髭に名を残す2009/06/20 23:36

 東部戦線では、1862年9月のアンティータムでの大規模な戦闘後、仕切り直しという段階に来ていた。
 アンティータムでは大敗してメリーランド作戦が失敗に帰しても、リーは決定的な打撃を受けることなくヴァージニア州に兵を引き、体制の立て直しにかかった。同時に、スチュアートは相変わらず騎兵を率いて最前線を駆け回って牽制し、ストーンウォール・ジャクソンは、シェナンドア渓谷で転戦し、北軍の背後を脅かそうとしていた。

 一方、北軍では大きな人事異動があった。例のマクレランがとうとう東部戦線北軍の主力であるラパハノック軍の司令官から解任され、後継者にアンブローズ・バーンサイドが決まった。
 リンカーンと、北軍総大将のハレックは、バーンサイドに戦況の巻き返しを指示し、催促もした。その結果、バーンサイドは「小さな作戦行動を散発させ、リーを撹乱しつつ、南部連合の首都リッチモンドを落とす」という、積極的かつ精緻さを要求される作戦を立て、実行するに至った。
 これが始動するのが1962年11月の事。さらに、歴史的な結果となる、12月のフレデリクスバーグの戦いへと連なることになる。

 気の毒な事に、バーンサイドはラパハノック軍の司令官として、リーと対決するには能力が足りなすぎた。彼は基本的に好人物だったらしく、軍関係や、産業界でも友人が多かった。その結果、順調に陸軍内で昇進し、気づけば立場的にはマクラレンの次席に居たのである。
 実は、アンティータムの戦いで既に、バーンサイドは失点を重ねていた。将軍としては状況判断が甘く、柔軟性に欠け、敗戦の被害を増幅する傾向にあったのだ。
 それでもリンカーンにしてみれば、席次を守ってマクレランの後任を決めるのは、当然だった。

 バーンサイドは、そのいかつい容姿が有名だった。いかにも強そうに見えるが、それが大軍を指揮する将軍として強いかどうかは別問題だ。エレガントな容姿をしているリーなどと比べると、映画に出てくる名将と、負ける敵方の典型のようにさえ見える。
 一番特徴的なのは、その髭。口ひげともみあげがつながるまで生やし、顎髭はきれに剃る。あまりにも個性的なスタイルなので、この髭の形は、バーンサイドの名前を入れ替えて、「サイドバーンズ」という名前になった。辞書にも載っている。名前をそのままにした「バーンサイズ」でも、同じ意味らしい。



 ここで、デュアン・オールマンが登場する。
 彼の伝記、[SKYDOG] によると、1969年セッションマンとしてアラバマ州のマッスル・ショールズ・スタジオで仕事をしていたデュアン・オールマンのいでたちは、かなりショッキングだったらしい。

 ベーシストのデイヴィッド・フッドはこう回想する。「彼は私が最初に会ったヒッピーだった。我々は髪を短くして、ボタンダウンを着ていた。音楽業界で働いていても、見た目は至って普通だった。そこへ、まったく突然に、彼が出現した。ベルボトム・パンツに、長い髪、ザン切りのサイドバーンズ、花柄のシャツだのなんだの。デュアンはまるで、異星人のようだった。

 ちなみに、そんなデュアンにつけられたあだ名が、"dog" ― 最初は単に、容姿から dog だけだった。さらにウィルソン・ピケットが、"sky man" と名付ける。これは、デュアンが始終ドラッグでハイになっているのに驚いて、(アメリカ南部はまだそれほどドラッグが浸透していなかった)つけた名前だ。
 つまり、有名な "SKYDOG" は、この二つをつなげたもので、彼のスライドに象徴される、ギター・プレイとは、直接関係ないらしい。

コメント

_ dema ― 2009/06/24 16:57

はじめまして
南北戦争に関する話題に、うれしくなり、書き込みさせていただきました。
日常でも、ネット上でもめったに語られることのない話題ですので。

バーンサイドという人は、おそらくまじめでまっすぐな、「気の利かない公務員」のような人だったのかなあと感じます。相手を小馬鹿にする、傲慢で高慢ちきな将軍よりは、個人的には好感は持ってます。でも、リーの敵ではなかったというのはたしかでしょうね。彼は司令部勤務か新兵訓練あたりの役職が向いていたのではないでしょうかね。
たしか、ピーターズバーグでも、うまくない戦闘指揮をしていたと思います。
不向きな役割で不幸だったともいえますが、その部下はもっと不幸でしたね。

話は変わりますが、デュアンオールマンとは懐かしいお名前・・・あまり聴いたことはないんですが、レイラでスライドギター弾いていた人ですよね。ちがったかな?

_ NI ぶち ― 2009/06/24 21:53

>demaさん
 初めまして!コメント、ありがとうございます。わぁお、歴史記事にコメントをくださるなんて、嬉しいです♪
 ほんと、これだけ情報過多なネットなのに、意外に南北戦争って話題になりませんよね。理解するには、自分で書くのが一番だと思って、始めました。

 ほんと、バーンサイドって気の毒な感じがする、不思議な人ですよね。あの容姿なのに(笑)。ピーターズバーグということは、終盤の方ですね。北軍の主役はグラントですが、その陰でまた苦労していたのですか…。そして命を失う兵士たちこそ、本当に不幸ですよね。
 バーンサイドだって、マクレランの後釜には気が進まなかったようですから、リンカーンやハレックも融通が利かなかったのかな~。まぁ、リンカーンのような政治巧者がごり押しをするとは思えませんが。

 はい、デュアン・オールマンとは、あの「レイラ」の人です。良くご存じですね!名曲です。
 「サイドバーンズ」という言葉が、実際に使われている文章をはじめてみたので、デュアンの伝記を挿入してみました♪

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