その映像があれば嬉しいと思う。特に "Listen to Her Heart" はブリッジ以外はずっとツイン・ヴォーカルなので、とても好きなのだ。



 未亡人のマイクが、このあいだまでスタンとツアーをしていたので、この二人がツイン・ヴォーカルで "Listen to Her Heart" を演奏している。マイクはトムさんそっくりになってきていながらも多少下手で、歌はスタンの方が上手いというところがなんとも微笑ましい。


Meeting The Beatles in India2022/09/29 20:21

 映画 [Meeting The Beatles in India] を見た。
 1968年、カナダ人の若者ポール・サルツマンは瞑想を学ぼうと、インド,リシケシュのアシュラム(僧院)を訪れる。偶然、同時期にザ・ビートルズの四人と彼らのパートナー、友人たちがアシュラムに滞在していた。
 友人として受け入れられたサルツマンが撮り溜めた写真を中心に、インドにおけるビートルズとの日々を振り返るドキュメンタリー。



 この映画、とてもつまらなかった。予想はしていたが、びっくりするほど面白くなかった。時間と交通費と映画代金が丸々もったいないほどだ。
 これからこの映画を見ようとしている人のために言っておくが、ビートルズの音楽は一音たりとも鳴らない。ビートルズの姿を視覚的に楽しめるという点では意味があるが、ビートルズの音楽を楽しみたいのであれば、全く見る価値がない。
 ビートルズがインド哲学を学んでリシケシュに滞在したこと、後に主に [White Album] に収録された多くの曲が作られたこと、彼らが気さくで良い奴だったこと。どれも周知の通りである。別に新鮮味も何もない。
 期待もしていなかったが、ここまで徹底的になーんにもないと、かえってビートルズの偉大さを思い知らされる。ビートルズともなると、ミュージシャンのくせに音楽を一音も聞かせなくても映画ができて、お金が取れるのだ。もの凄いことではないか。

 まぁ埋め合わせに、1974年ジョージの北米ツアーの [Dispute and Violence] でも貼り付けておこう。おそらく、格好良すぎて当時理解されなかっただろう。