Rockin' Around (with You)2023/11/03 20:02

 そもそも期待していた訳でもなかったが、それでも「ビートルズ最後の曲」なる触れ込みで発表された "Now and Then" の余りのどうしようもなさに、さすがに失望を覚えざるを得ない。あのビートルズを冠してこれ?がっかり加減が半端ない。
 やっぱりビートルズは1969年を最後に、地上から姿を消したんだなぁと実感した。

 どうしようもない曲なんかより、マイク・キャンベル&ザ・ダーティー・ノブズのライブを見よう。今回は、10月20日(トムさんの誕生日!)の LA 公演。トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのデビューアルバムの、先頭を飾る "Rockin' Around (with You)" ―― そうか、この曲をやるかぁと、感慨にふける。そういえばこの曲はマイクとの共作なので、確かにマイクが歌っても不自然ではないな。
 それにしてもマイクが歌っているのにもすっかり慣れたが、最初に彼が歌ったときはドン引きしたものだ。彼はシャイで前に出たがらない、控えめな人物でマイクロフォンの前で歌うなんてとんでもない、というのが長年のスタイルだったから、ダーティ・ノブズ結成以来、特にトムさんが亡くなった後のヴォーカリストとしての活躍には目を見張る物がある。
 しかも先日は、ディラン様とワン・マイクでシャウトしていた!ディラン様もびっくり?「あの時の大人しいあいつが…?」なのか、いや、どうやらあのライブに関してはディラン様がマイクに直電したらしいという噂もあるので、ディラン様的には予想範囲なのか。
 とにかく、"Rockin' Around (with You)" である。



 2017年、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズが結成40周年全米ツアーをしたときも、この曲がライブの冒頭を飾った。私もギリギリでこのツアーを見ることが出来た。別に彼らの全ヒストリーをオンタイムで体感したわけでもないのに、"Rockin' Around (with You)" によるオープニングに、鳥肌が立った。
 いつまでも色褪せない、青春の輝き、ロックンロールの息吹。トム・ペティがこのツアーが終わるなり突然亡くなるなんて、誰も想像しなかったが、とにかくこのツアーが無事に終わって本当に良かったと思う。

The Killers2023/11/08 19:46

 トム・ペティ周辺というか、ウィルベリー兄弟周辺というか、とにかくその辺りがざわついているこの秋だが、9月のザ・キラーズのライブには、エディ・ヴェダーが参加して、例によって "The Waiting" を歌った。ヴェダーも、さすがに映画 [Runnin' Down a Dream] の頃に比べると歳を重ねたなぁと思う。



 ザ・キラーズって接点がないので知らないのだが、このちょっとギラついた格好のヴォーカリスト、ブランドン・フラワーズは、ギラつきを抑えると [George Fest] での "Got My Mind Set on You" の人になる。



 [George Fest] でこの曲を選ぶセンスが良いと思う。ジョージ自身の作詞作曲じゃなくても典型的なジョージ曲で、ビートルズは "Twist and Shout" が最高なのと同じだ。ジョージやビートルズがカバーしなかったら、それぞれの曲は今ほどの知名度を得なかっただろう。

 ザ・キラーズと言えば、もう一つ。ザ・キラーズはロックンロール・ホール・オブ・フェイムのイベントで、トムさんの追悼のために "American Girl" を演奏している。
 長いギターソロのエンディングの代わりに、"Free Fallin'”のコーラスを入れ込む演出は、なかなか上手い ―― と思うと同時に、エリック・クラプトンが "Isn't it a pity" のエンディングに "Hey Jude" のコーラスを挿入したのと同じアイディアであることも分かる。
 彼らがトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの大ファンであることは間違いなく、そのうち何らかの加減でザ・キラーズを聴く機会もあるかも知れない。

Top Cat / Top Hat / Swing Time2023/11/12 19:56

 仕事は work from home 在宅勤務なので、音楽を聴きながら仕事をすることも可能。私は Walkman に所有 CD のほとんどを収録しているので、それをランダムに再生し、モバイル・スピーカーから聴いている。
 けっこうな頻度で再生されるのが、ボブ・ディランの [Theme Time Radio Hour] ―― ディラン様が DJ を務め、テーマごとにディラン様のお気に入りの曲をお喋りと共に紹介してくれる。
 ふと先日思ったのだが、エンディング・クレジット "You've been listning to Theme time radio hour..." のバックに流れているジャズっぽい軽快な曲は何だろう?
 確認したところ、1960年代放映されたテレビ・アニメ [Top Cat] のテーマ曲をジャズにアレンジした物だそうだ。



 この [Top Cat] で思い出したのだが、たぶんこれはフレッド・アステアの [Top Hat] のパロディなのだろう。
 フレッド・アステアといえば、別にちゃんと映画を見ているわけでは内が、動画サイトで彼のステップを見るのは好きだ。



 [Top Hat] はもちろん彼の代表作品のひとつであるが、やはり一番だと思うのは、ジンジャー・ロジャースとのダンスだろう。ディラン様曰く、フレッド・アステアのダンスは素晴らしいが、ジンジャー・ロジャースはその相手をハイヒールを履いて務めたと、彼女のことを讃えていた。
 私が一番好きなのは、1936年の "Swing Time" のワンシーン。これを見ると、確かにフレッド・アステアも無論最高だが、ジンジャー・ロジャースの素晴らしさも存分に味わえる。

擁護派?否定派?2023/11/19 21:37

 日本におけるトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのファン組織、Heartbreaker's Japan Party さんにはとてもお世話になっている。1年に2回ほど、ファンの皆さんと直接会えるオフ会も行われており、毎回楽しみにしている。

 先だってのオフ会で、自己紹介兼近況報告の折、ある人が「ジェフ・リン否定派、リック・ルービン派です」と言って、どっと笑いが起きた。
 私はその発言そのものがちょっと意外で、へぇと思った。そういう「派」があるのか。メンバーや作曲者じゃなくて、プロデューサーの好悪というわけだ。
 確かに、ビートルズのように録音期間が10年未満しかなく、そのほとんどをジョージ・マーティンがプロデューサーを務めていたバンドともなると、最後の最後にいきなり、しかもよりよってフィル・スペクターが手を突っ込んだとなると、好悪が分かれるだろう。
 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズおよび、トムさんの経歴がは長いので、色々な人がプロデュースをしたし、どのアルバムも名作だ。でも、人によってはジェフ・リンのプロデューシングが気に入らない人も居るそうだ。
 多重録音の多用や、録音の切り貼り、やや過剰なポップス性。確かにロックンロールとしては相容れない物があるかも知れない。

 しかし私の場合、トムさんのスタジオ録音作品で最初に聴いて心を奪われたのが "Free Fallin'" だったので、ジェフ・リン・プロデュースの3作品にまったく不満はないし、素晴らしいコラボレーションだったと思う。
 ジェフ・リンがプロデュースしたジョージの作品に慣れ親しんでいた一方で、ELOの曲はまったく聴いたことがなかったのが幸いしたのかも知れない。逆に ELO を先に知っていたらどうだろう?トム・ペティのプロデューサーとしては、「否定派」なるものになることも、可能性が無くもない。

 「否定派」とか「擁護派」とか言うのでは無く、ジェフ・リンもリック・ルービンも、トムさんの音楽履歴を飾ったプロデューサーだったに過ぎなく、トムさんとマイクの(ここ、重要。プロデューサーは、トムさんだけではなくマイクにも好かれることが重要)音楽の行く道は一筋 ―― まっすぐではないしろ、 ―― 続いていったのであり、決して途切れることは無かった。

Every Shade of Blue (The Heads and The Hearts)2023/11/23 22:01

 ザ・ヘッズ&ザ・ハーツの2022年発表の最新アルバム [Every Shade of Blue] をおそまきながら購入。
 好きなバンドなので、当然 CD を購入。昨今はやりのサブスクでは、突然聴けなくなるリスクがあるとか。恐ろしい。Amazon で買ってみたら意外にもプラスチックケース。このバンド、ずっと紙ジャケだったと思うのだが、どうしたのだろう。しかもバキバキに割れていて箱のケースの体をなしていない…まぁ、ディスクが無事だから良いのだけど。

 相変わらず安定のソングライティングと演奏で、安心して聴ける。これといったキラー・チューンがあるわけではないが、ザ・ヘッズ&ザ・ハーツらしい美しくてしっとりとして、でもちゃんとビートのあるロックが心地よい。
 やや優しい曲調が多いののでブルージーな強さが好きが人には物足りないかも知れないが、フォーキーな手触りと優しさが好きな人にはたまらないだろう。

 まず、タイトル曲の "Every Shade of Blue" ―― 少しオーケストラサウンドが余計かも知れないけど、彼らしい曲だ。



 お次は、このアルバムの中では私が一番好きな "Virginia (wind in the night)" ―― 叫びたくなる心情が溢れている感じでたまらない。



 最後は、"Tiebreaker" ―― 女性メンバー,チャリティのヴォーカルがうまくフィーチャーされている。実はわたし、これまでのアルバムでの、彼女が担当するリード・ヴォーカルがあまり好きではなかったのだ。わざと拙くしている感じなのだが、実際に拙くて嫌だった。
 しかし、今回は彼女の歌がとても良かったので、素敵だと思う。ちょっと残念なのは、彼女のフィドルが堪能できる曲が無かったことかな。今回はそういうコンセプトだったと言うことだろうか。

Bob Dylan at Budokan2023/11/29 20:47

 ボブ・ディランの [The Complete Budokan 1978] を買うか否か、だいぶ迷っていた。
 普通、ディラン様のアイテムは迷わず買うし、ブートレッグ・シリーズは豪華版には手を出さずに通常版にしておくという選択も決まっている。
 しかし、今回の [The Complete Budokan] は、そもそもブートレグ・シリーズでもなければ、新しいライブ盤でもない。完全に1978年初来日したときのライブ音源を、CD 4枚組で完全収録しており、その一バージョンしか売り出さないのだ。
 なんとも悩ましい。もともと、1978年初来日の時の演奏そのものが余り好きではないし、とにかく箱がでかい。あんまり大きな箱というは好きではないのだ。
 悩んだ末に、いつもはネットで購入するところ、新宿のタワーレコードに出かけて行き、実物を手に取って考えることにした。
 ありました、[The Complete Budokan 1978] ―― 桜に桃色のディラン様。ピカピカのジャケットが目立つ。そして手に持つと、重い!でかい!うっとおしい!即決で却下。ちゃんと実物を目で見て良かったと思う。
 既に発売されている [At Budokan] には含まれていない楽曲の存在が惜しいが、まぁ、そういうことも人生にはあるさ。



 せっかくの桜ディラン様を買わなかった穴埋めというか、ここ数日ずっと既出の [Bob Dylan At Budokan] を聴いている。
 曲目的には、ほぼザ・ベスト盤!といった有名曲目白押しのラインナップなのだが、なにせ演奏そのものがなんだか素っ頓狂なのだ。このアルバムを買ったときから、今までずっとその「素っ頓狂だ」という感想に変化がない。
 「ローリング・サンダー・レヴュー」と同じ大編成ではあるが、前者はロック色が強くて、格好良かった。しかし、[At Budokan] は終始軽快な雰囲気で、なんだか間抜けにすら聞こえる。
 その「間抜け」の最たる物が、フルートの存在だと思う。とにかくこのフルートがうるさい。別にフルートに恨みはない(そもそも、私は11-15歳までベーム式のフルートを吹いていたし、音大時代は龍笛を吹いていた)。しかし、いかんせんフルートはロック向きではないのだ。音色がロックしていない割には、悪目立ちするオブリガード(カウンター・メロディとも言う)が耳障り。
 フルートよりはまだロック向きになれるはずのサックスもかなりうるさく、私の好みの使われ方ではない。ロックでのサックスは、歌うのでは無く、リズムをたたき出す感じで使って欲しいのだが…。

 曲目は良いのに、演奏がイマイチというのが、1978年の武道館であった。これを豪華版ボックスにするくらいなら、2001年のパシフィコ横浜を出してくれれば良いのに。私が見たディランのなかで一番良かったのがあのときだった。
 もっとも、ディラン様のライブは終わりなき旅である。彼の最高のライブは、これからなのかも知れない。