青海波2019/05/29 22:42

 伶楽舎の雅楽演奏会に行った。前半管弦、後半舞楽の古典プログラム。
 今回のテーマは、一曲。「青海波」だった。



 「青海波」は有名だ。「青海波」という和柄もある。
 そして、伶楽舎の解説によれば、盤捗調、黄鐘調、双調、平調と、四つの異なる調で演奏された記録があるという。異なる調で演奏される曲を「渡し物」と言うのだが、せいぜい二つ程度の調が普通で、四つというのは例外的だ。
 伶楽舎曰く、これだけの調で演奏されたというのは、名曲の証なのだと言う。

 それはどうだろう ―― と思った。
 抜粋も含めてだが、四つの調で聞き比べる趣向だったのだが、結局どれもしっくりこなかった。
 学生のころ、それから社会人になってからもこの曲は吹いているが、実はあまり印象になかったのだ。
 それで思ったのだが、実はこの「青海波」、管弦としてはそれほど名曲ではないのかも知れない。決め手を欠くやや中途半端な曲のため、いろいろな調を試したものの、結局どれもうまく行かなかったのではないかというのが、今回の演奏会での感想だった。

 では、なぜ「青海波」は有名なのか。
 これはもう、「源氏」に尽きる。

 「青海波」は「源氏物語」に登場する。私はまったく「源氏」に関心がないので調べるのだが、第七帖「紅葉賀」の中で、光源氏が「青海波」を舞うシーンがあるのだ。
 例によって(?)光の君は美しく、息をのむようで、どうのこうの。雅楽のことは知らなくても、「源氏」とそれに登場する「青海波」は知っているという人も、多いのではないだろうか。

 実は今回の演奏会、前売りだけで完売だったそうだ。
 伶楽舎の通常の演奏会は七割か八割くらいの入りなのだが、この大盛況。どういうわけだと楽団員に訊くと、「源氏に関係すると人が入る傾向がある」とのこと。
 やはり「源氏」の影響力恐るべし。後半の舞楽こそが「源氏」の「青海波」で、何割かのお客様の目的だったのだろう。私も、この曲は舞楽あっての曲だということを、実感した。

 伶楽舎は意欲を持って復曲を含めて様々な試みを行うが、今回は立って琵琶 ―― 楽琵琶である ―― を弾くという記録にある奏法にトライした。素晴らしい。
 でも、あまり出番はなく。なんか、白い布で首から琵琶を吊った姿が ―― 大ケガをした琵琶奏者みたいで、可笑しかった。

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