ケネソー山 / ピーチツリー・クリーク / アトランタ2012/10/27 21:13

 南北戦争の記事が停滞する理由を考えてみたら、どうやら私が個々の戦闘にとらわれ過ぎているのが原因らしい。
 南軍のリー将軍が活躍するような東部戦線は、そもそも狭い地域で戦闘を行い、かつリーが特に構成力のある作戦を立てるため、そういう個々の戦闘にこだわっても良いのだが、西部戦線はそうはいかない。
 もともと、「西部」の地域が非常に広く、さらに南北双方の司令官があまり構成力を持たずに、行き当たりばったりな小競り合い、もしくは大規模な戦闘を繰り返しては、戦局が停滞するということの繰り返しているのだ。

 ここで、視点をぐっと後ろにさげ、アトランタという南部でも最大規模の街を巡る戦闘を、おおざっぱに追うことにした。



 前回の記事は、1864年5月17日のレサカで終わっている。
 北軍司令官シャーマンは、塹壕という防御装置を強固にする、ジョンストン率いる南軍を攻めあぐねていた。これまでは、無駄に損害を出すよりはと、常に南軍の南西側に回り込んで、ジリジリとアトランタを目指すのが、シャーマンの手法だった。
 6月27日朝、シャーマンは珍しくケネソー山に陣取る南軍に対して、正面攻撃を仕掛けた(地図左上端)。しかし、この点の地形では、上を取った方が常に有利だ。ジョンストンはシャーマンを撃退することに成功した。一方、北軍は3000もの損害を生じた。

 シャーマンは再度南軍の南西側に回る込むべく、マリエッタ(地図ケネソーの右下)の南に陣地を構え、さらに北東のロズウェル(UFOで有名なニューメキシコとは全く別の街)にも同じく陣地を構えた。
 ここで妙なのは、ジョンソンが一気にアトランタからわずか10キロのチャタフーチー川まで退いて、陣地を構えたことである。後退イコール負けではないが、アトランタに近すぎる。少なくとも、南部連合デイヴィス大統領は、このジョンソンの後退が理解できなかった。
 やや私情に流されやすいデイヴィスの欠点は、この時も表面化した。もともと、デイヴィスとジョンソンはあまり相性が良くない。その上、ジョンソンの指揮下で不満を持っていたフッドが、ジョンソンを非難し、自分を推す手紙をデイヴィスに送っていたのだ。
 チャタフーチー川に布陣したジョンソンは司令官から解任され、フッドがその後釜となった。この手の人事異動を繰り返す軍に勝機はあまりないだろう。しかも、南軍の中でも、フッドの昇格を面白く思っていない将官もあり(ハーディなど)、南軍の人事はあまり良い効果をもたらさなかったようだ。
 なぜジョンソンはチャタフーチー川まで退いたか。彼は、川を利用して一気にシャーマンを撃退する気でいたようだ。これまでのように、行き当たりばったりに、回り込んできたシャーマンをいちいち押し返すだけでは、南軍の消耗が続くだけだ。ジョンソンは、一度アトランタ間際まで大きく引き、そこで北軍に大打撃を加え、退かせようとしていたようだ。

 フッドはジョンソンの考えを引き継いだ。即ち、チャタフーチー川の支流である、ピーチツリー・クリーク(地図赤丸付近)で、シャーマンの北軍を迎え撃ったのだ。時に7月20日。
 南軍はよく戦ったが、結局持ちこたえることは出来ず、シャーマン率いる北軍は南軍を後退させた。

 しかし、アトランタへの道が一気にひらけたわけではない。アトランタ北側の防御は非常に固く、シャーマンも正面切ってそこから攻撃する訳にはいかない。
 北軍のマクファーソンは、シャーマンの本隊とは離れて、アトランタの東ディケーター(地図右端)付近に陣取っていた。南軍のフッドは、防御側としては大胆なことに、このマクファーソンを攻撃する手にでた。
 ハーディの軍を南から大きく迂回させ、ストーンウォール・ジャクソンの如き、神出鬼没の働きを期待したが、7月22日の攻撃は、そう鮮やかには展開しなかった。狙い目は良かったが、北軍もかつての北軍とは違う。よく訓練され、よく戦い、決定的な破綻は免れていたのだ。
 時間は北軍に味方した。ハーディは期待したほど素早くは迂回できず、南軍が北軍への本格的な攻撃を開始したのは、午後になってからだった。北軍は、将官であるマクファーソンを戦闘中失ったが、シャーマンからの援軍を得て、南軍の攻勢を跳ね返したのだ。
 ちなみに、マクファーソン少将は北軍の中では戦闘中に死んだ将官の中でも最高位の人物だった。

 このアトランタ東側の戦いは、「アトランタの戦い」と呼ばれている。ハーディが攻め込めた最深部地点の名前を取って「ボールド・ヒルの戦い」という呼び方もあるようだが、ほとんど「アトランタ」で統一されている。
 「アトランタの戦い」というと、映画などでも有名なアトランタ陥落の戦いを連想していしまうが、それまではあと一ヶ月アトランタは持ちこたえることになる。

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