Jeff Lynne's ELO / Live in Hyde Park2015/09/01 22:08

 去年の9月にロンドンのハイド・パークで開催されたBBCラジオのフェスでの、ジェフ・リンのパフォーマンスが収録されたDVDが届いた。ライブそのものに、インタビュー、そしてBBCで放映された、ジェフ・リンのドキュメンタリー作品 [Mr. Blue Sky] も収録されたお得なセット。
 まずは、本編のライブから観賞した。

 さすがに夏のフェスティバルとあって、数万人の観客の迫力が凄い。
 素敵だと思ったのは、観客が若者から、ELOの音楽で青春を過ごした世代まで、なかなか幅広く、みんな楽しんでいることだ。ELOのTシャツを着たり、アフロのウィッグを被っている人もいる。ELOのヒット曲の数々が、時代を超えたポップのスタンダードとして愛されているのだと実感する。
 そういえば、一昨年ロンドンに滞在したときも、テレビのCMで "Mr. Blue Sky" が使われているのを聴いた。

 冒頭の "All Over the World" の大合唱で幕を開けるのが格好良い。現場にいたら、きっと鳥肌が立っただろう。
 私はベスト版を含めて3枚程度しかELOを持っていないが、いずれも珠玉のヒット曲で飽きさせない。初めて聴いた曲の中では、"Steppin' Out" が素晴らしかった。レコーディングのできは不満だったそうだが、このライブ・バージョンは文句なし。

 このライブ、リチャード・タンディをはじめとするバンドの顔ぶれが良い。解説によるといずれも腕利きのミュージシャンとのことで、精密な作りのELOの曲を十分に再現してくれている。BBCコンサート・オーケストラもほぼフルで大活躍。
 セット・ドラムのほかに、一人パーカッションの人がいるのが良い。物足りなさがないように、しっかり楽曲のピースを完全なものにしている。

 "Handle with Care" はもちろん盛り上がりどころ。ただ、私の好みからすると、ロイ・オービソンのパートは、ジェフ・リン以外の人が歌った方が良かった。女性ヴォーカルの人が適任ではなかったか
 この曲は、まったく異なる個性のミュージシャンが、奇跡的なアンサンブルを交互に聴かせるところが重要なので、次回も機会があったら、ぜひともヴォーカルの交代をやって欲しい。

 アンコール前、最後は "Mr. Blue Sky" ここでまた、ぐっと盛り上がり、観客が大合唱するのが感動的。



 最後に、アンコールの "Roll Over Beethoven"。「運命」はご愛敬。キーが原曲と違うのでちょっとむずがゆい感じ。
 これだけ楽しくて、盛り上がるのだから、ジェフ・リンはもっとライブをやっても良いのではないかと思う。声も良く出ているし、何と言って演奏の出来が良い。このライブ以降、特に具体的な活動は報じられていないそうだが、ぜひともアレコレと活躍して欲しい。

Interview with Jeff Lynne2015/09/04 22:29

 [Jeff Lynne's ELO: Live in Hyde Park] のボーナス映像を観賞。BBCで放映されたドキュメンタリーを見ようと思ったのだが、その前にインタビューを見ると、それがなかなか充実した内容で面白かった。

 ジェフ・リン,そしてELOの音楽は、クラシック音楽とポップの融合を目指したものだと、当人が力説している。
 クラシック音楽の定義となるとなかなか難しい。たぶん、あまり難しく考えずに、バッハ,ヘンデル、古典派(ハイドン,モーツァルト,ベートーヴェンなど)以降から、せいぜい20世紀初期くらいの「ヨーロッパ伝統音楽」(これは音大の音楽史テキストの表現)といったところだろう。
 私は特にクラシックが好きだというわけではないが、全くの門外漢でもない。そこそこの事は知っているが…ELOがクラシック音楽とポップスを融合させたものと感じるかと言うと、残念ながらそうは思わない。
 ジェフ・リンのあの良いセンス,天賦の才能はまったくポップスのもので、その表現にクラシックのフル・オーケストラ的な大仕掛けなサウンドを用いているというのが、正直なところだ。私はピアノ独奏をする人なのだが、その全くクラシックな世界と、ジェフ・リンとの共通はあまりない。ましてや、クラシックの一ジャンル,派生とは、まったく認識できない。特上の、最高に手の込んだ、正真正銘のポップス。
 プロコル・ハルムの "A Whiter Shade of Pale" にしろ、ジョージのインド音楽要素の入ったポップスにしろ、クラシックやインドとの融合というよりは、それらをポップスの多様な表現方法へ上手く当てはめた成功例と風に思っている。
 いきなり長くなったが ―

いくつかのヒット曲に関して、制作の過程を話しているのが面白い。やはり "Handle with Care" は、ディラン邸での夕食時に、歌詞をみんなで出し合った経験がもっとも印象的なのだろう。
 "Strange Magic" と、"Mr. Blue Sky" で、サッカー・ファンぶりが覗える。その映像のバックに使われて嬉しかったというスター選手が、トレヴァー・フランシス。デビューから8年間、バーミンガム・シティで活躍したそうだ。
 "Mr. Blue Sky" はバーミンガム・シティの応援歌のように使われていると言うことで、YouTubeを見てみた。



 ほんとだ、歌ってる。あまり合唱しやすい曲だと思わないのだが…

 "Mr. Blue Sky" は正真正銘のお馴染みポップスのようで、アイルランドはコークでのフラッシュ・モブが面白かった。ありがちな、通行人が突然踊り出し、その数がどんどん増えるというパターン。
 この曲があちらでどんな存在なのかが、伝わってくる。

Faces Reunion2015/09/07 21:53

 9月5日に、UKはサリー州のチャリティ・イベントで、フェイセズの再結成ライブがあった。そのライブを見ることの出来た幸運なひとたちが羨ましい。

 きっかけは、自身もガン治療を経験したケニー・ジョーンズが、ガン患者の支援団体のために何かチャリティをやろうとしたことらしい。
 再集結したのは、ケニー・ジョーンズと、ロニー・ウッド、そして今回はなんといってもロッド・スチュワートが参加した、正真正銘の ― 残念ながらロニー・レーンと、イアン・マクレガーは居ないが ― フェイセズの登場となった。

 事前から、ロッドのFacebookにリハーサルの動画がアップされていて、楽しそうな雰囲気が伝わってきていた。

#FacesReunion Rehearsal

"Getting this one just right for tomorrow. #FacesReunion (Video by Penny Lancaster Stewart.)" (via @RodStewart on Twitter)

Posted by Rod Stewart on 2015年9月4日


 そして本番。こちらは、フェイセズといえばこの曲、"Stay with Me"。



 一時期、酷いロッドにびっくりしたが、今回はそうでもない。そしてロニーは相変わらずのゴキゲン・ロックおにいちゃん。ギター・ブレイクの謎のテンポ感が妙にはまる。
 冒頭で観客達もいっせいに "In the morning..."と歌い出すのが感動的。サビの合唱はなかなか合わないが、そこはドラムが刻んであげないと。
 さて、とりあえずは一回きりの再結成とのことだが、今後なにかやることになるのだろうか?ちょっと期待している。

10th September 2014 MSG NYC2015/09/10 21:29

 去年の今日 ― 2014年9月10日は、ニューヨークにいた。そして、マディソン・スクェア・ガーデンでのトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのライブ当日だった。
 全米ナンバー・ワンのアルバムを引っさげ、それまでに無い曲なども演奏する、でもいつもながら楽しいライブだった。

 久しぶりのアメリカでのコンサートで、巨大(しかも酔っ払い)アメリカ人との戦いは大変だった。その大変さがよく分かる私の動画。



 マイクとトムさんへの視界を遮る巨大で鬱陶しいあのおじさんめ、許さん。今思いだしても腹が立つ。

 アリーナ席で七転八倒するチビッコよりも、スタンド席で悠々と録画している方が見やすい。
 こちらは、そんなスタンドからの "Free Fallin'"。



 やはりアメリカでの大合唱ぶりは凄い。音痴な人も多いけど。そして曲を締めくくるときに、泳ぐトムさん。上からのアングルでもお腹の出具合がよく分かる。

 そしてまた、私の動画。どうしても最後のご挨拶が録りたかった!



 改めてみると、ハートブレイカーズはみんなニコニコしている。マイクがトムさんに笑いかけながら何か言っているのが印象的だった。
 やっぱりライブが見たい、ライブが見たい。できれば視界良好で見たい。ストーンズのライブもUKかアメリカで見たい。ハートブレイカーズはもう今年はなさそうだが、来年はどうなるだろうか。

I Call Your Name2015/09/13 22:12

 iPodをシャッフルして、たまたま聴いたのがビートルズの [Pastmasters 1]。何の気無しに聴いていたのだが、ふと "I Call Your Name" が気になった。
 まずは、ビートルズのオリジナルを確認。



 何て可愛いのだ!ジョージが!どうしてもジョージを見てしまう…!
 そうじゃない。初期から中期のビートルズの醍醐味は、なんといってもジョンの声の素晴らしさが満喫できることだ。
 私はこの曲にも、ビートルズでお馴染みポールとジョージのカラフルなコーラスがゴージャズについているに違いないと思い込んでいた。しかし、改めて聴いてみると、ジョンの声しかしない。声が重なって聞こえるところも、ジョンのダブルトラックなのだ。

 なぜ、ポールとジョージのコーラスがついていると思い込んでいたのか。
 間違いなく、これのせい!



 1990年に、ジョンが亡くなって10年目そして生誕50周年のトリビュートとして収録された、リンゴによる "I Call Your Name"。
 何と言っても、そのバンドの豪華ラインナップが凄い。ギターにジェフ・リンとジョー・ウォルシュ、ベースにトム・ペティ、そして世界一高いカウベル,ジム・ケルトナー!
1990年と言うことは、ウィルベリーズをはじめとした幸せな仲間が集まり、あれこれ楽しみ始めた頃。それからもう25年もたっているが、いまだにこの仲間達はしょっちゅうつるんでいる。

 「ビートルズ・コーラスの幻想」を作り出したのは、もちろんジェフ・リンだろう。リンゴの素朴な歌声に、ジェフ・リンの精緻で美しいコーラスが素晴らしくマッチしている。
 あまりにも良く出来ているので、オリジナルのビートルズにも、同様のコーラスがついているに違いないと勘違いさせたのだ。
 すごいな、ジェフ・リン。本家にはないコーラスをいかにも創作し、しかもそれが本家にもあると思い込ませる説得力!
 たとえるなら、シャーロック・ホームズが言いそうな、代表的な台詞として認識されている「初歩的なことだよ、ワトスン。」"It's elementary, my dear Watson." ― 実は原作にこの台詞は出てこない…みたいなもの。…だと思う。多分。

Think Before You Buy2015/09/16 22:46

 ビートルズに関する何かイシューがあるということでカウントダウンが始まっていたが、[The Beatles 1] に関することだろ言うと言うことは予想がついていた。
 そして発表になったのが、[The Beatles 1] のレストア版発売。11月6日。



 何を買えば良いのやら…悩む。
 実は、私は [The Beatles 1] を持っていない。赤盤も青盤も持っていない。必要ないから。ジョージファン的にもあまり嬉しくないし。
 しかし、今回は映像がレストアされて付いてくるのだという。トレイラーを見てもその鮮やかさが素晴らしいので、買わないわけがない。
 問題は、限定版の[The Beatles 1+」にするかどうか。一万円もする!それに余り大きな箱は要らないし…。「50本のプロモーションフィルム&ビデオを通じてキャリアを振り返るという」のだが、何か目新しいことはあるのだろうか。
 [Help!]の限定豪華ボックスは特典が酷くて後悔したし。最近では、ディランの [Basement Tapes]のデラックスボックスで酷い目にあった。冷静になって考える必要がある。そうこうしているうちに、予約で売り切れるということも…それはそれで、ハレ・クリシュナの思し召し。

 一方、ジョージの生涯が、コミック・ブックになるというニュース。

George Harrison's life now immortalized, comic book style

 何ページか、紹介されているのだが…こ、これは…!
 似てない!全然似ていない!誰がどれだか全く分からん!一体どこをどうしたら、あの可愛いビートルたちが、こういうコミックの絵柄になるのだろう?
 絵心皆無の私だが、日本の上手なイラストになれているだけに、これは衝撃的。

 どうしよう。買わなきゃいけないのだろうか。
 百歩譲って、識別不能のビートルズは許容することにする。でも、十代から亡くなるまでの本なのだから、当然ウィルベリーズも出てくるはず。発狂レベルのトムさんとか、ディランさまとか、耐えられるだろうか?
 読まなきゃ分からないだろうが、しかし!既に記事に出ていた、バンングラデシュのコマだけでも、ツッコミどころ満載ではないか。誰だ、あのハゲ。CFBのステージにモジャモジャはいても、ハゲは居ないぞ。ま、まさか、カール・レイドル程度の後退で、つるっぱげ認定されるのか?!そんな、あんまりだ!
 それに、誰だそのネクタイ。ジョージのスーツは白いし、髪はそんなにペタンとなっていない!愛されゆるふわヘアだぞ。

 怖い物見たさで…多分、買う。たぶん。

Ravel: Piano Concerto G dur2015/09/19 20:38

 事情があって、ラヴェルのピアノ協奏曲(G dur)を聴いている。有名な「左手のためのピアノ協奏曲」ではない。事情というのは、そのうち説明するだろう。

 モーリス・ラヴェル(1875-1937)はオーケストレーションの名手として知られ、このピアノ協奏曲でもその手腕を発揮している。また、ジャズのような新しい音楽ジャンルや、彼のルーツであるバスク地方の要素も取り入れている。
 ― と、いうのが大体の解説にかいてある内容。

 誰のCDを買えば良いのか良く分からなかったので、ガイド本が勧めていた、ミケランジェリを購入した。
 たぶん、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(1920-1995)を買ったのは初めてだ。私が彼について知っていることと言ったら、天才であることと、キャンセル魔だったことだけ。



 もっとも印象的なのは、第一楽章の自由に、軽やかに、鮮やかに舞い飛ぶような演奏だ。一方、第二楽章は音をまるく、柔らかに演奏する様子が美しい。
 エレーヌ・グリモーの演奏が動画で見られるのだが、こちらの第二楽章は、やや音にエッジがあって、きつい。おそらく、ボンヤリしたものではなく、凛とした雰囲気を表現したいのだろう。私はこれも好き。



 この動画の冒頭は、この曲が「鞭」の音から始まる面白さがよくわかる。
 打楽器の指定が「鞭」。英語ではまさに whip ということもあるし、「打つ棒」という意味の spalstick も用いられる。
 鞭と言っても、しなやかな物ではなく、2枚の板をぶつけるとことで、「パシーン!」と鳴らす楽器だ。

 このラヴェルのピアノ協奏曲、華やかでカラフルな第一楽章、穏やかでメランコリックな第二楽章ときて、さぁ最終第三楽章はとうかと言うと。
 期待通りのもの凄い速さで、次から次へと湧き出るような曲想に圧倒される。おお、これは凄い…と、おもったらあっけなく終わる。ミケランジェリの演奏なんて、4分たらずだ。
 長ければ良いというわけではないが、さすがに尻切れトンボのような印象がある。もうひと展開させて、最初に戻る ― 古典的ソナタ形式の手だが ― 方が、聴いた後の満足感があるのではないだろうか。
 グリモーの方は動画だったのでまだ満足感がある。コンサート会場で聴けば、もっと圧倒されて納得するのだろう。音だけだと、ちょっと不満が残るのが惜しい曲だ。

The Story of Jeff Lynne & ELO2015/09/22 22:18

 [Jeff Lynne's ELO: Live in Hyde Park] のボーナストラックとして収録されている、BBCのドキュメンタリー番組 [Mr. Blue Sky: The Story of Jeff Lynne &ELO] を見た。以前に YouTube で見たのだが、日本後字幕がついているので、改めて観賞。

 この作品、タイトルの割にあまり ELOが出てこない。もうちょっとたっぷりELO時代の映像が見られたら面白かったと思うのだが。
 かわりに、彼のプロデューサーとしての活躍は丁寧に紹介されている。
 やはり、ジョージ自身のコメントが無いのが寂しい。ジョージはまずはジェフと友達になるべく、F1に連れて行ったという。そういえば、トムさんもF1ではないがサーキットに連れて行かれていた。
 ビートルズのプロデューサーとして迎えられる下りはもたっぷり。彼の細心さがうまく作用したとのこと。ミュージシャンのメンツとしては申し分なく、一番の課題はジョンの音源の問題だったのだろう。トムさんがその大変さを思うコメントをしていたのが印象的。彼はビートルズ・アンソロジー・プロジェクトについて語っているのはめずらしくないだろうか。

 トム・ペティと言えば、やはり "Free Fallin'" がクローズアップされている。何度聞いても名曲。
 彼が知り合う遙か前 ― トムさんが、やっとソニーのカセットデッキを買うことが出来た頃の話が面白い。あまりカセットそのものが無いので、ELOを買って、愛聴していたという話だ。
 "Do Ya" にはとても影響を受けたと言っている。カセットの話と同じことなのか、それより以前のことなのか、良く分からないが、[Conversations with Tom Petty] にはこんな話が出てくる。

  ぼくはELOのファンでね。ジェフ・リンのことは、彼がザ・ムーブの時から認識していた。よくザ・ムーブを聞いたものだよ。イングランドからの輸入レコードを手に入れた。ベンモントが買っていたんだ。  だからぼくは実際、セカンド・アルバムの [You're Gonna Get It] を、ジェフ・リンにプロデュースして欲しかった。どうして駄目だったのかは知らないけど。あのころ、彼は忙しかっただろうし、外部のプロデュースもしていなかったんだろうな。  とにかく、ぼくは彼に来てもらって、一緒に録音がしたかった。彼と仕事ができるように、ずっと希望を持ち続けていたんだ。

 いま思えば、TP&HBのセカンドアルバムのプロデュースを、ジェフ・リンがしなくて本当に良かったと思う。セカンドアルバムは、あれで最高だし、その流れからの名作サード・アルバムだろう。
 そして1987年から1988年にかけて機が熟し、集まるべき人が集まって [Full Moon Fever] ができ、ウィルベリーズが結成されるのだから。
 ともあれ、TP&HB の "Change of Heart" は、"Do Ya" の影響だというので、並べて聴いてみる。シャツの前、開け過ぎね。





 キラキラと輝く若さ!マイクの格好良さときたら!ベンモントの頭髪の多さと言ったら!

 ジェフ・リンのドキュメンタリーは、80分ある。これがちょっと長すぎたかも知れない。ELO 時代のことにもっと時間を取っていれば80分でも良いのだが。ビートルズのプロデュースをした後をながく引っぱり過ぎた印象。これは、カバーアルバムが発売されるタイミングだったせいだろう。60分にした方が見やすかったと思う。
 ともあれ、ビートルの二人に、ジョージの代理人二人、トム・ペティにジョー・ウォルシュなんて豪華なメンバーが語ってくれるドキュメンタリーなんて、なかなかない。ジェフ・リンはその音楽的な才能とともに、人と出会う幸運にも恵まれた人だと、実感した。

名うてのウィルベリー兄弟2015/09/25 23:35

 このタイトルの記事は、初めてではないような気がする。「○○がやってくる ヤァ!ヤァ!ヤァ!」と同じで、誰でも思いつくタイトルだろう…。
 ともあれ、ウィルベリー兄弟はやる気満々だ。

 まずは、ジェフ・リン。正確には Jeff Lynne's ELO だそうだが、私にとっては「要するにジェフ・リン」。
 いよいよ、11月13日(日本では18日)に、15年ぶりの [Alone in the Universe] をリリースする。このタイトル、どこかの銀河がどうとか、ヒッチハイクがこうとかいう、小説シリーズにあったような気がするのだが…気のせいか…
 ともあれ、ボーナストラックが欲しいから、日本版で購入しよう。
 収録曲から、1曲公開されている。



 「さっそく名曲公開」などと言うのは、いまいちなコメントだと思う。確かに、感動的で壮大で、良い曲ではあるが。予想の範囲内に収まっていて、驚きというか、ハッとする瞬間とまでは行かない。
 このクォリティで当然のジェフ・リンと言うべきか。発売が楽しみだ。

 一方、ボブ・ディランはブートレグシリーズの第12弾。1965年から1966年,[Bringing It All Back Home], [Highway 61 Revisited], [Blonde on Blonde] 3作品のレコーディング・セッションから、アウトテイク,初期バージョンなどを集めた作品とのこと。
 なんだか、コンセプトが大雑把になってきているような気がするのだが…気のせいか…
 このニュースを報じる記事に、「ボブ・ディランの最重要時期の…」という表現があるが…そうなのか?!どうにも、この表現はそぐわないと思う。「活動時期全てが最重要!」などと言うほどおめでたくはないが、とにかくしっくり来ない。

 どうやら、6枚組が標準で、ハイライトを集めた2枚組もある。そして、公式サイトでのみ予約可能な(…そのうち、Amazonとかでも買えるようになる予感で一杯)、18枚組ウルトラ・デラックス・エディションが出る。
 ウルトラ・デラックス・エディション…??



 ああ…ええと…その…何と言いますか…これ、真面目な話ですか?(「馬鹿じゃない?!」と言わないだけマシだと思って下さい)
 18枚は無いな。あり得ない。聴かないでしょ。今回に関しては、6枚組も却下する。何度も言うようだが、私はもう [The Basement Tapes] で懲りた。
 正直なところ、アーチストやプロデューサーが、「録音物として、売る価値のあるもの」と認める以前の音楽を、大量に聴くという感覚が私にはない。クラシック人間なので、練習のような音をお金を払って聞きたいとは思わないのだ。人に聴かせる価値のない膨大なの練習,試行錯誤の末に、素晴らしい音楽が出来上がるのであって、私はそういう出来の良い音楽を聴くだけで手一杯だ。
 もちろん、ディラン様ともなれば、未発表音源でも大変価値のある、素晴らしい音楽があることだろう。私にとってのそれは、ハイライト2枚組で十分のような気がする。

 そもそも!ディランさまのためにも、私は節約しなければならないのだ!!

 ウィルベリー兄弟の末っ子が絶対に年末か来年にドカンと打ち出すに決まっているし。そうだ、末っ子トムさんは早く新譜やマッドクラッチ情報を出してくれないだろうか。
 名うてのウィルベリー兄弟を、トムさんの "Somewhere Under Heaven" で締める。これこそ、予想の範囲をヒラリと飛び越え、ハッとさせられた音楽。

Don't Do Me Like That2015/09/28 22:23

 何となくiPodを聴いていてトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの [Playback] になった。ハートブレイカーズの前身,マッドクラッチ・バージョンの "Don't Do Me Like That" を聴いて、思わずニヤニヤしてしまった。



 終盤の "Wait!" が、絞め殺されそうなヤギにしか聞こえなくて大好き。
 トムさんによると、この曲はピアノのある安いスタジオを借りて、1時間ほど過ごして作ったとのこと。つまり、ギターリフよりも、ピアノの連打の方が基礎になって出来た曲ということだろうか。
 [Damn the Torpedoes] のセッションで、エンジニアやプロデューサーのアドバイスで、マッドクラッチ時代の曲から復活させたとのこと。当人たちはマッドクラッチの曲をやろうとは思いもよらず、あまり乗り気ではなかったようだ。しかし、このアルバムからの最初のヒット曲になったというのだから、分からない。



 この曲を最初に聞いたときの印象は、「何を言っているのか全く分からない。」
 そもそも、英語だし、トムさんの発音なので、だいたいは何を言っているのか分からないのだが、この曲のAメロは特に分からない。
 歌詞を見て、そのリズムカルで絶妙な歌い回しに衝撃を受けた。だから、この曲で好きなのはサビではなく、圧倒的にAメロだ。ボブ・ディランとも違う、独特のリズム感が格好良い。
 そして、ベンモントのオルガンが外せない。たぶん、あれは彼のアイディアなのだろう。もしかしたらギターソロで被せる試みもあったかも知れないが、固く刻むピアノの上に、ボリュームたっぷりで、ビブラートの利いたオルガンの取り合わせが最高だ。

 ライブでも人気曲。ここは1985年の [Pack up the Plantation]で。そろそろ、この映像をデジタル化してほしい。



 この時期のハートブレイカーズにハウイが居て、とにかく彼のハーモニーが最高なのだが、この曲においては、スタンに限る。サビでのスタンの存在は、ハーモニーというよりは、打楽器。アクセントとインパクト。
 ニコニコしているマイクのソロを長く引き延ばすこと無く、スパっと終わってしまうところも格好良い。
 いかにもハートブレイカーズ的な,典型的な曲で、カバーはちょっと難しいかも知れない。