Tomorrow Is a Long Time2024/04/07 19:26

 初めての春開催となった F1 日本GP も無事終了。角田くんが入賞して、めでたしめでたし。本当によかった。来日したご一行様も秋とはひと味違う ―― しかも幸運にも桜の満開と重なった、日本での開催を楽しんでくれたのではないだろうか。
 GPの週末が始まる前は、やたらと「あなたが読みそうな記事」に、セバスチャン・ベッテルのF1 復帰か、はたまたポルシェなのかと、そういう記事が上がってきて、いちいち「いやいや、それは無いから」と、自分を落ち着かせていた。
 困るのは、世の中には「エイプリルフールのネタ」としか思えないほど、突拍子も無いことが起きることだ。もっとも顕著な例は、「ボブ・ディランのノーベル文学賞受賞」と、「高橋大輔のアイスダンス転向」。話題になっては「冗談」として扱われてきたのに、実現してしまうのだから世の中わからない。
 私にとっての、いまのところ実現しないであろうというネタは、「セバスチャンの現役復帰」、「坂本花織の4回転ループ」、「トラヴェリング・ウィルベリーズ再結成」の三つだ。

   最後の一つは、難しいが意外と不可能でも無いような気がする。そもそもウィルベリーズはオリジナルから一人欠けた状態でも二枚目のアルバムを制作しているのだ。
 ダニーがジョージの代理を務めるのはまずハードルが低いと思うし、トムさんの代役はマイクがつとめて全然不自然ではない状況になっている。そうなったらあとはジェフ・リンを引っ張り出すのはこれまたハードルが低く、最終的にはディラン様次第ということになる。
 そりゃあ無理だ ―― というのは当然だが、去年はディラン様とハートブレイカーズの共演という、とんでもないことが実現したことを忘れてはいけない。ウィルベリーズ再結成と言いつつ、私としてはハートブレイカーズ込みである。

 80年代のディラン様とハートブレイカーズ。"Tomorrow Is a Long Time" を演奏している珍しい動画を発見。これはほとんどベンモントとディラン様の二人だけ ―― マイクのナイスアシストあり ―― で成立した、しっとりとして美しいパフォーマンスだ。思わず息を詰めて聴き入り、終わるなり「素晴らしい!」と声を上げずにはいられなかった。

Sue Me Sue You Blues2024/03/17 20:37

 F1 はスポーツとして好きなので、レースが見られればそれだけで良いのだが、世の中はいろいろ複雑で、面倒なことが周囲でおこり、フェリペ・マッサの2008年のチャンピオンシップをめぐる訴訟の話もその一つだ。確かにこの年、彼はシンガポールGPでポイントを失ったし、最終戦は渾身の走りで優勝したが、チャンピオンシップだけは彼の指の間からすり抜けた。
 16年後の今、マッサの心の内はどんなものか、想像すらできない。すきなドライバーだったので、彼の人生がより豊かで幸せな物になることを祈っている。それは必ずしも訴訟とは結びつかないかも知れないけど。

 デイモン・ヒルはさすがのユーモア感覚を披露している。

F1王者ヒル「もし父の王座を奪うなら...訴えてやる!」とジョーク飛ばす

 ヒルの顔を見ると、必ず思い出すのはジョージの姿。ジョージと訴訟と言えばもちろんこの曲だ。



 この曲は、ビートルズ解散以来、泥沼化していた訴訟のやり合いにインスピレーションを得ている。ジョージ自身、訴訟を起こしたり、起こされたりでだんだん馬鹿馬鹿しなってきたのだろう。ビートルズのパロディ・バンド(ジョージも制作に関わっている)ザ・ラットルズでもメンバー同士が訴え合い、一人は間違えて自分で自分を訴えたりしているのだ。
 演奏に参加しているのは、ゲイリー・ライト、ニッキー・ホプキンズ、クラウス・フォアマン、そしてジム・ケルトナー。さすがジョージのセッション、豪華メンバーがお揃いだ。

 この曲は、ジェシ・エド・デイヴィスに提供されている。



 ジョージの演奏より、よりブルーが濃い感じがする。ヴォーカリストとしては、さすがにジョージのほうが上手だ。ギタープレイとしてはジェシ・エド・デイヴィスの魅力を存分に味わうことが出来る。

Why Didn't They Ask Evans2024/03/10 16:25

 アガサ・クリスティのファンなので、映像化はそこそこ見るのだが、近年の映画もテレビも不作続きである。ケネス・ブラナーの映画も、ジョン・マルコビッチのテレビも最初の作品で見る気を失った。
 今夜から NHK で、いわゆるノン・シリーズの「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」の放映が始まる。あまり期待していなかったのだが、制作がヒュー・ローリーだときいて俄然興味が湧いた。彼も出演するし、エマ・トンプソンまで出演するというのだから、必見である。



 ヒュー・ローリーといえば、ブリティッシュ・コメディ界の大スター。名門ケンブリッジ大学のフットライツ出身で、盟友のスティーヴン・フライとともに名作スケッチの数々を生み出した。ちなみに、エマ・トンプソンもフットライツ以来の盟友である。ローリーはコメディのみならず、医療ドラマの主演を経て俳優としても活躍している。

 ローリーの良いと思うところの一つが、音楽が得意なところだ。ギターもピアノも玄人はだし。
 以前も貼り付けたことがあるこちらの [Protest Song] というスケッチでは、ボブ・ディランのパロディとおぼしきミュージシャンが活躍する。



 歌詞の肝心な所を忘れてしまい、適当にごまかすのが最高。
 もう一つ面白かったのが、F1 ウィナーのインタビュー。最初に挿入される映像を見ると、80年代末頃かな?面白いことに、ボソボソとしたしゃべり口がキミ・ライコネンに、姿は痩せすぎたセバスチャン・ベッテルに似ている。要するに好きだ。



 ひどく後ろ向きなウィナーに、どうしても "happy" と言わせたいインタビュアーがどんどんエスカレートする辺りは、[Dead parrot] を彷彿とさせる。ローリー&フライのスケッチは、最終的に切れたフライがローリーをぶん殴って終わらせることが多い。

 今夜からの放映は、ブリティッシュ・カルチャー好きを満足させることが出来るのか?要チェックである。

ルイスがフェラーリにやってくる ヤァ!ヤァ!ヤァ!2024/02/05 19:53

 2025年から、ルイス・ハミルトンがフェラーリに移籍すると発表した。

 「フェラぁ~リ?!」
 声が裏返ってしまった。

 いやいや、待て待て。確かに一昨年来、ルイスがメルセデスに不満を持っているということは分かっていた。だがしかし。フェラーリだけは!フェラーリだけは無いと思っていた。アロンソやキミ(出戻り含む)、セバスチャンはアリだったが、ルイスだけは無いと。
 アロンソやセバスチャンだってチャンピオンシップで善戦した年もあったから、フェラーリにだってそれなりの戦闘力は期待できるだろう。ルイスが加入して、化学反応が起きて、びっくりな展開になったら…?!面白いだろうな。いや今年のうちに、勢力図が変わっても構わないのだが。私は今のチャンピオン以外が勝ってくれればそれ良いのだ。(6月にオランダに行く予定なのだが、これで良いのだろうか)

 フェラーリの動画を探したら、トム・オデール の "Time to rise again" のイケてる動画があった。



 それにしても、ルイスがメルセデス・エンジンから離れる日が来るとは思わなかった。彼はマクラーレンでデビューしてから、2チームにしか所属していないし ―― しかもメルセデス初年に、マクラーレンのピットにはいってしまったことがある ―― エンジンは一貫してメルセデスだった。
 おかげで「ルイスの穴は誰が埋める?!」という話題が熱い。だれもが「欲しい」ランド・ノリスはマクラーレンと契約済みだし…まぁ、F1 の世界は契約アクロバットがいくらでも跋扈するので、何が起るのか分からない。
 一番おもしろい説は、「セバスチャンのカムバック」である。しかも真っ先に名前が挙がったから笑ってしまった。トト・ウルフは明確に否定しているし、まぁ無いんだろうけど、みんなセバスチャンが帰ってきてくれるといいなと、期待しているのだ。言うなれば、「ディラン,ノーベル賞受賞」のような一種のネタである。現実になる事もある。

 最後に、BBC の古い映像を貼り付けておこう。12歳のルイスがカートを操る姿が ―― 特に背中の筋肉の動きが ―― 既に一流ドライバーだ。当時セナを模したヘルメットを被っており、なぜ今のカーナンバーが44なのかが分かる。そして本当に彼は「ロン・デニスの秘蔵っ子」であったことがよく分かる。

When 12 year old Lewis Hamilton dreamt of F1 stardom, 1997

お薦めの曲2023/10/29 20:50

 スポーツをテレビで見るのが好きな私。ただでさえ、野球,F1,フィギュアスケートの三大スポーツに、ラグビーが重なったので、さぁ大変。
 今週末のタイムテーブルはこのようになった。

28日土曜日 4:00 ラグビー・ワールドカップ三位決定戦
28日土曜日 14:00 フィギュアスケートGPシリーズカナダ男女ショート(録画)
28日土曜日 18:30 プロ野球日本シリーズ第一戦
29日日曜日 4:00 ラグビー・ワールドカップ決勝戦
29日日曜日 6:00 F1 メキシコGP 予選
29日日曜日 14:00 フィギュアスケートGPシリーズカナダ男女フリー(録画)
29日日曜日 18:30 プロ野球日本シリーズ第二戦
30日月曜日 5:00 F1 メキシコGP 決勝

 実は先週、ラグビーの準決勝があって、同じような進行が二週連続なのだ。これらを全て見るのだが、さすがに全てをオンタイムで見るわけには行かない。基本的にラグビーと野球は生で見て、フィギュアとF1は録画で後追いという形を取っている。

 いよいよ始まるフィギュアスケート本番。4Aを飛ばずに勝ったマリニンの今後の作戦に注目している。スケートアメリカの女子フリーを放映しなかったテレビ編成、許さん。ルナヘン(ベルギーの、ルナ・ヘンドリクス)のフリー見たかったのに!!
 大好き坂本、好き好き坂本。坂本花織はGPシリーズ初戦から絶好調である。ジャンプもスケーティングも、振り付けの切れも絶好調で、笑顔も絶好調。これだから坂本ファン幸せなのだ。

 フィギュアスケートはスポーツとしてだけではなく、舞踊の要素があるところが面白い。当然、音楽との相性などは重要だ。フィギュアの場合はシンクロナイズドスイミングとは違って、既存の良い音楽を巧みに踊るところが良い。私はシンクロのあのオリジナル音楽がダメ。うけつけない。
 しかし、そのフィギュアスケートの人気曲にも、私の好みに合わないものもいくつかある。この数年、ずっと好きじゃないのが、映画「ムーランルージュ」と、ミューズの「エクソジェネシス交響曲」。両方とも大袈裟で空振り気味な曲調。前者は全体的に騒々しく、後者は下手なベートーヴェンとショパン要素のなんちゃって加減が我慢ならない。

 私個人的には、この曲でだれか滑ってくれないかなぁと思っている曲もある。
 今、自分で弾いているせいか、ショパンのプレリュード3曲くらい組み合わせたどうだろう。16番に、4番を挟んで、24番で締めるとかどうだろう。うまく編曲してほしい。

 単独の曲では、ベッド・ミドラーの "Rose" これで滑る人が居ないのが不思議。



 モーツァルト,ドン・ジョヴァンニによる幻想曲も、個人的にとてもお薦め。だれかショートで滑ってくれないかな。



 GPシリーズも始まったばかり。これからさらなる名作の登場を心待ちにしている。

セブが鈴鹿にやってきた、ヤァ!ヤァ!ヤァ!2023/09/24 19:41

 去年、セバスチャン・ベッテルが引退して以来、すっかり F1 関連の記事はご無沙汰である。
 もちろん、全レースを観戦しているが、やはりセバスチャンがいない F1 は寂しい。しかもチャンピオン争いはまったく面白くなく、独走状態の彼は、数少ない「好きでははいドライバー」なのだ。彼以外ならほぼ全員応援しているんだけどなぁ…
 救いは、シンガポールでフェラーリが優勝したこと、お気に入りのノリス君がシンガポール、日本と連続で2位だったこと。チャンピオン争いは、諦めるとして、残り数レース、少しでも面白いレースを魅せてくれることを期待している。

 一方、わがセバスチャン・ベッテルは引退してインスタグラムを更新しつつ、マイペースな活動を続けている。
 セブがとりわけ愛している鈴鹿では、"Buzzin' coner" 「コーナーを飛ばせ!」と題して、F1 公式に食い込んで生物多様性へ啓発活動を行った。
 鈴鹿の2コーナーの縁石をミツバチ色にする男、セバスチャン・ベッテル。コーナーの内側に、自ら道具をふるって手伝った「虫さんホテル」を設置(日本の伝統的な手法で、伊勢神宮風の作り)し、地元との子供達とも交流してペイント会。
 しかも、全20名のドライバーを動員してこの「虫さんホテル」をチームごとにペイントしてもらって生物多様性への働きかけを F1 としてアピールした。ここまでできるのも、セブの人徳の賜物。アロンソやハミルトンも、セブのためなら喜んで集ってくれる。
 セブのインスタグラムではかなり長文の日本語でアピールしてくれた。ありがとう、セブ!

Sebastian Vettel and The Grid Build 'Bee Hotels' At Suzuka! | 2023 Japanese Grand Prix



 気候変動問題、生物多様性問題、人権問題、戦禍、貧困、飢餓。そのほかにもいろいろ、この世にはたくさんの問題がある。人気者がその影響力を利用して、問題を解決へ向かわせるための、より良いムーヴメントを起こそうというのは、ジョン・レノンやジョージの例のように、何十年も昔から行われている。
 昨今、問題解決をアピールしたいあまり、かえって人々の心を逆行させる活動家がいる一方で、セブは賢く、考え深く、そして自分が身を置いた F1 の素晴らしき世界への賛辞を惜しまずに行動している。彼の愛する F1 も、どこかで多様な問題と折り合いをつけなければならない。エンジンのハイブリット化はその一環だったし、セブがいま力を入れている環境に優しい新しい燃料へのアプローチも、遠からず F1 に影響してくるだろう。
 私は今後50年、100年と F1 が続き、その面白さが継承されると良いと思っている。その一方で、このスポーツは政治、経済、テクノロジーのスポーツであり、自然環境への負荷をかけるスポーツでもある。どこかで折り合いをつけなければならない。その点を、セブはあの人なつっこい笑顔で、分かりやすくメッセージにして伝えてくれている。
 私はできる限りでセブのサポートをしたい。というか…ええ、買いましたとも!"Race without trace" のフーディも、"Buzzin' corner" の T-シャツも!一体何ユーロ吹っ飛んだんだ?もうなんでもいいよ、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのボックス物と同じで、いくらでも出すよ!

 おまけ。セブの二択!
 プロストか、セナかで、セナを選ぶかと思ったけど、セブ曰く「フェアじゃ無いな、ぼくはアランとは知り合いだから」といって、両方とのこと。
 やっぱりセブの笑顔は最高だな…!

Tina Turner2023/05/25 21:04

 ティナ・ターナーが亡くなったとの報が入った。83歳だったという。R.I.P.

 アーチストが亡くなると、俄にその業績が注目され、評価されたりするが、従来からのファンにしてみれば「もっと前からもっと評価しろ」と言いたいところだろう。しかし、人はいつ亡くなるかは分からないし、亡くなることは生まれることと同様に大きな出来事だ。致し方の無いことだと思う。

 ティナ・ターナーといえば、もちろんロックの女王ではあるが、私にとっては私の好きな誰かとの共演者という印象が強い。
 まずはこちら。1993年の F1 GP最終戦(オーストラリア?)のアフター・パーティと思われる。ああ、セナってこういう声だったっけ…?うろ覚えだ。



 私が購入したアルバムでは、エリック・クラプトンのアルバム [August] (1986)に収録されている "Tearing us apart" に、ティナ・ターナーが参加している。前にも述べたが、クラプトンの80年代というのは意外に好きなのだ。
 これは、プリンスズ・トラスト。1986年かな?



 もっと古い動画を探すと、70年代初頭にエド・サリバンン・ショーに出演している動画があった。



 これは熱い!凄まじく格好良い。いまさらどんなに奇抜なファッションで踊って見せても、このイカした熱量には敵わない。
 曲は CCR の "Proud Mary" ―― オリジナルとはかなり違う解釈だが、まさに物にした感じで、文句なし。

Vielen Dank, Sebastian!2022/11/22 21:18

 ええ、買いましたとも attitude! UK から海を渡ってきましたよ、attitude! 棚でオタマトーンやトムさん、ディラン様に囲まれて微笑んでおりますとも!



 F1 最終戦が終わり、セバスチャン・ベッテルが引退した。
 名残惜しく、寂しくてたまらないが、週末に号泣しないで済んだのは、みんなが全力でセブとの別れを惜しんだからだと思う。ドライバー20人全員揃っての夕食会(ルイス、ありがとう)に、古巣のレッド・ブル、フェラーリでも送別会とプレゼント贈呈。セブ主催で大勢の関係者とトラフィック・ランを楽しみ、テレビ中継オープニング映像はセブ・スペシャル・エディション。決勝の国歌演奏後に、ドライバー達がセブのために花道を作り、一人一人と握手(ルイスとは固くハグ)、アロンソはコックピットに入る前にわざわざ手を握って挨拶。
 無事に完走して(入賞おめでとう!)、一人特別にメイン・ストレートでドーナツ・ターンを披露し(トップ3以外は別のコーナーでやっていた)、インタビューも特別に行われた。
 予選でも鬼気迫る走りを見せて、まだまだ出来るじゃないかと惜しまれ、ルイスは「帰ってくると思う」とまで言う。
 感謝と笑顔の週末が終わり、キミ・ライコネンがセブへのお疲れ様メッセージをSNS に投稿する。
 私が泣いている暇なんてないくらい、セブの引退は感謝と祝福、友愛に満ちたものだった。こういう引退ができるドライバーが、どれくらいいるだろうか。右京さんは記憶にないと言う。

Sebastian Vettel's Farewell To Formula 1 | 2022 Abu Dhabi Grand Prix

 私にとって最初セブは、 F1 関係者がオークションに出品したビートルズのサイン入りレコードを入手した、面白くて可愛いドイツ人だった。あっという間にチャンピオンに駆け上がり、最年少ポール・ポジション、最年少ワールド・チャンピオンの称号を手にして、未だに保持している。若くしてチャンピオンに君臨すること、なんと4年。F1 がハイブリッドに移行する前の、最後の最強チャンピオンだった。
 ビートルズのファンで正格は天真爛漫、やんちゃでレース中に頭に血が上るとエラいこともしてくれた。笑顔が可愛いナイス青年で、宿泊施設の不足しているレースでは「自分たちはいいけど、報道関係のみんなが気の毒だからどうにかしてほしい」などと、気遣いも出来る素敵な大人へと成長していった。
 フェラーリに移籍してからも、けっこう活躍したと思う。優勝もたくさんしているし、ルイスとチャンピオン争いを繰り広げて、F1 を面白くしてくれた。
 ドライバーたちの代表者としても本当によく働いたし、気遣いもした。ミスをして落ち込む若いドライバーを励まし、アドバイスもした。ミックにとっては友人でもあり、父親代わりでもあった。安全・公正で、ファンのためのレースに貢献し、大雨の中クラッシュしたノリスのことを、わざわざ車を寄せて確認してくれたりもした。
 レース以外で悪目立ちして孤立しがちなルイスを、いつもサポートし、自らもこの世界をより良くするためのメッセージを説得力を持って発信し続けた。

 セブはこれから、愛する家族と幸せに暮らしつつ、川井ちゃんも言ったように、若者たちへのメッセージ発信者として活躍していくだろう。
 若者というか…ええ、私、買いましたよ!セバスチャン・ベッテル・ショップで Tシャツを!Save the Bees を!送料込みで90ユーロが吹っ飛びましたよ!

 今まで本当にありがとう、セバスチャン。お疲れ様。
 セブにいま贈る一曲 … ちょっと考えたんだけど … これかな。またお会いしましょう。
 Bleiben Sie wohlauf!

Arigato gozaimasu, Suzuka!2022/10/11 20:15

 あまり F1 に入れ込みすぎると、心が疲れてしまうし、結果が心苦しかったりすると、精神安定に支障をきたす。そのような訳で、鈴鹿での日本GPだからといってあまり目を血走らせないように、努めて冷静に、ちょっと距離をおいて見たいと思っていた。

 しかし、鈴鹿からの中継が始まると、やはり平静を保っては居られなかった。20人全ドライバー分の応援が観客席を彩る中、やはりセバスチャン・ベッテルへの応援が目に付くし、中継陣も「最後の鈴鹿」を連呼する。余り期待しすぎると、あとで辛いからやめてほしい…でも、やっぱり期待してしまう。
 その期待にまず予選 Q1で応えるセブ。アウトラップのとき、ズバズバ前を抜いて行き、最後のシケインでだけちょっと減速。本当に鈴鹿を知り尽くし、どうしたら一番早く、そして美しく走れるのかを知っている。
 Q2 はさらに鮮やかだった。おそらくエンジニアも、すべてセブに任せていたのだろう。鈴鹿でセブに指示するべき事なんて無いのかも知れない。川井ちゃん曰く、「この人、鈴鹿でトップ10逃したこと無いです」――
 そして今年の鈴鹿で、屈指の名場面となった Q3。ソフトの新品は1セットしかないので、一人だけタイミングをずらして、悠々と、美しく、爽快に駆け抜けて見せた。自分でも満足の行く走りだったようだ。まだ後ろで真剣勝負の9台が血眼になっているのに、観客席に手を振り、メッセージを送る…



 「ありがとうございます」はこちらの台詞だ。浜島さんは、「サーキットの人が泣いてるでしょうね」と言っていたが、私が号泣していた。

 さて、雨の決勝である。セブに何事も起きませんように、どうかトップ10に入れてもらえますように ―― という祈りも虚しく、最初にぶつかって、スピンして、グラベルに突っ込む ―― もう既に心がかなり疲れていたので、「ああ…人生なんて、そんなものだよね…」と、諦めの境地に入る。
 だがしかし、本当の鈴鹿の幸運は、セブのものだった。赤旗があけて、やっと始まったスプリント・レース、「誰がまっさきに突っ込んでインターにするかですよ!」と川井ちゃんは言う。要は博打だ。それがセブだった。セブ自身が、セーフティ・カー明けにインターミディエイトにすることを決断したという。
 この決断以降、幸運はずっとセブのものだった。あのアロンソに、いったんはタイヤ交換を決断させ、再度追いつかれたのは最終周回であり、フィニッシュ・ラインを通過したとき、セブのほうが何センチか前だった ―― あと1周でもあったら、セブは 7位だっただろう。
 結果はあの車で望める最高位であろう、6位、8ポイント獲得。おめでとうセブ!ありがとう、セブ!You are the driver of the day!



 セブが心から愛し、一番好きなサーキットである鈴鹿が、素晴らしい結果で本当によかったと思う。日本人のファンとしては、何の心残りもなく、セブに楽しませてもらい、セブも楽しんだことだろう。
 F1 なんて、しょせん政治,経済,テクノロジーであって、お金まみれの汚い競技かも知れない。それでもセバスチャンはこうして多くの人に愛され、温かく見送られてゆく。そういうことだって、F1にもあるのだ。これもスポーツであり、人間の良い面を見せてくれるのだ。



 パルク・フェルメに車が並んだところでテレビを消してしまったので、チャンピオンが決定したことを知ったのは、数時間後だった。特に感慨は無いのだが…まぁ、去年のような絶望的な悲劇にならなくて良かった。

Queen's Piper2022/09/21 21:39

 UK史、UK文化に興味のある者として、エリザベス女王の国葬は必見であった。がっつりテレビにかじりつき、NHKが中継を終えても、CNNで引き続き追っかけ、結局ウィンザー,セント・ジョージ・チャペルでの礼拝までつきあった。
 ウェストミンスター・アビーも見所だし、紋章官たちや、ビーフィーター達が居並んでいるのも壮観。紋章官といえば、紋章院(College of Arms)の総裁は代々のノーフォーク公爵だが、現公爵の長男(アランデル伯爵。これまた中世以来の由緒あり)ヘンリー・フィッツアラン=ハワードは、2000年代にカー・レーサーをしていて、ライコネンのチームで走ったりもしていた。彼も葬儀の席のどこかに居ただろう。
 女王の棺はウェリントン・アーチで車に乗り換えたのだが、ケンジントン・ロードを西にたどったので、ロイヤル・アルバート・ホールの前(厳密には裏)を通ったときも、おお!と思った。私はここでハートブレイカーズとディラン、計5回コンサートを見ていて、とても思い出深い。

 音楽的にも何か興味深いことがあるのではないかと期待していたが、こちらの方はそれほどサプライズもなかった。お祝い事の時は何でもありだが、さすがに葬儀となると、そうは行かないか。ヘンデルの曲くらいは聴きたかったかも知れない。
 しかし葬儀全体を通しても、もっとも印象深かったのは、"Queen's Piper" という、「女王のためのハイランド・バグパイプ奏者」の演奏だった。物の記事を読むと、女王のお目覚めのために窓の外で演奏する人が居たらしい。本当に日常的にそうしていたのかどうかはともかく、「スコットランド」のパイパーが、UK国王の棺が地下に降ろされようとするときに、別れの一曲を奏で、そして去って行ったのはかなり良かった。



 ところで、「70年ぶりの英国王の国葬」というが、果たしてそうなのだろうか。2015年にレスターでリチャード三世の葬儀が執り行われたではないか!現グロースター公爵(エリザベス女王の従弟)も出席したし、ベネディクト・カンバーバッチも来てくれた(そこか!)。リカーディアンの端くれとしては、一応強調しておかないと。
 厳密に言うと、これは funeral ではなく burial だったので、「埋葬式」とでも言うべきだろう。



 そんなこんなで、色々と動画を見ていたら、プラチナム・ジュビリーの時のオープニング映像,「女王陛下とくまのパディントンのお茶会」を改めて見て、気付いたことがある。
 女王とパディントン、そしてもう一人の登場人物である給仕。この給仕、サイモン・ファーナビーではないか!
 思えば、あの可愛くなくて、やや不気味 ――「そうじゃない感」満載 ―― でもUKカルチャー好きとしては、けっこう楽しめる映画「パディントン」の監督は、ポール・キングだ。「ザ・マイティ・ブーシュ」に、「バニー&ザ・ブル」の監督でもある。そうなると、この辺りのコメディ作品でお馴染みのファーナビーは自然なキャスティングだったわけだ。それこそ、リチャード三世の発掘ドキュメンタリーの案内役も、彼だった。
 ブーシュ・ファンとしては、ジュリアン・バラットだったらもっと面白かったな!