Victor Borge2020/05/03 19:25

 気分転換には、笑うのが良いという。
 私は笑いたくなったら、だいたい、モンティ・パイソンをはじめとするブルティッシュ・コメディを見る。
 コメディと音楽が融合すると、更に最高。その点で大好きなのが、デンマーク出身のピアニスト・コメディアンのヴィクター・ボージェ。このブログでも以前、紹介したことがある。

 一番好きなのは、彼の80歳の誕生日記念コンサートでの、リコーダーとの共演。
 私は音大時代にバロック・リコーダーを吹いていたし、今もティン・ホイッスルを吹いているので分かるのだが、この手の楽器は笑うと吹けない。しかし、ボージェは容赦しない。リコーダー、たまらず「ピヒィー!」と吹き出す。
 設定アイコンから、英語字幕をつけて見て欲しい。



 やっと落ち着いてきたと思ったら、ビブラートをかけると同時に奇声を上げるボージェが最高。

 お次は、テレビ出演。
 本番前、5分でどうにかショパンのワルツを練習するボージェの元に、お掃除の人、メイクさん、ファンの少年がやってくる…
 お約束なんだけど、最高に面白い!

Yesterday (Film 2019)2020/05/07 21:58

 去年の映画 「イエスタデイ」を見た。(Amazon Prime レンタル)
 ビートルズが題材の映画なのに、どうしてもっと早く見なかったかと言うと、「ビートルズと言ったって、どうせレノン=マッカートニーのビートルズなんでしょ」と、勝手に拗ねていたからである。
 ごめんなさい、ちゃんとジョージ・ハリスンの楽曲入りのビートルズでした。ジョージ・ファンも楽しめます(そういうことは、もっと早く言ってくれなくちゃ…)。

 売れないミュージシャンのジャックは、突然世界中が停電したその瞬間、交通事故に遭う。意識を取り戻すと、この世からビートルズの存在が消滅しており、だれもその楽曲を知らない世界になっていた。
 そこでビートルズの楽曲を自分が作った物として披露。地元のスタジオでレコーディングしてローカルテレビに出演したところ、エド・シーラン(本人)の耳に入り、彼の前座を務めることになる。
 これを足がかりに、世界的なスターへと突き進むジャックだが、それは売れない頃からマネージャーとして支えてくれた幼なじみの女性,エリーとは異なる世界への道を意味していた…




 ビートルズの存在しない世界というアイディアが、秀逸なこの映画。ビートルズが、いかに偉大かを思い知らされる。当然音楽はどれも素晴らしい。
 ビートルズのカバー・バージョンが目白押しで、ライブ・シーンにも迫力があって良い。

 一方、コメディとしては今ひとつ。ラブストーリーという性格の方が強い。
 ビートルズ・ファンの私としては、もっと音楽作りを巡って右往左往してほしかったか。そういう意味では、最初に地元のスタジオで録音をした、ギャビンをもっと活躍させたら面白かったかも。
 もっと言ってしまえば、ラブストーリーよりも、私だったら男の友情物ににするな…

 それから、重要なことなのだが、この映画が面白いかどうかは、エド・シーランを知っているか、否かにかかっていると思う。私は彼については、その存在しか知らなかったので、面白みが半減したのではないだろうか。

 さて、「もしビートルズが存在していなかったら?」という議論である。
 映画では、ストーンズは存在しており、オエイシスは存在しないことになっている。
 だが、本当にビートルズが存在していなかったら、それどころではない。ストーンズは存在しただろうが、今日我々が知っているストーンズにはならないだろうし、オエイシスどころか、エド・シーランだって存在しなかっただろう。ロック・ポップはメジャーな存在ではなく、音楽産業自体がもっと小規模に違いない。
 そうなると、主人公ジャックのように、ギター片手にミュージシャンを夢見る若者もいなくなる。つまり、タイム・トラベルのパラドックスにはまってしまうのだ。

 むしろ、私は歴史運命論者である。細部はともかく、歴史は今日あるようになると考えている。
 もし、リバプールのジョン,ポール,ジョージ,リンゴのビートルズが出現しなくても、似たようなほかのバンドが作られ ―― バンド名は、ザ・ラトルズでも何でもいい ―― 彼らがビートルズと同じような音楽を作って、歴史に名を残しただろうと思う。

 少なくとも、私たちはビートルズのある世界に生きている。それはとても幸運なことだ。

Little Richard2020/05/11 20:22

 リトル・リチャードが亡くなったので、彼の曲を聴く。
 彼のヴォーカルで一番好きなのは、"Tutti Frutti" かな。



 私にとっては、リトル・リチャードと言えば、数々の名ロックンローラーたちのカバーが印象的だ。
 まずは。デラニー&ボニー with エリック・クラプトン。改めて聴くと、凄いな!格好良いな!



 一番好きな曲は、ジョンのおかげで "Slippin' and Slidin'"。
 やっぱりジョンはこれだよね。愛と平和より、ロックンロールでシャウトするジョンが好き。



 この曲で忘れてはならないのが、ザ・バンド。これをボックス・セット [A Musical Hitory] で聴いたときは嬉しかったな。



 名曲をありがとう、リトル・リチャード。

Start Me Up2020/05/16 15:24

 ジミー・ファロンも、いつものようにスタジオでのライブ放送が出来ず、自宅からネットで動画を配信している。
 そこで彼が先日取り上げたのが、BBCの映像(…ではなさそうだが)における、典型的(?)UK 人の有意義な家での過ごし方である。



 ミックのこのサービスは、チャリティも兼ねている。

 ミックが最後に運動して、スター・ジャンプをしたので思い出すのが、"Start Me Up" ―― 1981年のヒット曲で、ビデオも印象的だ。



 ポップで、ちょっとブルージーな曲に対して、アホ満開な三人と、穏やかな背後の二人が面白い。
 思えば、まだこの頃のストーンズは結成から20年経っていないわけで、今思うと初々しくもある。
 私もこの曲は大好きで、ライブでも盛り上がる。

 面白いところでは、ビリー・ジョエルがテレビ出演で、この曲を使いながら、ミックの物真似を伝授している物があった。
 茶目っ気があって良い。ピザが食べたくなる。

Astrid Kirchherr2020/05/20 21:27

 アストリッド・キルヒアが亡くなって、ニュースになるのだから、やはりビートルズは格の違う存在なのだと思う。

 彼女は22歳の時に、ハンブルグで活動していたビートルズと出会って交友を深め、彼らの写真を多く残した。
 まずここに、ビートルズの運の強さがあった。彼らの音楽だけではなく、ルックスにも魅力があることを、写真をやっていた彼女が理解し、作品として残したのだ。そういう資料の豊富さも、ビートルズは群を抜いている。

 アストリッドは1938年生まれなので、ジョンよりも二つ年上。若い彼らにとっては、それなりに意味のある年齢差だっただろう。アストリッドはおしゃれでイケてるお姉さんとして、彼らをプロデュースし、あの髪型や、ファッション、「見せ方」を作り上げていった。
 ジョージにとっては五歳も上となると、かなり大人に思えただろうし、実際アストリッドに憧れのような好意を抱いていたらしいと、アストリッド自身が認識していたようだ。

 最初にビートルズがハンブルグに来たときは、まだリーゼントのやぼったい少年たちの写真が残っているのだが、二回目に ―― つまり、スチュアート・サトクリフが亡くなった後 ―― 来たとき、スチュアートのアトリエで、撮影したジョンとジョージの写真が、一番好きだ。



 映画 [Living in the Material World] でもアストリッド自身が語っていたのだが、スチュのアトリエで、親友を失った悲しみを抱えるジョンと、それにそっと寄り添うジョージの姿は傑作だ。ジョージがほとんど守護天使のように見える。
 ジョージはまだ、ジョンとポールの後をくっついて回っている少年に過ぎなかったかも知れないが、アストリッドはどこかで、彼の深い精神世界のようなものを感じ取っていたのかも知れない。

Notting Hill2020/05/24 20:54

 映画「ノッティングヒルの恋人 (Notting Hill / 1999)」を見た。初めて見た。
 映画「イエスタデイ (Yesterday / 2019)」の脚本を担当した、リチャード・カーティスの代表作品(脚本)で、非常に有名な名作とのことだが、私は見る機会が無かったのだ。

 いまさら、あらすじを説明するまでもないが ―― ロンドン西部の町、ノッティングヒルで書店を営む普通の男性、ウィリアム(ヒュー・グラント)と、ハリウッドの大物女優アナ(ジュリア・ロバーツ)の恋の行方の物語である。
 ラブ・ロマンスとしては王道だし、奇妙なフラット・メイトや、個性的かつ心温まる友人たちの存在も面白い。
 だがしかし。映画史に残る超名作かというと … どうだろう…
 ウィリアムの恋心と、彼女を大事にする気持ちはすごく共感するが、アナの方はちょっと行き当たりばったりな言動が ――  そこも彼女の魅力かも知れないが ―― 共感しきれなかった。

 超変人のフラット・メイト,スパイクが、ウィリアムの「まともな方の友人たち」に、どういう経緯で加わることになったのか不明瞭だったし、さらにウィリアムの妹がどういうわけでスパイクとカップルになったのかもよく分からない。
 行きつけのレストランのオーナーシェフの扱いもちょっと唐突で、そういう細かいところがもったいない映画なのだろうか。

 音楽は、エルヴィス・コステロによる "She" が圧倒している。もちろん、オリジナルはシャルル・アズナヴール。
 コステロの大熱唱がこの映画には合っており、ジェフ・リンのカバーはちょっと分が悪い。



 ビル・ウィザーズの "Ain't No Sunshine" の使い方は上手いけど、"I know, I know, I know..." が無いのが、ちょっと物足りなかった。
 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズもカバーしている曲で、公式に出して欲しいところだ。



 あとは、"Gimme Some Lovin'" が良いシーンで使われていたのだが、たっぷりとは言えず、ちょっと惜しいかな。

Any Way You Want It2020/05/28 20:05

 マイク・キャンベルは、いま、バンド活動が出来ないので、家でギターを弾きまくり、歌いまくり、奥さんが撮影し、公開する。
 その中で、リッケンバッカーを鳴らしながら歌う "Any Way You Want It" があった。



 この曲は、もちろんトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのカバーで知っている。[Live Anthology] の "American Girl" の直前に収録されている。
 1983年の演奏で、スタンとハウイが居る。即ちボーカル・セットとしては私の一番好きな時期で、ハードでラフな演奏なのに、コーラスワークが完璧な物になっている。
 これと言ったギターソロはないけれど、マイク・キャンベルのお気に入りのようだから、この人はやはり「歌ありき」のロックンローラーなのだなと思う。

 

 オリジナルは、ザ・デイヴ・クラーク5 (DC5)で、1964年。



 トムさん曰く――

 DC5は素晴らしく、凄いシングルを作った。アルバムを買って聴くと、ちょっとがっかりするものの、でもシングルは本当に良い。彼らは安易にビートルズと比べられてしまったので、それほど高い評価は得ていない。服装もオタクっぽくてビートルズほど格好良くはなかった。でも音楽は最高。シンガーのマイク・スミスは、とても優れた、ロックンロール・シンガーだ。
 "Any Way You Want It" は、エコー過剰なシングルのうちの一つだ。ぼくらは1978年頃に、この曲を練習して、ライブ演奏した。


 なんだか、褒めているのか貶しているのかよく分からないが、とにかくトムさんはDC5のファンであることは、確かなようだ。
 1978年ウィンターランドでの演奏も残っている。こちらは珍しくコーラスはスタンではなく、ベンモントが主に担当している(当時のベースはロン・ブレア)。もしかしたら、DC5のこの曲は、トムさんのお気に入り以上に、ベンモントのお気に入りだったのかも知れない。
 それにしても若い。爆発しそうなくらい、若い…