Somewhere Under Heaven2015/06/03 21:07

 トム・ペティが1994年のアルバム [Wildflowers] の20周年記念バージョン,[Wildflowers: All The Rest] から、「新曲」"Somewhere Under Heaven" を発表した。購入は、iTunes などから。
 もちろん早速購入し、何十回と聞き込んだ。

 まずジャケット(?)デザインからして格好良い。



 イントロのところだけの動画もある。イントロだけでも、もの凄い曲であることが分かる。



 まず、いきなりのイントロでびっくりしてしまった。想像していたのとは全く違う曲だった。たぶん、サンプリングして、ループさせている。
 ビートルズの "Rain" と、ザ・フーの "Baba O'Riley"、TP&HBの "Don't Come Around Here No More", シューベルトの「魔王」に似ている。過剰一歩手前の分厚いエコーに、ゴージャズなサウンドが折り重なっていく。まるで黄金のどしゃ降り。
 その渦巻く煌めきの中で、トムさんが気持ちよさそうに伸び伸びと歌っている。録音したのが20年前、40代だからトムさんも若い。

 この曲の鍵は、何と言っても重複的なリズムの綾織りだろう。大きくは2拍子、細かい6連符は、4拍子を感じさせる。その4拍子対して大きな三連符がずっしりとした躍動感を生み出している。
 ビートルズや、ELOあたりにありそうなリズム構成で、トム・ペティ,ハートブレイカーズでは極めてめずらしくはないだろうか。この洪水のような音の重なりが、頭にこびりついて離れなくなる。

 ヴォーカルの方は至ってシンプル。コーラスやオーバーダブは全く使わず、エコーだけをきかせている。
 マイクとトムさんの共作ということで、どちらのどんなアイディアがこの曲になったのか、とても興味がある。ジェフ・リンの弟子となった二人の真骨頂に近いのではないだろうか。
 ちょっと惜しいのは、曲の中盤でふっと止まるところ。とても格好良いのだが、再度はじまるループのタイミングがほんの少しだけ早いような気がする。あと、一瞬だけ待って飛び込んだ方が私は好きだ。ライブでやるとなったら、きっとそれだけの間ができるに違いない。

 驚くべきは、この曲がアルバムに入らずにお蔵入りになっていたという事実。こんな凄い曲が捨て曲だったなんて、何と恐ろしい。
 [Wildflowers: All The Rest] からの一曲目がこれだというのだから、もっと恐ろしい。アルバムにはどれほどのものが詰まっているのだろうか。
 第二期マッドクラッチも録音を開始するとのこと。ツアーこそないが、いよいよ今年のTP&HBが動き出した。

Mama, You Been on My Mind2015/06/06 20:37

 iPodのアーチスト名 Z から遡って聴いていたのだが、ようやく Aerosmith まで終わった。
 ずっと除外してきた、ストーンズ,ビートルズ,そしてTP&HB, ディラン,ジョージらを聴き始めたら、彼らのことがどれほど好きか、再自覚した。心への響き方が違う。

 ジョージのアルバムをシャッフルで聴いていたら、久しぶりに映画 [George Harriosn: Living in the Material World] のサントラにぶつかった。
 ジョージが残したデモ音源というのは、どれも名作揃いなのだが、中でも今回は "Mama, You Been on My Mind" が強く印象に残った。オリジナルは、ボブ・ディラン。ジョージの丁寧で味わい深い歌声が素晴らしい。



 おそらく全てジョージ自身が演奏し、オーバーダビングしているのだろう。たとえヴォーカルがなくても、あのギターソロを聴けば、即座にジョージと分かる。歌声とギタープレイがこれほどシンクロするアーチストというのは、ほかに居るのだろうか。
 ほんの少しのキーボード音も、控えめながら美しい存在感を出している。そして何と言っても、楽曲とその作者に対する愛情を、かみしめるように、幾重にも重ねるように、切々と歌い上げる声に、胸がしめつけられる。

 ボブ・ディラン自身は、1964年の [Another Side of Bob Dylan] のセッションでこの曲を録音していたらしいのだが、結局お蔵入り。これまた、「こんな名曲がお蔵入り?!」という好例。
 ディラン自身は気に入っている曲らしく、ジョーン・バエズとのデュエットも含めて、ライブで演奏する機会も多く、ブートレグ・シリーズにも収録されている。
 ここでは本当の意味での、ブート音源を。1970年に、ジョージと共演しているという。ニューヨークでの録音ということは、ちょうどビートルズが解散し、[All Things Must Pass] のセッションに入る前だ。
 こちらは全く、ロック・テイストのアレンジで、これはこれで面白い。ジョージのギターも軽快で絶好調。たぶん、ディランの声を真似て、一部リードも歌っていると思う。



 ちなみに、"Almost went to see Elvis" 「もう少しでエルヴィスに会うところだった」というのは、1997年にディランが心臓発作で倒れたときの発言 "I really thought I'd be seeing Elvis soon." を示唆したもの。
 そんなディラン様は、今年も元気に世界を飛び回る。6月後半からはヨーロッパツアーだ。

 "Mama, You Been on My Mind" は名曲なだけに、さまざまなカバー・バージョンがあるが、中でもロッド・スチュワートのバージョンは個性的。
 ちょっと同じ曲には思えないほどの、ロッド節になっている。最高のロックシンガーであるロッドだが、ミドルテンポで、少しケルティックな味付けの曲を歌わせても、最高に格好良い。

Sticky Fingers: Deluxe Edition2015/06/11 21:01

 心待ちにしていた、ザ・ローリング・ストーンズの [Sticky Fingers: Deluxe Edition] が届いた。スーパー・スペシャル・エディションは遠慮しておく。ディランの [The Basement Tapes: Complete] で懲りた…。

 2枚組で、1枚は1971年リリースのオリジナルを、2009年にリマスターしたのと同じ物。私のCDはもっとふるい物なので、サウンドに期待だ。
 しかし、なにはともあれ、今回の目玉はボーナストラックだ。前半の5曲は未収録の別バージョン、後半の5曲は1971年のライブ音源だ。



 聴く前に目玉かと思われたのは、"Brown Suger" のエリック・クラプトン参加バージョン。何かすごく、クラプトンクラプトンしたものを聴けるのかと期待した。しかし、期待したほどクラプトンクラプトンしていなかった。いかにもチョーキングしまくりのクラプトン節というわけではない。
 キースとミック・テイラー、さらにアル・クーパーもギターで参加しており、だれがどう目立つソロを弾くでもなし。結局、ボビー・キーズのサックスあっての "Brown Suger" なのか。これはちょっと期待はずれ。

 一方、先に動画でも音が公開されていた、"Wild Horses" がやはり素晴らしい。アルバム収録バージョンより、こちらの方が好きかも知れない。淡々としているようで、どんどん盛り上がってゆく。胸がいっぱいになる曲だ。

 未収録バージョンでもう一曲特に良かったのは、"Dead Flowers"。もともとカントリー調の曲だが、さらにそれがザ・バーズ風に始まったからびっくりしてしまった。バーズほど軽やかではないが、ギターリフが格好良い。
 面白いのが、その「バーズ風」がそれほど続かないということ。後半になるとバーズ風が薄れて、いつものストーンズっぽくなる。

 ライブの音は、さすがに若いストーンズ、特にミックの歌声はレコーディングされた声にまったく劣らず、再現性が凄い。
 ライブ音源1曲目の "Live with Me" が、華やかなニッキー・ホプキンズのピアノから始まるのが良い。どの曲にもニッキーの音が聞こえるが、特にこの曲のイントロが目立って格好良い。
 印象的なのは、"Love in Vain"。ロバート・ジョンソンの中ではこの曲が一番好きなので嬉しい。大胆に引き延ばし、観衆を惹きつけるミックが格好良い。
 "Midnight Rambler" は、もちろんおきまりのギター・バトル。去年も堪能したが、ここでもたっぷり聴かせてくれる。

 そして "Honky Tonk Women" で締め。女性コーラスがいないので、ミックの相手を務めるのは、もちろんキース。すごい調子っぱずれでバカみたい。でものそのバカっぽさが最高。最初のコーラスが一番ハズしていて、だんだん合ってくる。
 まだ30歳になるか、ならないかというストーンズの青臭くて、そのくせ完成された時代のロックンロール。しっかり残って、こうして公式に日の目を見たのだから、本当に良かった。

You're Going to Lose That Girl2015/06/14 16:05

 6月7日に、UKの俳優クリストファー・リーが亡くなったという。
 ドラキュラ映画や、最近では某ファンタジー映画への出演でも有名だが、私はファンタジーに興味がない。リーというと、まず思い浮かぶのは、1973年の映画「三銃士」のロシュフォールだ。
 アレクサンドル・デュマの「三銃士」は何度か映像化されているが、おそらくこのリチャード・レスター監督の作品(後半は別タイトルの作品「四銃士」となっている)を越えるものは未だに出ていないだろう。リーの演じるロシュフォールは原作とはかなり違うキャラクターだが、悪役としてその後の三銃士作品にも大きな影響を及ぼした。

 「三銃士」「四銃士」の監督リチャード・レスターは、言わずと知れた、ビートルズ映画 [A Hard Day's Night] ,[Help!] の監督である。そもそも、この「三銃士」シリーズは、ビートルズへのプロモーション作品として企画されたらしい。実際にはその必要もなくレスターはビートルズ映画を撮ることになり、「三銃士」の制作は70年代に持ち込まれた。
 考えてみれば、元気いっぱいの男子四人が大活躍する冒険活劇だから、ビートルズにアピールするには良い素材だっただろう。実際、ビートルズで三銃士をやったら面白そう。アトスはジョン,ポルトスはリンゴ,アラミスがポールとなれば、当然ダルタニアンはジョージだろう。それとも、リンゴがダルタニアンかな?

 [A Hard Day's Night] と[Help!] とで言うと、[Help!] の方が断然好きだ。ビートルズの音楽のみならず、UKのコメディ作品としても最高。私が最初に、「ビートルズの中で一番格好良いのはジョージだ」と気付いたのも、この作品だ。
 有名な演奏シーンもたくさんがあるが、一番好きなのは "You're Going to Lose That Girl" のシーン。いつものスタジオでの録音シーンということで、他の演奏シーンとくらべて特に趣向がこらされていないが、映像がとても美しい。
 この動画は、スペイン語字幕つき。



 曲も大好き。初期から中期にかけてのビートルズの良いところが凝縮されている。シャウトはないが、ジョンの声の格好良さが堪能できるし、ポールとジョージのコーラスも美しい。
 曲の構造は単純なようで、転調が多く、色彩の微妙な変化がサウンドに反映されていて凝った作りだ。

 映画としては、演奏が終わるとプロデューサーが、「Boys! 雑音が入っているぞ」とコントロール・ルームから呼びかける。ジョン,ポール,ジョージが「俺じゃない」「俺の顔を見るな」と言っているうちに、リンゴとドラムセットの周りが電ノコで切り取られ、ドッカーン!と落ちてしまう。ジョンが一言、「お前だな、この野郎」…他に言うことがあるだろう。

 これを見ると、また [Help!] が見たくなる。そして、"I Need You" でジョージの格好良さにもんどり打つのだろう。

傑作ができる時2015/06/17 21:11

 2010年代に入ると、毎年が1960年代ロック黄金期から、ちょうど50周年になる。ビートルズのデビュー、ストーンズのデビュー、ビートルズがアメリカ上陸、あのアルバム、このアルバム、みんな50周年。
 今年は2015年なので、ボブ・ディランの名作アルバム [Highway 61 Revisited] の発表から50周年。そして、6月15日と16日にレコーディングされたのが "Like a Rolling Stone" で、世紀の名曲が誕生してから50周年ということになる。

 [The Bootleg Series Volume 1-3] に収録されたバージョンでも分かるとおり、最初この "Like a Rolling Stone" は四分の三拍子、ワルツだった。
 ニューヨークのコロンビア・スタジオで6月15日に録音した時は、このワルツ・バージョンで、ピアノを弾きながら歌っていたディランが「喉がつまっちゃった。もう一回やる?」と言い、短い録音で終わっている。私はこのワルツバージョンも結構好き。もちろん、四拍子のロックなあの曲ありきで好きなのだが。

 翌6月16日には、マイク・ブルームフィールドのほかにも、アル・クーパーも録音に加わった。クーパーは当初見学者のつもりだったようだが、結局録音に参加することになり、あの印象的なオルガンを弾いている。プロデューサーはオルガンの音を小さくミックスしようとしたが、ディランが押し出すように主張した。これは完全にディランの天才性の勝利だろう。

 "Like a Rolling Stone" は大ヒット・シングルとなり、12週連続チャート入り、最高位2位を記録した。ちなみに、1位はビートルズの "Help!"。
  これは映画 [No Direction Home] に収録された、有名なイングランドでのコンサートの一コマ。「ロイヤル・アルバート・ホール」と俗に言われているコンサートだ。痩せっぽちの、どこかこの世のものではないような、若きディランの絶唱。



 この曲がロック史上もっとも偉大な楽曲と評されているのは有名な話だし、私もそう思う。その私が、この曲と肩を並べる名曲だと思っているのは、ジョージの "Isn't It a Pity" と、TP&HBの "American Girl"。
 ところで、急に話は変わるが、"American Girl" がまたカバーされているという。今度は、カナダのバンド The Wooden Sky。

 

 ええと…これは…たぶん、最高。ヴォーカルの歌い方と容姿以外は。特に歌い方が…ダメだ…。こういう歌い方の人なんだろうなぁ…
 ギターを中心とした演奏は原曲に対するリスペクトがほとんど全て。ギタリストのバックコーラスはとても良い。やはり、メインのヴォーカルって大事だ。楽曲の8割は支配してしまう。
 まぁ、名曲をカバーすると、それなりに難もあるもので。この曲とTP&HBが大好きだということはよくわかった。

 カバーしたくなる名曲が存在する、それが誕生した瞬間がある。傑作ができるとき、マイク・キャンベルは "American Girl" を録音したとき、確かに「これだ、これが自分たちの音楽だ」と確信したという。"Like a Rolling Stone" を作り上げたディランにも、同じように何かつかむものがあったことだろう。

The 10 Best Bob Dylan Songs of the 1980s2015/06/20 19:28

 ローリング・ストーン・マガジンが、読者投票による「ボブ・ディラン1980年代のベスト10」というものを発表した。

Readers' Poll: The 10 Best Bob Dylan Songs of the 1980s

 曰く、「1980年代はディランのキャリアの中で低調な時期」とのことだが…それは見方により、私にとってはそうでもない。
ともあれ、ベスト10は以下の通り。

1. Jokerman
2. Blind Willie McTell
3. Every Grain of Sand
4. Most of the Time
5. Sweetheart Like You
6. Tweeter and the Monkey Man
7. Everything Is Broken
8. Dark Eyes
9. Brownsville Girl
10. Series of Dreams

 1位は予想通り。80年代らしいポップで軽く、美しい曲で、私も好きだ。"Series of Dreams" はブートレグ・シリーズのみの収録だが、これまた好きな曲。エコーの利いた、壮大な曲調が格好良い。

 私が個人的にトップに挙げたいのが、1988年の "Silvio"。収録アルバムである [Down in the Groove] の評価はあまり良くないようだが、私は大好きな曲。初めてディラン様のコンサートを見た時も、セットリストに入っていたので、印象的なのだ。
 特に、1996年ロンドンでのライブは素晴らしい。イカしたロックが余りにも格好良い。ロニーも一緒。ディランには色々な持ち味があり、どれも好きだが、やはりロックなディランが特に好きだ。



 6位に "Tweeter and the Monkey Man" が入っているのも嬉しい。ローリング・ストーン・マガジンの記事では、ブルース・スプリングスティーンの楽曲からの拝借の件が話題になっているのだが、私はスプリングスティーンを全く知らないので、良く分からない。
 ともあれ、一緒にこの曲を書いたトム・ペティのコメントが紹介されている。

 「ボブ・ディランがこう言い出したのが始まりなんだ。『トゥイーターって名前の男の曲が書きたいな。ほかにもう一人欲しいところだ』そこでぼくが言った。『モンキー・マンはどう』すると彼は『完璧。"Tweeter and the Monkey Man" だな。オーケー、物語にしたいんだ。ニュージャージーが舞台だ。』」

 ジョージ曰く、トムさんとディランの「よく分からないアメリカ人風の会話」が上記のように始まり、この曲になった。
 ここは、2013年ハートブレイカーズの演奏で。ウィルベリーズよりも重いサウンド。最後のヴァースでの盛り上がりが格好良い。


Postpone: Roger McGuinn2015/06/23 22:58

 東京では7月1日,2日に迫っていたロジャー・マッグインの来日公演が、延期になった。

 これは大ショック。私は、今日メールが届いて初めて知った。呼び屋のフェイスブックには20日に発表になっていたらしい。だとしたら、今日になってメールというのは、遅すぎないだろうか。私は大事な仕事を欠席してでも、ロジャー・マッグインを優先するつもりだったのだ。こういうことは早く教えて欲しい。

 「アーティスト側の希望で11月末に公演を希望」とのことだが…楽しみにしていただけに、とにかく残念。
 それにしても、どいうい事情なのだろうか。あまり悪い事情でなければ良いのだが。
 そして、11月というのは、いつになるのだろう。きっと来てくれることと、行けるとを願うばかりだ。

 あまりにも残念なので、動画でも見ることにする。
 まずは、たった一人の "Turn! Turn! Turn!"



 これは圧巻。愛器リッケンバッカー370/12RM(だよね?)だけを相棒に、完璧な演奏を見せつけている。エレクトリックギターで、この密で、繊細な音色。決して強くはない声とのコンビネーションも絶妙だ。
 こういうのを見ると、ギターに憧れるし、やっぱりリッケンバッカーって格好良いと思う。欲しくなる人がウヨウヨ居るのだろう。

 もちろん、トム・ペティにもご登場願う。1990年代の共演で、"Mr.Tambourine Man"、それに続く "Turn! Turn! Turn!"。



 紹介されて、テテテっと走ってくるトムさん。まだ40代なので、オーラも貫禄もまるで無し。リッケンバッカー持ってこようよ。
 そしてお決まりの、見つめ合ってのラブラブ・デュエット。マッグイン、トムさんにそんなに見つめられてよく卒倒しないな。ああ、卒倒するのはトムさんの方か。

 80年代のボブ・ディラン with TP&HBのツアーでは、ロジャー・マッグインが前座を務めたという。もちろん彼らの共演もあったわけだ。今思えば、まだまだ若かった彼らの、あり得ないほどの豪華共演。どうせなら、もう一度やってみても良いのではないかな。そうしたら、海を越えてでも絶対に見に行くのだが。

Readers' Poll: The 10 Best Rolling Stones Songs of the 1980s2015/06/26 22:26

 2015年2月15日の記事 Blue plaque honouring Rolling Stones で話題にした、ダートフォード駅の、ブループラーク。ここには、
 「ザ・ローリング・ストーンズ 英国のロックバンド ミック・ジャガーとキース・リチャーズは、1961年10月17日に2番ホームで会い、最も成功したロックバンドとなる、ローリング・ストーンズを結成するに至る。」
 とあるのだが、ビル・ワイマンがこれに異を唱え、文言が書き直されることになったという。
 
Rolling Stones Bassist Is ‘Disgusted’ By Plaque Honoring Band

 ワイマンによれば、ストーンズの創設者はブライアン・ジョーンズであり、名付け親もジョーンズ。ミックとキースはそのバンドに参加したに過ぎない。だから、このブルー・プラークの記述は間違っている ― と。
 ストーンズを結成するきっかけはジョーンズであり、あの二人が創設者ではないことは私も知っていたので、例のブルー・プラークの内容で誤解することはなかった。しかし、紛らわしいと言えば、紛らわしい。直すというのであれば、それは正確を期するという意味で良いことだ。
 もっとも、ダートフォード駅で、ミックとキースが再会したという「出来事」の重要性が、下がるわけでもない。相変わらず、ストーンズ・ファンにとっては、大事な場所であり続けるだろう。
 それにしても、ビル・ワインマン。面白い人だ。

 ローリング・ストーン・マガジンは、「1980年代の名曲投票」がシリーズ化しているらしく、ディランに続いて今度は、ザ・ローリング・ストーンズの読者投票ベスト10を発表した。

Readers' Poll: The 10 Best Rolling Stones Songs of the 1980s

1. Start Me Up
2. One Hit (to the Body)
3. Emotional Rescue
4. Waiting on a Friend
5. Undercover of the Night
6. She's So Cold
7. Mixed Emotions
8. Little T & A
9. Hang Fire
10. Almost Hear You Sigh

 1位は誰もが想像する曲だろう。私個人的には、 "Waiting on a Friend" が2位くらいにきても良い。"Hang Fire" も上位だ。あの "Tururururu..." というコーラスの格好良さは最高。
 さすがのストーンズも80年代というとポップでライトな雰囲気があるが、それでもほとんどブレのないロックンロールぶり。ビートルズやディランが大きく変容し続けたのに対して、この一本気な格好良さが、ストーンズの良さだ。

 動画はどれも格好良いが、ここは1989年の "Mixed Emotion"で。80年代も相変わらず喧嘩と仲直りを繰り返したグリマー・ツインズも、結局はいつも通りのラブラブなのだ。

Scott Thurston2015/06/29 22:42

 一昨日は、いつもお世話になっている、Heartbreaker's Japan Party のオフ会だった。

 今回は映像ありの会で、いつもながらに充実の映像鑑賞となった。とても楽しい。
 特に、現在のTP&HBから、5年ごとに彼らの姿を遡って見てゆこうという趣向は面白かった。トムさんの髪型とシャツ、ジャケットなどにあーだ、こーだと言いつつ、やがて現れるハウイの姿に、悲しみを新たにせずにはいられなかった。唯一無二の、あの素晴らしい歌声、バンドワーク、彼の元気な頃のバンドを見るにつけ、その不在が寂しくてたまらない。
 …などと言うシンミリした気分を、ぶっ飛ばしてくれてしまったのが、「スコット・サーストンと、スティーヴ・フェローニの昔の姿もチェックしよう!」企画。
 スティーヴ・フェローニも驚いたが(しかし格好良かった)、スコット・サーストンにはもっと驚いた!!!

 見せてもらったのは、1979年。イギー・ポップのバンドマンとしてのスコット・サーストン!推定27歳!!!(当時、バンドがストゥージズと言ったのかどうかは知らない)
 余りの凄さに、悲鳴を上げていたので、どの曲かは良く分からない。とりあえずこの曲をアップする。いや、スコットにとっては「晒す」…だろうか?



 おおおおおおお…髪の毛が多い!!!誰だ、これ!!?
 今でもスコットはスマートで格好良いが、この頃は更に細い!

 いや、髪の毛やパンツはどうでも良い。アイメイクをしている!あれは絶対、アイラインを引いている!下手したらマスカラも塗っている!!!
 最近では、男子のアイメイクを、「マンスカラ manscara」とか「ガイライナー guyliner」と言う。「パイレーツ・オブ・カリビアン」のジョニー・デップと言えば分かり易いか。
 いや、しかしここはやはり、ノエル・フィールディングにお出まし願う。



 左のジュリアンはアイメイクはしていないけど。いや、時々するか…

 スコット・サーストンのアイメイクだけで話が終わっては気の毒なので、1999年ローリング・ストーン誌のトムさんのコメントを紹介。Wikipedia に載っている。

 「ぼくはずっと、スコットを端っこから前に出そうとしてきたんだ。彼はいつも、自分を『サイドブレイカー』とか言って、サイド・マンとみなしていたからね。それでいつも端っこに居ようとするんだ。
 でも、ぼくらはみんな、彼が大好きだ。ぼくと一緒に歌っても凄く良いしね。とにかくいつも一緒にいて欲しいんだ。
 ぼくら、他のメンバーにとって、スコットは緩衝材でもある。ぼくらが喧嘩になったり、派閥争いになったりすると、彼が間に入って、『じゃぁ、こうしたらどうだい?』といってくれる。あのダックヘッド ― ぼくらはそう呼んでいるんだけど、彼はニュートラルだから。フロリダ出身じゃないし、昔のあれやこれやのしがらみが無いんだ。」


 ツッコミどころ満載。「アヒル頭」って…アヒルに似ているって意味だろうか。アイメイクしたアヒル。
 喧嘩になったり、派閥争いになったりって…主に、トムさん,マイク,ベンモント,昔だったらスタンのことなのだろう。
 あれで意外と、マイクとトムさんは喧嘩しそうにないので、主にベンモント…?フロリダの頃はあーだ、こーだで、年下が苦労したり、不満を抱いたりするのは、昔から同じなのだろう。…と、勝手にベンモントをジョージ・ポジションにつける。名誉だぞ、ベンモント!

 ストゥージズのジェイムズ・ウィリアムソンによると、ギターはもちろんのこと、スコットはキーボードも上手いと言う。ハートブレイカーズには凄いピアニストが一名いるので、スコット・サーストンはもっぱら補助的にしかキーボードを弾かない。贅沢だ。
 思えば、フロリダの近所仲間で作った少年バンドが、いまやすっかり贅沢なラインナップになったものだ。スティーヴにも、スコットにも、これからも正真正銘ハートブレイカーズとして活躍し続けて欲しい。