Etude2015/08/13 00:41

 ピアノの練習曲集の本を一冊、終わろうとしている。次はどの本をやるか、考えなければ無い時期が来たのだ。

 練習曲 Etude というのは、その名のとおり、「本番」ではなく、「練習」のための曲。クラシック音楽は、とんでもなく難しいテクニックの連続なので、こういう練習曲で日々鍛錬しないと、弾きこなせないのだ。
 一方、「練習曲」という名前や体裁でありながら、実際には「本番」で、人に聞かせるための作品も例外的にある。一番著名なのはショパンのエチュードで、「別れの曲」や、「革命」などが有名だ。今回話題にするのは、前者,純粋な意味での練習曲の方。

 練習曲が「集」になっているのは、各曲ごとに目的が違うから。数十曲の練習曲をこなしているうちに、様々なテクニックの曲を弾きこなせるようになる。だから、練習曲集は、基本的に番号どおりに弾き、飛ばすことはしないのが普通だと思う。

 ピアノの練習曲ときて、日本で一番有名なのは、「バイエル」だろう。
 しかし、私は「バイエル」をまともにやっていない。最初の先生は「バイエル」を課したような気がするが、先生が変わったときに教則本も変わったので、「バイエル」をちゃんとやり遂げた記憶も無いし、譜面も残っていない。同じく有名な、「ブルグミュラー」は、全く弾いていない。

 ともあれ、その後様々な小さな教則本,練習曲を経て、小学校の頃から、本格的な練習曲 - 有名な「チェルニー30番練習曲」,さらに「チェルニー40番練習曲」へと進んだ。そして「チェルニー50番練習曲」を始めたころに、音大に入学した。これは音大に行くピアノ弾きとしては酷く遅い。音大のピアノ科に行く人なら、50番はとっくにおわってなければいけない。私の場合はピアノ科ではなかったので、練習曲の習得もノロノロしたものだった。

 さて、音大になるとピアノが副科になる ― つまり専門科目ではなくなり、練習曲もほとんど割愛していた。当然、あっという間に腕が落ちる。大学卒業まではそれでも良かったが(良くない)、卒業後はさすがにこれ以上衰えるとまずいと思った。そこで、社会人になってから中学生時代に立ち返り、「チェルニー40番」を最初からさらい直した。
 チェルニー40番を終了(2回目)したとき、そのまま「チェルニー50番」に進むとばかり思っていたのだが、先生のお勧めは「クラーマー=ビューロー60番練習曲」だった。ドイツ人ピアニストであるクラーマーが作った練習曲集を、同じくドイツ人のビューロー(ピアニスト,指揮者,作曲者,文筆家)が改訂した曲集だ。今、終わろうとしているのが、この「クラーマー=ビューロー」。…長い道のりだった。
 次は「チェルニー50番」にするか、「モシュコフスキー」なるものもあるそうだが。ともあれ、先生と相談して決めることにする。

 「チェルニー」や「バイエル」に代表される練習曲集について、よく見たり、聞いたりする ― ある意味、決まり文句のようなコメントがある。

 曰く、「音楽性に乏しく、退屈な練習を強要される。故に豊かな音楽性が育たず、退屈のあまり、ピアノ嫌いになる。これらの練習曲が元凶だ。」―

 私が思うに、「反復練習曲が退屈でつまらない、だから嫌だ」という人は、クラシックに向いてない。
 どんな曲を弾くにしても ― 可愛らしいモーツァルトにしろ、憧れのショパンにしろ、ちゃんと弾こうと思ったら、結局は単純な反復練習をするしかないのだ。難しい曲なら、たったの2小節を何百回、何時間と繰り返し練習するなんてざらだ。
   もちろん、反復練習にもコツがあり、それは先生が指導してくれる。でも、先生にできるのは練習の仕方を教えるだけであって、退屈な反復練習は演奏者本人がやるしかない。

 こんな事を言うと、クラシックを敬遠されそうで困るのだが、ただこれだけは言える。クラシックは天才である作曲家たちが楽曲を作ってくれるので、凡人でも、反復練習を根気よく続けさえすれば、多くの曲は弾けるようになる。
 必要なのは努力であって、才能ではない。駄目ピアニストの見本である私ですら、ショパンの「バラード1番」を弾くようになるのだから、間違いない。
 もちろん、「必要なのは才能ではなく努力」というのは、一般的なクラシックのピアノ弾きに言えることで、本物のプロ ― 天才的なプロのピアニストとなれば、もちろん天賦の才能が必要だろう。

 「豊かな音楽性を阻害する」に至っては、イチャモンとしか思えない。たった一つの音ですら、音楽的に奏でるかそうでないかで、音色は違う。練習曲のほとんどは調性音楽なのだから、音楽的に豊かに演奏するか否かは、演奏者次第だ。

 私は、練習曲が好きだとまでは言わないが、ありがたい物だと思っている。懇切丁寧にテクニックがまんべんなく上達するように曲を揃えてくれているのだから、便利なことこの上ない。これからもお世話になり続けることだろう。

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