ダーンがドイツ兵を撃ち殺した夜2009/09/08 21:18

 前記事で紹介した、オランダ版 "The Night They Drove Old Dixie Down" を、紆余曲折の末、なんとか翻訳したので、紹介してみることにする。

Die nacht schoot Daan een Duitser dood (Jacob Klaasse)

オーメ・ダーンがその名前
彼は若くしてベテラン軍人だった
アルファン・チャーム連隊で(敵の)物資を押し返してやっていた
1944年から45年にかけての冬
空腹だったけど、勇気を振り絞って生きていた
5月10日、ダーンおじさんは敵が自分に狙いを定めているのに出くわした

(Chorus)
ダーンがドイツ兵を撃ち殺した夜
彼は敵の頭に飛びかかった
ダーンがドイツ兵を撃ち殺した夜
若者はみんな歌っていた
La, la, la, la, la,...

1週間後、彼はまた家に帰ってきた
ウィルヘルミナは海の向こう
「なぁ、ダーン行こうぜ NSBにノー!を突きつけるんだ」
それからも毎年5月4日になると
ダーンは勲章を持ち出して、こう言った
許すのはそれで良い、でも決して忘れない
若者たちは、死にかけるって事がどんなものか、知るべきなんだ

(Chorus)

ブロンビークでは死に損なった
死はそこらで待ち伏せていたのに
ある日ダーンがドキュメンタリーを見ていたら
ドイツ人が思い出話をしていた
彼の弟は18歳の良い奴ではりきっていた
その弟は、屋根の上でオランダ野郎に撃ち殺されてしまった
それは、アルファン・チャーム連隊だったという
ダーンは英雄的ではあったけど
あの少年兵の名前さえ知らなかったんだ

(Chorus)


 ダーンというのは、どうやらオランダ人の名前らしい。おじさんと呼ばれている、ベテランの(退役という意味ではなく)兵士の話らしい。
 1944年から45年の冬と言えば、第二次世界大戦も大詰めで、飢えに苦しんだわけだ。

 その次に登場する日付5月10日は、年代が遡る。1940年5月10日、ナチス・ドイツはオランダに電撃攻撃を仕掛けた。その結果、オランダは降伏。ナチス・ドイツによるオランダ占領が始まる。
 この電撃作戦の日、ダーンは一人のドイツ兵を殺したのだ。

 オランダが降伏してしまったので、ダーンはひとまず故郷に帰ってくる。
 「海の向こうのウィルヘルミナ」とは、イギリスに亡命した当時の女王のこと。彼女は現女王ベアトリクスの祖母である。
 ダーンは、政治活動で抵抗を試みる。NSBとは、オランダ・ファシスト党のこと。

 戦後、5月4日になると毎年ダーンは勲章を見せて、戦争の話をする。1945年の5月4日ごろは、ナチス・ドイツの終末期。オランダにとって、特別な日なのかどうかは、はっきりしない。

 とにかく、大戦を生き延びたダーンは、戦後のある日、ドキュメンタリーを目にする。  ダーンが殺したドイツ兵の兄が現れて、そのダーンが殺したドイツ兵が、18歳だったことを知る。ダーンは英雄だったけど、その相手の名前さえ知らなかった・・・という、皮肉で締めくくっているようだ。

 ここまで、なんとか翻訳っぽいことをしてみたが、やはりアヤシゲ。おそらく所々間違っているだろう。
 ともあれ、ザ・バンドの南北戦争の曲が、オランダで第二次世界大戦の曲になっているのが、面白かった。
 この曲は、iTunesでも手に入る。演奏そのものも、シンプルでなかなか良いので、おすすめだ。

コメント

_ dema ― 2009/09/10 22:32

歌い出しの部分とか、5月10日とか、笑っちゃいますね。こんなことしていいんだ!
「杉原勘兵衛が私の名前である。○○藩の家臣であった・・・」
なんて歌をだれか日本人が作らないかなあ。

でも、このオランダ人の歌詞は、原曲にない味わいがありますね。まがいもんではあるけど、なにか訴えかけるものがあって。
オランダ人は、ナチスドイツに好感情は持ってないけど、まだ、ドイツ兵をみんなファシストと敵対視するんじゃなくて、ひとりの人間として見るゆとりみたいのはあるんだなあと思いました。
少なくとも「この作者」は。

_ NI ぶち ― 2009/09/11 19:52

>dema さん
日本版だったら、討ち入りに参加しなかった赤穂藩士とか?上野戦争辺りでもアリですね。

オランダ語の響きも、なかなかよくマッチしているんですよ。韻の踏み方なんかも、原曲を踏襲していて、面白いです。
しかし、ロビーはこの曲の存在、知っているのでしょうかね?!

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