続カンタベリー物語2008/12/25 23:08

 「続」と言っても、どこかの修道院からチョーサーの未発表原稿が見つかったわけでも、私がそれをでっちあげた訳でもない。「カンタベリー物語」の記事が続くという意味だ。

 「カンタベリー物語」は、聖書やシェイクスピアほどではないものの、イングランドの人々の間に広く膾炙され、影響を及ぼし、引用されている。

 ロック・ミュージックにおいてもっとも有名な引用は、プロコル・ハルムの ”A Whiter Shade of pale 青い影” に登場する。



 この曲はロックにおける大金字塔であり、語るべき要素の多い一曲だが、ここでは無論、歌詞の話題。
 星の数ほどある傑作歌詞の中でも、「意味不明」という分野では、他を大きく引き離すのが、この “A Whiter Shade of Pale”。さまざまに解釈されているが、作詞した当人さえも意味が分からないというほどだから、深く考えることはナンセンスかもしれない。
 ともあれ、あの印象的なサビの歌詞にこうある。

And so it was that later
As the miller told his tale
That her face at first just ghostly
Turned a whiter shade of pale


 この詞に関しては、翻訳するのも愚かしいので、それはしない。ただ、2行目の「粉屋が彼の話をしたとき」とは、「カンタベリー物語」に登場する「粉屋の話」のことである。私が持っている岩波文庫の完訳版では、「騎士の話」につづく、二つ目に位置する。
 一話目の「騎士の話」が、ギリシャを舞台にした愛と騎士道の物語なのに対し、「粉屋の話」は、オックスフォードの町で展開される大工とその妻、妻の愛人である学生、大工の妻に横恋慕する教区書記が繰り広げる、下品なドタバタ劇だ。
 粉屋がその話をすると、顔色を変える女。それは誰…?

 蛇足。「騎士の話」。
 2001年のアメリカ映画、「ロック・ユー!」は、中世イングランドの馬上槍試合を題材にしているものの、クィーンの楽曲を使うなど、斬新な演出が面白かった。主演は、故ヒース・レジャー。単純で分かりやすい愛と友情のスポコン・ドラマだが、「明るい中世」を見せてくれるところが良い。

 原題は、”A Knight’s tale”  ― 「騎士の話」。もちろん、「カンタベリー物語」から引用している。
 物語には、主人公の仲間となる「ジェフ」なる人物が登場し、ポール・ベタニーが演じている。どういうわけだか、この「ジェフ」がやたら思い切りよく脱いでばかりいる裸族で、しかもその名前が「ジェフリー・チョーサー」というのだから、ぶっ飛んだ。
 物語の最後に、この裸族「ジェフ」は、「カンタベリー物語」について少し言及する。ぶっ飛んではいるが、こういう遊びは好きだ。