ロスト・キング2023/10/14 21:25

 映画「ロスト・キング 500年越しの運命」を見た。  スコットランド,エジンバラに住む仕事も、家庭生活もイマイチイなフィリッパ・ラングレーが、シェイクスピアの「リチャード三世」の舞台を鑑賞したのをきっかけに、リチャードの実像に迫り、その遺体を発見しようと奮闘する物語。2012年にイングランドのレスターで実際に起きた、「リチャード三世の遺骨発見」を題材にした作品だ。
 歴史好きで、とりわけプランタジニット朝(ランカスター朝,ヨーク朝を含む)に関心があり、リチャード三世に関しては「悪人説」否定派、二人の甥殺しについては五分五分という見解、二回レスターを尋ね、リチャードの墓にまで参った身としては、見ないわけには行かない、ドキドキ映画だった。



 結論から言うと、イマイチ!期待値よりも面白くなかった。残念。
 チューダー朝とシェイクスピアが広めた、「容姿醜悪、極悪非道のモンスター」というリチャード像の逆を行く ―― つまり、発掘された骨から再現されたリチャードの容姿に近い、若く美しいリチャードの登場は嬉しかったが、いかんせん出番が多すぎた。物語にロマンを盛るには一つの手段だったかも知れないが、フィリッパが夢とロマンだけでリチャードを発見に至ったみたいで、ちょっと納得がいかなかった。
 実際のフィリッパ・ラングレーはもちろん、あんな短期間にリチャード擁護派(リカーディアン)になってすぐに遺骨を発見したわけではなく、もっと長い期間をかけ、それこそ今回映画で悪役になったレスター大学や、レスター市そして、BBCの力も借りて、いよいよ掘ったら、まさに遺骨が出たのだ。博打ではなく、かなり確信があっての発掘だったことを、当時から知っているだけに、映画はちょっとチープで簡単すぎた。
 しかも、リチャードのDNA鑑定にはそれなりに時間が掛かったし、長い調査期間があり、そして発掘場所のレスターと、ヨーク家のヨークが埋葬場所を巡ってかなり長い間争った。やっと埋葬式がおこなわれ、ベネディクト・カンバーバッチが出席したのは、映画とは違ってかなり後なのだ。

 やはりフィリッパの活躍は彼女自身をBBCが追い、サイモン・ファーナビーが案内役を務めたテレビドキュメンタリー,[Richard III: The King in the Car Park] が一番面白い。DVDも出ている。ちなみに、映画では埋葬式のシーンにフィリッパ自身が出演していた。



 音楽的にもこれといって面白い要素が無くて残念。私が好きな映画はだいたい、音楽も良いものだ。
 やはり、事実は小説よりも奇なり ―― と言ったところだろうか。