Harvard Business School2025/09/06 20:34

 ハーバード・ビジネス・スクールに参加したついでに一肌脱ぐセバスチャン。…将来的には ph Dr. になるつもりかな?

More Cowbell2025/09/13 19:46

 マイク・キャンベル自伝、最近多忙のため、読むのがとても遅い。やっと後半にきた。
 さすがに出世作だけあって、”Damn the Torpedoes” のレコーディングの箇所はかなりの紙数を割いている。
 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズはビートルズのようにアルバムを制作するごとに成長を遂げるべく、新しくジミー・アイヴィーンをプロデューサーを迎えるのは周知のことだ。ジミーは完璧主義で、レコーディングの繰り返しが延々と続いたいう話は知っていたが、その詳細がさらにマイクの自伝によって明らかになった。
 ジミーと、ジミーが連れてきたエンジニア,シェリー・ヤクスは納得行くまで演奏、録音を繰り返すのだが、特にスタンのドラムスのサウンドに納得がいかず、地獄のようなセッションのが続くことになる。
 ある時、とうとうマイクはジミーの「もう一回」にブチ切れてスタジオから出ていってしまった。大人しい(しかも若い頃ほど大人しい)彼にしてはとてもめずらしい出来事だったろう。マイクは子どもを親に預け、妻のマーシーとのラブラブ回復週間を経て、やっとスタジオに戻ってきたのだ。

 シェリー・ヤクスは超絶的に敏感な耳の持ち主で、どんなささいな音も聞き逃さないというのが、マイクの評だ。TP&HB との仕事の前にも数々のレコーディングにかかわっており、その中にはブルー・オイスター・カルトの名もあった。マイク曰く、

 あのカウベル、”Don’t Fear the Reaper” ? あれがシェリーのアイディアだったとしても驚かない。

 突然話が SNL の有名なスケッチに飛ぶので笑ってしまった。このネタは分かる人にしかわからないが、アメリカ人だったらまず知っているくらいの知名度なのだろう。
 幸い、ジミー・ファロンの番組のゲストに、ともにこのスケッチに出演したウィル・ファレルが登場したときに話題になり、スケッチをまるごと紹介してくれた。思い出話として、ジミーが演技をしながらも笑ってしまっていたときに、ウィルも同じく笑ってしまっていたが、ヒゲでかくれていたのだということが披露された。



 さらに面白かったのは、後日談としてクリストファー・ウォーケンが舞台のアンコールに応えようと出ていくと、観客がカウベルを叩いていたとか、イタリアン・レストランで「もっとカウベルが必要ですか?」と聞かれるなど、散々な目にあったとのこと。

 TP&HB でカウベルが印象的な曲はぱっとは思いつかないが、少なくともジム・ケルトナーが突如現れて、”Refugee” にシェイカーを入れることをアドバイスしたことは有名だ。そのことを知って以来、”Refugee” を聞くたびにシェイカーの音に集中している自分を発見する。誰か面白いスケッチにしてくれないだろうか。

The Boys of Summer2025/09/23 20:13

 ドン・ヘンリーの大ヒット曲 “The Boys of Summer” はマイク・キャンベルが作り、ヘンリーが詞を書いたことは有名だ。
 マイクはただただ、トムのためだけに沢山の曲を作りためていた。1980年代前半、マイクはドラムマシーンも手に入れて、曲のストックもかなりのものになっていた。ジミー・アイヴィーンもそれを知っていて、マイクをヘンリーに紹介したのだろう。
 ヘンリーはマイクの曲を気に入り、”The Boys of Summer” は大ヒットとなった。当時、経済的な危機にあって自宅が抵当に入っていたマイクだが、この曲によってその危機は回避された。そもそも、マイクが自力で曲をどんどん作れることに気づいた妻のマーシーが録音機を買うことを薦め、彼女が自宅の売却を拒否したことによるこの結果だ。マイクの愛妻はどこまでも正しく、マイクいわく「これぞ俺の彼女だ」。

 ”The Boys of Summer” の絶好調ぶりは、マイクの「本命」であるトムさんにとっては複雑なものだった ― と、マイクは感じているようだ。
 当時、ハートブレイカーズは “Rebels” の仕上げに苦労しており、トムはフラストレーションをためていた。そんな頃の出来事が、マイクの自伝に書かれている。

  私たちが ”Rebels” のミックスを行っているとき、トムと私はミキサーの前に並んで座り、何回か聴いていた。トムはつまみを回しながら微妙な調整を繰り返した。ひと仕事終わると、トムは車のステレオでどう聞こえるか聴いてみたいと言った。
 私はできあがったカセットテープを取り出し、私の車へと歩き出した。私が運転席に回る間に、トムは助手席に座った。私はイグニッション・キーを回した。
 ”The Boys of Summer” のコーラスがスピーカーから鳴り響いた。
 私は取り出しボタンをぶっ叩いて止めようとした。しかしそれはカセットの音ではなかった。ラジオが鳴っていたのだ。
「ああもう。ごめん。」私は反射的に謝っていた。
 私はラジオのボタンを押してラジオ局を変えようとした。しかし、またも同じ曲が流れる。トムは唇を引き結んでフロントガラスを見つめていた。私はもう一度違う局にしようとした。しかし、三度同じ曲が流れた。
 私はラジオを叩いて止めた。私たちの間にしばらく沈黙があった。三つの違うラジオ局で流れるなんて。
「ごめん」
「いや。よく出来てた。自信がついただろう?」
 トムとしては良い評価だった。
「そうだな、うまく行って嬉しいよ」
「だな。俺が聞き逃してなけりゃなぁ」

 この場面はやたらとエモい。二人きりの車中で、焦るマイク。黙り込むトム。謝るマイク。謝る必要なんてないのに。本命のトムが苦しんでいるのに、ほかのシンガーを大成功に導いたことへの罪悪感。トムとマイクの信頼関係が分かっているだけに、よけいにつらい 。
 自伝では、次のページでトムが自ら手を折ってしまう。自身信のフラストレーションのやり場を誤ったのだが、ともあれマイクを誰かに盗られたようなストレスが、彼を追い詰めたのだろう。

 ある種の悲劇でありつつ、彼らの絆の強さを表すエピソードだった。