ジョン・レノンの呪い2009/08/21 23:50

 ふと気がつくと、ビートルズのリマスター発売まで、一か月を切っている。何も考えていなかった。

 正直言うと、あまり私の気分が盛り上がっていないのだ。ビートルズは絶版になっているわけでもないし、オーディオ機器や、音質などに絶望的なほど無頓着なため、リマスターに対する欲求が強くない。
 しかも、ボックスという形態にそそられない。
 これは、映画「ヘルプ!」のどうしようもない豪華ボックス版(豪華なのは箱だけで、オマケの内容は貧弱)を買ってしまった自分に、責任がある。ともあれ、今回のリマスターボックスの縦長形状には、少々うんざりしている。しまいにくいじゃないか。
 ジョージのワーナーボックスはとても丁寧な作りで、しかもすっきりしていた。TP&HBのRDADの映画&CDセットボックスは、おまけも豪華にして、パッケージはとてもシンプル。どうも、それらとの比較で、ビートルズは分が悪い。
 私には収集癖がないので、無論ステレオ・ボックスしか買わない。初回限定モノ・ボックスの方が、箱の形状がすっきりしているあたりに、 無性に腹が立つ。

 さらに、どのネット通販サイトで買うべきなのか。CDショップ店頭で買うべきなのか。はたまた、アメリカからの輸入版でも構わない。DVDさ え再生できれば。
 しかし、字幕の問題がある。ロンドンのコックニーは、UKコメディのおかげで少しは聞けるようになったが、あいかわらずリヴァプール人が何を言っているのか、皆目分からない。いや、英語の字幕さえあれば良いのか。日本版の解説等には、もはや興味がない。
 …などと考えている間に、たちまち面倒臭くなってしまい、結局なにも決まっていない。

 しかし、私をロックの世界に導いたビートルズに対して、このような怠惰な態度はまずい。過去に、「ジョン・レノンの呪い」を体験した私は、カブトムシの呪いを避ける努力をしなければならない。

 ジョン・レノンの呪い。それは、私が学生だった、ある12月の出来事である。

 大学図書館の雑誌コーナーに立ち寄った私は、何気なく「ミュージック・マガジン」を手に取り、ペラペラと眺めていた(「ミュージック・ライフ」だったかも知れない。音大図書館なので、これらと「音楽之友」や、「ショパン」、「観世」(能楽観世流の月刊誌)などが普通に並んでいた)。
 すると、TP&HBの広告が目に入った。1ページを使って、しかもカラーだ。当時、自分以外にTP&HBファンの存在を知らなかった時代である。狂喜した私の目に飛び込んできたのは、12月8日、TP&HBのミュージック・ビデオ・クリップ集 [ Playback] が発売されるという内容だった。12月8日!まさにその日が、12月8日だったのだ!
 私はすぐさま大学を飛び出し、最寄のターミナル駅にあるレコードショップに駆け込んだ。そして店員をつかまえ、TP&HBのビデオをくれと言った。ところが、店員は「無い」と言う。その存在さえ知らない様子だ。そんな馬鹿な。「ミュージック・ライフ」の1ページに、しかもカラーで広告が載っているのに、しかも底々の大きさのお店なのに、あれほどの傑作ビデオが(実際は、まだ見ていない)置いていないとは、怪しからん!
 私はひとしきり店員と言い争い、結局手ぶらで大学に戻った。

 私はもう一度図書館に行き、未練がましく例の広告をみつめた。どこに行けば、ビデオが手に入るだろう…そして私の目は再度、発売日に行った。
 そこには、「12月18日発売」とあった。

 広告を見つけたことへのあまりの喜びに、私は日付を完全に見間違えていたのである。喧嘩をふっかけられた店員さんこそ、良い面の皮だ。
 そして私は、独りつぶやいた。「今日は、ジョン・レノンの命日だ…」

 そう、大事なジョン・レノンのことなど完全に忘れ去り、TP&HBに現を抜かしたがゆえに、罰があたったのである。私は、これを「ジョン・レノンの呪い」として以後、自分を戒めるために記憶することにした。

コメント

_ swingin ― 2009/08/22 01:23

(笑)

_ NI ぶち ― 2009/08/22 23:26

>swinginさん
簡潔かつ的確なコメント、ありがとうございます!このような輩には、呪と笑が相応でございます~

_ swingin' ― 2009/08/23 13:33

こんにちは。
なんつーか、乙女度が高いなぁと思いまして。(よい意味で、スよ。)

それと一つ前の記事の締め、気が利いてました。
♪'Til Stoneman's cavalry came and tore up the tracks again
を引用した上での下げの部分。流石。

じゃそっちにコメントしろよっつ話ですが!

_ NI ぶち ― 2009/08/23 23:36

>swingin'さん
こんばんは。
たーしかに、乙女ですね。これは、乙女の恋だ。思い込みが激しく、多少の誤解があり、なおかつ周囲に迷惑をかける(笑)。

ストーンマン、スチュアートと比較されてちょぉいと気の毒な人です(笑)。ま、スチュアートがちょっとイッちゃってるひとなんですけどね。そこが好き。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
このブログの制作者名最初のアルファベット半角大文字2文字は?

コメント:

トラックバック