Pachelbel's Canon / Frolics / Hook2015/12/05 11:25

 ティン・ホイッスルで、 "Pachelbel's Frolics" という曲を吹いている。
 有名な「パッヘルベルのカノン」を、アイルランド風のリールにした曲で、アイリーン・アイヴァンというフィドル奏者の演奏が有名だ。彼女がリールに編曲したのかどうかは、知らない。"frolics" とは、「戯れ,陽気な集まり」という意味。

 良く出来ている編曲なので、沢山の人が演奏している。
 多くの場合、まずゆったりとしたパッヘルベルのオリジナル通りに演奏し、やがてテンポの早い "Pachelbel's Frolics" に続く。アイリーン・アイヴァンの演奏は良いのだが、途中でちょっとやり過ぎ感のある鬱陶しい展開になるので、ここではこちらの演奏。
 最初は普通に「パッヘルベルのカノン」、2分54秒から "Pachelbel's Frolics" になる。フルートが中心の演奏。



 そもそも、オリジナルの「パッヘルベルのカノン」は有名だが、その正体を詳しくは知らない。
 確認してみると、正式には「3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ 」(D-dur)という。ジーグ Gigue というのは英語の Jig と同じで、八分の六拍子の早いテンポの舞曲だ。カノンと組になっているこのジーグを聴いてみたのだが、まったくピンと来ない、要するに面白くない音楽だった。
 前半の5分間が有名な「パッヘルベルのカノン」、後半の2分ほどが「ジーグ」。



 パッヘルベル(1653-1706)はバロック期に南部ドイツで活躍した音楽家で、多くの作品を残しているが、一般的に知られているのはこの「パッヘルベルのカノン」のみ。私もこの曲しか知らない。
 バロック音楽というのは、クラシックというジャンルよりもさらに古い「古楽」に分類されており、演奏機会も少ない。バロック末期のバッハが、やや特殊な存在なのだ。そんな中でも、1曲だけでも良く知られているパッヘルベルは幸運な人と言えるだろう。

 「パッヘルベルのカノン」はシンプルな和声進行を、非常に建築的な手法で積み重ねた、ある意味堅実な作品で、そこに絶妙な高音メロディを被せた事で、パッヘルベルの勝利は決まった。
 この曲をお手本として、同じ和声進行構成の曲は多く作曲されているし、この曲自体も、多くの編曲を生み出している。

 アメリカのロックバンド,ブルース・トラベラーの名曲 "Hook" に関して、Wikipedia は "The chord progression of Hook is very similar to the basic structure of Pachelbel's Canon in D." と記述しているが、「よく似ている」どころか、私は「パッヘルベルのカノン」のロック風編曲だと思っている。しかも、恐ろしく良く出来た編曲だ。



 絶対に間違いないと思って、クレジットを見たのだが、パッヘルベルに関する言及はない。しかし、まったく「パッヘルベルのカノン」その物で、特にハーモニカのソロや、三番など、「パッヘルベルのカノン」の最後の高音メロディを上手くロック風に編曲した名作だ。
 三番の早口な歌詞は、意味よりも、カノンのメロディをロック風に再現することに重点が置かれているのだろう。ちなみに、三番の冒頭に出てくる「リンティンティン Rin Tin Tin」というのは、映画界で活躍した有名な犬の名前。「アン・ブーリン Anne Boleyn」というのは、ヘンリー八世の二番目の妻で、エリザベス一世の生母のこと。

 季節柄、「パッヘルベルのカノン」の様々なバージョンを耳にすることになりそうだ。

三つの動画2015/12/12 15:33

 ピアノの発表会が近い。
 ショパンの「バラード1番」を弾くことになっているが、私の常として、駄目な演奏しかできないでいる。どうせ誰に聴かせるわけでもなく、ピアノが弾ける人間でいたいからという理由だけで弾いているのだから、別に上手くなくても構わないのだが、そこは性分なのか、気楽には考えられず、常に強迫観念を持っている。
 なんだか馬鹿馬鹿しいような気もするので、ロックの動画など漫然と眺めることにする。

 まずは、ジョージの公式Twitterで紹介していた、1993年ビルボード・ミュージック・アワードの、センチュリー・アワード授賞式。1本で何度も美味しい!



 ジョージとトムさんという、最高の取り合わせ。この時の二人の写真は、私にとってとても思い出深い物だ。(2009年3月4日の記事
 ビートルズ的にも美味しい、ジョージのソロも素敵で、モンティ・パイソンも見られるし、ついでにフィル・コリンズとデイヴィッド・クロスビーのおまけつき。何とも贅沢な映像。

 こちらは、ジェフ・リンの新譜のPV, "When I Was A Boy " の舞台裏を紹介する映像。



 まて、まて、まて、まて、ちょっと待て!これはツッコミ待ちだな?!でも、どこからつっこめば良いのだ?!



 いや、あえてつっこまないという選択もアリか。ウィルべーズ?関係ありませんよ?(「トラベリング・ウィルベリーズ」ってちゃんと言ってる)


 最後に、去年行われたジョージのトリビュート・ライブがCDとDVD, ブルーレイ,LPになるという話題。トレイラーが公開されている。

ジョージ・ハリスン・トリビュート・ライヴ、ジョージの誕生日に合わせCD&映像化決定



 このライブが、DVDになるような撮影対象になっているとは知らなかった。しかし、改めてよく見ると、出演メンバーがやたらと豪華だ。
 発売は来年のジョージの誕生日。なぜ1年以上経ったこのタイミングなのかは、良く分からないが、たぶんダーニがそれなりに入れ込んで、色々盛っているうちに時間が経ってしまったのだろう。
 ライブそのもの以外にも特典映像などもあるとのこと。名作 [Concert for George]に継ぐ、ジョージを愛する人々の幸せな瞬間となるだろうか。とても楽しみだ。

Ludwig van Beethoven2015/12/17 22:04

 今日はベートーヴェンの誕生日だ。
 日本ではルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェンと呼ばれるボン出身のこの音楽家は、1770年12月17日に生まれたことになっている。はっきりとした日付の記録があるのか、洗礼記録か何かから推測しているのか、その辺りはよく覚えていない。

 ベートーヴェンは、ビートルズと似ていると思う。
 双方ともに、べらぼうな天才だったこと、その音楽は世界に、後世に、凄まじい影響を与えたこと、そして当人がそれを強く自覚していたこと。自信にあふれ、こわいもの無しで、説得力の塊だった。

 そして、ベートーヴェンも、ビートルズは「親しみやすさ」がひどく似ている。ボブ・ディランはビートルズを評して「ほかにはない親近感と仲間意識を感じさせるグループだった」と表現している。
 ビートルズと言えば、多くの人がマッシュルーム・カットの可愛い四人組の男の子をイメージするのと同じように、ベートーヴェンと言えば、多くの人がボサボサ頭の仏頂面を思い浮かべるだろう。ビジュアルからして、すでに良く知られている。
 しかも、エピソードも多い。マスコミが血眼になってビートルズを追ったために、私たちは膨大な映像や画像、音声でビートルズを知っている。ベートーヴェンは耳が悪かったこともあり、会話帳が残され、手紙も沢山残っている。変わり者だが友人も多かったので、エピソードには事欠かない。ベートーヴェンは、ほかのどのクラシックの音楽家達よりも、イメージしやすい存在 ― 要するにキャラが立っているのだ。

 音楽的にも、「親しみやすさ」で両者は共通している。ビートルズがポップでキャッチーな音楽を多く送り出したように、ベートーヴェンの音楽も、印象に残りやすい、口ずさみやすい、曲ごとの特徴が鮮やかで、分かりやすい。要するに、「ポップでキャッチー」なのだ。「運命」の主題など、ビートルズより有名だろう。
 先達の音楽を上手く消化吸収し、それらを壊すことなく、鮮烈に独自の表現にして華々しく送り出していく。決して難しいものでも、前衛的なものでもない。ひどく新しいようで、でも実はよく知っている、「親しみやすい」響きなのだ。
 表現の上手さは、ずるいほどだ。音大時代、和声を教えてくれた作曲家の先生が、「運命」の第一楽章に関して、笑いながら「同じ和音を12回も鳴らすだけなんて、ずるくないか?」と言っていたことを思い出す。ずるいかもしれないが、それをやってのけた人は結局、ベートーヴェンなのだ。

 ベートーヴェンは、彼自身が卓越したピアニストだったため、ピアノの作品を多く残している。私程度のピアニストでも、子供の頃から散々世話になっているし、これからもそうだろう。
 ベートーヴェンでお勧めの曲を一曲だけ挙げろと言われると難しいようで、私にとってはそうでもない。ピアノを堪能できて、オーケストラの壮大さも味わえる、ピアノ協奏曲が良い。しかも、思い切りポップでキャッチーな。
 そのようなわけで、ピアノ協奏曲第五番「皇帝」。クリスティアン・ツィメルマンと、レナード・バーンスタイン、ウィーン・フィルハーモニー。さすがにツィメルマンも若々しく、溌剌としている。例によって、終わった時のマエストロのハグが熱い。

Christmas All Over Again / Jingle Bells2015/12/20 19:56

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのファンとしては、クリスマスと来て必ずイメージする曲、それが "Christmas All Over Again"。
 季節物の曲なのでライブ演奏の機会は殆ど無いが、幸運なことに2000年のチャリティ・イベントでの演奏動画が残っている。



 ハウイの声がまだ健在な頃と言えるだろうか。やっぱり彼の声は素晴らしいと思う。ホーンセクションも付いているし、ベンモントのピアノも豪華バージョン。
 何と言っても、トムさんとマイクがそろいもそろって短髪。どうしてそんなシンクロをしてしまったのやら。でも可愛いから許す。
 トムさんは顎の辺りに、翌年の体重ビッグバンを予感させる。でも可愛いから許す。

 テンポが速く、ゴキゲンで華やかで、ウキウキとした気持ちにさせる名曲。そんな曲調に、トムさんとマイクのリッケンバッカーがさらなる輝きを加えてくれる。
 有名なエピソードだが、この曲はジョージがプレゼントしてくれたウクレレで書いたとのこと。[Playback]に載っているトムさんのコメントによると、「ジョージ・ハリスンがやって来て、僕にウクレレをくれて、その日の午後ずっと付きっきりでコードを教えてくれたんだ。」
 いつ、どこでとも言っていない、なんだかちょっとお伽噺めいていて、突然ジョージが降って来るようなエピソードで好きだ。ジョージは時々、友人のところにひょっこり現れたという。エリック・アイドルが南の島のビーチでくつろいでいたら、突如ジョージが現れて、エリックが「どうしてここに?!」と言うと、「誰だってどこかにはいるもんだろう」と答えたという。私はそういうジョージが好きだし、彼の友人達もそうだっただろう。

 "Christmas All Over Again" のスタジオ録音版も、ライブ版も、最後は「ジングル・ベル」のメロディで締めくくる。
 「ジングル・ベル」というのは、有名なクリスマス・チューンだが、オリジナルはクリスマスとは関係ないそうだ。原題は "One Horse Open Sleigh" といって、馬にひかせるソリの歌。特にクリスマスを想定したわけではないらしい。実際、英語の歌詞にもクリスマス関連の言葉は出てこないそうだ。
 しかし、冬と、雪、人が集い、楽しく過ごす様子、曲調がクリスマスとちょうどぴったり合ったのだろう。いまやすっかり "Jingele Bells" というタイトルで、クリスマス・ソングとなった。
 日本語の訳詞の中には、「今日は楽しいクリスマス」という歌詞のあるバージョンも存在し、私もこれで覚えている。

 小学生の時、ハンドベルをやっていて、この曲もやったような気がするなぁなどと思っていたら、こんな物が引っかかった。
 エレガンス&インテリジェンスを宗とする当ブログ(←うそ)にはどうかと思ったが、余りの馬鹿馬鹿しさに、笑ってしまった私の負けだ…!

Tom, Mike, Benmont, Ron and Scott + Jeff2015/12/26 21:51

 今年のMerry Minstrel Circus のゲストは?!…と、思ったらなんとトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ!という驚きのニュースが世界を駆け巡ったのが、12月22日。素敵なクリスマス・プレゼントになった。しかも、ウィルベリー兄弟,ジェフ・リンのゲスト出演もあったというのだから、超豪華!
 TP&HB公式サイトのニュース記事には、"Tom, Mike, Benmont, Ron and Scott Surprised The Troubadour on Saturday in LA" とある。スティーヴ・フェローニがいないので、ハートブレイカーズ!!!とは、言い切れないのだろうか。ちょっとした厳密さが微笑ましい。
 セットリストは以下の通り。

Cabin Down Below
Little Red Rooster
I’m A Man
13 Days
Dogs On The Run
Runaway (w/Jeff Lynne)
Poor House (w/Jeff Lynne)
Roll Over Beethoven (w/Jeff Lynne)
Mary Jane’s Last Dance
Runnin’ Down A Dream

 やはり見所はジェフ・リンとの共演だろう。特にウィルベリーズ・ナンバーである "Poor House" が良い。



 全体的にリハーサル不足な感じ。特にマイクのソロが入り損ねてると思う。トムさんが飛び出して歌っているようだけど、尺としてはトムさんが合っている。ところでトムさん、ストールで口元拭くのやめて。
 ロンはひげをはやすことにしたのかな?

 順番は前後するが、ジェフ・リンが登場して、"Runaway"。マイクが「わーい!わーい!」可愛い。そしてなんと豪華な、ベンモントによるソロ!



 TP&HBの今年は、特にツアーもなく、期待された [Wildflowers] の「続編」も結局出なかった。でも、実は期待して待っている間というのも楽しいわけで。元気な姿でパフォーマンスを披露し、相変わらず素晴らしきウィルベリーズ兄弟の存在を見せつけ、来年への期待を高めてくれた。今年も、お疲れ様。

The Top 10 Most-Streamed Beatles Songs2015/12/30 19:58

 12月24日からビートルズの「定額制音楽配信サービス」なるものが開始されたというニュースは知っていたが、私にはあまり関係がないので、気に留めていなかった。
 このサービスの公式動画もある。



 そのサービスの二日間で、もっともストリーミングされた曲を、Spotify が発表し、ニュース記事にになっていた。

ザ・ビートルズ、2日間で最もストリーミングされた曲トップ10

 世界で、アメリカで、そして英国(UKと言う意味か、Englandと言う意味かは不明)でのランキングや、その微妙な違いが面白い。

●世界
1.Come Together
2.Let It Be
3.Hey Jude
4.Love Me Do
5.Yesterday
6.Here Comes The Sun
7.Help!
8.All You Need Is Love
9.I Want To Hold Your Hand
10.Twist And Shout

●アメリカ
1.Come Together
2.Hey Jude
3.Here Comes The Sun
4.Let It Be
5.Twist And Shout
6.Blackbird
7.I Want To Hold Your Hand
8.In My Life
9.She Loves You
10.Help!

●英国
1.Come Together
2.Hey Jude
3.Here Comes the Sun
4.Twist and Shout
5.Let It Be
6.I Want To Hold Your Hand
7.Help!
8.Love Me Do
9.I Feel Fine
10.She Loves You

 トップは "Hey Jude" だと思い込んでいたので、"Come Together" というのは意外だった。無論、"Come Together" も大好き名曲だが、これがビートルズの人気曲かというと、ちょっとピンときていなかったのだ。あまりポップでキャッチーな曲でもなく、果てしなくクールな格好良さを追求した曲だと思う。
 世界では5位にランクインする "Yesterday" が、アメリカと英国ではランキング外になるのが面白い。日本もそうだと思うが、まず「文章による紹介」でビートルズを語るときに、よく出てくるのが "Yesterday" で、その影響ではないだろうか。
 私も最初に知ったビートルズの曲のタイトルは "Yesterday" だった。今や、あまり好きではない曲であり、飛ばしたりもする曲だが。

 アメリカと英国のトップ3が同じというのも興味深い。"Come Together", "Hey Jude", "Here Comes the Sun" ― いずれもバンド後期の曲であり、ジョン,ポール,ジョージの曲がそれぞれ揃っているというのも面白い。極端な言い方をすれば、ビートルズらしさの最終形がこの3曲に集約されているということだろうか。ジョージファンとしても、満足の行くランキングで、ちょっと嬉しい。
 初期ビートルズも大好きな私としては、"Twist and Shout" が上位に ― 特にアメリカと英国でランキングが高いというのも嬉しい。

 記事によると、この定額配信の利用者の多くが若者であり、ビートルズの裾野がさらに広まっているとのこと。定額配信に親しむ年代が、若い年代だということで驚くことではないが。
 ともあれこれをきっかけに、先日発売された [The Beatles 1] のDVDなどが売れることになるのだろうか。