Royal Albert Hall (追記あり) ― 2012/07/03 22:41
** 追記告知 **
Cool Dry Place に、今回のロンドン・ツアーのレポートをアップしました。左のメニュー[ 2012 London] から。お楽しみ下さい。
項目の並び方に、私のテンションが表れていますな…
ロイヤル・アルバート・ホールの見学ツアーの中で面白かったことのなかに、音楽だけではない様々なイベントの紹介があった。
ダンスやサーカスの公演はまだ普通な方で、TP&HBの1回目公演の翌日にはダライ・ラマの公演が控えていたし(そのため、TP&HBの設備はいったん、全て綺麗に撤去し、2回目公演のために改めて組み立て直すとのこと)。日本の大相撲公演もこのホールだった。
特に凄いと思ったのは、アリーナにテニス・コートを出現させたもの。これが意外と最近の話で、マスターズシリーズのために実現させたらしい。
映像は、英国の第二次テニス・アイドル,ティム・ヘンマン(元祖は、フレッド・ペリー。今はアンディ・マレー)と、彼が現役の時のライバルでもあった、ゴラン・イワニセビッチ。
やっぱりヘンマンはヘンマンのままだ…。彼がウィンブルドンの準決勝で奮闘していたのを、夜更かししてよく応援していたものだ。
そういえば、ロンドンに着いた初日、何度もニュースで流れた映像。ダヴィド・ナルバンディアンが、ウィンブルドンの前哨戦であるエイゴン選手権で失格になったシーン。
「あーあ…」という感想しか出てこない。これが決勝だったというのだから、チケットを買ったお客様達はお気の毒。
さて、ロイヤル・アルバート・ホールである以上、もちろんクラシックも盛んに催される。秋のBBCプロムスは何度もこのブログに登場するのでここでは割愛。代わりに、ロイヤル・コーラル・ソサイアティ(王立合唱団)の最新公演のCM。
この合唱団は、今年、創立140周年を迎えた記念とかで、ヴェルディの「レクイエム」を演奏したそうだ。そもそも、この曲のロンドン初公演は、1875年ロイヤル・アルバート・ホールで、コーラスは1200人いたといのだから、凄い。
最後に、2009年 "Not the Messiah (He's a Very Naughty Boy)" のラストシーン。
これは、モンティ・パイソンのエリック・アイドルが、パイソン映画「ライフ・オブ・ブライアン」を中心に、音楽作品を集め、「オラトリオ」に仕立て上げた物。
うわ、どうしよう、これ感動する!最後にバグパイプ隊まで出てきた!さすが "Always look on the bright side of life"。CFGの時にも見られたが、この天井から降ってくる紙吹雪は、天井の「マッシュルーム」状の照明の上から降らせるのだと、質問をした私にRAHの案内係さんが教えてくれた。
この映像、本当に面白そう。欲しくなった。日本版はあるのだろうか…?
Cool Dry Place に、今回のロンドン・ツアーのレポートをアップしました。左のメニュー[ 2012 London] から。お楽しみ下さい。
項目の並び方に、私のテンションが表れていますな…
ロイヤル・アルバート・ホールの見学ツアーの中で面白かったことのなかに、音楽だけではない様々なイベントの紹介があった。
ダンスやサーカスの公演はまだ普通な方で、TP&HBの1回目公演の翌日にはダライ・ラマの公演が控えていたし(そのため、TP&HBの設備はいったん、全て綺麗に撤去し、2回目公演のために改めて組み立て直すとのこと)。日本の大相撲公演もこのホールだった。
特に凄いと思ったのは、アリーナにテニス・コートを出現させたもの。これが意外と最近の話で、マスターズシリーズのために実現させたらしい。
映像は、英国の第二次テニス・アイドル,ティム・ヘンマン(元祖は、フレッド・ペリー。今はアンディ・マレー)と、彼が現役の時のライバルでもあった、ゴラン・イワニセビッチ。
やっぱりヘンマンはヘンマンのままだ…。彼がウィンブルドンの準決勝で奮闘していたのを、夜更かししてよく応援していたものだ。
そういえば、ロンドンに着いた初日、何度もニュースで流れた映像。ダヴィド・ナルバンディアンが、ウィンブルドンの前哨戦であるエイゴン選手権で失格になったシーン。
「あーあ…」という感想しか出てこない。これが決勝だったというのだから、チケットを買ったお客様達はお気の毒。
さて、ロイヤル・アルバート・ホールである以上、もちろんクラシックも盛んに催される。秋のBBCプロムスは何度もこのブログに登場するのでここでは割愛。代わりに、ロイヤル・コーラル・ソサイアティ(王立合唱団)の最新公演のCM。
この合唱団は、今年、創立140周年を迎えた記念とかで、ヴェルディの「レクイエム」を演奏したそうだ。そもそも、この曲のロンドン初公演は、1875年ロイヤル・アルバート・ホールで、コーラスは1200人いたといのだから、凄い。
最後に、2009年 "Not the Messiah (He's a Very Naughty Boy)" のラストシーン。
これは、モンティ・パイソンのエリック・アイドルが、パイソン映画「ライフ・オブ・ブライアン」を中心に、音楽作品を集め、「オラトリオ」に仕立て上げた物。
うわ、どうしよう、これ感動する!最後にバグパイプ隊まで出てきた!さすが "Always look on the bright side of life"。CFGの時にも見られたが、この天井から降ってくる紙吹雪は、天井の「マッシュルーム」状の照明の上から降らせるのだと、質問をした私にRAHの案内係さんが教えてくれた。
この映像、本当に面白そう。欲しくなった。日本版はあるのだろうか…?
MCG: Rickenbacker & George ― 2012/07/06 22:15
トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズは長かったヨーロッパツアーを終え、休暇に入ったようだ。夏いっぱいは休むのだろうか。北米の主要都市ツアーをやるのか、それともニューアルバムのレコーディングに入るのか。…ロンドンですっかり満足した私としては、後者が良いのだが、反対者も多いだろう。
ツアーの間はお休みしていた、「マイク・キャンベルのギター大好き!」こと、[Mike Campbell:The Guitars] の配信が再開した。前回のChapter 6 がリッケンバッカーの紹介で、今回のChapter 7は、その続き。
「マイク・キャンベルのギター大好き!」…というよりは、「マイク・キャンベルのジョージ大好き!」…だった…。うわぁ…。ジョージ大好きだとは知っていたし。愛してるんだろうけど。そりゃ、このシリーズで一回や二回はジョージ語りをするのだとは思っていたが…ここまでかぁ…うわぁ…

まず、動画収録をしている部屋の、マイクから見える位置に、大きなジョージのポスターが貼ってあることが判明!うー…わぁ…これ、普通のファンじゃないですか、マイク先生!
[A hard day's night] のリッケンバッカー12弦を抱えた、若くて可愛いジョージ。いわゆる「クラブハウス」にも色々なミュージシャンの写真が飾ってあって、その中にジョージの写真があることも知っているが、このマイクのプライベート・スペースのジョージときたら!もう、いいです。マイク先生、ジョージ愛に弾けて下さい。私は見た、ロンドンで聴いた、マイクのジョージへ捧げる音楽を!限りない愛情を捧げるあなたを見た!
本題に戻ると、リッケンバッカーのファクトリーを訪ねた時のことも交えながら、今回はジョン・レノン・タイプのリッケンバッカーや、珍しい赤いネックのベース、ものすごく古い(20~30年代?)スチール・ギター(ボコボコ叩く)、もちろんジョージの大きな12弦を語る。
本来ならこの動画は、Highway Companion Club(ファン・クラブ)の会員向けなのだが、どういうわけだが時々普通にネット上で観賞できたりする。今回も同様だ。
この動画のアップされているページでは、前回のChapter 6もどうやら見られるらしい。
「語りすぎだね、一息入れないと…」
などど言いつつ、「おっと、これを忘れてた…」と、最後に例の([Damn the Torpedoes]のジャケットになっている)620/12をおもむろに抱える。絶対に忘れていない。若い頃にまったくの偶然から手に入れたこのギター、実はジョージが持っている物のすぐ後に作られた「非常に近い」ギターだということ。
マイクはこのことが嬉しくてたまらないらしく、何度もこの話をする。その気持ちは良く分かる。音も、ルックスも、来歴も、ジョージも含めて。このギターが大好きなマイク。とても幸せそうで、素敵だ。
さて、リッケン馬鹿による、リッケンバッカー語りはこれまで。次回は、グレッチ。
グレッチ…?おおおぅ…またジョージ語りが飛び出しそうだ。グレッチを抱えているジョージの別のポスターが出てきたらどうしよう?これはもう、ジョージ愛を私と語り合うしかないんじゃない?
ツアーの間はお休みしていた、「マイク・キャンベルのギター大好き!」こと、[Mike Campbell:The Guitars] の配信が再開した。前回のChapter 6 がリッケンバッカーの紹介で、今回のChapter 7は、その続き。
「マイク・キャンベルのギター大好き!」…というよりは、「マイク・キャンベルのジョージ大好き!」…だった…。うわぁ…。ジョージ大好きだとは知っていたし。愛してるんだろうけど。そりゃ、このシリーズで一回や二回はジョージ語りをするのだとは思っていたが…ここまでかぁ…うわぁ…

まず、動画収録をしている部屋の、マイクから見える位置に、大きなジョージのポスターが貼ってあることが判明!うー…わぁ…これ、普通のファンじゃないですか、マイク先生!
[A hard day's night] のリッケンバッカー12弦を抱えた、若くて可愛いジョージ。いわゆる「クラブハウス」にも色々なミュージシャンの写真が飾ってあって、その中にジョージの写真があることも知っているが、このマイクのプライベート・スペースのジョージときたら!もう、いいです。マイク先生、ジョージ愛に弾けて下さい。私は見た、ロンドンで聴いた、マイクのジョージへ捧げる音楽を!限りない愛情を捧げるあなたを見た!
本題に戻ると、リッケンバッカーのファクトリーを訪ねた時のことも交えながら、今回はジョン・レノン・タイプのリッケンバッカーや、珍しい赤いネックのベース、ものすごく古い(20~30年代?)スチール・ギター(ボコボコ叩く)、もちろんジョージの大きな12弦を語る。
本来ならこの動画は、Highway Companion Club(ファン・クラブ)の会員向けなのだが、どういうわけだが時々普通にネット上で観賞できたりする。今回も同様だ。
この動画のアップされているページでは、前回のChapter 6もどうやら見られるらしい。
「語りすぎだね、一息入れないと…」
などど言いつつ、「おっと、これを忘れてた…」と、最後に例の([Damn the Torpedoes]のジャケットになっている)620/12をおもむろに抱える。絶対に忘れていない。若い頃にまったくの偶然から手に入れたこのギター、実はジョージが持っている物のすぐ後に作られた「非常に近い」ギターだということ。
マイクはこのことが嬉しくてたまらないらしく、何度もこの話をする。その気持ちは良く分かる。音も、ルックスも、来歴も、ジョージも含めて。このギターが大好きなマイク。とても幸せそうで、素敵だ。
さて、リッケン馬鹿による、リッケンバッカー語りはこれまで。次回は、グレッチ。
グレッチ…?おおおぅ…またジョージ語りが飛び出しそうだ。グレッチを抱えているジョージの別のポスターが出てきたらどうしよう?これはもう、ジョージ愛を私と語り合うしかないんじゃない?
Cruel to be Kind / 恋のホワン・ホワン ― 2012/07/09 21:37
TP&HB公式ページのライブ・リキャップによると、6月20日ロンドン,
ロイヤル・アルバート・ホールには、スペシャル・ゲストのスティーヴ・ウィンウッドの他にも、オリヴィア・ハリスンや、ヘレン・ミレン,ジミー・ペイジ、そしてニック・ロウの姿もあったそうだ。
ニック・ロウ。私は特にファンという訳ではないが、一応ベスト盤と、"Laabour of Lust" は持っている。もちろん、名曲 "Cruel to be Kind" がお目当て。他の曲の名曲揃いだが、とりわけこの "Cruel to be Kind" は超名曲だ。
まずは、ニック・ロウと当時の奥さん,カーリン・カーター(彼女については色々アレだが、ここでは措いておく)自ら新婚夫婦を熱演。そしてこういうポップで ♪テュッテュルュッ テュッテュッテュ♪ な曲に向いている、デイヴ・エドモンズが運転手で出演している。
何度聞いても、非の打ち所のない完璧な名曲ポップス。こんな曲、一曲でも作ることが出来れば、ミュージシャンとしては十分ではないだろうか。
オリジナルがあまりにも名曲なので、当然カバーも多い。おおかたオリジナルに沿ったカバーをすれば、間違いの無い仕上がりになる。編曲も元があれだけ完璧なら、あまりいじらないのが賢いだろう。
面白いところでは、ギリシャ語版なるものがある。アーチストは Σταύρος Μιχαλακάκος とのことだが、全くなんと読めば良いのか分からない。アルファベット表記は、Stavros Michalakakos。スタヴロス・ミカラカコス?
べつに原曲をどういじるでもない、ストレートなカバーで良い。ええと、現実逃避してリゾートしている場合ではありません。多分。
「なんと読むのか分かりません」なんて失礼なこと、日本人に言われる筋合いは無い…と思い直す。そういうわけで、最後は謎の ― いや、有名な ― 日本人のカバー。かなり腰砕けになるので、体調の悪い人は気をつけて聴いた方が良いし、家族が周囲に居る場合も、ボリュームに注意を要する。
一体、何がどう、どうなってこうなったのだろうか。
誰の思いつきで、三遊亭円丈にこの名曲を歌わせたのか。「イエローサブマリン音頭」とはまた、目指すものが違う。「音頭」は、あれはあれで歌が上手いではないか。こっちはあまりの調子っぱずれにノックダウンさ。
ジャケットのリッケンバッカーはどこから持ってきたのか。ホワン・ホワンってなんだ。「お、べーいべー」の頭が微妙に裏拍にもなり切れない加減なのは、わざとなのか。お手上げなのはこっちだ。果てしなくお手上げだ。
あまりの事に突っ込むのも馬鹿馬鹿しいけれど、これはこれで笑えるので、まぁいいか。
要するに、結論は "Cruel to be kind" は名曲だと、それが言いたいんだ。
ニック・ロウ。私は特にファンという訳ではないが、一応ベスト盤と、"Laabour of Lust" は持っている。もちろん、名曲 "Cruel to be Kind" がお目当て。他の曲の名曲揃いだが、とりわけこの "Cruel to be Kind" は超名曲だ。
まずは、ニック・ロウと当時の奥さん,カーリン・カーター(彼女については色々アレだが、ここでは措いておく)自ら新婚夫婦を熱演。そしてこういうポップで ♪テュッテュルュッ テュッテュッテュ♪ な曲に向いている、デイヴ・エドモンズが運転手で出演している。
何度聞いても、非の打ち所のない完璧な名曲ポップス。こんな曲、一曲でも作ることが出来れば、ミュージシャンとしては十分ではないだろうか。
オリジナルがあまりにも名曲なので、当然カバーも多い。おおかたオリジナルに沿ったカバーをすれば、間違いの無い仕上がりになる。編曲も元があれだけ完璧なら、あまりいじらないのが賢いだろう。
面白いところでは、ギリシャ語版なるものがある。アーチストは Σταύρος Μιχαλακάκος とのことだが、全くなんと読めば良いのか分からない。アルファベット表記は、Stavros Michalakakos。スタヴロス・ミカラカコス?
べつに原曲をどういじるでもない、ストレートなカバーで良い。ええと、現実逃避してリゾートしている場合ではありません。多分。
「なんと読むのか分かりません」なんて失礼なこと、日本人に言われる筋合いは無い…と思い直す。そういうわけで、最後は謎の ― いや、有名な ― 日本人のカバー。かなり腰砕けになるので、体調の悪い人は気をつけて聴いた方が良いし、家族が周囲に居る場合も、ボリュームに注意を要する。
一体、何がどう、どうなってこうなったのだろうか。
誰の思いつきで、三遊亭円丈にこの名曲を歌わせたのか。「イエローサブマリン音頭」とはまた、目指すものが違う。「音頭」は、あれはあれで歌が上手いではないか。こっちはあまりの調子っぱずれにノックダウンさ。
ジャケットのリッケンバッカーはどこから持ってきたのか。ホワン・ホワンってなんだ。「お、べーいべー」の頭が微妙に裏拍にもなり切れない加減なのは、わざとなのか。お手上げなのはこっちだ。果てしなくお手上げだ。
あまりの事に突っ込むのも馬鹿馬鹿しいけれど、これはこれで笑えるので、まぁいいか。
要するに、結論は "Cruel to be kind" は名曲だと、それが言いたいんだ。
MCG: Gretsch & George ― 2012/07/12 22:37
「マイク・キャンベルのギター大好き!」こと、[Mike Campbell: The Guitars] は、チャプター8。グレッチ特集。前回に続き、マイクのジョージ語りが炸裂する。
まずは、しゃべり疲れたのか、顔をひっぱたいて気合いを入れ直すマイク。最近は、あまり強くパッティングしない方がお肌には良いってことになってるのですよ、マイク。
マイクにとっても、チェット・アトキンスはヒーローだったようだ。ギターを習い始めた当初、コードだけ、もしくはリードメロディだけでは物足りず、ベースもコードもメロディも一度に奏でる超絶技巧を身につけたという話。
この話は非常に単純なようで、音楽を学習するということのある重要な一点を語っていると思われる。つまり、どの程度まで技術を身につけようと志すかという問題だ。単にコードだけを弾く、単旋律のみを弾く、それでも演奏としてはご立派なものだが、そこから次元の異なる高等技術を自ら身につけようと前に進むか、否かだ。
進まない人の多くは、「音楽のガクは『楽しむ』!だから苦しい思いをして難しいことをしなくても、音楽は楽しめば、十分なのだ」という、有名な言葉を用いる。しかし、この台詞をぐっと飲み込み、あえて苦しむ音楽を選び、前を進み得た人の演奏次元は、まったく違う…。こういうことは、無数の例があるだろう。
とにかく、我らがマイク・キャンベルはたとえ苦しくても、その技術を身につける事の素晴らしさを分かっていた人で、本当に良かったと思う。そうでなければ、初対面のトムに、強引にバンド入りさせられることもなかっただろう。
やや話題が脇に逸れた。
マイクは続いて、大事なグレッチコレクションを見せてくれるが、やはり黒いグレッチが目につく。エド・サリバン・ショーでジョージが弾いていたものと同じで、楽器屋さんがマイクに言うには、「服だの、靴だのをカタにしてでも、入手するべし!」…という素敵なギター。
久しぶりに、1964年のエド・サリバン・ショーを見てみると、なんとまぁ。可愛い坊やが四人もそろっている…!
ポールの可愛さときたら、びっくりするくらいだ。可愛いのになぁ。この時は可愛いのに…(以下略)。ジョージも可愛いのだが、前髪を失敗している。どうしてそんな曲がり具合なのだろう?扁桃腺が腫れると、前髪が曲がるのだろうか?
マイクが後年、ジョージに対して、いかにビートルズのグレッチ・サウンドが素晴らしかったかを語ったところ、ジョージは…
「あんなの、駄目だよ!フェンダーを持ってれば、もっと良かったのに!」
出ました、ジョージのよく分からないひにくれコメント。絶対にそんな風には思っていないはずなのに(第一、ジョージこそ、チェット・アトキンスのファンではないか)、褒められると何故か否定する。
クラプトンに言わせると、「良く分からないけど、魚座だからかな。」…そうなの?
まぁ、要するに照れ隠しなのだろう。マイクが言うとlころの、「フェンダーの明るさと、ギブスンのヘヴィさの間にある音色」、それこそグレッチの魅力であったのと同じように。ジョージの人へのストレートな愛情と、内省的な自己への中間に、ひにくれた彼が存在していたのかも知れない。
まずは、しゃべり疲れたのか、顔をひっぱたいて気合いを入れ直すマイク。最近は、あまり強くパッティングしない方がお肌には良いってことになってるのですよ、マイク。
マイクにとっても、チェット・アトキンスはヒーローだったようだ。ギターを習い始めた当初、コードだけ、もしくはリードメロディだけでは物足りず、ベースもコードもメロディも一度に奏でる超絶技巧を身につけたという話。
この話は非常に単純なようで、音楽を学習するということのある重要な一点を語っていると思われる。つまり、どの程度まで技術を身につけようと志すかという問題だ。単にコードだけを弾く、単旋律のみを弾く、それでも演奏としてはご立派なものだが、そこから次元の異なる高等技術を自ら身につけようと前に進むか、否かだ。
進まない人の多くは、「音楽のガクは『楽しむ』!だから苦しい思いをして難しいことをしなくても、音楽は楽しめば、十分なのだ」という、有名な言葉を用いる。しかし、この台詞をぐっと飲み込み、あえて苦しむ音楽を選び、前を進み得た人の演奏次元は、まったく違う…。こういうことは、無数の例があるだろう。
とにかく、我らがマイク・キャンベルはたとえ苦しくても、その技術を身につける事の素晴らしさを分かっていた人で、本当に良かったと思う。そうでなければ、初対面のトムに、強引にバンド入りさせられることもなかっただろう。
やや話題が脇に逸れた。
マイクは続いて、大事なグレッチコレクションを見せてくれるが、やはり黒いグレッチが目につく。エド・サリバン・ショーでジョージが弾いていたものと同じで、楽器屋さんがマイクに言うには、「服だの、靴だのをカタにしてでも、入手するべし!」…という素敵なギター。
久しぶりに、1964年のエド・サリバン・ショーを見てみると、なんとまぁ。可愛い坊やが四人もそろっている…!
ポールの可愛さときたら、びっくりするくらいだ。可愛いのになぁ。この時は可愛いのに…(以下略)。ジョージも可愛いのだが、前髪を失敗している。どうしてそんな曲がり具合なのだろう?扁桃腺が腫れると、前髪が曲がるのだろうか?
マイクが後年、ジョージに対して、いかにビートルズのグレッチ・サウンドが素晴らしかったかを語ったところ、ジョージは…
「あんなの、駄目だよ!フェンダーを持ってれば、もっと良かったのに!」
出ました、ジョージのよく分からないひにくれコメント。絶対にそんな風には思っていないはずなのに(第一、ジョージこそ、チェット・アトキンスのファンではないか)、褒められると何故か否定する。
クラプトンに言わせると、「良く分からないけど、魚座だからかな。」…そうなの?
まぁ、要するに照れ隠しなのだろう。マイクが言うとlころの、「フェンダーの明るさと、ギブスンのヘヴィさの間にある音色」、それこそグレッチの魅力であったのと同じように。ジョージの人へのストレートな愛情と、内省的な自己への中間に、ひにくれた彼が存在していたのかも知れない。
Martin Freeman goes to Motown ― 2012/07/15 22:01
Cool Dry Placeにアップした、ロンドン・ツアー・レポートに、何かを書き忘れていたと気になっていたのだが、思い出した。
ホテルで見たテレビのCMに、ELOの "Mr. Blue Sky"に使われていた。それが、このBritish GasのCM。ガス会社ではなく、プールらしい。
本題。イングランドの俳優、マーティン・フリーマンはかつては [The Office] や、[Love Actualy]そして私も大好きな「銀河ヒッチハイクガイド」などで活躍して、コメディ俳優として有名だったが、最近は[Sherlock]が大ヒットし、さらに「ホビット」では堂々主役に抜擢されたとのこと、どんどんビッグになってゆく。
彼はかなりマニアじみた音楽ファンで、自宅にはアナログ版がたくさん並んでいる。ロックでは、ビートルズや、ザ・バンドが好きとのことで、私とも趣味が合うだろう。
さらに、彼は50年代から70年代頃にかけての、モータウン・ミュージックの大ファン。特に好きなのは、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズや、マーヴィン・ゲイなどなど。
そんなマーティンの趣味が功を奏したのが、2009年。BBCが、モータウン・レーベル設立50周年記念番組として、"The Culture Show: Martin Freeman goes to Motown" を制作。マーティンをナビゲーターとして、デトロイトや、LAのモータウン関連の場所を訪ね、人々にインタビューを行った。
YouTubeにも5パートにわかれてアップされている。
デトロイトでは、モータウンレーベル縁の地(今は博物館にもなっている)や、マーヴィン・ゲイ,スモーキー・ロビンソン,スティーヴィー・ワンダーが録音したスタジオを見学して、テンションがあがり、さらに縁の人々にもインタビュー。かなりマニアなレコードショップでは、大量のドーナツ盤と首っ引きになって、夢中になっている。
このデトロイトでは、いかにも「マーティンだな」と思わせるファッションが可愛く、特に私物らしい(他の番組でもみたことがある)、ユニオンジャックのバッグが可愛い。
音楽もよく耳にする名曲が目白押しで、特にロックファンとしては、"You've Really Got a Hold on Me" や、"Dancing in the street" にテンションがあがる。
場所をLAに移すと、マーティンのファッションもガラリと変わって面白い。こういう格好、UKではしないんじゃないかな。
この番組が制作放映された当時、まだマイケルは生きていたと思うが、ともあれジャクソン・ファイブの3人にも対面。インタビューの最後には、逆にマーティンが「モータウン・ミュージックのどんなところに惹かれたのか」と聴かれて、熱弁を振るっていた。曰く、「完璧なポップである」とのこと。私もまったく、その通りだと思う。
別に揃いのピカピカしたドレスやスーツを着なくても、マイケルが軽快に踊らなくても、モータウンは、音楽そのものだけで、ポップとして完璧なのだ。本当に、隙が無く、よくできている。ロックがある程度素人仕事の良さを反映させるのに対し、こちらはどのスタッフも立派なプロで、素人臭さを排除した質の良さを追求している。ある意味、クラシックの世界に近いのではないだろうか。
番組の最後に、マーティンはスタッフに、「今、お気に入りの一曲を選ぶとしたら?」と尋ねられる。そして少し考えて、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズの "The Tears of a Clown" を選んだ。
偶然だが、私の机の上にはスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズのベスト盤があり、その1曲目が、"The Tears of a Clown" なのだ。素敵な選曲。残念ながら、番組の動画の最後が切れているので、ここではフルで上がっている動画をあげておこう。
ホテルで見たテレビのCMに、ELOの "Mr. Blue Sky"に使われていた。それが、このBritish GasのCM。ガス会社ではなく、プールらしい。
本題。イングランドの俳優、マーティン・フリーマンはかつては [The Office] や、[Love Actualy]そして私も大好きな「銀河ヒッチハイクガイド」などで活躍して、コメディ俳優として有名だったが、最近は[Sherlock]が大ヒットし、さらに「ホビット」では堂々主役に抜擢されたとのこと、どんどんビッグになってゆく。
彼はかなりマニアじみた音楽ファンで、自宅にはアナログ版がたくさん並んでいる。ロックでは、ビートルズや、ザ・バンドが好きとのことで、私とも趣味が合うだろう。
さらに、彼は50年代から70年代頃にかけての、モータウン・ミュージックの大ファン。特に好きなのは、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズや、マーヴィン・ゲイなどなど。
そんなマーティンの趣味が功を奏したのが、2009年。BBCが、モータウン・レーベル設立50周年記念番組として、"The Culture Show: Martin Freeman goes to Motown" を制作。マーティンをナビゲーターとして、デトロイトや、LAのモータウン関連の場所を訪ね、人々にインタビューを行った。
YouTubeにも5パートにわかれてアップされている。
デトロイトでは、モータウンレーベル縁の地(今は博物館にもなっている)や、マーヴィン・ゲイ,スモーキー・ロビンソン,スティーヴィー・ワンダーが録音したスタジオを見学して、テンションがあがり、さらに縁の人々にもインタビュー。かなりマニアなレコードショップでは、大量のドーナツ盤と首っ引きになって、夢中になっている。
このデトロイトでは、いかにも「マーティンだな」と思わせるファッションが可愛く、特に私物らしい(他の番組でもみたことがある)、ユニオンジャックのバッグが可愛い。
音楽もよく耳にする名曲が目白押しで、特にロックファンとしては、"You've Really Got a Hold on Me" や、"Dancing in the street" にテンションがあがる。
場所をLAに移すと、マーティンのファッションもガラリと変わって面白い。こういう格好、UKではしないんじゃないかな。
この番組が制作放映された当時、まだマイケルは生きていたと思うが、ともあれジャクソン・ファイブの3人にも対面。インタビューの最後には、逆にマーティンが「モータウン・ミュージックのどんなところに惹かれたのか」と聴かれて、熱弁を振るっていた。曰く、「完璧なポップである」とのこと。私もまったく、その通りだと思う。
別に揃いのピカピカしたドレスやスーツを着なくても、マイケルが軽快に踊らなくても、モータウンは、音楽そのものだけで、ポップとして完璧なのだ。本当に、隙が無く、よくできている。ロックがある程度素人仕事の良さを反映させるのに対し、こちらはどのスタッフも立派なプロで、素人臭さを排除した質の良さを追求している。ある意味、クラシックの世界に近いのではないだろうか。
番組の最後に、マーティンはスタッフに、「今、お気に入りの一曲を選ぶとしたら?」と尋ねられる。そして少し考えて、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズの "The Tears of a Clown" を選んだ。
偶然だが、私の机の上にはスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズのベスト盤があり、その1曲目が、"The Tears of a Clown" なのだ。素敵な選曲。残念ながら、番組の動画の最後が切れているので、ここではフルで上がっている動画をあげておこう。
Dylan / MCG: Vox ― 2012/07/20 23:10
まずは、ワクワクするようなニュースから。
ボブ・ディランが新譜を発表する。9月11日発売。タイトルは、[Tempest]…シェイクスピア?!しまった、私の今年のエイプリル・フール・ネタはシェイクスピアだったのに、「テンペスト」は入っていない!「冬物語」までは入れたのに…惜しかった。
「テンペスト」、「テンペスト」…プロスペローの本。グリーナウェイ。マイケル・ナイマン…登場する妖精の名前はアリエル。たしか、空気の精だった。しかし、そのキャラクターは、「夏の夜の夢」のパックと混同している…。もっとも、ディランは単に「あらし」という意味で使っており、シェイクスピアとは関係無いかも知れない。
さて、「マイク・キャンベルのギター大好き!」こと、[Mike Campbell: The Guitars] は、Chapter 9。今回は、ヴォックス特集。VOXというと、私は真っ先にアンプの方がイメージに浮かぶが、もちろんギターもある。
マイクは茶色いティアー・ドロップの12弦を弾きながら、ストーンズのブライアン・ジョーンズが弾いた "Satisfaction" を聞かせてくれたり、いろいろなサウンド・エフェクトをかけて、サウンドを披露してくれている。曰く、このギター1本で、スタジオひとつ分の働きとのこと。
あれこれと仕掛けを披露しつつも、やや苦笑気味なのが可笑しい。
ところで、このティアー・ドロップ型のVOXのことを、誰かがどこかで「便器」と表現したのを見たか聞いたかしたような気がするのだが、それがどこの何だったのかを思い出せない。確かに、トムさんが持っている白いのは特に…便器…っぽい…かも。

VOX ギターの色々な仕掛けということで、「ギター・オルガン」なる、珍妙なものがある。
これはこれで、大した物だが…いや、普通にオルガンを弾けば良いような気がするのだが、どうだろう…
ボブ・ディランが新譜を発表する。9月11日発売。タイトルは、[Tempest]…シェイクスピア?!しまった、私の今年のエイプリル・フール・ネタはシェイクスピアだったのに、「テンペスト」は入っていない!「冬物語」までは入れたのに…惜しかった。
「テンペスト」、「テンペスト」…プロスペローの本。グリーナウェイ。マイケル・ナイマン…登場する妖精の名前はアリエル。たしか、空気の精だった。しかし、そのキャラクターは、「夏の夜の夢」のパックと混同している…。もっとも、ディランは単に「あらし」という意味で使っており、シェイクスピアとは関係無いかも知れない。
さて、「マイク・キャンベルのギター大好き!」こと、[Mike Campbell: The Guitars] は、Chapter 9。今回は、ヴォックス特集。VOXというと、私は真っ先にアンプの方がイメージに浮かぶが、もちろんギターもある。
マイクは茶色いティアー・ドロップの12弦を弾きながら、ストーンズのブライアン・ジョーンズが弾いた "Satisfaction" を聞かせてくれたり、いろいろなサウンド・エフェクトをかけて、サウンドを披露してくれている。曰く、このギター1本で、スタジオひとつ分の働きとのこと。
あれこれと仕掛けを披露しつつも、やや苦笑気味なのが可笑しい。
ところで、このティアー・ドロップ型のVOXのことを、誰かがどこかで「便器」と表現したのを見たか聞いたかしたような気がするのだが、それがどこの何だったのかを思い出せない。確かに、トムさんが持っている白いのは特に…便器…っぽい…かも。

VOX ギターの色々な仕掛けということで、「ギター・オルガン」なる、珍妙なものがある。
これはこれで、大した物だが…いや、普通にオルガンを弾けば良いような気がするのだが、どうだろう…
十日で70kmの後退 ― 2012/07/24 21:54
1864年5月15日、レサカにおける大規模な会戦が停止すると、南軍司令官ジョンストンは、南へと移動した。すでに彼らはテネシー州を捨て、ジョージア州に入っている。どこかで、シャーマン率いる北軍を食い止めなければ、そのままズルズルとアトランタまで進撃されてしまう距離に入っていた。
一方、シャーマンも南軍のどこに戦力をつぎ込めば、突破口が開けるかという決断はしかねていた。これは東部戦線との大きな違いだが、とにかく広大な西部を舞台とする戦いは、どこに敵の主力がいるのかが掴みにくく、味方も用心のつもりで戦力を分散しがちだった。
このことは南北双方に言えるのだが、状況が元々の戦力で勝る北軍に有利なのは変わらない。
北軍は斥候を出しては、南軍の部隊に遭遇し、相手が塹壕に腰を落ち着けて迎え撃とうとすれば、それを避けるという動きを繰り返した。南軍のジョンストンは戦力のわりに積極攻撃に出ないシャーマンに対して、リーがかつて得意としたような、「誘い込んで、防御態勢をとりつつ、相手を滅多打ちにする」という行動には出られないでいた。彼の配下の司令官が慎重だという表現もできるが、やはりこれも広大な西部戦線ならではの慎重さなのだろう。
戦争初期は、騎士道精神で華々しく打って出る将官が多く居た(とくに南軍)が、この戦争後期になると、大砲と塹壕が主役の、近代戦の恐ろしさを思い知り、行動が慎重になるのも、無理からぬことだった。
5月20日ごろ、シャーマンは手探りで攻撃を仕掛けることに見切りをつけ、いったん軍勢を南西方向に迂回させ、南軍の左翼側に回り込む作戦に出た。ところが、この時ジョンストンはこのシャーマンの動きを察知したのだ。両軍は25日にダラス(ジョージア州。テキサス州ではない)の東6kmほどの、ニューホープ教会で遭遇した。
この時、南軍に襲いかかったのは、、かつてのポトマック軍司令官、ジョセフ・フッカーの軍団だった。フッカーはこの時期、自分よりもシャーマンの方が評価が高く、上の司令官になっていたことに、不満を抱いていた。その上、このニューホープでは、北軍が予想したよりも南軍の部隊が大きく、さらに、密林の中を進む羽目に陥り、かなりの損害を出した。フッカーにとっては散々である。
南軍にとって残念なのは、ここで一気に押し切ることは無く、塹壕に入って守りに入ったことだった。
それを見たのか、シャーマンがもう一押しして、南軍を撃退しようとしたのが、5月27日のピケッツビルの戦いだが、北軍は地勢に不案内で、局地的には負け戦となった。
ここでやや南軍にも「勝ち」の字がつきつつあったが、実際にはレサカから南へ、十日で70kmも後退していた。アトランタへはあと35kmしかない。マラソンコースよりも短い距離だった。
ダラスに本拠を置いていた北軍シャーマンは、ここから東進して、アトランタを突くことを、諦めていなかった。そこで6月上旬、アトランタの北30kmほどのマリエッタに南軍が駐在しているのを見るや、シャーマンは攻撃を仕掛けた。
この際、南軍の「闘う司教」こと、レオニダス・ポーク中将(聖職者だった)が砲弾の直撃を受けて戦死した。ジョンストンはマリエッタにこだわることをやめ、主力を町から引き上げさせ、北側のケネソー山へ主力を移した。
一方、シャーマンも南軍のどこに戦力をつぎ込めば、突破口が開けるかという決断はしかねていた。これは東部戦線との大きな違いだが、とにかく広大な西部を舞台とする戦いは、どこに敵の主力がいるのかが掴みにくく、味方も用心のつもりで戦力を分散しがちだった。
このことは南北双方に言えるのだが、状況が元々の戦力で勝る北軍に有利なのは変わらない。
北軍は斥候を出しては、南軍の部隊に遭遇し、相手が塹壕に腰を落ち着けて迎え撃とうとすれば、それを避けるという動きを繰り返した。南軍のジョンストンは戦力のわりに積極攻撃に出ないシャーマンに対して、リーがかつて得意としたような、「誘い込んで、防御態勢をとりつつ、相手を滅多打ちにする」という行動には出られないでいた。彼の配下の司令官が慎重だという表現もできるが、やはりこれも広大な西部戦線ならではの慎重さなのだろう。
戦争初期は、騎士道精神で華々しく打って出る将官が多く居た(とくに南軍)が、この戦争後期になると、大砲と塹壕が主役の、近代戦の恐ろしさを思い知り、行動が慎重になるのも、無理からぬことだった。
5月20日ごろ、シャーマンは手探りで攻撃を仕掛けることに見切りをつけ、いったん軍勢を南西方向に迂回させ、南軍の左翼側に回り込む作戦に出た。ところが、この時ジョンストンはこのシャーマンの動きを察知したのだ。両軍は25日にダラス(ジョージア州。テキサス州ではない)の東6kmほどの、ニューホープ教会で遭遇した。
この時、南軍に襲いかかったのは、、かつてのポトマック軍司令官、ジョセフ・フッカーの軍団だった。フッカーはこの時期、自分よりもシャーマンの方が評価が高く、上の司令官になっていたことに、不満を抱いていた。その上、このニューホープでは、北軍が予想したよりも南軍の部隊が大きく、さらに、密林の中を進む羽目に陥り、かなりの損害を出した。フッカーにとっては散々である。
南軍にとって残念なのは、ここで一気に押し切ることは無く、塹壕に入って守りに入ったことだった。
それを見たのか、シャーマンがもう一押しして、南軍を撃退しようとしたのが、5月27日のピケッツビルの戦いだが、北軍は地勢に不案内で、局地的には負け戦となった。
ここでやや南軍にも「勝ち」の字がつきつつあったが、実際にはレサカから南へ、十日で70kmも後退していた。アトランタへはあと35kmしかない。マラソンコースよりも短い距離だった。
ダラスに本拠を置いていた北軍シャーマンは、ここから東進して、アトランタを突くことを、諦めていなかった。そこで6月上旬、アトランタの北30kmほどのマリエッタに南軍が駐在しているのを見るや、シャーマンは攻撃を仕掛けた。
この際、南軍の「闘う司教」こと、レオニダス・ポーク中将(聖職者だった)が砲弾の直撃を受けて戦死した。ジョンストンはマリエッタにこだわることをやめ、主力を町から引き上げさせ、北側のケネソー山へ主力を移した。
MCG: LP Jr. & SG ― 2012/07/27 23:52
とある市長が、文楽に対する助成金と、文楽を見ての感想についてアレコレ発言して、物議をかもしているようだが…あの…(その内容はネットで検索してみてください)
単に「この市は財政難です。お金がありません。立て直しのために、節約・倹約しなければなりません。だから、文化のために使うお金の余裕がありません。優先順位が高い方から割り当てると、残念ながら文楽に出すお金はないのです。」…という、普通の説明では駄目なのだろうか?
助成するか否かは、市長さんの趣味とは関係ないだろうし、「文楽は助成して守る価値がない」とは、さすがに考えていないと思うのだが。
市長さんは、お金の問題をきちんと、ロジカルに説明すれば良い。お金が出せない理由を、妙なところに引っぱっていくから、おかしなことになる。一方で、芸を論じたければ、それなりの説得力をもって、お金とは関係無いところで語れば良い。
私は、ある程度の年数を生き延びた伝統芸能には、― 意図的に延命させたにしろ、それなりの価値があると思っている。アイドルのような大衆的な人気はなくても、今、滅ぼしてしまわないために、世の中の余剰食糧と資金で、なんとか守り伝えたい。
殆どの伝統芸能・芸術は人気産業ではないので、完全な経済的自立は難しいということは、悔しいけど、認めなければならないだろう。それでも、残したい。そういう「ある程度の無理」を出来るのが、高度に発達した知能と、文化を持った、人類らしい行動のひとつだと思う。もちろん、金銭的助成の偏りや、方法、金額には改善の余地があるだろうが。
その一方で、やはり税金は無駄にしたくないし、自分が暮らす社会が経済的破綻をしてしまうのも困る。優先順位というものは、どうしても存在するし、芸術は優先順位で低く見られても、仕方がない。難しいところだ。
本当に、難しいことなのだから、問題の本質を冷静に見極め、余計なウケ狙いの言葉を排除して、論じ、説明するべきではないだろうか。
このブログで、政治に関する話題をする気はない。しかし、本件はさすがに気になったので、政治ではなく、「芸を守ること」として、話題にした。しかし、これは余談。
余談が長くなった。ここから本題。
「マイク・キャンベルのギター大好き!」はChapter 10, ギブスン レスポール・ジュニアと、SG。
ここでちょっと分からないことがある。マイクが口にする、「レスポール・ジュニア」を画像検索すると、例の「レス・ポール・スタンダード」の、廉価版のようなギターばかりがヒットする。
一方、いわゆる鋭い角が二つある、「SG」のシェイプで、ピックアップが一つのギターは、「SGジュニア」と呼ばれているようだ。つまり、今回マイクが最初に紹介したギターが、これにあたる。どうやら、「ジュニア」というのは、高級ギターの廉価版という意味らしい。
マイクが、「レスポール・ジュニア」と、「SGジュニア」を混同しているのかと思えば、時期によっては、今、「SGジュニア」と呼ばれているあのギターが、「レスポール・ジュニア」と呼ばれていたこともあるらしい。よく分からない。
ここではとりあえず、今回紹介されたギターの、ピックアップが一つのものを、マイクが言う通り、「レスポール・ジュニア」とすることにした。
この「レスポール・ジュニア」、そもそもいわゆる「廉価版」であるにも関わらず、音色は極上のロックサウンドで、マイクのお気に入りとのこと。あの "Runnin' down a dream" も、このギターのサウンドだと言う。録音の時、マイクがピクリとも動かずに演奏するものだから、背後から見ていたジェフ・リンが、わざわざトムさんに「あれ、弾いてるよね?」と尋ねた時のギターだ。
初めて聞いた話だが、ハートブレイカーズがボブ・ディランとツアーをしていたときのこと。ディラン様が演奏の合間にオーディエンスに語りかけている最中、マイクはなんとなく髪を直したくなり、「レスポール・ジュニア」をぶら下げたまま、両手で頭をワシャワシャとやってみた。
たしかに、この人はよくこの仕草をする。実際にライブを見ると、しょっちゅう目にするのだ。以前の爆発頭のときも、今のドレッドで。しかしこの時は…

ストラップが外れて、ギターが床に ドガシャーン! と落っこちた!
落ちただけではなく、ネックが吹っ飛び、弦がビヨーン!びっくりして振り返るディランさま!
「お前、一体、なにやってんだ?!」
それを再現するマイクが、「Fワード」を一瞬ためらってから口にしたのが、可笑しかった。
いやはや、マイクもびっくりしたろうが、ディラン様もびっくりしただろう。マイク曰く、「ボブは許してくれたと思うけど。」そりゃ、許すだろうけど。目が点になる他のハートブレイカーズ…いや、一部で爆笑したやつが居るかも知れない。
吹っ飛んだネックは修理してつけ直し、「95%は回復した」とのこと。それでもやっぱり良いギターらしい。"Runnin' down a dream" は、この修理後の演奏であることが、その証明だ。
一方、いわゆる「SG」(ピックアップ二つ)は、アンガス・ヤングや、ジェリー・ガルシア、クリーム時代のクラプトンなど、弾いていたアーチストの名を挙げている。
60年代というのは、どういうわけだか名器が多いのだと言う。何がどう違うのかつまびらかではないが、分かるような気がする。
日本製の量産型ピアノでも、60年代から70年代に制作されたものは、大抵音が良いのだ。私はその時代のピアノを持っている人(かなり多い)を見ると、大事にするようにアドバイスする。最近の新品ピアノより、よほど良い音がするから。
楽器にはそいういう「時代」があるらしい。
単に「この市は財政難です。お金がありません。立て直しのために、節約・倹約しなければなりません。だから、文化のために使うお金の余裕がありません。優先順位が高い方から割り当てると、残念ながら文楽に出すお金はないのです。」…という、普通の説明では駄目なのだろうか?
助成するか否かは、市長さんの趣味とは関係ないだろうし、「文楽は助成して守る価値がない」とは、さすがに考えていないと思うのだが。
市長さんは、お金の問題をきちんと、ロジカルに説明すれば良い。お金が出せない理由を、妙なところに引っぱっていくから、おかしなことになる。一方で、芸を論じたければ、それなりの説得力をもって、お金とは関係無いところで語れば良い。
私は、ある程度の年数を生き延びた伝統芸能には、― 意図的に延命させたにしろ、それなりの価値があると思っている。アイドルのような大衆的な人気はなくても、今、滅ぼしてしまわないために、世の中の余剰食糧と資金で、なんとか守り伝えたい。
殆どの伝統芸能・芸術は人気産業ではないので、完全な経済的自立は難しいということは、悔しいけど、認めなければならないだろう。それでも、残したい。そういう「ある程度の無理」を出来るのが、高度に発達した知能と、文化を持った、人類らしい行動のひとつだと思う。もちろん、金銭的助成の偏りや、方法、金額には改善の余地があるだろうが。
その一方で、やはり税金は無駄にしたくないし、自分が暮らす社会が経済的破綻をしてしまうのも困る。優先順位というものは、どうしても存在するし、芸術は優先順位で低く見られても、仕方がない。難しいところだ。
本当に、難しいことなのだから、問題の本質を冷静に見極め、余計なウケ狙いの言葉を排除して、論じ、説明するべきではないだろうか。
このブログで、政治に関する話題をする気はない。しかし、本件はさすがに気になったので、政治ではなく、「芸を守ること」として、話題にした。しかし、これは余談。
余談が長くなった。ここから本題。
「マイク・キャンベルのギター大好き!」はChapter 10, ギブスン レスポール・ジュニアと、SG。
ここでちょっと分からないことがある。マイクが口にする、「レスポール・ジュニア」を画像検索すると、例の「レス・ポール・スタンダード」の、廉価版のようなギターばかりがヒットする。
一方、いわゆる鋭い角が二つある、「SG」のシェイプで、ピックアップが一つのギターは、「SGジュニア」と呼ばれているようだ。つまり、今回マイクが最初に紹介したギターが、これにあたる。どうやら、「ジュニア」というのは、高級ギターの廉価版という意味らしい。
マイクが、「レスポール・ジュニア」と、「SGジュニア」を混同しているのかと思えば、時期によっては、今、「SGジュニア」と呼ばれているあのギターが、「レスポール・ジュニア」と呼ばれていたこともあるらしい。よく分からない。
ここではとりあえず、今回紹介されたギターの、ピックアップが一つのものを、マイクが言う通り、「レスポール・ジュニア」とすることにした。
この「レスポール・ジュニア」、そもそもいわゆる「廉価版」であるにも関わらず、音色は極上のロックサウンドで、マイクのお気に入りとのこと。あの "Runnin' down a dream" も、このギターのサウンドだと言う。録音の時、マイクがピクリとも動かずに演奏するものだから、背後から見ていたジェフ・リンが、わざわざトムさんに「あれ、弾いてるよね?」と尋ねた時のギターだ。
初めて聞いた話だが、ハートブレイカーズがボブ・ディランとツアーをしていたときのこと。ディラン様が演奏の合間にオーディエンスに語りかけている最中、マイクはなんとなく髪を直したくなり、「レスポール・ジュニア」をぶら下げたまま、両手で頭をワシャワシャとやってみた。
たしかに、この人はよくこの仕草をする。実際にライブを見ると、しょっちゅう目にするのだ。以前の爆発頭のときも、今のドレッドで。しかしこの時は…

ストラップが外れて、ギターが床に ドガシャーン! と落っこちた!
落ちただけではなく、ネックが吹っ飛び、弦がビヨーン!びっくりして振り返るディランさま!
「お前、一体、なにやってんだ?!」
それを再現するマイクが、「Fワード」を一瞬ためらってから口にしたのが、可笑しかった。
いやはや、マイクもびっくりしたろうが、ディラン様もびっくりしただろう。マイク曰く、「ボブは許してくれたと思うけど。」そりゃ、許すだろうけど。目が点になる他のハートブレイカーズ…いや、一部で爆笑したやつが居るかも知れない。
吹っ飛んだネックは修理してつけ直し、「95%は回復した」とのこと。それでもやっぱり良いギターらしい。"Runnin' down a dream" は、この修理後の演奏であることが、その証明だ。
一方、いわゆる「SG」(ピックアップ二つ)は、アンガス・ヤングや、ジェリー・ガルシア、クリーム時代のクラプトンなど、弾いていたアーチストの名を挙げている。
60年代というのは、どういうわけだか名器が多いのだと言う。何がどう違うのかつまびらかではないが、分かるような気がする。
日本製の量産型ピアノでも、60年代から70年代に制作されたものは、大抵音が良いのだ。私はその時代のピアノを持っている人(かなり多い)を見ると、大事にするようにアドバイスする。最近の新品ピアノより、よほど良い音がするから。
楽器にはそいういう「時代」があるらしい。
Olympic / Hey Jude ― 2012/07/30 20:28
いよいよ、オリンピック開幕。
実のところ、私が先月ロンドンに行った印象では、思ったほど「オリンピック一色!」…ではなかった。オリンピック・パークの方へは行かなかったせいもあるかも知ればないが、やはり英国人は "Don't Panic."…なのだと思う。
開会式は、DVDに完全録画して、完全観賞した。いつ、何が出てくるか分からないので、用心しなければ。
日本のテレビでは見られなかったが、BBCでは開会式の中継直前に、ベネディクト・カンバーバッチを使った3分ほどの映像を流していた。さすがBBC、何を求められているか、分かっていらっしゃる…
冒頭から、テムズ川が田舎からロンドンへ流れ込む様子が出てきたが、一瞬、「たのしい川べ The wind in the willows" のキャラ、トード,ラッティー,モールが登場したのは見逃さない。大好きなのだ…モールのあの健気さと、ラッティーの男前加減が。
俳優としては、ダニエル・クライグが派手な登場をしていたが、私としてはやはり「テンペスト」(キャリバン?未確認)の台詞を語った、ケネス・ブラナーがポイント高し。
全体的な感想として痛感したのは、かの国は本当にキャラとアイコンが豊富だということ。シェイクスピアにしろ、各種ファンタジーにしろ、音楽ヒーローにしろ…そして、いかにも「歴史上の項目」である、産業革命さえも、アイコンであり、それを表現したショーは凄くよかった。
近年のオリンピックの多くは、自然との融和とか、そういう優しい味付けのものが多いが、今回は火と鉄と、埃と煙、そういう猛々しくて、あまり美しくはない、でも私たちはそうやってできた世界に生きていることを、まざまざと表現してみせた。善し悪しではなく、監督がそう言ったように、「この国とは、この国の人々とは、なにものなのか」という現実認識であり、同時に現代社会に生きる、私たちが知るべき、認識でもあるはず。もちろん、かなり美化された表現だが、ショーとしては出色の出来だと思う。
コメディアンは、マイケル・ペイリン辺りの登場を期待していたが、ローワン・アトキンソンでも、もちろん大歓迎。あの「炎のランナー」の映像はよく出来ている。そうそう、おじいちゃんと孫が、犬を連れて見てるんだよね…。アトキンソンに美味しいところを持って行かれた、サイモン・ラトルだが、それなりに演技してくれたのが嬉しい。
指揮者と言えば、ダニエル・バレンボエムの登場にはちょっとびっくりした。なんだか少し居心地の悪そうな表情に見えなくもなかったが。
音楽ももちろん、色々面白かった。UK各地の古い歌が流れ ― 「ロンドンデリー・エア」は、「ダニー・ボーイ」の名の方がベターだが ― そしてやはり、ロック!クラシック界では残念ながら分の悪いUKだが、やはり20世紀となると、がぜん強い。
60年代パートは、ほぼどの曲かは分かるし,70年代も少しは。しかし80年代以降になると、私はお手上げ。
入場行進の間も、ELOなどなどが、じゃんじゃん流れており、このあたり、この国は楽だと思う。
そして大本命、ポール登場。まさか、「オリンピックのために書き下ろした、新曲!」…なんて、誰ものぞまないシロモノを出したりしないだろうな…という一抹の不安は幸運にもあたらず、"Hey Jude" を熱唱してくれた。
私は土曜日の内に、二人から「ジュードって何?」と訊かれた。"Hey Jude" のエピソードは、一般に広く知られた事かと思っていたので、ちょっと意外。ともあれ、ポールは貫禄十分だし、オーディエンスも楽しそうで、しかも非常に盛り上がっていた。
ほかでもない、十二歳だった私がロックにはまるきっかけを作ったのは、"Hey Jude" だ。こういう、辛いことは忘れて、楽しもう、盛り上がろうと思ったら、この上ない曲。人類は、その生活に音楽を持ち、歴史にロックを、ビートルズを持ち、そして"Hey Jude" を持った。これはとても幸運なことなのだろう。
ポールが "Hey Jude" を歌っている最近の映像として、今年の「ティーン・エイジ・キャンサー・トラスト」での映像があった。ロイヤル・アルバート・ホール。2階舞台上手側からのオーディエンスショットで、ポールの背中がずっと映っているが、これがなかなか良く撮れている。
何と言っても、観客の盛り上がりがダイレクトに伝わってきて、素晴らしい。オリンピック・スタジアムがどうだったのかは、テレビ中継では伝わりきれないが、さすがRAHは格別だ。
実のところ、私が先月ロンドンに行った印象では、思ったほど「オリンピック一色!」…ではなかった。オリンピック・パークの方へは行かなかったせいもあるかも知ればないが、やはり英国人は "Don't Panic."…なのだと思う。
開会式は、DVDに完全録画して、完全観賞した。いつ、何が出てくるか分からないので、用心しなければ。
日本のテレビでは見られなかったが、BBCでは開会式の中継直前に、ベネディクト・カンバーバッチを使った3分ほどの映像を流していた。さすがBBC、何を求められているか、分かっていらっしゃる…
冒頭から、テムズ川が田舎からロンドンへ流れ込む様子が出てきたが、一瞬、「たのしい川べ The wind in the willows" のキャラ、トード,ラッティー,モールが登場したのは見逃さない。大好きなのだ…モールのあの健気さと、ラッティーの男前加減が。
俳優としては、ダニエル・クライグが派手な登場をしていたが、私としてはやはり「テンペスト」(キャリバン?未確認)の台詞を語った、ケネス・ブラナーがポイント高し。
全体的な感想として痛感したのは、かの国は本当にキャラとアイコンが豊富だということ。シェイクスピアにしろ、各種ファンタジーにしろ、音楽ヒーローにしろ…そして、いかにも「歴史上の項目」である、産業革命さえも、アイコンであり、それを表現したショーは凄くよかった。
近年のオリンピックの多くは、自然との融和とか、そういう優しい味付けのものが多いが、今回は火と鉄と、埃と煙、そういう猛々しくて、あまり美しくはない、でも私たちはそうやってできた世界に生きていることを、まざまざと表現してみせた。善し悪しではなく、監督がそう言ったように、「この国とは、この国の人々とは、なにものなのか」という現実認識であり、同時に現代社会に生きる、私たちが知るべき、認識でもあるはず。もちろん、かなり美化された表現だが、ショーとしては出色の出来だと思う。
コメディアンは、マイケル・ペイリン辺りの登場を期待していたが、ローワン・アトキンソンでも、もちろん大歓迎。あの「炎のランナー」の映像はよく出来ている。そうそう、おじいちゃんと孫が、犬を連れて見てるんだよね…。アトキンソンに美味しいところを持って行かれた、サイモン・ラトルだが、それなりに演技してくれたのが嬉しい。
指揮者と言えば、ダニエル・バレンボエムの登場にはちょっとびっくりした。なんだか少し居心地の悪そうな表情に見えなくもなかったが。
音楽ももちろん、色々面白かった。UK各地の古い歌が流れ ― 「ロンドンデリー・エア」は、「ダニー・ボーイ」の名の方がベターだが ― そしてやはり、ロック!クラシック界では残念ながら分の悪いUKだが、やはり20世紀となると、がぜん強い。
60年代パートは、ほぼどの曲かは分かるし,70年代も少しは。しかし80年代以降になると、私はお手上げ。
入場行進の間も、ELOなどなどが、じゃんじゃん流れており、このあたり、この国は楽だと思う。
そして大本命、ポール登場。まさか、「オリンピックのために書き下ろした、新曲!」…なんて、誰ものぞまないシロモノを出したりしないだろうな…という一抹の不安は幸運にもあたらず、"Hey Jude" を熱唱してくれた。
私は土曜日の内に、二人から「ジュードって何?」と訊かれた。"Hey Jude" のエピソードは、一般に広く知られた事かと思っていたので、ちょっと意外。ともあれ、ポールは貫禄十分だし、オーディエンスも楽しそうで、しかも非常に盛り上がっていた。
ほかでもない、十二歳だった私がロックにはまるきっかけを作ったのは、"Hey Jude" だ。こういう、辛いことは忘れて、楽しもう、盛り上がろうと思ったら、この上ない曲。人類は、その生活に音楽を持ち、歴史にロックを、ビートルズを持ち、そして"Hey Jude" を持った。これはとても幸運なことなのだろう。
ポールが "Hey Jude" を歌っている最近の映像として、今年の「ティーン・エイジ・キャンサー・トラスト」での映像があった。ロイヤル・アルバート・ホール。2階舞台上手側からのオーディエンスショットで、ポールの背中がずっと映っているが、これがなかなか良く撮れている。
何と言っても、観客の盛り上がりがダイレクトに伝わってきて、素晴らしい。オリンピック・スタジアムがどうだったのかは、テレビ中継では伝わりきれないが、さすがRAHは格別だ。
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