南北戦争を読む2009/03/25 23:00

 私がアメリカの歴史に興味を持ったきっかけは、ボブ・ディランだった。彼の自伝を読んで、自分のアメリカ史に関する知識の無さを痛感し、これはいかんと思ったのだ。
 しかし、アメリカの歴史を知るための手頃な本当言うのが、なかなか難しい。結局、アメリカの大学で歴史の教科書として用いられている本を読むことになった。日本語訳が出ていたのは本当に幸いだ。

アメリカの歴史(全6巻):メアリー・ベス・ノートン他著(三省堂)
 一冊が4000円以上するしとっくに絶版だが、自治体の図書館などにはだいたい置いてある。アメリカという国の成り立ちを理解するうえで非常に有益な、多面的な視点が秀逸。文章も読みやすく、図解なども見やすい良書。
 しかし、面白いのはせいぜい19世紀ぐらいまでで、20世紀になるとほとんど現代社会学の本になってしまい、娯楽としての歴史にはなっていない。

 アメリカの歴史全体像は、上記の本で把握することができるが、南北戦争に割かれる紙面は限られる。そこで、南北戦争にフォーカスした資料を探すのだが、これが大変なのだ。英語でならそれこそ無尽蔵ではないかというくらいあるが、日本語となるとぐっと選択肢が狭まる。
 私が入手したものを、紹介してみよう。もっと沢山、日本語の資料が出ることを祈りつつ…スチュアートなんて、特に面白そうだと思うんだけどな。

ウィキペディア
 「いきなりウィキかいッ!」と突っ込まれそうだが、やはり手軽で情報量が豊富なので便利。まずはこのサイトを駆使して南北戦争の基礎を固めないと、本を読んでも分からない。幸い英語の記事の日本語訳もたくさんある。もちろん、英語記事の確認も大事。デイヴィッド・ファラガットと、TP&HBの関係などは、英語記事にしか載っていなかった。
 ただ、ウィキペディアには注意するべき点も多い。これは今のところ研究論文の資料としては使えない。不正確な情報も多いので、気をつけなければならない。

戦争指揮官リンカーン:内田義雄著(文春新書)
 電信を用いて積極的に戦況に関わった、大統領リンカーンを活写した新書。主役はもちろんリンカーンだが、南北戦争を総合的にまとめた本としてもよく書かれている。南北戦争本の入門編としては最適だろう。
 リンカーンが、単に正直なだけの人物ではなく、優秀な大統領として十分計算と腹芸の効く「やり手」であるところなど、なかなか面白い。

南北戦争の歴史:B.I.ワイリー著 (南雲堂)
 上記「戦争指揮官リンカーン」の資料であり、日本語訳も出てくるありがたい本…の、はずだったが、これは「看板に偽りあり」。原題は「The Road to Appomattox アポマトックスへの道」。南部連合が負けるべくして負けたということを、デイヴィス(南部連合国大統領)の短所をはじまりとして、延々と愚痴のように書き連ねて説明している。
 これはこれで資料的価値があるのだが、歴史を娯楽としている身としては、全然面白くない。残念ながら、私はほとんど参考にしていない。

南北戦争 49の作戦図で読む詳細戦記:クレイグ・L・シモンズ著 (学研M文庫)
 アメリカの海軍兵学校で教鞭をとる著者が、南北戦争の主な戦闘を図解したテキストが元。これは素晴らしい!一番面白い資料で、何度か繰り返して読んだ。詳細な各戦闘の展開図に、魅力的で分かりやすい文章、各登場人物の人となりも分かるような解説など、「歴史の面白さってこれだよね!」と思わずにはいられなかった。このブログの南北戦争,テンチ家の兄弟についての記事において、最も役に立っている。
 なお、この本の翻訳者である友清理士氏は、イングランド国王リチャード三世関係の本の翻訳にも携わっており、そのHPにまとめられたリチャード関係記事はかなり見ごたえがある(私は、リチャード三世を容姿の醜い悪逆非道の人物としてのみ認識している人は、ビートルズのファンでありながら、ジョージの凄さを認識していない人に近いな…と、ちょっと思っている)。

Robert. E. Lee :Roy Blount, Jr.著 (Penguin LIVES)
 ロバート・E・リーの伝記。短いので、読みやすい。ただ、ゲティスバーグ以降がちょっと駆け足過ぎか。それでも、リーの生涯を簡潔にまとめてある。資料をもとに、冷静な筆致を心がけているところも良い。ストーンウォール・ジャクソンや、ジェブ・スチュアートの活き活きとした記述も見られる。
 ちなみに、私がある日の英会話教室において、アメリカ人講師に「今読んでいる本はなんですか?」と尋ねられた時、鞄から取り出したのが、この本だった。講師、びっくり仰天&大爆笑。

Bold Dragoon, The Life of J.E.B. Stuart :Emory M. Thomas著 (University of Oklahoma Press)
 スチュアートの記事の時に出てきた本。元気なジェブ君の大冒険。最後はけっこう泣ける。