Ravel: Piano Concerto G dur2015/09/19 20:38

 事情があって、ラヴェルのピアノ協奏曲(G dur)を聴いている。有名な「左手のためのピアノ協奏曲」ではない。事情というのは、そのうち説明するだろう。

 モーリス・ラヴェル(1875-1937)はオーケストレーションの名手として知られ、このピアノ協奏曲でもその手腕を発揮している。また、ジャズのような新しい音楽ジャンルや、彼のルーツであるバスク地方の要素も取り入れている。
 ― と、いうのが大体の解説にかいてある内容。

 誰のCDを買えば良いのか良く分からなかったので、ガイド本が勧めていた、ミケランジェリを購入した。
 たぶん、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(1920-1995)を買ったのは初めてだ。私が彼について知っていることと言ったら、天才であることと、キャンセル魔だったことだけ。



 もっとも印象的なのは、第一楽章の自由に、軽やかに、鮮やかに舞い飛ぶような演奏だ。一方、第二楽章は音をまるく、柔らかに演奏する様子が美しい。
 エレーヌ・グリモーの演奏が動画で見られるのだが、こちらの第二楽章は、やや音にエッジがあって、きつい。おそらく、ボンヤリしたものではなく、凛とした雰囲気を表現したいのだろう。私はこれも好き。



 この動画の冒頭は、この曲が「鞭」の音から始まる面白さがよくわかる。
 打楽器の指定が「鞭」。英語ではまさに whip ということもあるし、「打つ棒」という意味の spalstick も用いられる。
 鞭と言っても、しなやかな物ではなく、2枚の板をぶつけるとことで、「パシーン!」と鳴らす楽器だ。

 このラヴェルのピアノ協奏曲、華やかでカラフルな第一楽章、穏やかでメランコリックな第二楽章ときて、さぁ最終第三楽章はとうかと言うと。
 期待通りのもの凄い速さで、次から次へと湧き出るような曲想に圧倒される。おお、これは凄い…と、おもったらあっけなく終わる。ミケランジェリの演奏なんて、4分たらずだ。
 長ければ良いというわけではないが、さすがに尻切れトンボのような印象がある。もうひと展開させて、最初に戻る ― 古典的ソナタ形式の手だが ― 方が、聴いた後の満足感があるのではないだろうか。
 グリモーの方は動画だったのでまだ満足感がある。コンサート会場で聴けば、もっと圧倒されて納得するのだろう。音だけだと、ちょっと不満が残るのが惜しい曲だ。