A musical accident2015/01/31 22:52

 トム・ペティの "I Won't Back Down" に、サム・スミスの楽曲が類似していたため、作者にトムさんとジェフ・リンの名前が加えられ、印税の12.5%を彼らが受け取ることになったと言うニュース。私には正直言って、どうでも良い話題だ。
 トムさんも言っているが、音楽は似る。西洋音楽は多くても12音しかないし、無調でなければせいぜい7音しか使わない。7音使えば多い方か。リズムも大きく分けて2拍子か3拍子しかないし、コードなど、二つ、三つ、大袈裟に言えば一つでもでのポップスの名曲はできる。
 どこにも無い、まったくのオリジナルの曲を作ろうとしたら、それこそ音楽とは思えないほど前衛的で何の感動も呼ばない、無調、変拍子だらけ、偶然性にまかせる、要するに「騒音」を作り出すしかない。音楽は似るのだ。似るからこそ、聴く人の記憶のどこかにある価値基準に響き、良いとか、素敵とか感じる。
 よほどあからさまな悪意、盗み、詐欺的行為がないかぎり、これまた、トムさんの言うとおり、「良くあること」で終わらせるべきだろう。

 もっとも、私には「あの曲と、あの曲は似ている」ということを、即座に言い当てる特技があるらしい。特にアイリッシュのレッスンをしていると、「菊正宗のCMソングに似てる」とか、「滝廉太郎の花に似ている」、「小林明子の恋におちて」、「ゼッペリンの天国の階段」、しまいには「サザエさんの挿入曲」などとすぐに口にする。
 ちなみに、今ピアノで弾いているクラーマー=ビューロー練習曲は、「アート引っ越しセンターのCMソング」に似ている。
 似ていることは悪いことではなく、良い感じるものは人と共通する、要するに共感を確認することだ。サム・スミスは何の引け目も感じる必要はないし、これからも堂々と自分の自信作を演奏すれば良い。

 どうでも良いと思いつつ、ついでなので、よく似ている曲特集。
 これは有名だろう。まず、映画「エデンの東」のテーマ曲。



 そして、プッチーニのオペラ「ジャンニ・スキッキ」の "O mio babbino caro"。いろいろな堂々たるディーヴァがこの曲を貫禄たっぷりに歌っているが、かわいらしさが欲しい曲なので、ここはキャスリーン・バトルで。



 ビゼーのオペラ「カルメン」の第四幕、ドン・ホセの歌も、有名なアレによく似ている。

Carmen,Mezzo, 2012 at Lyon act 4

 そう、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の有名なテーマだ。こちらは、ヤッシャ・ハイフェッツで。

Tchaikovsky violin concerto

 比較的複雑で、長さにも自由のあるクラシックでもこの調子だ。私にとっては、ブルー・グラスや、デルタ・ブルースだって、どれも同じに聞こえる。
 似ている曲を見つけるのは意外に楽しいし、多くの人が良い物を共有していることが分かる。多くの音楽が似ているのは、ただそれだけのことで、それ以上でもそれ以下でもない。そう、トム・ペティの言うように。「音楽的な偶然であり、それ以上でもそれ以下でもない。」