Somewhere Under Heaven2015/06/03 21:07

 トム・ペティが1994年のアルバム [Wildflowers] の20周年記念バージョン,[Wildflowers: All The Rest] から、「新曲」"Somewhere Under Heaven" を発表した。購入は、iTunes などから。
 もちろん早速購入し、何十回と聞き込んだ。

 まずジャケット(?)デザインからして格好良い。



 イントロのところだけの動画もある。イントロだけでも、もの凄い曲であることが分かる。



 まず、いきなりのイントロでびっくりしてしまった。想像していたのとは全く違う曲だった。たぶん、サンプリングして、ループさせている。
 ビートルズの "Rain" と、ザ・フーの "Baba O'Riley"、TP&HBの "Don't Come Around Here No More", シューベルトの「魔王」に似ている。過剰一歩手前の分厚いエコーに、ゴージャズなサウンドが折り重なっていく。まるで黄金のどしゃ降り。
 その渦巻く煌めきの中で、トムさんが気持ちよさそうに伸び伸びと歌っている。録音したのが20年前、40代だからトムさんも若い。

 この曲の鍵は、何と言っても重複的なリズムの綾織りだろう。大きくは2拍子、細かい6連符は、4拍子を感じさせる。その4拍子対して大きな三連符がずっしりとした躍動感を生み出している。
 ビートルズや、ELOあたりにありそうなリズム構成で、トム・ペティ,ハートブレイカーズでは極めてめずらしくはないだろうか。この洪水のような音の重なりが、頭にこびりついて離れなくなる。

 ヴォーカルの方は至ってシンプル。コーラスやオーバーダブは全く使わず、エコーだけをきかせている。
 マイクとトムさんの共作ということで、どちらのどんなアイディアがこの曲になったのか、とても興味がある。ジェフ・リンの弟子となった二人の真骨頂に近いのではないだろうか。
 ちょっと惜しいのは、曲の中盤でふっと止まるところ。とても格好良いのだが、再度はじまるループのタイミングがほんの少しだけ早いような気がする。あと、一瞬だけ待って飛び込んだ方が私は好きだ。ライブでやるとなったら、きっとそれだけの間ができるに違いない。

 驚くべきは、この曲がアルバムに入らずにお蔵入りになっていたという事実。こんな凄い曲が捨て曲だったなんて、何と恐ろしい。
 [Wildflowers: All The Rest] からの一曲目がこれだというのだから、もっと恐ろしい。アルバムにはどれほどのものが詰まっているのだろうか。
 第二期マッドクラッチも録音を開始するとのこと。ツアーこそないが、いよいよ今年のTP&HBが動き出した。