The Sapphires2013/12/30 20:28

 まず、今朝とびこんできたショッキングなニュース。ミハエル・シューマッハがスキー中の事故で重体だと言う。
 シューマッハは、私がF1を観戦している間ほとんど全てのシーズンに活躍しており、彼が不在だったのは一度目の引退後から復帰までと、引退後の今年だけだ。
 ジョーダンでデビューしたときから、「天才くん」と呼ばれていたが、まだマンセルと一緒に楽しくサッカーをする無邪気な若者だった。セナが亡くなり、思ったよりも早くF1界を牽引することになり、ベネトンでチャンピオンになった。デイモン・ヒルとチャンピオンを争っていた頃はヒル・ファンの私の目の敵にされたが、フェラーリに移籍して皇帝と呼ばれた頃は、けっこう好きだった。
 最初の引退もつかの間、メルセデスで復帰したときは嬉しかった。優勝こそしなかったが、それなりに存在感を示してくれた。
 彼が困難を克復し、復活してくれることを祈っている。1999年、シルバーストーンでのクラッシュで、骨折の大けがをしたとき。目隠しシートの向こうから手を上げて「大丈夫だよ」と知らせてくれたシューマッハ。その再現を信じている。

 運良く、映画「ソウルガールズ The Sapphires」を試写会で見た。

 1960年代末、歌が好きなアボリジニの三姉妹ゲイル,シンシア,ジュリーは人種を理由にコンテストでも相手にされにされずにいた。彼女たちの歌声に目をつけた飲んだくれの自称ミュージシャン,デイヴは彼女たちに大人しいカントリーではなく、情熱的なソウル・ミュージックを勧め、デビューを目指す。
 従妹のケイを加え、ザ・サファイアーズと名乗った四人は、ベトナム戦争の慰問ミュージシャンのオーディションに挑戦し、彼女たちはスターへの道を歩み始める…



 音楽好きにはだんぜんおススメな映画。特にソウル・ミュージック、モータウン、そしてブルース・ブラザーズのファンは必見だ。"Soul sister, Brown suger", "Land of 1000 Dances","I Can't help myself","Soul man" など、ソウルの名曲の目白押し。
 それだけでなく、映画のオープニングはいきなりCCRの "Run Through the Jungle" だし、デイヴに「クソ」呼ばわりされるカントリーも、マール・ハガードの渋い選曲で素晴らしかった。
 人種差別という重く、悲しい困難と、ベトナム戦争という厳しい現実、それでも力一杯歌う女の子達の姿がキラキラとまぶしく、たかが音楽、されど音楽。ただのお伽噺としての成功物語ではなく、実在したザ・サファイアーズをモデルにしたからこそ得られる説得力も良かった。

 コメディの要素もあって楽しかった。何と言っても自称ミュージシャンで、敏腕マネージャーであるはずのデイヴ役、クリス・オダウドが良い。
 クリス・オダウドと言えば、ブリティッシュ・コメディ・ファンにはお馴染み "The IT Crowd"(邦題「ハイッ!こちらIT課」)のロイ。ひょろんと背が高く、脚がきれいで、飲んだくれで、頼りないダメ男。音楽モノでは定番の強欲マネージャーとは違い ― もちろんお金は大好きだが ― 決して悪党にはなれず、憎めないデイヴを好演していた。エンディング・クレジットでも最初に名前が出ていたし、主演は彼だったのではないだろうか。
 コメディ・ファンの私としては、彼を満喫できただけでもけっこう満足。

 最近モータウンを聴き始めた身にはぴったりの映画だった。サンドトラック購入も検討している。日本での公開は2014年1月11日から。