ビートルズで英語を学ぼう2010/11/12 22:58

 私が俄かに断捨離なぞを始めてみたところ、今年の新語・流行語大賞の候補(60語)のうちのひとつに、「断捨離」が選ばれたという話を聞いた。どの程度の認知度なのかは知らないが、楽しく断捨離をやっている(つもりの)身としては、少し嬉しい。かといって、「ブームに乗って馬鹿をやっている」という印象もなくはないが。
 とにかく、私の断捨離は、書籍にまで及ぶこととなった。本もCDと同様で、無駄などないと思っていたのだが、それが意外とそうでもない。買っては見たものの、それほど熱心なファンでもなさそうな本はけっこうある。それらがまた読みたくなったら、また入手すれば良いと考えると、意外と断捨離対象になる。
 私は本で言うと何よりも司馬遼太郎が好きで、一番好きな「坂の上の雲」などは、今読み返しているのが七回目だったりする(テレビドラマに文句をつけるための確認作業)。「街道をゆく」なども何度も読み返し得るだろう。その一方で、たとえば「義経」や、「空海の風景」などは一度読めば十分だ。前者はさすがに意地が悪すぎる(その上、最後の一文で凄い逃げを打っている)。後者は文章が終始不自由な空気に縛られており、なおかつ最澄がかわいそうで読んでいられない。
 とにかく、今まで後生大事に持っていた本もかなり、処分することにした。

 そんな断捨離作業中に、懐かしい本が出てきた。林育男著,「ビートルズで英語を学ぼう」である。講談社文庫で、340円。おそらく、私がビートルズファンになったばかりの、13歳くらいで買った本だろう。当時はあまり身の周りにビートルズに関する情報がなくて、せめてもの本として購入したような覚えがある。中学生だったから、英語を頑張ろうと思ったかどうか、その点は自信がない。



 タイトルのとおり、ビートルズの歌詞を題材にして英語を学ぼうというコンセプト。面白いのは、その手法が、中学,高校で習う英語に沿っている点である。主部,述部,5文型,名詞,動詞,時制,助動詞,仮定法,関係詞などなど、いかにもな日本の「学校英語」の例文に、ビートルズの歌詞が用いられているというわけだ。
 さらに、ところどころで筆者によるビートルズ解説などもある。初版が1984年とあって、情報はやや古めかしいのだが、なかなか面白い。  さらに、可愛い挿絵にまじって、ビートルズの写真などもけっこう入っている。私がこの本を購入した本当の目的は、きっとこれだろう。ある一ページには、四角い形に、カッターで切り抜いた跡がある。これはおそらく、このページにあった写真を失敬したのだと思われる。大きさからして、あきらかに「カセットテープ」のケースに差し込んで、オリジナルカセットテープを作ったに違いない。初々しい時代もあったものだ。
 この本は、断捨離せずに、もう一度読んで、大事に保管することにする。

 無論、ビートルズで英語を勉強しようというコンセプトも面白いが、一番印象的だったのは、あとがきだ。そこには、「学校英語を軽視するな」とある。
 「英語が出来ない原因を、『学校英語が役立たずだからだ』とするのは、負け惜しみだ」と言うのだ。中・高・大学で英語を勉強しても満足に外国人と会話もできないのは、「単に本気で勉強してこなかっただけ」と、ばっさり切り捨てている。
 「学校英語」も、「実用英語」もありはしない。必要なのは、本人の強い意志(と、努力)である。学校で英語を習ったのなら、それを一生懸命勉強し、ビートルズを題材にするような工夫と熱意があれば、英語は出来る ― と言う訳だ。

 この主張に関しては、おそらく色々な意見が出てくるだろう。著者のような主張は、「英語ができるからそういう事言うんだよ」という反発も簡単に予想される。
 私はと言うと、実はこの著者と同意見に近い。別に私は特に英語が得意と言うわけではないし、不自由なことも多い。それでも、好きな音楽が英語であり、アーチストたちが英語しか話さない以上、それに肉迫する必要に迫られ、英語に取り組んでいる。
 その時、私が用いているのはただ二つ。辞書と「学校英語」のみである。私には海外滞在経験も無いし、英語を専門的に勉強したこともない。結局頼れるのは辞書と中学高校でならったグラマーだけ。
 強いて言えば、辞書と学校英語、そして「知識」の三つで英語に接している。英語の単語,グラマーが詳らかには分らなくても、パーツをつなぎあわせ、自分の知識で不足分を補完して理解するという手法。「フンイキ翻訳」などはこれ式である。「フンイキ翻訳」や、「カントム」ではネイティヴ・スピーカーの助言をもらったこともあるが、全体量に比べると、実に微々たるものだ。
 とにかく、学校英語そのものには感謝こそすれ、「役立たずだ」などとはとても思えない。
 すでに"Mother language" を取得してから、外国語を学習する以上、「慣れ」はあまり当てにならない。結局は単語やグラマーの記憶の積み重ねでしか、上達は望めまい。その記憶の技術として、自分の好きな分野から切り込んでいくというのは、当然有効だろう。
 もっとも、私の変な英語を聞いたインストラクターが、「ボブ・ディランの英語は参考にしてはいけません!」と言ったのも、一回や二回ではないのだが。

 「ビートルズで英語を学ぼう」に話題を戻す。著者は、塾を経営しているビートルズ世代だそうだ。
 和田誠の表紙装丁はさすが。そう言えば、最近の「ボートの三人男」の表紙装丁は、和田誠とのこと。モンモランシー(犬)が可愛いので、だんぜ新しい方が欲しくなった。古い方は断捨離しようかしら。

コメント

_ shoutchi ― 2010/11/12 23:43

僕もその本を持っていますよ。
物置を漁れば、どこかに埋没したその本が出てくるはずです。

なんか、公式サイトの破壊豪華版の映像の最後RDADのブルーレイ版が出るようなことが出てきたように思います。
今回の破壊DVD、ブルーレイ版は字幕つきなので、そっちにも字幕が付くことを願います。

_ 秋津羽 ― 2010/11/13 09:55

本も断捨離なさってるんですねー。私もそのうちまたやらなきゃ。500冊処分してもまだ処分するものがあるってどうよ、と思いますが。どんだけ溜め込んでんだよ。
500冊のうち、処分しなければよかったと(ちょっと)思ったのは3冊のみです。講談社英語文庫のポワロとマープルとムーミン。洋書多読を始めたので、読んでから処分すれば良かった(<ケチくさい)というだけで、実質後悔はゼロ。

>学校英語そのものには感謝こそすれ、「役立たずだ」などとはとても思えない。
同感です。他の教科は実生活でどれだけ役に立ってるか疑問ですが、英語だけは役立ってるとわかります。それでも英語ができないのは、学校英語が役立たずだからではなく、学校英語だけでは足りないからと思います。早く積読状態の王様本を読めるようになりたいよー(今の状態ではスピードと持久力が足りない)。

>「ボブ・ディランの英語は参考にしてはいけません!」
ごめんなさい、笑っちゃいました。

_ NI ぶち ― 2010/11/14 11:45

>shoutchiさん
おお、持ってますか!断捨離ですよ、断捨離!そうすれば出てきます♪
RDADのブルーレイに字幕…たしかに期待しちゃいますね。日本語は無理だと思うけど、せめて英語の字幕があると良いんだけど。もっとも、私はブルーレイプレイヤーがないんですけど。字幕がついていたら教えてください。

>秋津羽さん
ある人が言うには、本は自分がこれまでどう生きてきたか、これからどう生きようとしているのか、そして人にどんな人だと思われたいと思っているのかが反映されているそうです。うーん、それだと断捨離しにくいですけどね。でも、すっきりすると嬉しいですよ~♪

確かに、学校の教科で一番実務的に役立っているもののひとつは、英語ですね。数学なんて、数学なんて…二次方程式もわからない(中学!)。
英語読書のスピードアップ、憧れます~。要は単語量のような気がしてきました。

使ってはいけないボブ・ディラン英語。hard rain。普通に使ってましたが…heavy rain と言いましょう…

_ Scottie ― 2010/11/18 00:32

その本、いらないなら、ください!
って書こうと思ったら…(笑)私も買ってみようかな?
中学生の頃、英語のテストで文法的にわからない
ところとかを考えるとき、よくビートルズの歌の歌詞を
答案の裏に書き出したりしてました。結構役立つんですよね。
英語が嫌い~!という中高生には、洋楽を聴け!って言いたいですね。
(というわりには英語はからきしダメですが…ぶちさんありがとう!)

_ NI ぶち ― 2010/11/18 23:10

>Scottieさん
だめですよ、この本は大事にキープです♪
絶版ではありますが、中古市場にはけっこうたくさん出てますから、入手は容易でしょうね。80年代前半のビートルズ情報ってのもなかなか新鮮です。
英語学習のために洋楽を聴け…!いやぁ、あの…変なリヴァプール訛りとか、サザン・アクセンツとか、ディラン語とか、ちょっとどうかと思いますけど…。
トムさんの話し言葉は、かなり整然としているので、学習に向いていると思いますけどね。

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