The Rolling Stones Exhibitionism2019/06/02 19:48

 ストーンズ展こと、The Rolling Stones Exhibitionism に関しては、当初見に行くつもりがなかった。音楽は聴く物で、展示物を見る物ではないからね。
 だが、開催期間が延長される、周囲で見に行ったという人が増える、見に行けというプレッシャーがかかる・・・というわけで、結局見に出かけたというわけ。



 一番良かったのは、ライブ映像が見られる場所だった・・・それじゃぁ、展覧会を見に行く意味が無いじゃないかと思うが、正直なところだ。
 衣装とかが並んでいても、着て歌って踊る人、つまり中身がないと、あまり楽しくない。ギターも、弾いている映像と組み合わせて展示していると、面白かっただろう。
 ミキシング体験ができるところは、人にも勧められていたのだが、ちょっと音が小さくて、物足りなかったかな。

 ロンドンでメジャー・デビュー前にブライアン、ミック、キースなどがたむろっていたフラットの再現は、ちょっと面白かった。60年代前半の生活感とか出ているし、レコードのタイトルなども興味深い。
 
 それから、意外と良かったのは、ステージ脇を再現したエリアかも知れない。ごちゃっとしていて、今にもストーンズが現れて、ステージへ向かいそうで良かった。



 展示の最後は、"Satisfaction" のライブ映像を、3Dで見る趣向。
 実は3D映像って初めて見るのだが、こんなものかなぁと、ちょっと拍子抜けた。ストーンズよりも、観客が立体的に見える。

 ともあれ、ザ・ローリング・ストーンズはロックンロール・ミュージックの頂点に君臨し、その音楽、音楽に伴うビジュアルが、天才的にイカしていて、魅惑的なのだった。

Tom Meets Mike2019/06/08 22:48

 バンド結成秘話というのは、良いものだ。
 友達がチューニングができる奴を連れてきたとか、幼友達とダートフォード駅で再会するとか、「あなた、アフガニスタンに行ってましたね」とか。

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのバンド結成秘話は、間違いなく1970年にトムさんがマイクに初めて会った日のエピソードだろう。ほとんど伝説化していて、当の本人の口から語られても、ディテールが違って面白い。

 まず、最初に広く流布したのは、ボックスセット "Playback" のライナーに記載されていたバンド史だと思う。
 それによると、ドラマーのランダル・マーシュのオーディションのために、その住まいを訪ねたトムさんと、トム・リードン。マーシュのルームメイトはギターが弾けると言うので ――

 間もなく彼(マーシュ)は、マイク・キャンベルという名の痩せて物静かな若者を連れて戻ってきた。ペティは彼に「ジョニー・B・グッド」を弾けるかと尋ねる。キャンベルは「やれると思うよ」ともぐもぐ答えたが、演奏が始まると2人のトムは彼のピッキングに惹き込まれ、興奮してしまった。ペティとリードンは互いに顔を見合わせ、キャンベルを見つめると「僕らのバンドに入るんだ!」と言った。

 私は学生時代にこのボックスを手に入れて読んだのだが ―― つまり、自分以外のトム・ペティ・ファンを知らない頃 ―― そのときから、このエピソードが大好きだった。
 当人たちも好きだったようで、「カントム」こと、[Conversations with Tom Petty] (2005)によると、こうなっている。

  ぼくらはジャムを始めた。ぼくらがマーシュに「リズムギターが居ると良いよな」と相談すると、「俺のルームメイトはギターを弾くぜ」と言う。それで、マイクを引き入れた。
 マイクが日本製のギターを持っていたので、ぼくは言った。「俺、リッケンバッカーを持ってるから、使っても良いよ。」
 すると、マイクは「これでいいよ」と言った。
 マイクは "Johnny B Good" を弾き始めた。そして曲が終わるなり、ぼくらは言った。
「バンドに入れ!」


 ここでは一言「日本製」と言っているが、その意味するところは、トムさんが自分のリッケンバッカーをいくらか自慢げに貸そうとしたところからも、だめなギターだったことが分かる。
 ハートブレイカーズの伝記映画 [Runnin' Down a Dream] (2007)になると、トムさんから語られる話に、さらに色が加わる。

 それでギタリストが二人は必要だという話になった。ランダルは奥の部屋にいる友達が、ギターを弾くと言った。
(ランダルが)こう言うのが聞こえた。
「マイク、お前リズムギターを弾けるか?」
   すると、声が返ってきた。「うん、できると思うよ。」
 その部屋に居たのが、マイク・キャンベルだった。あいつは、裾を切り落としたジーンズを着ていたけど、あれ以来見てないな。
 マイクは80ドルの日本製ギターを持っていた。この時点でぼくらは一斉に視線を落とした。「うわぁ。こいつじゃ、だめだ。」ってね。マイクが “Johnny B. Good” を演奏し始めると、ぼくらはもはやドラマーどころじゃなくなった。
 歌が終わると、ぼくはすぐに言った。 「おい、バンドに入るんだ。」
「ええ、でも…」
「でもじゃない。入るんだ。」
 その場ですぐに、ぼくらは友達になった。


 日本製のギター、80ドルになった。そしてマイクが変なジーンズをはいている。
 しかし、話はこれでは終わらない。時は過ぎ、2017年。トムさんの「伝説盛り」はここまでくる。



 友達の車でマーシュとマイクのところにやってきたトムさん。まず、ドアを開けたのが「身長が7フィートくらいありそうな(2メートルくらい?)妙な男」ということで、いきなり縦長過ぎるマイク登場。
 しかも、「たった1ドルのギターだ。たった1ドルの、日本製のギターを持っていた!」それじゃあ、道で拾ったのと同じじゃないか。そして、"Johnny B. Goode" を演奏し終わると、
「あんたが何者か知らないけど、バンドに入れ!これからずっとだ!」
 重要なのは、"forever" という言葉だろう。その1970年から47年。"forever" の言葉通り、マイクはずっと一緒のバンドにいたのだから。

 さて、2019年1月、マイクも Guitar World のインタビューで、初めてトムさんと会ったときのことを話している。
 さすがにギターは1ドルではないが、80ドルでもない。

 ぼくが部屋に入ると、髪の長いトムがいた。ほかの連中も髪が長かった。ぼくはそのとき髪が短くて、裾を切ったジーンズをはいていた。しかも60ドルの日本製のギターを持っていた。完全にオタクだよね。彼らの顔が「だめだこりゃ。絶対無理」って言っているのが分かった。 そういうことはほかにもあったんだよ。でもぼく自身、連中がクールだなと思った。
 とにかくみんなで座ると、「何をやる」とぼくが尋ねた。すると彼らが「何ができる」と訊き返すので、"Johnny B. Goode"を提案した。
 演奏し終わると、トムがぼくを見て言った。
 「あんたが何者か知らないけど、バンドに入れ。これからずっとだ。」
 それがトムに会った夜だった。


 "Johnny B. Goode" を言い出したのは、マイクになっている。そしてトムさんや仲間の長髪が印象的だったようだ。マイクはそれ以前にフロリダ大学の芝生で演奏する彼らを見て、格好良いと思っていたので、なおさら自分のイケてなさが目立ったのだろう。安物の日本製ギターも含めて。
 しつこく言及される「日本製」は、絶対に褒め言葉ではなく、もちろん貶しているのだが、日本人としてはちょっと嬉しい。笑い話の一部になれたのだから。
 トムさんの最後の台詞は、たぶんトムさんがライブで語ったのが、マイクに伝染したのだろう。"forever" という言葉は、トムさんが世を去ったことで現実になってしまった。

 この手の伝説は、真実が語られる事なんて、ちっとも重要じゃない。当人たちが盛りに盛って、おおいに結構。そこには、彼ら自身の思い入れと、愛おしみが込められているのだ。人にはそういう青春の思い出があって良いし、それをバンドのファンも愛しているのだから。

Faster がやってきた、ヤァ!ヤァ!ヤァ!2019/06/13 21:43

 セバスチャン・ベッテルのファンとしては、つらいF1シーズンが続いている。そしてファン全員分の痛みに耐えているのは、彼自身だろう。
 セバスチャン、あなたがどんなに厳しい時も、苦しいときも、いつでもあなたを応援している。あなたの走りと、あなたの人間そのものが好きだから。

 先月、ニキ・ラウダが亡くなって、私は俄に意を決した。"Faster" のピクチャー・レコードを買おう、と。
 ラウダと言えば、三年前に初めてウィーンに行った際、最初に入ったスーパーのショッピングカートに、彼の写真入りの広告があるのを見て、やっぱりラウダは英雄なんだと再認識した。
"Faster" のMVで言うと、イントロ前、エンジン音の鳴る14秒に映る、赤いヘルメットのドライバーがラウダだ。

 言うまでもなく、"Faster" はジョージ・ハリスンによるF1賛歌。いまよりもずっと危険で、死亡事故も多かった当時から、命を懸けてスピードに挑むレーサーたちへの愛情を表現しており、「フォーミュラ・ワン・サーカスのすべてに捧ぐ」と記されている。
 親友のジャッキー・スチュワートと、1976年の大事故から復帰したことも記憶に新しかったニキ・ラウダにインスパイアされて作られた。

 ピクチャー・レコードのA面は、九人の有名なレーサーの顔があしらわれている。
 スターリング・モス、ファンジオ、ジャッキー・スチュワート、ニキ・ラウダ、ヨッヘン・リント、ジム・クラーク、グレアム・ヒル、ジョディ・シャクティ、エマーソン・フィッツパルディ。
 そしてB面は収録曲 "Your Love Is Forever" で、1978年に癌で亡くなったグンナー・ニルソンがロータスを駆る姿が使われている。A面がもちろん有名なのだが、このB面もとても格好良い。後輪が、もの凄く大きい!
 このレコードの売り上げは、ニルソン癌基金に寄付された。

 さて。私にはレコードを買う習慣がない。
 一体どこでどうすれば入手できるのか、皆目分からなかったのだが・・・なんだかよく分からないけど、適当にネットで買った!コンディションの良い中古品を "mint" ということを、初めて知った。
 さぁ、来ましたよ、はるばるヨーロッパから!



 わぁい!ジョージ&F1ファンとして、一人前になったような気がする!幸せ。
 実は。このたび、二枚買ったのだ。例によって適当に注文するから、知らないうちに二枚になったとか、そういうことではない。かねがね ―― 正確には2007年から思っていたのだが、いつか "Faster" のピクチャー・レコードを入手するときは、二枚と決めていたのだ。
 そのようなわけで、UKとスペインから1枚ずつ入手。一枚は自分用。もう一枚は、ある人にプレゼントした。ふふふ。
 そしてレコード・プレイヤーは持っていない。ふふふ。

The Doors Sing "Reading Rainbow" Theme2019/06/17 20:16

 前から言っているが、私はジミー・ファロンが好きだ。やることなすこと、いちいち面白い。
 この間は、日本帰りの料理人のラーメン(?)を食べまくっていた。



 ジミー・ファロンの動画を漫然と見ていると、いくらでも時間を潰せるというか、時間の無駄というか。しかし凄く楽しい。
 このたびはまったのは、こちら。
 だめだ、笑いすぎてつらい。



 [Reading Rainbow] というのは、アメリカの教育的な子供番組だそうだ。
 このドアーズのマネ、最初は笑うのだが、だんだん普通に格好良くなってきた。ドアーズのファンは怒るのだろうか?私はファロンがディラン様のマネをするのも大好きだ。
 本当に、合成で一人ウィルベリーズやればいいのに。

We are the Wilburys!2019/06/22 23:22

 ライブ・イベントで "Handle with Care" を演奏されたものを、二つチェック。
 まずは、ハートブレイカーズに、ジェフ・リン、ジャクソン・ブラウンを迎えての演奏。スコット・サーストンも元気そうでよかった。マイク、仕切っております。



 ジャクソン・ブラウンのジョージ・パート、良い感じ。豊かな歌声で素敵だ。
 私はディラン様&トムさんパートで、絶対にマイクが歌い出すと思っていたのに ―― !歌わなかった!ええ?!そこは歌うところじゃないの?満を持して、マイクが歌うのだとばかり思っていた!
 マイクは何かこの曲に彼なりの思いがあって、ギターに徹しているのだろうか。

 そして始まったジェフ・リンの北米ツアー。ダニー・ハリスンがオープニング・アクトを務めるのだが、当然のごとく、"Handle with Care" での共演。そりゃぁ、これがなきゃ怒りますよ。



 ジョージ・パートを、ダニーが務めるのは予想の範囲内。ダニーは話し方こそジョージに似ていないが、歌声は似てきた。すごくマッチしている。
 予想外だったのは、ロイ・パートをジェフ・リンではなく、ギタリストさんが歌ったこと。え、なんでそこで遠慮するんだろう?でも、もちろん、その後で入ってくるジェフ・リン。
 演奏した後、ジェフにダニーがキスするところが憎いね。というか心得てるね、ダニー。

 動画サイトを見ると、彼らのような一流のプロのみならず、たくさんのひとが "Handle with Care" のカバーをしている。
 この曲は生まれたその日から、30年たってもずっと、友情の賛歌であり続けるのだろう。

Elliot Roberts2019/06/27 21:02

 6月21日に、エリオット・ロバーツが亡くなった。
 ニール・ヤングのマネージャーを長年つとめ、そちらで有名なようだが、私にとってはやはり、ボブ・ディランのマネージャーで、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズとディランを引き合わせた、仕掛け人である。
 TP&HBのヒストリー映画 "Runnin' Down a Dream" の後半の最初に、ロバーツが登場し、その顛末を語る。
 曰く、ファーム・エイドへの出演がきまったディラン。バックバンドを探していたが、難航。そこでロバーツがTP&HBを提案。「ほかならぬボブのためなら、きっとトムはやってくれる。」そのもくろみどおり、トムさんは驚喜して、ディランとの共演を快諾した。
 この下り、本当に最高。ジョージまで出てきてコメントしているのだから、この映画の中でも指折りの好きなシーンだ。



 当時35歳。若いトムさんがまぶしい。貫禄のあるディラン様に対して、どこか女性的ですらある蠱惑的な彼が、ロックをまとって斜めから飛び込んでくる。
 黒いトップハットに、見事な金髪、袖口の青い裏地、ちょっと抜け感のあるブーツ。どこをとっても最高。ビジュアル的に一番好きなトムさんの一つだ。
 マイクも舞台上で終始ニコニコしているのが印象的。ハートブレイカーズは若い駆け出しからヒットメーカー、そしてさらにその先へと進むべき時を迎え、ボブ・ディランという最高の水先案内人を得た。
 ディランにとってもハートブレイカーズとの日々は良い思い出だったようで、そのツアーが終わるのをとても惜しんでいた。思うに、ディランがウィルベリーズの再結成("Volume 3") に熱心だったのは、ジョージと一緒にいたかったのもさることながら、この若い金髪の青年とまた一緒にやりたかったという理由もあったのではないだろうか。

 ボブ・ディラン+トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ ―― 映像をリマスター、追加、完全版にして、是非とも再発してほしい。もちろん、Bootleg シリーズで。巨大ボックスにしてかまわない。下手すると二つ買う。
 それとも、両者完全な並列の夢の企画として、まったく独立した巨大ボックスにしてくれても良い!
 ディランはBootlegも二巡目に入った感がある。このハートブレイカーズ時代に、ぜひチャレンジしてほしい。