Ahead by a Century2020/09/01 20:35

 音楽との出会いは様々だ。
 先日、なんとなくテレビをつけていたら、今月から始まる海外ドラマの、短い番宣が流れた。その最後にほんの少しだけ流れた音楽のサウンドが良かった。
 さっそく検索して、分かったのはトラジカリー・ヒップによる、"Ahead by a Century" と言う曲であること。
 そしてYouTubeでビデオを見たのだが、これがものすごく感動的で、大好きな音だった。



 さらに検索して分かったのは、このトラジカリー・ヒップという、「カナダの国民的バンド」の、日本語の情報が極端に少ないことだ。Wikipedia には日本語版がないし、アマゾンのレビューにも日本語が皆無。いわゆる Small in Japanらしい。
 そして、検索にあがってくる日本語の記事はすべからく、このバンドが永遠の終わりを迎えたということを、伝えるものだった。

 2016年5月、バンドは、ボーカリストである、ゴード・ダウニーが末期の脳腫瘍を患っていることと、夏に最後のツアーを行うことを公表した。ツアー最終日はカナダ全国に複数のメディアで中継され、最後に "Ahead by a Century" が演奏された。
 ダウニーは2017年10月17日に亡くなった。

 あまりにも"Ahead by a Century" が良かったので、収録アルバム [Trouble at the henhouse] を聞いてみた。
 バンドのジャンル的には、オルタナティブ・ロックといったところだろうか。サウンドが重め、かつ暗め。どうやら "Ahead by a Century" は例外的にフォーキーなサウンドのようだ。
 たぶん、私の好きなジャンルのミュージシャンではないのだと思う。―― Wikipedia (英語)は Folk Rockとも表記しているし、ほかのアルバムを聴いていないから断定は出来ないが ―― でも、"Ahead by a Century" は間違いなく、深い愛着を持たせる、感動的な大曲だ。

 ツアー最終日、これが最後なのだと分かって "Ahead by a Century" を迎えた人々の、心の内は、どのようなものだっただろうか。

Tom Petty 28th February 19922020/09/05 21:14

 最近 YouTube に上がった動画に、1992年2月28日の(放送なのか、収録日なのかは不明)、トム・ペティのインタビューがあがった。
 さっそく、チェック!ジョニー・デップも出てくるよ!



 きゃぁー!!トムさん可愛い!格好良い!何コレ、最高!
 若トムと渋トムの、超ハイブリッド型じゃない?!髪型も決まってるし、髭のあんばいも丁度いいし、ちょっとオタクな工業系大学生みたいなシャツもイイ!
 やっぱり若さなのかな~…美しすぎて、いつまでも見ていられる~…
 トムさんはもちろん音楽が最高なんだけど、ロックンローラーとして必要な容姿の輝きにも、十分に恵まれていると思うのだ。誰だ、日本じゃウケない顔だとか言った奴は。

 コメントの内容は、ソロ・アーチストとしてのキャリアを経ての、ハートブレイカーズとの関係についてが多い。
 正直言って、 [Full Moon Fever] の制作中はハートブレイカーズのことは頭に無かったけど(マイクは例外らしい)、いざツアーをやるとなると、ハートブレイカーズ無しでは、まったく想像もできなかったらしい。
 ちょっとワガママ・フロントマンだけど、可愛くもある。

 バンドが演奏することを念頭に、ソングライティングをするかと言うことに関しては、曲を書くのに集中していて、バンドがどうこうはあまり考慮に入れていないとのこと。しかし幸運なことに、バンドはトムさんの作った音楽を理解する力に長けている。
 15年前と比べて、バンドは変化したかという点に関しては、それほど変わったとは思っていない。変わらずずっと一緒に居て、プレイをしていて最高の仲間でありつづけている ――
 今になって思うと、このあたりはちょっと微妙な空気がバンドに漂いつつある時期だったはずだ。スタンの態度,立場は難しくなっていただろう。

 まぁ、内容はともかく、このインタビューは、ひたすら容姿の素晴らしいトムさんを愛でるだけでも良さそう。こういうものが残っていて、動画投稿サイトにあがってくるのだから、ありがたい物だ。

Now The Green Blade Riseth / Gimme Some Lovin2020/09/09 19:52

 ライブ活動の代わりに、自宅やその周辺で動画を撮って公開するアーチストは多い。
 その中で、先月スティーヴ・ウインウッドがアップした動画は興味深い。

 まず、緑豊かな屋外で、"Now The Green Blade Riseth " ―― 古風に聞こえるが、実際に作曲されたのは20世紀初頭の、賛美歌(聖歌?hymn のカテゴリーになっている)である。



 なんだか、やけに良い機材を持っている羊飼いのおじさんみたいだ。
 うーん、良いんだけど、なんか違うなぁ。私がウインウッドに求めているのはそれじゃなくて…こっちだ!
 同日にアップされた "Gimme Some Lovin" ―― 犬も勘定に入っています!



 やっぱり、これだな!
 こういう演奏を見るとよく分かるのだが、この曲のヴォーカル以外で一番重要な要素はリズムで、その上にうなっているからこそ、オルガンが効果的に聞こえる。
 この中で最もやってみたい楽器は、ベースかも知れない。それから、必ず四拍目に打鍵しているピアノ。
 ウインウッドの指先を見て面白かったのが、彼の指がけっこう反っているところ。クラシック弾きだったら、たぶんあり得ない形をしている。彼はギターを弾くというのもあるが、右手の指があれだけ反っているのは、鍵盤をなでるように弾くからだろう。

 ウィンウッドの服装は、ちょっと謎。なんであんなに着込んでいるのだろうか。しかもこの時期に。寒いところに住んでいるのだろうか。あの天井の高い部屋は、壁を見ても寒そうではある。

Cracked Rear View2020/09/13 19:57

 2000年前後にヒットを飛ばしたロックバンドのいくつかが、けっこう好きだと言ったときに、そういえば、フーティ&ザ・ブローフィッシュをあげ損なったと思った。
 もっとも、フーティに関しては、アルバムを揃えているわけでも、メンバーを把握しているわけでもない。

 たしか、何かのきっかけでフーティのアルバムが欲しかったのだが、CDショップに並んでいなかったと、ぼやいていたことがあった。当時はまだ 、月に一度はCDショップを歩き回ってCDを買う習慣があったのだ。
 それを聞いた友人が、デビューアルバムの、[Cracked Rear View] をプレゼントしてくれたのだ。

 まず、オープニング・チューンの "Hanna Jane" のイントロからして最高。潔いドラムから、飾り気のないシンプルなギターリフ、そしてフーティ最大の特徴である、ダリアスのソウルフルなヴォーカル。
 サビのビートルズ風のコーラスも爽やかで最高だ。そもそも、このバンドが、大学の寮でのシャワー室で歌っていたダリアスを、バンドに誘ったのが始まりのだというから、この爽快感いっぱいの雰囲気も理解できる。
 この一曲だけで、この1994年のデビュー・アルバムが凄まじいヒット作になった理由もわかるというものだ。

 

 ボブ・ディランへの言及と、歌詞の引用のある "Only Wanna Be With You" に関しては、予想外のヒット故の、ひと悶着がおこった。



 フーティ側が述べるには、発表前にディランのマネージメント側に問い合わせをして、許可をもらっていたのだという。しかし、アルバムは発表されて大ヒットするや、ディランのマネージメント側から「待った」がかかったというのだ。
 これはため息の出る、「あるある」だ。アーチスト本人はべつに気にもかけていないが、大ヒットしたり、大きな賞を取りそうになると、マネージメント側が乗り出してしまうのだ。ポピュラーミュージックが巨大産業になったが故の、負の側面だろう。
 結局、この曲のクレジットにディランの名前も載り、お金も分配されることで落ち着いた。ディラン自身がその事を、知っているかどうかも怪しい。

 気を取り直して名曲 "Hold My Hand"  ―― 壮大な曲調が、ロックの素朴さ、まっすぐさと、うまく融合した曲だ。
 デイヴィッド・クロスビーがコーラスに参加しているという。言われてみると、サビのコーラスにその声が聞こえるようだ。



 確認してみると、フーティのアルバムは、このデビュー・アルバムと、セカンドの [Fairweather Johnson] だけを持っていた。
 そのような訳で、2005年までに発表されたほかのアルバムも注文した。Work From Home の最中だが、その良い所は、好きな音楽を聴きながら仕事ができること。フーティはその良いお供になりそうだ。

日本列島KISSだらけフェス2020/09/17 19:45

 先週のタモリ倶楽部は面白かった。いつも面白いが、特に面白かった。
 ファイナル・ツアーがキャンセルになってしまった、キッスのファンたちの失意の思いを埋めるべく、日本のトリビュート(コピー)・バンドが全国から集まる(リモート)という趣向。
 私はキッスの「キの字」も知らないのだが、やはりこういう本気のファンが集まって、楽しく盛り上がる様子というは、見ていて面白い。

 まず興味深かったのが、ゲスト出演したマーティ・フリードマンに、キッスのギタリストのオーディションの声が掛かった時の話。
 条件があって、「長髪であること,金髪ではないこと,痩せていること」―― までは満たしていたが、身長が180cm 以上なかったために、ダメだったのだという。
 うわぁ…キッスになるって大変なんだなぁ… あんなにギター上手いのに。

 北海道、鹿児島、神戸のキッス・バンドマンたちは、涙ぐましい知恵と工夫でキッスの再現に挑み、そしてお国言葉が混じるのがイカしている。
 衣装が凝っているので、それなりの難しさもあるが、思えば顔は塗ってしまえば良いので、キッスは意外とコピーしやすいのかも知れない。
 演出にも力が入っており、ドラムがせり上がる、ギターを毎回壊す、花火を焚くなどなど、ただ音楽をやっていれば良いわけではないらしい。「音楽では敵わないので、そこに力を入れている」とまで言っていたのには、笑った。
 火を吹く人もいて、夜の駐車場で練習するとのこと。… ステージ上で火を吹くのって、違法じゃなかったっけ?炎の長さに規定があるんだっけ?下手にテレビなんか出ると、次のステージでは消防からストップがかかるのではないだろうか(数年前、その手の騒ぎで公演が中断・強制終了させられたアメリカのバンドがあった…)。

 それから、心底大変だなぁと思ったのは、ジーン・シモンズ役の人は、血を吐く演出をしなければならないこと。トマトジュースだの、イチゴヨーグルトだの、床を汚すのでやらないだの、とにかく大変なのだ。
 ポール・スタンレーの人は胸毛がなきゃいけないらしいのだが、日本人には辛い。思えば、ハゲのビートルズ・コピーバンドなんて、あってはならないのだから、ただバンドをやるだけではなく、「コピー,再現」を目指すバンドって凄いと思う。
 私はグレン・グールドを目指して速弾きチャレンジをすることはあっても(成功しない)、椅子を極端に低くしたりとかは、やろうとも思わない。

 それでこのブログ記事に、どんなキッスの動画を貼り付けるか考えたのだが、キッスのことを知らなさすぎて、見当もつかない。
 適当に貼り付けて、キッス・ファンに失礼なことをするのもあれなので、ザ・マイティ・ブーシュから、「グラム・フォーク」(ヴィンスが新しい音楽の方向性を見いだそうとして、結成したシロモノ)を貼ることにした。

Knockin' on Heaven's door 12th February 19862020/09/21 20:21

 ボブ・ディランがトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズと一緒に、True Confessions Tour を開始したのは、1986年2月5日,ニュージーランドのウェリントンからだった。
 コンサートの最後は毎回、"Knockin' on Heaven's Door" で締めくくられる。
 この曲のコーラスの三回目に、ディランが "Just like so many time before" と歌い始めるのも、このツアーからだ。
 ちなみに、ディランはこのツアー以降、だいたいこの "Just like so many time before" を用いているのだが、カバーをする人たちは真似せず、"Knock, knock knockin' on heaven's door" と歌うのが通例。
 トム・ペティだけは "Just like so many time before" を継承する栄誉(?)に預かっており、ハートブレイカーズや、マッドクラッチとしてこの曲を演奏する際は、ディランと彼だけのバージョン歌詞 "Just like..." で、歌っている。
 マイク・キャンベルがこの曲をライブ演奏する機会があったら、どちらのバージョンで行くのか、興味があるところだ。"Just like..." バージョンになるのではなかろうか。

 さて、True Confessions Tour の五日目,シドニー公演には、スティーヴィー・ニックスが登場した。
 どの曲から加わったのかは不明だが、"Knockin' on Heaven's Door" で共演している動画がある。



 ディランも含めて、みんな凄いハイになって、ほとんどヤケクソ。調和もなにもあったももではない。
 ディランとトムさんがAメロを歌っている間、後ろでうろうろしているニックス。やがてコーラスになって、どうなるのかと思ったら、トムさんが肩を引き寄せ(きゃあ)、歌い出すニックス…なんか…大迫力で、バックコーラスがかすむ。
 最終的にはディラン様、トムさん、ニックスの三人のワンマイクの、凄いことになっていた…

 最後、ディランが引き上げるときに、ちょっとニックスが所在なさげなのが、可笑しかった。あれは、ディランがニックスをエスコートする形で引き上げなければいけなかったのでは?

 True Confessions Tour と、それに続く Temples in Flames Tour に関しては、前者の公演を一部編集してビデオが発売されたが、それ以降は公式なソフトは出ていない。
 ディランのブートレグシリーズとするには、ハートブレイカーズの存在が大きすぎるので、ここはやはり、改めて、ボブ・ディラン with トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの決定版として、新しいソフトを発売してほしい。ハートブレイカーズのパートをカットしてはいけないし、曲順も変えずに。映像もぜひとも欲しい。
 もの凄く売れると思う。

The Long and Winding Road2020/09/25 15:19

 私はザ・ビートルズの大ファンだが、あまり好きではない曲というものも、少数ではあるが存在する。
 まず、"Yesterday" ―― 軟弱。
 (「軟弱な音楽」というのは、音大時代の、ちょっとした流行り言葉だった。自虐的に使ったり、もしくは逆説的な褒め言葉だったりもした。)
 それから、"Michelle" ―― コードが気持ち悪い。クラシックの人がよく褒める。
 そして、"The Long and Widing Road" ――

 "The Long and Winding Road" は、ビートルズを最初に聴いた頃から知っているが、その頃から好きじゃなかった。あの大げさでバカみたいなオーケストレーションに、アホみたいに壮大なコーラス。ああいうのを求めて、ロックを聴いているのではない。

 長い間、まともに "The Long and Winding Road" を聞こうとしてこなかったが、意外と良い曲なのかも知れないと思ったのが、映画 [Yesterday] のワンシーンだった。
 世界が突然、誰もビートルズを知らない世界になってしまった中で、唯一ビートルズの曲を知っているジャックが、エド・シーランと作曲勝負をすることになり、持ち出すのが、この "The Long and Winding Road" なのだ。



 シーランが負けを認め、いくらか打ちのめされるこのシーン。
 ジャックが持ち出すビートルズの楽曲が、非常に強力でなければならない。そこで "The Long and Winding Road" ―― 私は個人的な趣味としてどうかな、と思ったが、聞いてみると、しっとりとした良い曲に思えた。

 実のところ、ストリングスとコーラスがこの曲を台無しにしたという点において、私とポールは同意見のようだ。
 [Let It Be... Naked] というリミックス・アルバムが出たのも、フィル・スペクターによって台無しにされたものを、ポールが取り戻すためではないかと思う。



 でも、どうかな…うーん。良く聞いてみると。良い曲だけど、やっぱりビートルズとしては歌謡曲的すぎて、ロックっぽさが足りない。一見、大人びた曲のようで、実のところは中途半端ではなかろうか。
 "Let It Be" みたいに、ロックでソウルフルな作りの名曲と比べると、だいぶ見劣りするような気もする。
 再評価しているのか、やっぱり気に入らないのか。ちょっとよく分からなくなった。

 この疫病流行下、ビートルズの [Get Back]映画は、来年夏以降の公開に延期されたとのこと。
 ビートルズは好きだが、否応無しにビートルズ以外の人を見る羽目になる映画なので、あまり楽しみでもないのだが、ジョージのソロ・アルバムに入っている曲などが聴けるのは、期待したい。

David Crosby (S & N)2020/09/29 20:48

 最近、すこし体調を崩し、具合が優れない。季節の変わり目に弱い体質だ。
 そのせいか、デイヴィッド・クロスビーが格好良く見える。

 おかしいなぁ、そんなはずないのに…

 容姿的には好きになる要素がないし、彼のソングライティングは私の好みより、やや暗い方向に窮屈な感じだ。
 しかし…ちょっと格好良いかも知れない。スティルスのこの曲が良すぎるし、やっぱりクロスビーの声の良さは素晴らしい。



 一応、念のため見ておくが、バーズ時代に少しだけ存在した、「可愛いクロスビー」、ビートルズの背後にあらわる。



 良い音楽に、良い演奏が揃うと、少なからず「格好良い」と感じさせるものらしい。
 以前、トラヴェリング・ウィルベリーズを評して「ジョージ以外はコーラスについては素人同然」といった人がいた。ディランはともかく ―― そんな、心外なぁ、と思わなくもないが、CS&N のこういう完璧なものを聞かされると、そうかも知れないと感じる。
 本当に、羨ましい。声がきれいで、音程が正確な人。天性の才能だろう。