My Favorite Melodies / Mari Yasui2013/10/30 20:02

  アイリッシュ・フルート、ティン・ホイッスル、リコーダー奏者であり、指導者としても大活躍している安井マリさんのアルバムが発売された。

 こちら[My Favorite Melodies / Mari Yasui] に美しいジャケットと、曲目が載っている。

 このアルバムでは、アイルランド音楽の中でも、タイトルの通り奏者お気に入りの美しくスロウな、「エアー Air」と呼ばれるジャンルの楽曲を選び、ティン・ホイッスルとアイリッシュ・フルートの演奏で丁寧に聞かせてくれる。
 いわゆる「私家版」というもので、Amazon や一般のCDショップには並んでいないが、それがもったいないくらいの名盤である。特に美しく穏やかなアイリッシュを聴きたい人、笛の音が好きな人、ティン・ホイッスルやアイリッシュ・フルートの学習者にとっては、必聴と言って良い。
 演奏は、安井マリさん自身のホイッスル,フルート,バス・リコーダー,ボタン・アコーディオンのシンプルな組み合わせ。そして静かなギターがバックを支えている。大袈裟なアレンジやオーバープロデュースを排除し、ハーモニーパートも、決してメロディの美しさを埋没させない。アイリッシュ・ミュージックのメロディの美しさを際立たせている。

 私の一番のお気に入りは、一曲目 "The Lark in the Clear Air"。オーバーダビングの都合上、テンポを律儀に刻む曲が殆どのなか、この曲の最初のメロディはホイッスルのソロで、テンポをゆらしながら、たっぷりと聞かせてくれる。
 私は変にもったいぶった、大袈裟な「溜め」が好きな方では無いが、この"The Lark in the Clear Air" は、引き締まった曲調のまま、絶妙な伸びやかさを表現している。長い音をたっぷりと聞かせつつ、上昇する音階はヒバリが舞い飛ぶように駆け上がる。こればかりは指や呼吸の技術ではなく、演奏者のセンスに任される。

 アイリッシュ・ミュージックのエアを語る上で欠かせない作曲家,ターロック・オカロラン(名前の表記は様々)の曲も取り上げている。
 "Carolan's Welcome" はアイリッシュ・フルートのみの演奏だが、これが非常に絶妙。メロディのところどころが特徴的に跳ね上がる。これは、オカロランがハーパー(ハープ奏者)だったため、ハープを弾く指を自分の体に引き寄せる動きに由来しているのではないかと思う。
 とにかく、この「跳ね上がり」を表現する上で、ホイッスルだとややエッジがきつすぎることがある。そこを、フルートの柔らかい音の切れ際で表情豊かに表現している。

 一方、ティン・ホイッスルはリコーダーと構造的には同じ非常に単純な楽器で、音も比較的倍音が少ない。しかし、指やタンギングを使った、しなやかで不思議と豊かな表現力をもっており、安井マリさんの演奏はその魅力を最大限に引き出している。

 アルバムの最後は、"Amazing Grace"。これがアイリッシュ・ミュージックと分類されるか否かは微妙なところだが(アイルランド、スコットランド、イングランド、そしてアメリカの要素が指摘されている)、そこは「お気に入りのメロディ」ということなのだろう。

 少し気になるかも知れないと自分で危惧していたのは、リバーブ(残響)の具合。私はピアノでも右ペダルをあまり踏まない方で、ボワーンとした音が嫌いなのだ。
 しかし、二曲目くらいから気にならなくなり、アルバムを何度も聞いている内に全く気にしなくなった。録音媒体にしたとき ― 特に倍音の少ない真っ直ぐな音色のホイッスルの場合は、この程度のリバーブはあった方が良いらしい。リバーブをどの程度にするかは、悩みどころだそうだ。

 不満があるとしたら、もっとたくさんの曲を聴きたいということ。これに味を占めて、さらなるアルバム制作を期待したい。
 そして、なんと言っても、ダンスの曲が聴きたい。これは私がロック好きから始まってアイリッシュ・ミュージックを聞いていることに起因している。
 ダンス・ミュージックでの奏者の卓越した技術、センスの良さ、格好良さを、ぜひアルバムの形でも楽しみたい。

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