Ave verum Corpus2011/03/17 22:45

 悲しみや苦しみに襲われた時、人はどんな音楽を聴くのだろうか。
 無論、人によって違う。考えてみたのだが、私が何を聴くのか、どうもピンとこなかった。病気の時などは、あれほど好きなのに音楽を聞こうと思わなかったりする。感動したり、励まされたり、元気になるための音楽はいくらでもある。しかしただひたすら悲しい時にふさわしい音楽となると、難しい。

 ひとつの先例として思い出したのが、神戸の震災後、N響がチャリティコンサートをした時の曲目だ。いや、N響ではなかったかもしれない。ともあれ、曲目ははっきり覚えている。モーツァルトのモテット「アヴェ・ヴェルム・コルプス Ave verum Corpus」だ。まずは、レナード・バーンスタインの指揮で。



 ややテンポを落とし過ぎのきらいもあるが、丁寧な演奏。
 この曲はモーツァルトがその若い晩年に作った小品で、歌詞はキリスト教の宗教音楽的なラテン語。私がそらで歌える、唯一のラテン語楽曲でもある。T学園の音楽教室生徒だった10歳ごろに覚えた。歌詞の意味はともかく、この世で最も美しい音楽の一つだと思っている。美しいという以外、これといったコメントが出ない。悲しみに対するそれ以上の感想も特にないのと、同じようなものだろう。

 もうひとつのバージョンは、ケンブリッジ大学の、キングズ・カレッジ聖歌隊。テンポがやや早めで、若々しい演奏。伴奏のボリュームが低すぎるのが玉に瑕だが、これも好きだ。