Green Book2024/08/04 20:25

 夏の休みの時期、すこし映画を見ることもある。  「グリーンブック Green Book」は2018年の映画で、いろいろな賞を獲得しているし、ピアニスト関係、友情の物語という事で、もっと早く見ていてもよさそうな作品だったが、なんとなく今まで機会を逃していた。

 一流かつ高名な黒人ピアニスト、ドン・シャーリーは、映画ではクラシックのピアニストとなっているが、実際にはジャズを取り入れた自作を演奏する人であり、純粋な意味でのクラシック・ピアニストとはいえなそうだ。バッハを思わせる対位法を駆使し、ジャズ的な味わいで、個性豊かな演奏が映画でも再現されて、とても印象深かった。
 物語としては、1962年当時の黒人差別、「黒人らしさ」「白人らしさ」という価値の決めつけ、セクシュアリティも相まって、孤独との闘いに考えさせられた。それゆえの困難、苦しみがあっても、友情を得ることもできるという、希望の映画であった。その救いの点がこの映画の言いたいところだろう。

 黒人のクラシック・ピアニストと言えば、真っ先に思い出すのはアンドレ・ワッツ。去年亡くなった。 ワッツはシャーリーより約20歳若かった。母親はハンガリー人という点も、シャーリーとは異なる。
 ともあれ、ワッツはそのすさまじいヴィルトゥオーソぶりで、世界を圧倒した。動画サイトなどを見るとひどく下手な 「ラ・カンパネッラ」溢れていて辟易するが、私がこの曲の演奏を人に勧めるとしたら、断然アンドレ・ワッツだ。



 映画の中で、シャーリーが大衆的な(黒人が入れる)レストランの舞台で、ピアノの腕を披露するシーンで、ショパンのエチュード「木枯らし」を弾いた。この曲は私でも弾くぐらいなので、「最難曲」というわけではないが、短くて派手で技術を見せつけるにはうってつけの選曲だ。
 小林愛実さんの演奏を聞いたら、映画での演奏が吹っ飛んでしまうくらい素晴らしかった。けた違い。

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