Nessun Dorma2022/07/30 21:07

 木曜日に飛び込んできた大きなニュースに関して、いま私は一日一日、ゆっくりと消化しようとしている。そうして理解して、自分を納得させる必要がある。だから、 とりあえずこの週末、ハンガリーGP が終わって、夏休みに入ってから整理しようと思う。
 やはり、悲しいことを乗り越えるには、少し時間がかかるのだ。

 オタマトーンのせいで、すっかり “Nessun Dorma“ ばかりが動画の履歴に残っている。
 そもそもは、プッチーニのオペラ「トゥーランドット」に登場する、テノールのためのアリアであり、日本語では「誰も寝てはならぬ」の題名で知られている。
 劇中では、最初から最後までテノールがソロで歌うわけではなく、合唱も加わった形式になっている。宇野昌磨がこの曲で滑った時は、その合唱の加わったバージョンの、ホセ・カレーラスの歌唱が用いられた。私はカレーラスのファンでもあるので、とても良い選択だったと思う。
 カレーラスというのは、言うまでもなく最高のテノールだが、独特の悲哀や脆さ、危うい雰囲気をその声に持っていて、少し音程も不明瞭な時があるのだが、それがかえって個性となり、感情に訴えかけてくる。女性ファンが圧倒的に多いのも頷ける。



 近年の “Nessun Dorma“ 人気を作ったのは、ルチアーノ・パヴァロッティと言って良いだろう。クラシックでは異例のことだが、彼はこの曲をシングル盤として発売して、大ヒットを記録したのだ。
 そのおかげで、コーラスを省いたテノールだけの短いバージョンがコンサートでよく歌われるようになり、パヴァロッティ自身や、その後のアンドレア・ボチェッリ、そして Britain's Got Talentの初代優勝者ポール・ポッツ、果てはオタマトーンまでもが、”Nessun Dorma” を熱唱するに至るというわけだ。

 もう一つ、動画を貼り付けようと色々な動画を見たが - それこそ、アレサ・フランクリンなども見たが、これはさすがにダメだった。 - 結局1990年7月7日カラカラ浴場での三大テノールほど豪華なものはないという結論に達した。指揮のズビン・メータも含めてのパフォーマンスである。動画冒頭でのメータのジェスチャーは、「寝ては、ならぬ!」という意味である。確か、これはアンコールだったような気がするが、ちょっと記憶が定かではない。
 ともあれこれを聴くと、音楽をやるものは誰しも、この曲に挑戦してみたくなるものだ。



 面白いところでは、ジェフ・ベックによる演奏というものもある。これはこれでアリかな。ただ、ギタリストはジェフ・ベックなのだし、別に技巧的に難しいことはない。ただ、プッチーニの曲が絶対的に素晴らしいのである。そこに目を付けたセンスを評価する。

British GP / Williams FW14B (1992)2022/07/05 20:17

 盛りだくさんのブリティッシュ・グランプリだった。色々な意味で…

 まずなんと言っても、ジョウとアルボンが無事で良かった。ジョウのクラッシュは本当に吹っ飛んだ感じで、ぞっとする。ラッセルじゃなくても、誰だって全速力で駆け寄らずにいられなかっただろう。チェッカーの後で、ジョウがちゃんと立って話しているのを見て、心底安心した。次戦に影響しなければ良いが。

 あのタイミングで、あそこで止まるオコン、ピットストップで分かれる明暗…去年の最終戦でも同じようなものを見たような気がする…。サインツの初ポール、初優勝はめでたいが、ルクレールのタイトル争い的にはどうなのか。ルクレールの不運がどうにも歯がゆい。
 いっそのこと、ペレスがチャンピオンになれば、私的には良いような気がしてきた。そもそも、レッド・ブルが嫌いというわけではない。(ちなみに飲みものとしてのレッド・ブルは大好物である。悪癖。)ペレスがチャンピオンになる分には、全然オッケーだな!頑張れ、チェコ!応援してる!
 ハミルトンもかなり良くなってきたので、かなりワクワクした。悪いシーズン前半ではあったが、彼のフィードバックもあっての、メルセデスの改善だろう。諦めずに、頑張って欲しい。

 ミックも初ポイント、おめでとう!多くの言葉は要らない。この人が充分祝ってくれている。

Vettel Congratulates Schumacher On His First F1 Points! | 2022 British Grand Prix

 セバスチャンこそ、お誕生日おめでとう!
 F1 の中でも特別感のあるシルバーストーンで、セブが所有(!)するウィリアムズ FW14B ―― ナイジェル・マンセルが1992年にチャンピオンになったマシンをデモンストレーション走行するという素敵なイベントがあった。なんだかもう、突っ込みどころ満載!



 格好良いなぁ。マンセル、プロスト、ヒル、ヴィルヌーヴをチャンピオンにした時代のウィリアムズ。ステアリングなんて、あんなモノだったっけ…?あまり手を振ったりすると、間違えてエンジン・ストップのボタンを押したりするから、要注意。(いつの話だ…)
 そもそも、これがセブの私物で(オークションで手に入れたらしい)、カーボン・ニュートラルの燃料で走っているという。一体どこの誰がどうやってそういう改造をしたのか?言い出したのはセブ自身なのか?シルバーストーンでデモ走行という素敵なアイディアはどこからの企画なのか?
 何はともあれ素敵なイベントの中心に、私のセバスチャンがいるのは、この上なく嬉しい。

 マンセルもお変わりなく。後ろにいる若い子は?お孫さん?ヘルメットにマンセルのサインをもらっていたのは、セブの広報担当のブリッタさん。



 「信じらんない!手が震える!」と、はしゃぐセブ!Happy Birhday の大合唱を受けるセブ!見物に来るルイス。ルイスとマンセルが手を挙げると異常に盛り上がる観客席!いいなぁ。F1 ってスポーツマンシップとか、爽やかさとは縁遠いスポーツだけど、こういうシーンを見ていると、気持ちが温かくなるじゃないか。

 最後に。川井ちゃん…。現地解説復活!…と盛り上がったら、やおら PCR 検査陽性で、日曜日にはホテルに自主隔離になってしまった!おおーい!川井ちゃーん!ルクレール並みに運が無いぞー!右京さんじゃないけど、これはびっくりである!
 ともあれ、川井ちゃんだっていい歳だ。発症したら大変だろうし、大事に至らないと良いと思う。7月はあと3レースあるし、お大事に。復活を待っています。
 クラッシュした人、勝った人、悔しかった人、嬉しかった人。みんな元気で、安全に、良い F1 シーズンにしてほしい。

Echo in the Canyon (in a Theater)2022/06/14 19:50

 バクー。フェラーリに期待した私が、やっぱり馬鹿でした。
 セバスチャン、6位おめでとう!

 先月から日本でも公開となった映画 [Echo in the Canyon] を劇場で見てきた。既にブルーレイで見ていたのだが、やはり日本語の字幕がつくと理解の度合いが違うので、とても助かる。
 映画そのものは、とても良い。お薦め。1960年代ロックンロール・ミュージックが好きな人、それに影響を受けた人(トム・ペティとか)が好きな人にも、楽しめる内容だ。
 そして誰よりも、ジェイコブ・ディランのファンのための映画である。



 かといって、「これは大傑作!音楽ファンとして必見!」と太鼓判を押せるほどでは…ないような気がする。どこか中途半端なのだ。
 例えば、ビートルズやストーンズ、ボブ・ディランなら何十時間というドキュメンタリーを作ることが出来るし、実際いくつも作られている。トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズだって、それなりのキャリアの長さと音楽の一貫性があるので、数時間のドキュメンタリーができるわけだ。
 しかしザ・バーズのドキュメンタリーはどうだろう。2、3時間の長さのあるドキュメンタリーはあるだろうか?バッファロー・スプリングフィールドは?CSN は?ビーチ・ボーイズは?ブライアン・ウィソンの生涯をドキュメンタリーにするのは可能だが、BB ではどうだろう。
 あの1960年代末期に、ローレル・キャニオンに集まったミュージシャンたちが、影響を与え合いながら、素晴らしいものを作りあげたという、核になるコンセプトがあるのだが、各ミュージシャンの音楽への視線が浅く、よく言えば初心者向け、もしくは事情が分かっている人向け。悪く言うと、なんかうすっぺらい。
   その弱点を、ジェイコブ・ディランという絶妙な立ち位置にいるミュージシャンを軸にしてインタビューとセッション、コンサートを行って補完するのだが、これまたやや中途半端。映画でのライブシーンでは、かなり盛り上がったように思えたのだが、サウンドトラックは「ライブ・アルバム」という体裁ではないので、なんだかだらけていえて、映画で感じた熱量が無く、がっかりするのだ。[Concert for George] や [George Fest] といったような完成度も見えないので、消化不良と言うしかない。

 いっそのことバーズと、CS&N、BSF だけに話を徹底的に絞った方がよかったのか。トリビュート・ライブをもっと掘り下げて、ジェイコブと仲間たちが、いかに「伝説」へ挑戦したかを追求しても良さそうだ。
 私個人としては、トムさんの最後のインタビュー動画であり、それだけでも感謝しなくてはいけないのだろうが、ここはやっぱり、リッケン「バッカー」を持ったトムさんが、ジェイコブと並んでバーズの曲を歌ってくれなきゃ。やってくれてたら、鼻血を出して感動ただろう。やっぱり惜しい。

 映画の本編とは関係ないが、鑑賞した映画館は良くなかった。画面は小さいし、音も貧弱。これだったらイヤホンつけてパソコンで鑑賞した方が良かった。
 ブルーレイは持っているので、もう一度見直してみるのが良いかも知れない。

The Webb Sisters2022/06/02 21:05

 モナコ。フェラーリに期待した私が馬鹿でした。

 フルポン村上が、永世名人に昇格!おめでとう!

 なんとなく動画を眺めていたら、2019年に開催された、トム・ペティのトリビュート・コンサートで、ハッティー・ウェッブが自分のオリジナル曲を演奏する動画が目に付いた。ちなみに、舞台上に見えるところでは、ロン・ブレアがいる。
 ハッティー・ウェッブとは、もちろん2017年にトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズが最後のツアーを行ったときに共演した、バックコーラス・デュオ,ウェッブ・シスターズの妹の方である。



 これはとても興味深い。なんと、ハープ ―― アイリッシュ・ハープくらいの大きさだろうか ―― を立ったまま肩から懸けて、体の前で弾きながら歌うというスタイルなのだ。
 ハープを弾く人(ハーパー、もしくはハーピスト)が、こういうスタイルでいるのは、初めて見た。大抵のハーパーは座って演奏するもので、大きなハープだと床に置き、中くらいなら支柱を立てて少し高さを出し、小さければ膝に置いて弾くのが普通だろう。
 ギターのように担いで弾き、なおかつ歌うというスタイルは、とても珍しいのではないだろうか。並大抵の技術ではない。
 ハッティはハープのほかに、ブズーキも弾くとのこと。姉のチャーリーは、ギター,クラリネット,ピアノを弾く。器用な姉妹デュオで、歌も上手いのでジョン・ピアースの紹介でナッシュヴィルに進出し、レナード・コーエンのツアーに同行することも多かった。
 そして2017年のハートブレイカーズとのツアーである。UK はケントからやってきた、ザ・ウェッブ・シスターズ、恐るべし。

枕草子を聴く2022/05/28 22:28

 本題に入る前に、まずは F1 ―― いよいよ、モナコである。ルクレール!勝てよ!絶対勝てよ!!
 打倒フェルスタッペンとして、どうしてもルクレールには勝ってほしい。彼はちょっと運のないところがある。チャンピオンには強運も必要なのだ。その強運を自分で引き寄せて欲しい。
 私の贔屓たちの動向は…まず、ボッタス。絶好調。この移籍は大正解だった。ルイスは去年の最終戦に受けた心の傷が癒えていない気がする。どうか折れずに粘って欲しい。リカルドはどうしちゃったかな…あの笑顔もドッカン・ブレーキ・ぶち抜きもすっかりご無沙汰だ。
 ノリスが、体調不良をおしてスペインで出走したのには、ハラハラさせられた。それでも上位入賞するのだから、やはり彼が次世代のエース候補ではないだろうか。頑張れ。
 やたらと話題を振りまく、ベッテル君。マシンの調子は良くないが、マイアミでは入賞圏内を走っていた ―― ところにミックがぶつかる。おいおい、それ、去年キミがやらかしたのと一緒じゃん!どうしてセブが大事にしている人がちゃんとミラー見てないかねぇ。しかもセブは「ふたりとも馬鹿だった」とか言って、ミックを庇うから親馬鹿認定されてるし。そういう所も好きだけどね。極めつけは、スペインでひったくり犯をスクーターで追いかけたというとんでもない話。やめて!面白いけど、やめて!危ないじゃない!セブが強盗に何かされたら、本当に耐えられない!キミ、ちゃんと叱っておいてください。あ、そういえば、去年までキミのフィジオだったマークだっけ?彼は今年からセブについたそうだ。仲良きことは良いことかな。
 セブが今年で引退するんじゃないかとか、またヒソヒソ言う人がいるけど(毎年のことだ)、私が思うに今年のセブはそれほど悪くない。むしろ、マクラーレンがリカルドに見切りをつけた場合、セブを呼び寄せる可能性もなくない。若いランドーがエースで、セブがコーチ&サポート役。ありだなぁ…もしそうなったら、私とってはフェラーリ時代に次ぐ、超ドリーム・チームだわ。

 前置きが長くなった。F1 についてはもっと早くコメントする予定だったが、今週はひどく忙しく、連日夜の11時、12時まで働いていたので、ブログをアップできなかったのだ。もっとも、ここまで凄いのはめったにないし、どうせ自宅だし、給料はちゃんと出るから、苦痛ではない。

 忙しさの中の一瞬を突いて、伶楽舎の雅楽コンサートに行った。題して「枕草子を聴く」これは面白いテーマだ。
 COVID-19 以来、伶楽舎の演奏会には行けなかったので、今回はとても久しぶり。四谷区民ホールが改修中のため、今回は中野ZERO 小ホール。うーん、大ホールは音響が良いと評判らしいけど…いかんせん、古い。ぼろい。演奏会に来たときの特別感がないんだよな … 早く四谷に戻って欲しいというのが本音。

 さて、清少納言は美しいもの、イケてるもの、素敵なもの、イマイチなもの、様々な物を自分の感性で書き記している。その中に、雅楽にまつわる記述もいくらかあり、まず楽器そのものについてコメントしている。
 彼女は横笛(龍笛など)がお気に入りだった。これは彼女特有というわけではなく、今も昔も、横笛というのはなぜか魅力的なのだと思う。私が小学生から中学時代にフルートを、大学から社会人時代に龍笛を吹いていたのも、そういう横笛マジックにかかってのことだ。
 演奏は、芝先生が復曲した「獅子乱声」を会場を歩き回りながら演奏するという、面白い指向。枕草子でも、遠くで聞こえたり、近くで聞こえたりするのが良いと言っている。
 笙はなにか面倒そうで、不思議な楽器だと言っている。これは鋭い。笙というのは複雑な構造で、メンテナンスにも手が掛かる。その割にか弱い音がするし、演奏者の顔は見えない。それでいて、雅楽最大の音色的特徴を担当しているのだ。こちらも芝先生の復曲で「狛犬乱声」で単数,複数の笙の音色を堪能できた。
 篳篥は、枕草子ではとにかくうるさいと言われている。急に凄い音を出して、びっくりさせられる。悪い意味ではなく、その「びっくりする感じ」は分かる。龍笛と笙が神秘的な空気を作ったところに、猛烈な勢いで飛び込んでくる篳篥のパワフルな音は、これまた雅楽には欠かせないし、同時に弦や打楽器も一斉に飛び込んでくるのだから、その力強さも当然だろう。曲は黄鐘調調子。
 箏の調弦の違いと、「想夫恋」のことが枕草子で言及されているため、演奏されたので、これを管弦で演奏することになった。
 雅楽には歌もあるが、その一つである東遊をやってくれてのも良かった。途中で和琴の柱が倒れてびっくりしたが、よくあることのようだ。

 後半は舞楽。枕草子で言及されてる、「抜頭」と、めずらしい二人舞の「納曽利」。うーん、今回はどうかな…どちらもちょっといまいち。特に「納曽利」での二人の舞人の息が合っていないような感じがして、改善の余地あり。
 私はどうも、芝先生の文化勲章叙勲祝いで上演された「瑞花苑」があまりにも良すぎて、あれを越える舞楽があるだろうかという価値判断になってしまっている。舞楽といえば、まずお薦めなのは「陵王」なのだろうが、私は同時に「瑞花苑」をもっとたくさん上演して、入門演目に加えるといいと思う。ご検討いただきたい。

Commercials2022/04/24 19:41

 あの、ザ・ローリング・ストーンズがケロッグのライス・シリアルのコマーシャル・ソングを歌っていたという話は、ずいぶん前に聞いたことがあるはずだが、このブログの記事にしたかどうかは覚えていない。10年以上やっていると、けっこう忘れるのだ…



   当時としてはかなりイケてる CM だったのではないだうか。

 CM には、商品をのものを連呼して買ってもらうのもや、なんとなく雰囲気でブランドイメージを売り込むものもある。
 こちらは、我らが Bose の、ルイス・ハミルトンを使った CM。ルイスとお友達のピザ・パーティの雰囲気だけで、Bose の製品そのものは出てこない。



 ちなみに、 Bose は既に今年の F1 とは提携していない。既にかなり元を取っただろう。
 ルイス、どうか腐らないで。レギュレーションの大きな変更があって、実質別の車になった以上、どこかのチームが悪い状況に陥るのは仕方が無い。ルイス自身も、それを知っているし、セバスチャンはさらにもっと身にしみて分かっている。そういう世界を生き抜いてきたのが、ライコネンやアロンソであり、ルイスやセバスチャンであってほしい。

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズは CM とは無縁かと思ったら、MTV のイベントの CM に使われていた。ハートブレイカーズ、オフィス・ワーカーになるの巻。



 例によって一番芸達者なのは、ハウイ。トムさんが電話に出たら、内容を理解する自信がない。でも、ビデオ会議はぜひともお願いしたい。

Willie Mays2022/04/10 20:02

 フィギュアスケート・シーズンの終盤に F1 が始まったものの、私のセバスチャンが欠場で物足りない想いもあったが、今週末のオーストラリアから復帰した。マシンに慣れないという低次元でもう散々な結果ではあったが、彼が帰ってきたことをみんなが歓迎し、良くも悪くも目立ち、大好きな二輪を乗り回し、ああ、セブが帰ってきたなぁと思う。
 私が好きなドライバーで言うと、ボッタスはアルファ・ロメオでも強さをそれなりに発揮し、ノリスとリカルドのマクラーレンは苦労し、ハミルトンのマシンは盛大に "porpoising" をおこし、セバスチャンは超出遅れる。
 でもまぁ、いいや。私は今シーズン、フェルスタッペンがチャンピオンにさえならなけりゃなんでもいい。(そこまでフェルスタッペンが嫌いなのかというと…嫌いというか、好きになれないのだ。)フェラーリが復活してルクレールなり、なんなんりチャンピオンになれば盛り上がるだろう。

 そして野球も始まる。野球が始まると困るのが、ダラダラとテレビで野球を見てしまうことだ。しかも、今日のような大記録に限って見ていないときている。(だってF1の決勝だったんだもん…)困った物だ。
 そういえば最近、仕事中にボブ・ディランの "Theme Time Radio Hour" を再聴している。バラカンさんの解説付き。第1シーズンの序盤で、「野球」がテーマになる。ディラン様があれでけっこう、野球好きなのは有名だ。息子だか、孫だか、だれかの野球の試合を熱心に見に行っていた。
 それでバラカンさんは解説の最後に、そのときのテーマに合う、ディラン自身の曲を一曲流すのだが、野球の時は選曲に困ったという。さすがに野球がテーマの曲というのもはない。
 ただ、歌詞に "Willie Mays" が登場する、"I Shall Be Free" を見つけ出して、流してくれた。



 ウィリー・メイズは1950年代から60年代にかけてジャイアンツなどで活躍した名プレイヤーだ。打率、本塁打、盗塁に優れた日本の最近の選手で言えば、「トリプル3」を達成したホークスの柳田や、スワローズの山田のようなタイプだろうか。
 実は彼を最も有名にしたのは守備の方で、1954年のワールドシリーズで大飛球を捕球したことで、相手チームの勝ち越しを阻み、このプレイが "The Catch" として伝説化しているのだ。確かにまっしぐらに走っており、完全にボールが落ちる場所を把握していた名プレーだ。日本の高校野球にも「奇跡のバックホーム」というのがあるが、その手の印象的な守備だろう。
 このプレーでジャイアンツはピンチを脱し、この年のワールドチャンピオンに輝いている。
 こういうのがあるから、野球ファンってのもやめられないんだ…

FIA Executive Summary Report2022/03/22 22:02

 F1 2021年シーズンは、去年12月13日(日本時間14日)に最終アブダビGPのチェッカーフラッグが振られてから、ずっと私のなかで時が止まってしまっていた。
 日本では圧倒的に、そして世界でも少数派であっただろう、ハミルトン・サポーターだった私は、間違いなく彼のものだったワールド・チャンピオンシップが、魔術にかかったかのようにほかの人の物になってしまった瞬間を、消化できなかった。
 悪夢を避けるように、あのときのことを考えないようにして、ニュース記事にもあまり触れないようにしていた。あまりにも恐ろしい現実に、それを見つめ直すのも辛かったのだ。
 だから、あのソーシャル・メディア好きなハミルトンが、ふっつりといなくなり、懲罰承知で表彰式を欠席したのも理解できた。受け入れがたい悲劇から、距離を取ることが可能であれば、誰にでもその権利はある。もしそれが、7回のワールド・チャンピオンであってもだ。

 心が片付かないまま、今年の F1 開幕を迎えた。
 最初に見たのが、バーレーンの予選セッション。そのテレビ放映の冒頭で、FIA が去年の最終戦アブダビGPに関する調査結果を発表したことを知った。曰く、「セイフティ・カーと、再スタート、周回遅れの車の扱いにおいて、レギュレーションに曖昧な点があった」とし、「レースディレクターは誠意を持って、自らの知識の及ぶ限り行動した」とのこと。
 さっそく、原文を見に行った。

FIA Executive Summary Report / Executive summary of the analysis and clarification exercise conducted by the FIA following the 2021 Abu Dhabi Grand Prix

 じっくり読んで分かったのは、レース・ディレクター(マイケル・マシ)が強いプレッシャーを受けて、難しい状況に置かれたということだ。特にメルセデスとレッドブル、双方からの無線通信がさらに彼の状況を困難な物にした ―― としている。この「チームからの口出し」が悪影響をもたらしたことは、何度か強調されている。
 さらに、前任のチャーリー・ホワイティングは、長年にわたって複数のタスクをこなしており、その経験豊かなホワイティングの急逝によって急遽就任したのがマシであることも、考慮に入れるべきだとしているように読める。
 そのような状況の結果、レース・ディレクターは、ハミルトンと、フェルスタッペンの間を走っていた周回遅れの車だけをセイフティ・カーの前に出し、グリーンにするという、「ミス」を犯したのだった。

 人間はミスをする。

 私はやっと、自分を説得することが出来たような気がする。人間は完璧ではない。そういう運命の結果として、チャンピオンシップは、ハミルトンのものにはならなかった。それが2021年の F1 だった。

 いまでも、世界にはいろいろな理不尽が起る。何の罪もない人々が、おなじく人がもたらした戦禍に苦しめられる。
 次元は異なっても、いつもどこかで、おかしな事が起きる。故意なり、誠実なミスなり。大なり、小なり。そういう諸々の中に、F1チャンピオンシップも存在したのだ。

 なんと言っても、新シーズンは始まっているのだ。しかも私の贔屓は揃いも揃って低調ときている。マクラーレンとアストン・マーチンの遅さには頭が痛い。その上セバスチャンがCOVID-19 陽性って…!私にどうしろと?
 耐えろ,耐えろ、苦しい時は必ずあるものだ…!望んだ物が手に入るとは限らない!

伝説の F1 ドライバー2021/12/02 20:32

 先月いっぱい、日本経済新聞の「私の履歴書」は中嶋悟さんで、とても楽しく読ませてもらった。
 説明無用、日本人初の F1 フルタイム・ドライバーである。中嶋さんが F1 を走るという事が決まったとき、兄たちが興奮していたような記憶がある。
 思えば、5年間 F1 ドライバーを続けることが出来ること自体が凄い。しかもプロドライバーとしての最後の実績である。中嶋さんの連載では、がむしゃらに突き進み、いつか F1 を走ってやるという根性、意志の強さ、そしてなんと言っても才能がキラキラ光っている感じが素敵だった。
 中嶋さんというと、ホンダという印象を持っていたが、それは F1 でのキャリアのせいで、中嶋さんは日本の自動車,自動車産業全体の星だったのも、新鮮な印象だった。

 中嶋さんは、いままで何度「アイルトン・セナはどんな人だった?」と訊かれただろうか。だから、連載でもセナのために一回分費やした。
 セナは、「面倒見の良い男」だった。無論、中嶋さんが敵ではなかったからだろうが、それにしても、モナコでは手の皮がむけるのを防ぐためのテープをくれるなんて(パワステ時代以前)…いい人。
 登場するドライバーの名前も、マンセル、ピケ、プロスト、アレジなどなど、伝説のドライバーばかりである。
 重いハンドル、忙しいギア操作。ここは一つ、中嶋さんとシルバーストーンを回ってみよう。



 伝説のドライバーにして、飄々として、ダンディな中嶋さん。でもけっこうお茶目な仕事もする。
 何年か前にサンドウィッチマンのバラエティ番組で、超狭小駐車場にあらゆる車を車庫入れするという、謎だけど凄く面白い企画に中嶋さん、片山右京さん、土屋圭一(なぜ土屋だけ呼び捨て?)が参加していたのだ。
 馬鹿馬鹿しいんだけど、右京さんや土屋が、ハンドルの重い古い車で四苦八苦しているのに、急に最新スーパーカーが出てくると、「ぼくこれ~」と言ってスイスイと車庫入れをする中嶋さんが最高だった。

 さぁ、F1 シーズンも大詰め。あと二戦。勝つのはフェルスタッペンか、ハミルトンか。
 宣言しておくが、私はハミルトン派である。(←少数派)どうなったとしても、良いレースをしてほしい。みんな無事に、充実したレースになりますように。

Tchaikovsky Piano Concerto No 12021/09/29 19:43

 世界アンチ・ドーピング機関(World Anti-Doping Agency, WADA)の裁定のため、いまロシアは国際スポーツ大会で、国として参加することは出来ず、国旗,国歌も使用できない。
 東京オリンピック・パラリンピックでは、ロシアからの選手が金メダルを取った場合は、国歌の代わりに、チャイコフスキーのピアノ・コンチェルト1番の冒頭をアレンジした曲が用いられたという、話は聞いていた。
 それってアイディアとしては凄いと思う。そりゃもう、格好良く、派手で威厳に満ちた、イケてる曲であることに関しては、これ以上ない ―― 反則じゃん!と突っ込みを入れたいくらいの ―― 選曲だ。

 F1 もこの制裁の対象で、ロシアでグランプリこそ開催されるものの、国旗,国歌は使用できない。シーズン前、ハースのカラーリングがロシア国旗を想起させる物ではないかと、待ったがかかったが、この問題はとりあえず「無関係」ということになっている。
 決勝レースの前、毎回国歌(地域によってはもっと狭い範囲の曲)を演奏することになっているが、先週のロシア GP でも「ナショナル・セレモニー」というものが行われ、ここでもチャイコフスキーの出番となった。
 ところが、これがやってみると、なんとも珍妙なパフォーマンスになっており、もの凄く強烈だった…
 チャイコフスキーをバックに、グルグル回るピアノとピアニスト、ピアノの上には白鳥のバレリーナがクルクル踊る…シュール過ぎる…
 世界のトップレーサー20人が神妙な顔をしているのも、そのシュールさを際立たせた。



 そもそも、私はピアノの上に人を載せるという趣向があまり好きではないのだ。
 ロシアの芸術の誉れ,チャイコフスキーの要素をこれでもかと詰め込んで、よく分からないシロモノになってしまった。これにはピョートルもびっくりだろう。

 レースそのものは凄く面白かった。私としては、もちろんノリスに優勝して欲しかったが、あの雨は難しすぎた。ハミルトンの強さというのは本物で、運の強さ、決断力、チーム力、間違いなく最強だと思う。でもノリス君、きみはすぐに勝つよ。その日は遠くない。応援してる。
 セバスチャンも雨にやられた。アレがなかったら、チームメイトよりも前だったし(ストロール、ミラーを見たまえ)…一方で、帰ってきたライコネンがちゃっかり上位なのだから、この人、本当に引退するのかと不思議な気分だ。