Shinko Music Mook ELO2016/01/12 21:29

 すっかり英語の勉強に倦んでしまい、日本語の本を買うという、お金の非効率的な使い方に、逃げている。しかも時間も大してつぶれないので、さらにもったいない。本屋をブラブラするのも危険だ。漫然と面白そうな本を手に取り、なんとなく買うなど、大変よろしくない。
 音楽雑誌のコーナーをウロウロしていたら、ELOのムック本が目に付いた。曰く、「Shinko Music Mook Crossbeat Special Edition ELO 祝・新作発売!!ELOとジェフ・リンの全軌跡を徹底研究」とのこと。
 うん、まぁ、まぁ。私は特にジェフ・リンやELOの大ファンだってわけじゃないし。アルバムぜんぜん揃えてないし。うん、まぁ、まぁ、立ち読みでジョージやトムさんの記事を見れば良いか~…などとペラペラ立ち読み。ウィルベリーズのアルバム解説でガン読み。
 どうしよう。面白い。ウィルベリーズのアルバム解説は数あれど、これはなかなか面白い。買おうかな。やめようかな。一晩考えるべきか。しかし、そういうことをすると、二度と手に入らない……購入決定。
 ああああああ無駄遣いだ…買ってしまった…!



 石井達也さんという方が、[Volume One] と、[Vol. 3] 双方の解説を書いている。何が面白いって、ウィルベリーズの良さを "Handle with Care" をたとえに出して説明しているところ。
 「気負いのないスリムなハリスンのヴォーカルが和やかに響き、オービスンの艶やかで澄んだ歌声が続く。」そして、「ディランとペティのヘナヘナコーラスがドヤドヤと被ってくる」と表現している。
 「ヘナヘナコーラスがドヤドヤ」って、コーラスとしては全然褒め言葉ではない。その上、「ジョージ以外の四人はコーラスに関しては素人同然」とまで言っている。
 素人扱いされた四人のファンにしてみれば一言返したいかも知れないが(ディラン・ファンは黙っているかも知れないが)、私はこの表現が気に入ってしまった。ウィルベリーズは、ある意味あまり統一感のない五人が、友情と雰囲気だけで作りあげてしまったバンドだ。
 あの何とも言えないほほえましさ、親近感、「ヘナヘナコーラスがドヤドヤ」入ってくる可愛らしさこそが、愛おしく感じられるのだと思う。中高生の男子が、部活帰りにたわいもなく楽しくじゃれあっているのを見た時の、あのなんとなく素敵な気分と同じだ。

 ウィルベリーズの二枚のアルバムを解説すると言いつつ、実は [Volume One] の良さを力説している。1本のマイクで一度に録音して、調整のしようもなかったが、それが良さである [Volume One] に対し、[Vol.3]はきちんとしたスタジオ設備で、「ヴォーカルは均整なものに整えられ、前作にあった魅力的なデコボコ感はなくなってしまった」と言う。
 もちろん、[Vol.3] の良さもちゃんと認識しており、ディランのリラックスした雰囲気と、ジム・ケルトナーの貢献を強調していたのが嬉しい。

 ジョージやトムさん、TP&HB、ビートルズ作品の仕事についても色々解説されている。
 ELOをジェフ・リンの映像作品なども網羅しているのだが、残念ながら [Concert for George] が含まれていない。ジェフ・リンの大仕事として、ぜひともピックアップしてほしかった。

 うっかり買ってしまったムックだが、後悔はしていない。まだまだ読むところもあるし。ELOのアルバムもきっと揃える日が来るだろうし。まかりまちがって、ライブを見るかも知れないし。
 でも、しばらく本屋はうろつかないことにする。