The Gatorade Shower2023/03/21 21:47

 WBC も大詰めである。日本代表チームには、ベスト4までは行って欲しいと思っていた。ベスト4となると、どのチームも実力があり、運ひとつで勝負が決まる。
 今日、日本は劇的な勝利をあげたが、メキシコも走って守れる良いチームだった。アメリカ 対 メキシコの決勝でも、盛り上がっただろう。

 アメリカ,フロリダの球場なので、両ベンチにゲータレードの大きなタンクと、大量の紙コップが置いてある。
 ゲータレードといえば、ゲータレード・シャワーである。フットボールでは選手が指揮官にぶっかけるらしいが、野球では活躍した選手のインタビュー中にぶちまけることになっている。かならずしもゲータレードでもなくて良くて、日本ではただの水である事が多い。
 今日の日本のヒーロー,村上宗隆もゲータレード・シャワーをくらっていた。



 そもそも、なぜスポーツ・ドリンクが「gator ade ワニの飲み物」という不思議な名前なのかというと、フロリダ大学が関係ある。
 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのファンなら知っているとおり、フロリダ大学のあるゲインズヴィルには、ワニがたくさんいる。だからフロリダ大学のマスコットはアルバートというワニであり、フロリダ大学のスポーツ・チームは「フロリダ・ゲイターズ」なのだ。
 フットボール・ゲイターズの選手のために開発されたのが例のスポーツ・ドリンクであり、ゲイターズにちなんで「ゲータレード」と命名された。この飲料のロイアリティが大学に入り、医学の研究費用になっている。

 さて、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの30周年ライブがフロリダ大学で行われたとき、マイク・キャンベルはゲイターズ仕様のギターを披露した。もちろんサービス・パフォーマンスだろう。

I Got A Woman2023/03/17 22:14

 "I Got A Woman" という曲は、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのバージョンですっかり耳馴染んでいたのだが、偶然1966年ヴァン・モリソンのいたゼムのバージョンを聞いて、ふとこの曲は誰がオリジナルなのだろうかと思った。

 確認してみると、オリジナルは1954年のレイ・チャールズとのこと。ちょっと意外だった。



 しかし、この曲をロックンロール・スタンダードにしたのは、なんと言ってもエルヴィス・プレスリーだろう。
 ギターの刻みとエルヴィスの歌唱が断然格好良い。トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズがこの曲をレパートリーにしているのは、まずエルヴィスのカバーだと思って良いだろう。



 だがしかし、「ビートルズのカバー説」も捨てがたい。
 ビートルズが現役中に発表された公式アルバムに "I Got A Woman" は収録されていないが、1964年 BBC でのライブが1994年に公式に発売されているのだ。ハートブレイカーズのフィルモアが1997年であることを考えると、もしかしたらジョンのヴォーカルがイカしているこのビートルズの、カバーである説も充分あり得る。



 こうして並べて聞いてみて、再度ハートブレイカーズを聞くと、ちょっとびっくりするくらいテンポが速い。
 1997年のハートブレイカーズ、すっかり成熟しきったバンドではあるが、かっ飛ばす若さはまだまだ充分で、ベースの活発で目立つ動きも素晴らしい。そしてピアノのアクセントもこれまた抜群で、やはりハートブレイカーズのバージョンが最高という評価に落ち着いた。

ダサい MV2023/03/09 20:34

 F1 が始まれば、当然野球も始まる。まずは WBC である。
 ベスト 4 に入ってくれれば良いなぁという感じ。短期決戦。勝負は時の運である。

 それにしても野球の国際試合の中継となると、きまってジャーニーの "Separate ways" が流れまくるのには、参ってしまう。そもそも曲がダサ気味で、そのミュージック・ビデオはロック史上もっともダサい。
 WBC のたびに同じ事をこのブログでも話題にしているし、そのダサいビデオも、そのパロディも貼り付けている。

 ダサいとばかり言っては悪い。ちゃんと見ないとね。



 ああ…やっぱり無理だ。何が無理って、スティーヴ・ペリーのあの目線が無理。
 同じような時代に、同じようにシンセサイザーを前面に押し出して、ダサいビデオを作ったバンドがあるけど…恥ずかしいけど、ファンだからまだ耐えられる。



 最近はまともにミュージック・ビデオというものを見る機会も少ない。
 1980年代はまさにミュージック・ビデオのビックバンの起った時代で、なんでもありだったろう。そんな中で様々な試みが行われ、やっている当人達も戸惑ったり、楽しんだり、いろいろあったに違いない。
 そういう映像がインターネット動画で広く見られるようになったのだから、嬉しいのやら、恥ずかしいのやらと言ったところだろうか。

Drivin' Down to Georgia live in 19922023/03/01 20:42

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの "Drivin' Down to Georgia" という曲、公式動画ではドラムスはスティーヴ・フェローニという編成である。
 まずはそのフェローニ版から確認。映像的には1995年の映像がふんだんにでてくる。トムさんがいじくり回しているカメラは、ジョージの日本土産だろうか…?



 かなり落ち着いてこなれた演奏だ。
 それに対して、最近動画サイトにアップされたのは、1992年ヨーロッパツアーのドイツでの演奏である。そもそも、この欧州ツアーで演奏されたきり、しばらく演奏されず、公式レコーディングもされなかったのが、この "Drivin' Down to Georgia" である。
 注目はなんと言っても、スタン・リンチのドラムスプレイ!



 テンポからしてぶっ飛んでいるし、音量落としたときのスタンのタンバリンの入れ方など、最高だ。このテンポの方がたぶん、最初に作曲したときの意図をダイレクトに反映しているだろう。
 トムさんとマイクがギターをガシャガシャ弾きまくる(その割にけっこう丁寧ってところが、ハートブレイカーズのいいところ)、ベンモントのピアノも駆け回る感じで、断然ドライブ感が良い。

 1992年のライブは、公式に出し直して欲しいアイテムの一つだ。昔、VHSでライブ映像の一部だけが販売されていたが、今はそれもない。ぜひとも音源を集めてボックスセットにて欲しいし、映像もできるだけかき集め、綺麗にして発表してほしい。
 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズは、まだまだ「持っている」のだ。

Pub Choir / Free Fallin'2023/02/01 21:09

 素晴らしい動画がアップされているので、まずは視聴して欲しい。
 パソコンやスマホのスピーカーではなく、イヤホンか外付けスピーカーで、大きな音で聴くこと!



 このパフォーマンスは、オーストラリア,ブリスベンのパブ・クワイア Pub Choir によるものである。この合唱団の活動そのものは2017年から本格的に始まったが、パンデミックの影響でしばらくオンラインでの活動が続き、満を持してこの "Free Fallin'" で本来の姿で戻ってきたらしい。
 パブ・クワイアをリードしているのはアストリッド・ジョーゲンセンで、大学,大学院で音楽、声楽、合唱を専攻した彼女がポップスを主に三部合唱に編曲し、それを一般市民に「パブで集っているノリで」歌ってもらうというコンセプトだ。

 この動画を見てとても感動したし、同時に感心した。とても良くまとまっている。曲を三部合唱に編曲して、譜面配って、さぁ誰でも自由に歌ってください ―― だけでこれだけのクォリティには持って行けないだろう。
 私の体験でもっとも近いのは、音楽大学の卒業式だ。大ホールに集まった様々な学科の音大生が、当日ラテン語の四部合唱曲の譜面を渡されて、少し練習してから卒業式が始まり、本番で大合唱したのだ。声楽科の人は一部でしかないので、ほかは歌の専門家ではない。でも、ある程度の素養があって、バランス感覚と耳を持っている。そして、一番重要なことは晴れやかな気持ちで楽しく歌ったことだ。
 パブ・クワイアも、発声方法こそ自由であれ、音程はかなりきちんとコントロールするように、それなりの練習をしているようだ。それほど複雑な和音は用いていないので(原曲はトム・ペティだし)、合唱の技術的には難しくはないが、とにかく訓練はされているし、本番前にリハーサルもしているはずだ。
 それから動画を見るとよくわかるが、最後方の見物人を除いて、誰もスマホで撮影などせず、正面の指揮者(ジョーゲンセン)と、スクリーンを注視している。お酒は入っていても、それなりの統率は取られている加減が素晴らしいとおもう。ただ楽しくて自由なだけでは音楽の質は確保できず、かといってガチガチに特訓しすぎると盛り上がらない。そのさじ加減が絶妙なのだ。

 パブ・クワイアの動画をほかにも見たが、自分にとってそれほどなじみの無い曲だと、"Free Fallin'" ほどの感動はない。しかし、曲を知っていれば楽しいだろう。
 自分も一緒に歌いたくなる名曲を、こんなに素敵に歌い上げられるパブ・クワイアを羨ましく思うし、それを共有できるネット配信のシステムのありがたみをしみじみと感じる。そしてもう一度、大音量で彼らの合唱が聴きたくなる。

Jeff Beck2023/01/12 19:42

 ジェフ・ベックが亡くなった。驚いたが、残念ながらそういう時代に入っているのだろう。早弾きとか、技巧とか、そういう空々しいこととは無縁で、すごく歌心のあるギタリストだった。
 ジェフ・ベックのライブは少なくとも1回は見ているという認識があった。自分のブログを確認してみると、どうやら2回見ているらしい。インストゥルメンタルに興味が無い私にしては、珍しいことだ。ライブでは、"Beck's Bolero" や、"A Day in a Life" がとても印象深かった。

 CD は [Truth] と [Beck O-La] が一枚になったお買い得盤だった。昨今の CD 売り飛ばしを免れて、ちゃんと保管されている。
 聞き直したが、ジェフ・ベックだけでも凄いのに、ヴォーカルはロッド、ベースはロニー、ピアノはニッキー・ホプキンズである。とんでもないメンバーで、バランスのとれたウィルベリーズ状態だ。
 中でも、"Jailhouse Rock" が凄かった。ジェフ・ベックを聞くつもりが、ニッキーのパワー・プレイのすさまじさに圧倒されてしまった。



 名だたるミュージシャン達が追悼コメントしている。マイク・キャンベルもその一人で、写真のチョイスが良い。



 YouTube でジェフ・ベックの動画を色々見ていたら、こちらの動画に出くわし、すごく良かった。



 どうやらロッドは飛び入り(?)だったらしく、本気で驚いているジェフ・ベックが笑える。一瞬かたまり、え?!なんでお前、ここに居るの?!曲が終わっても「いやーん!」という仕草が可愛い。もうこんなシーンも見られなくなるのだと思うと、とても寂しい。

いくつかの Walls2023/01/07 20:41

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの名曲 "Walls" は、"Circus" と "No.3" の二バージョンあり、1996年にリリースされた。だから、1997年のフィルモアでのライブでは、新曲だったわけだ。
 今回、ボックスセットで公式にリリースされた音源は、あきらかに "No.3" のアコースティック・バージョンで、マイクがマンドリンを弾き、ベンモントは主にアコースティック・ピアノを主に鳴らしている。



 しかし、つい先日 YouTube に投稿されたオーディエンス録音によると、このフィルモアでの連続ライブの間に、"Walls" のエレクトリック・バージョンも演奏されたというのだ。



 確かに、マイクはエレクトリック・ギターでソロを弾いているし、ベンモントも主にオルガンを鳴らし、テンポはやや速くてドラムのリズムも強い。
 かと言って、これが "Circus" かというと、それはそうでもないと思われる。飽くまでも、"No.3" のエレクトリック・バージョンの域を出ていない。
 後年 ―― トムさんにとって最後のツアーとなった2017年のツアーでもこの "Walls (No.3)" のエレクトリック・バージョンは演奏された。ウェッブ・シスターズの参加でバックコーラスこそ分厚いが、"Circus" ほど立体的ではなかった。

 いくつかある "Walls" の中で、どれが一番好きかというと、公式レコーディングである、 "Walls (Circus)" がダントツだ。テンポは遅めであり、リンジー・バッキンガムも参加した、複雑で立体的なコーラスが特徴的。なおかつ分厚いインストゥルメンタルが何重にもオーバーレコーディングされている。これぞ、ライブでの再現不可能曲。その不可能加減がまた好きなのだ。
 一応、公式ビデオの動画を貼り付けておくが、ぜひとも公式オーディオを買って、大きな音で聞いて欲しい。
 ついでではあるが、Heatbreakers Japan Party さんが次に Project X を決行するとなったら、"Walls (Circus)" だろうと思っている。

You Ain't Goin' Nowhere2022/12/22 21:59

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの [Live at the Fillmore 1997] の、ロジャー・マッグインとの共演 “You Ain't Goin' Nowher” を繰り返し聴いていて、ふと思った。この曲はすっかりザ・バーズによる演奏がすり込まれているが、オリジナルはボブ・ディランのはずである。そのオリジナルって、どのアルバムに入っているのか、ピンとこないのだ。
 確認してみると、公式に発表したのはザ・バーズの方が先で、ディランの公式録音は “The Greatest Hits II” (1971) に入っていた。私はこの二番目のグレイテスト・ヒッツを持っていなかったので、ピンとこなかったらしい。
 その後、”The Basement Tapes” そのまたブートレッグシリーズなどに収録されたが、公式なオリジナルはこのバージョンということになるようだ。



 1992年のボブ・フェストでは、三人の女性による演奏が印象的だった。改めて見ると、豪華なバンドで、G.E. スミスのリードギターもかなり華やかだ。
 この時のライブの特徴なのだが、ホスト・バンドとゲストとのリハーサルがやや不十分だったようで、この曲も終わり方で一斉にスミスを振り返るのがおかしかった。




 [Live at the Fillmore 1997] では、ハートブレイカーズによる豪華なコーラスがかなり控えめにミックスされ、ロジャー・マッグインの声を引き立てるように響き、この上なく美しい。ギター・ソロはたぶんマイクだと思うが、彼の個性を押し出す感じはせず、あくまでもザ・バーズへのリスペクトに溢れていて、とてもすがすがしい。

Fillmore with Roger McGuinn2022/12/18 21:20

 もし、できることなら。時を遡り、好きなところに行けるとする。でもただ一日一か所。1997年2月サンフランシスコ。トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのライブを見られるとしたら、どの日にするだろうか?
 "Heartbreaers Beach Party" の日も楽しそうだし、"American Girl" の感動もぜひ味わいたい。

 曲目もさることながら、ゲスト・アーチストは誰の日が良いだろうか?カール・パーキンスか、ロジャー・マッグインか、ジョン・リー・フッカーか。私がこの三者で選ぶなら、だんとつでロジャー・マッグインがゲストの日にしたい。
 ハートブレイカーズとロジャー・マッグインなんて、ウィルベリーズ並みの豪華さだ。特に今回のライブ・アルバムに収録された "Eight Miles High" は、どのバーズ自身のライブアルバムよりも、素晴らしい演奏で、一番好きだ。
 ロジャー・マッグインと、トムさんだけでも豪華なのに、その上トムさんもう一人分であるハウイに、スコット、されにはベンモントもいるのだ。しかもギター専任がマイクなのだから、こんなに豪華な演奏はないだろう。
 "Eight Miles High" にはインド音楽や、ジャズの要素が取り入れられ、一説にはサイケレリック・ロックの最初の一曲とも言われているらしい。確かにそういう曲だし、同時に複雑で不可思議な演奏に対して、コーラスの美しさの対比も素晴らしいと思う。



 もちろん、純粋な(?)フォーク・ロックである "It Won't Be Long"も素晴らしい。コーラスの完璧なハーモニーもさることながら、奏でられてるギターが何なのかも気になる。ロジャーは例のリッケンバッカーだろうか?まさかトムさんとマイクもリッケンバッカー?スコットは何を選ぶのか?
 実際にその場に居てステージを見たら、きっとそんなこともわかっただろう。

Johnny B. Goode / Bye Bye Johnny2022/12/14 22:16

 ブッコロー柄のブックカバー、ゲット!!
 普段、ブックカバーは使わないのだが、これだけは欲しかった!



 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの [Live at Fillmore 1997] に関して、日本のファン組織である Heartbreakers Japan Party さんの解説するところによると、あの刷り物に "Bye Bye, Johonny" と印字さてしまった "Johnny B. Goode" だが、実は歌詞が "Bye Bye, Johnny" と "Johnny B. Goode" のミックスになってしまっているとのこと。
 そこで歌詞を確認するために、まずはオリジナルのチャック・ベリーから聞いてみる。





 うーん、これは混同するなぁ。コーラスはともかく、Aメロは意図的に音節もコード進行も同じにしているから、ごっちゃになる気持ちもわかる。トラディショナル・アイリッシュの楽曲でも同じようなことが良く起きる。



 Aメロの1番はちゃんと "Johnny B. Goode" だが、2番から "Bye Bye Johnny" になり、3番は "Bye Bye Johnny" の断片がミックスされて、一部何を歌っているのかもよくわからなかったりする。
 トムさんの歌詞の記憶が曖昧だったために、リハーサルでの確認が必要だったらしい。多分トムさんはみんなに「俺が何を歌っても構わずに Jonny B. Goode で押し通してね!」と言ったに違いない。だからバンドの演奏も、コーラスも微動だにせずに突き進んだのだろう。

 もう一つ気になるのは、この曲のイントロだ。どうも1ヴァーズ分長いような気がする。映像が無いので確認できないが、本来の歌い出しでトムさんがマイクロフォンに付かなかったのではないだろうか。「あー、ちょっとまった」みたいな。それで慌てず騒がず、ベンモントがソロを弾いて、おもむろにトムさんが歌い出したように思われる。
 ハートブレイカーズが腕の良いバンドマンたちだったということでもあるし、同時に入念にリハーサルをやった結果でもあると思う。Practice, practice, practice. やるべきは練習である。そこらの素人でも、伝説のロック・バンドでも。