Kinky Boots2018/11/18 19:56

 ロンドンでは、ミュージカルも見た。
 もともと、オペラはある程度好きだが、ミュージカルは好きではない。ポップスの曲をベースにしながらの、テンションの高い演技にちょっと入り込めない。
 ただし、ニューヨークのブロードウェイで世界一のクォリティのミュージカルは、見ることにしている。今回の場合、ロンドンでも良さそうなので一つ見たというわけ。

 2015年にロンドンに行ったときから広告が気になっていたのが、「キンキー・ブーツ Kinky Boots」。ザ・キンクスと何か関係あるのだろうかと思ったりした。

 ノーザンプトンの老舗靴メーカーの若社長となったチャーリーは、ロンドンでドラァグ・クイーンのローラと出会い、それをきっかけに傾いた会社を立て直すために、ドラァグ・クイーン用のブーツを作ることを決心する。
 ノーザンプトンに来たローラのアドバイスをもとにブーツの製造を行い、様々な困難を乗り越え、チャーリーはミラノの品評会に出ることを目指す。




 音楽はシンディ・ローパー。キンクスとは関係がないのだが、ただドラァグ・クイーンの名前が「ローラ Lola」というのは、キンクスを意識しているのだろう。
 この作品の白眉は、なんといっても大挙して現れるドラァグ・クイーンたちの圧倒的な存在感と、華麗なるダンス。へたな女性のドレスより、よっぽど格好良くて素敵。
 ローパーはミュージカルの曲を作るのは、これが初めてだったそうだが、アレンジ陣の腕も良かったのか、とてもうまくマッチしていた。

 最初から最後まで楽しかったのだが、ただちょっと途中で思ったのが、やはりポップスの曲を何かの物語の枠の中にはめこみ、どこからか降ってきたテンションで歌い上げるというスタイルには、ちょっと居心地の悪さを感じないでもない。
 ロックオペラとか、コンセプトアルバムというアイディアを、あまり買ってないので、致し方ないか。

 ともあれ、会場は最初から最後まで、舞台と一体感を持って盛り上がっていた。[Kinky Boots] はもう一度見たいな、と思った。
 夏にはトラファルガー広場でライブもやっており、楽しそうだ。私が見た舞台とほぼ同じキャストだ。みんな楽しそう。

キャンベルズがやってくる ヤァ、ヤァ、ヤァ!2018/11/22 20:52

 あさって、11月24日(土)18時から、東京神田のイゾルデで、ザ・キャンベルズのライブが行われる。

 The Campbells

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズをこよなく愛するカバーバンド、その名はキャンベルズ!さぁ、みんなで行こう、キャンベルズ!



 何が良いって、大好きなTP&HBの様々な時代の、様々なアルバムから、あれもこれも演奏してくれるところ。創意工夫もあるし、何と言っても熱意がある。
 結成されてから数年して、しばらく休止状態が続いたが、去年のトムさんの死去を受けて活動再開の機運が一気に高まった。この機会を逃してはいけない。見に行かなければ!

 ところで、このTP&HBカバーバンドである、「ザ・キャンベルズ The Campbells」 というバンド名なのだが、率直に言って、珍妙な名前である。その名を聞いて、スティーヴ・フェローニが飲んでいた水を吹きそうになって爆笑したくらい。(そのインタビューについては、こちらを参照)
 メンバー達も、ちょっとこのネーミングはどうなのかと思っていたらしく、結成からしばらくは、「ザ・キャンベルズ(仮)」と言われていた。しかし、これに変わるバンド名もまま定着し、今に至る。

「いったい、誰がこんな名前をつけたんだ?」と言ったら、
「あなたですよ…」と、言われた。

 そうだっけ…?そうかな…?そうだったような気もするけど…忘れている。

 何はともあれ、土曜日の晩は、キャンベルズとともに、ハートブレイカーズで盛り上がろう!

塩野七生 特別講演会2018/11/26 22:01

 ホテルオークラ東京と文藝春秋の公演企画、塩野七生の特別講演を見に行った。

 以前、好きな作家を三者挙げたことがあるが、そのとき塩野七生を入れていたと思う。普段、作家の講演会など行かないのだが、今回はたまたま人がこの講演会の4200円という料金が高いのか、安いのかという話を耳にしたため、ちょっと行ってみるかと思った次第。
 開演前にはティータイムと称して、お茶とお菓子が振る舞われた。おいしい。



 テーマは「十七歳からの夢を達成して」とのことだったので、青春時代に地中海世界の歴史に憧れ、八十一歳となった今、「ギリシア人の物語」を書き終わったことに関して自身を語るのかと思ったら、そうでもなかった。
 事前に「質問」を募集しており、それに答える形で講演をすすめたのだ。
 本人曰く、講演は得意ではないとのこと。たしかに、講演の名手という感じはしなかったが、話自体は面白かった。
 私は彼女の作品が好きではあるが、深い「質問」をするほどのマニアではないので、何も出していない。ちょっと出せばよかったかなと思う。

 「現代は英雄が育っていないと思いますが?」という質問に対し、「育っていないのではなく、育てていないのだ。それは人は平等だという原則があり、突出した才能を認めないからだ」との答え。なるほど。
 「傑出した才能というものはある」と断言する塩野七生。これには大いに同意する。どうにもならない、「人は平等だ」という概念からは逸脱する「才能」はある。そういうものがあるからこそ、それに接した「凡人」は、時に感動し、心を動かされるのだ。

 「いい男はみんな書き尽くした」という塩野七生。
 駄作が無いとも言えない。ちょっとしたミステリーっぽいシリーズは失敗だったと思う。
 私が好きなのは、「海の都の物語」と、「ローマ人の物語Ⅱハンニバル戦記」。
 「ギリシア人の物語」も相変わらず面白く、分かり易かったが、やや筆がいい加減になり、似たような表現が続いたのは残念だった。
 ともあれ、歴史の面白さをうまく伝えてくれる貴重な存在。これで終わりなどとは言わず、まだ歴史エッセイを書いて欲しい。