Coffee or Tea?2013/05/03 22:05

 Tea!

 私はコーヒーが飲めない。
 味も香りも好きだが、どういうわけか胃が受け付けない。圧倒的に牛乳の多い割合にしても、どうしてもだめ。少しでもコーヒーの要素が入っていると、たちまちお腹が痛くなる。ひどいところでは、コーヒー風味の飴までだめだった。あれには、本当にコーヒーの要素が入っているのかどうかも怪しいのに。どういうわけだ。
 カフェインがダメなのかと言えば、そうでもない。日本茶は毎日ガブガブ飲むし、紅茶も大好きだ。
 ともあれ、そういう訳で、私はコーヒーが飲めない。飲みたいのだが。

 ディラン様ラジオこと、[Theme Time Radio Hour] 5回目のテーマは "Coffee"。ディラン様お気に入りのコーヒーに関する曲を色々と聴かせてくれた。今回は、スクイーズやブラーなど、新し目の曲も入っていたのが面白い。
 一番最初にかかったのが、ジ・インク・スポッツの "Java Jive"。多くのカバーがあって有名な曲だそうだ。歌詞の意味としては、いくらかドラッグの要素も入っているとのこと。



 最初にディランがジ・インク・スポッツの曲だと紹介したとき、ピンと来た。たしか、ディランとハートブレイカーズのベンモント・テンチが意気投合して、一緒に歌っていたのが、インク・スポッツの曲だったはず。
 どこで出てきた話かといえば、トム・ペティのロング・インタビュー本 [Convertions with Tom Petty](通称「カントム」)。私の翻訳では、こうなっている。

 あの頃ボブは、即興をやっていた。もしくは、ぼくらは知らなくても、ベンモントとはやっていた歌とかね。ボブはベンモントを信頼していたんだよ。
 ある夜、ボブはベンとインクスポッツの曲をやったけど、あれはすごく良かった。でもぼくらは知らなかったから、演奏のしようがなかった。


 ディラン様ラジオの最後の15分は、ピーター・バラカンが流れた曲の解説などをしてくれる。そして、最後にテーマに沿ったディラン自身の曲を1曲かけるのが、これがこの先いくらか苦労するのではないかと思われる。先週の「野球」など、本当によく見つけてきたものだと思った。
 しかし、今週の「コーヒー」は簡単だった。ディラン好きなら誰でも思いつくであろう。アルバム [Desire] から、"One more cup of coffee" が流れた。

 紅茶好きの私としては、"Tea" もテーマに入れて欲しいのだが、確かディラン様ラジオでは取り上げられていなかったと思う。彼が英国人なら絶対に入っただろう。

 紅茶が登場する曲も色々あるだろうが、ここでは私が大好きな、シスター・ヘイゼルの "Strange cup of tea"。もちろん、"cup of tea" というのは、「お気に入り」という表現であることにも掛かっている。
 メインボーカルは、いつものケンではなく、ドリュー・コープランド。リフも格好良いし、サビの軽快さがいい。さらに、最後のスキャットがイカしている。

Billy Joel 19782013/05/06 20:34

 何気なくテレビを点けてみたところ、ビリー・ジョエルが1978年に出演したBBCの [The Old Grey Whistle Test] のライブ映像が流れていた。

 ビリー・ジョエルに関しては、好きなアーチストを尋ねられて挙げる人ではないし、全てのアルバムも持っていない。
 それでも、この1978年のライブを見ていると、凄く良いと思うし、とても格好良い。特に、この動画の後半、"The Entertainer" が好きな曲だということもあって、凄く良い。
 ちなみに、冒頭では "New York State of Mind" をプレイするにあたり、「この曲をやるには、雰囲気から作らないとね。イケてるだろう?」…と喋っている。タバコに火を点け、サングラスをかけ…マイクにおでこをゴンっとぶつけるのは、多分、素。



 この若きビリー・ジョエルを見ていて、誰かに似ていると思った。
 たぶん、ボブ・ディラン、ポール・マッカートニー、ベンモント・テンチの混合物。特にポール的要素は、ソングライティングの上手さ、歌の上手さ、表情など。ベンモント要素は、やはり圧倒的なピアノの上手さだ。
 ビリー・ジョエルや、エルトン・ジョン、ベンモント・テンチなど、ポップスにおける天才ピアニストには、子供の頃クラシックを習っていた人がいくらか居る。
 1978年のライブで凄いと思ったのは、インストゥルメンタルの、"Root Beer Rag"。アルペジオの使い方が抜群に上手い。モーツァルトのピアノ・ソナタ11番の第三楽章(トルコ行進曲)とよく似ている。




 ビリー・ジョエルのファンではないので知らなかったが、彼のポップ・アーチストとしてのオリジナル・アルバムは、1993年の [River of Dreams] が最後とのこと。つまり、20年も新譜を出していないらしい。これはびっくり。(2001年にはクラシックのジャンルで1枚発表しているらしい)
 いろいろ大変らしいが、作曲能力が枯渇したのだろうか。あれだけ名曲を量産すれば、枯渇しても別に悪くはないような気がする。どうにもならない曲をダラダラ作ったり、上手くもないスタンダードのカバーをされるよりは、潔いような気がする。
 私は彼の特にファンではないからこう言うのであって、ファンにとっては、辛いことだろう。

The Wallflowers + TP&HB2013/05/09 21:08

 来週から、いよいよトム・ペティ&ザ・ハートレブレイカーズのツアーが始まる。
 そんな中、大きなニュース。あのザ・ウォールフラワーズが、6月23日の公演にスペシャル・ゲストとして参加するというのだ。たぶん、オープニング・アクトをつとめ、ハートブレイカーズの演奏中にも1曲か2曲参加するというパターンだろう。



 どうでも良い事だが、ジェイコブって、前髪クライシスなの?額ラインがどんどん上昇しているの?美男子ベンモントへの道まっしぐらなの?

 いやべつにいいんだよろっくすたーがおはげだろうがもさもさだろうがそんなことはじつりょくとはかんけいないしかっこういいものはかっこういいしべつにいいんだきにしない。(棒読み)

 それで、実際はどうなの?!最近帽子が多いのには事情があるの?!(前のめり)胸毛はボーボーなのにねぇ(「胸毛裁判」再び)。

 ウォールフラワーズは結構好きだ。なんといっても親しい友人のプッシュが凄くて聞き始めたのだが、確かにとても良い。2枚目から5枚目までのアルバムは、どれも好き。
 一方で、ジェイコブのソロはちょっと違う。私が求めるロックはちょっと違う。
 最近、バンドに復帰してアルバムを発表したが、ソングライティングの面でまだ復帰し切れていない感じがする。ソロ前はもっと突き抜けた、爽快なロックを量産していた。復活を願う。

 バンドの再開にともなってライブ活動も活発な模様。今年のスプリング・ツアーでは、北米を回っているエリック・クラプトンと一緒だった。
 これは、"The Weight" をジェイコブが歌っているシーン。カメラマン、落ち着け。それにしても、クラプトンは酷い格好しているなぁ。ジェイコブが格好良くキメているだけに、なおさら酷さが際立つ。



 夏のツアーはカウンティング・クロウズとのジョイント。その合間に、TP&HBのスペシャルゲストになるというわけ。

 マイク・キャンベルが、ウォールフラワーズの、"6th Avenue Heartache" でギターソロを弾いているというのは有名な話。
 尺を長く引っぱり過ぎなのが玉に瑕だが、名曲。



 マイクは、2003年ソングファクツでのインタビューで、このギターソロについて尋ねられているのだが(Cool Dry Placeに翻訳あり)、プロデューサーがテープを送ってきたので、オーバーダブしただけで、バンドのメンバーとは会っていないと、その辺りはサラリと流されてしまった。
 ところがそのすぐ後に、「ジョージ・ハリスンっぽく弾けて満足!しかもジョージの耳にもとまって、『やぁ、あの曲をラジオで聞いたよ。今度は、ぼくっぽくやる事にしたの?』って言われちゃった。(えへへ)」…と、何だか知らんが話がジョージに飛ぶ。
 分かっています、マイク先生はジョージ愛です。今となっては驚きません!

 そのマイクが、ジェイコブと共演している短い映像がある。
 アコースティックなライブだったのか、マイクもアコギ。なんたる贅沢!
 6月はTP&HBとウォールフラワーズ、どんな共演を見せてくれるのか、楽しみだ。

The Old Grey Whistle Test2013/05/12 20:15

 先日、ビリー・ジョエルが出演したライブ映像を記事にした。
 その出演番組が、英国BBCの [The Old Grey Whistle Test] である。1971年から1987年にかけて放映されたBBCの看板音楽番組の一つで、ジュールズ・ホランドの番組の先達である。

 珍妙なタイトルだが、Wikipedia の記事によると、ティン・パン・アレイで昔使われた言葉で、灰色の制服を着たドアマンたちに最初にプレスされたレコードを聴かせ、反応を確かめたという話に由来しているとのこと。
 番組のコンセプトは、「華々しいチャートよりも、『シリアス』なロック・ミュージックにフォーカスすること」。

 まずは、1978年のトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの、"American Girl"。実は、この映像、私が一番好きな "American Girl" 映像のひとつ。とにかく若くて格好良い!トムさんのスーツ姿もばっちりだし、ヒールの高い白い靴もイカしている。何と言っても長い前髪と、でっかいサングラスが似合っている。
 さらに、マイクのギター・プレイがアップになるのも良い。本当に格好良いの一言に尽きる。
 途中で、トムさんやバンドの来歴や、「30年たっても、まだまだ大活躍中」という解説がはいるので、最近BBCが編集した映像らしい。



 [The Old Grey Whistle Test] にはホストがおり、アーチストたちから直接話を聞き出す。
 これは、1976年ELOのジェフ・リン(サングラス無し)のインタビュー。気さくで話好きな好青年っぽい…向こうにいるデイヴィッドに「やぁ!」と声をかけるとか。誰?デイヴィッドって?



 最後はパロディ作品。
 ザ・マイティ・ブーシュでもお馴染みのマット・ベリーと、リッチ・フルチャーの番組、[Sfuff Box]。
 ホスト役は、リチャード・アヨエイド(ケンブリッジ大学フットライツのプレジデントだった)。静かで、穏やかな会話のあと、穏やかに曲が始まるが…?!ダブルネックのギターを弾いているのは、リッチ・フルチャー。彼は多分エアギター。キーボードのマット・ベリーは、おそらく彼自身の演奏だろう。

爆笑リコーダー2013/05/15 21:05

 5月14日の日本経済新聞文化面に、リコーダーを鼻で、しかも2本吹くという名手の記事が載っていた。
 とても立派な音楽家であり、教育者であるこのお方、その立派さ故に堂々とアルトとソプラノ、両リコーダーを鼻に押しつけた写真がかえって笑える。
 そもそもは、あるリコーダー奏者が口に2本のリコーダーをくわえて演奏しているのを見て、同じ事をしようと試み、さらに鼻に発展したのだと言う。「ひそかに相当な練習をした」というのだから、嬉しくなる。

 リコーダーというのは、実に気立ての良い楽器で、吹けば鳴る。
 YouTubeで検索してみると、この鼻で2本のリコーダーに挑戦し、さらにベートーヴェンの第九,第四楽章のテーマを吹く輩が山のようにいるではないか。
 たしかに、ソプラノと、アルトという、0.5オクターヴ違いの管なら、上4つの穴を塞げば合わせて音階が弾けるし、リコーダーなのでオクターヴのコントロールもできる。  さらに、「第九」は臨時記号がなく、コードも単純なので吹きやすいということになる。私 は や ら な い が。

 数ある挑戦者の中では、この人がなかなか力作。後半に独自のバリエーションを演奏する。背後にはクラリネットと、フルート、サックスがあるので、管楽器マニアなのだろうか。



 爆笑リコーダーといえば、これが決定版。私は何か嫌なことがあると、これを見ることにしている。
 デンマーク人コメディアン・ピアニストである、ヴィクター・ボーグ80歳の記念コンサートで、同じくデンマーク人リコーダー奏者、Michala Petriと、モンティの「チャルダーシュ」を共演するのだが…
 デンマーク語が分からなくても、とにかく最初から最後まで大爆笑!



 なかなか演奏が始められない!吹かせてやれよ、ボーゲ!
 あまりのおかしさに耐えられないリコーダー。本気で「ピヒィー!!」と噴き出す。そでれも暴走ピアニストは絶好調。リコーダーが舌でビブラートをかけると、奇声を発する。
 あまりのおかしさに、オケのメンバーも、観客も泣きながら見ている。しまいにはこのとても上手いリコーダー奏者はボーゲから視線をはずそうとするが、さすがにそうもいかない。
 ボーゲの動画は、見始めると果てしなく見たくなる。

素敵な知らせと、嫌な予感2013/05/18 13:28

 いよいよ、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの2013年ツアーが始まった。
 まずは、インディアナ州エヴァンスヴィルのフォード・センターから。セット・リストも公式ページには上がっている。

 注目は、なんと言っても冒頭の "So you want to be a rock 'n' roll star"。私をTP&HBファンにしたのは、この曲だ。そして、ウィルベリーズからは、"Tweeter and the Monkeyman"。確かにハートブレイカーズ向けの曲だ。格好良さそう。オリジナルにはジョージ独特のスライドは入っていないが、マイクはどうしているのだろう?その辺りにも興味がある。
 それから、"Louisiana Rain" も切なくて好きな曲。アコースティックテイストの強い曲だが、その中でエレキの響きが格好良い。

 動画も上がり始めた。
 こちらは、アンコールの "American Girl"。とても良く撮れている。マイクが自分のシグネチャーモデル,デューセンバーグを格好良く弾いている。すこし音符が変わっているようにも聞こえる。ギターの色と、シャツの色もとても合っていて素敵。
 トムさんは前髪をあれで行くことにしたらしい。まぁいいか。格好良いから。エンディング・ギターソロに入る一瞬、2分33秒くらいのトムさんが、「いくぜっ!」という感じてドキっとするほど格好良い62歳!
 ライティングもコードによって切り替えるなど、なかなか凝っている。
 ごあいさつはいつものとおり。撒くものが無くて苦笑のマイク。良いのです、マイク先生が格好良ければ、それで良いのです!



 一方、ここ日本では。
 少し、嫌な予感がしている。
 ディラン様ラジオこと、インターFMの [Theme Time Radio Hour]。毎週楽しみにしている。5月9日の放送は、エピソード6、テーマは[Jail]。アメリカで放送された順番で言うと、次のテーマは[Father] のはずが、5月16日に放送されたのは、[Luck] ― アメリカでは、エピソード38にあたる。つまり、エピソード7から、37を飛ばされたようなのだ。
 さあ、これはどうしたことか。しかも、次回のテーマは[Tears] ― アメリカではエピソード39なのだ。7から37は、どうなってしまったのだろうか。もの凄く気になるし、絶対に聞きたい。誰か、この辺りの事情をご存じの方、教えて下さい!

 毎回、ディラン様が提供する色々な話題も面白いし、曲も素晴らしい。気になった曲を後でチェックするのも楽しい。ピーター・バラカンさんの解説も嬉しいし、ディラン自身の曲を推理したり、楽しんだり。
 そういえば、インターFMのサイトに、バラカンさんの解説後に流れるピアノによるブルース曲は何かという、ツイートが載っていた。演奏者は分からないが、曲名なら分かる。ディランのアルバム[Shot of Love] 収録の、"Trouble"。

 何はともあれ、ディラン様ラジオは全エピソードを聞きたい!私の嫌な予感が、杞憂でありますように。ただ単にエピソードの順番を入れ替えただけでありますように。
 助けて、神様、仏様、ディラン様!

Psychotic Reaction2013/05/21 21:32

 きょうはスタン・リンチの誕生日。1955年なので、アメリカも21日になれば58歳。おめでとう。
 ハートブレイカーズの末っ子はまだ50代。やっぱり若い。

 スタン・リンチはとても好きだ。ハートブレイカーズに欠かせない存在だった。
 ジミー・アイヴィーンなどは、はっきりと言うが、マイクやベンモントのような正真正銘ヴィルトゥオーソに比して、技術的には劣る物があったという。しかし、私にはその詳細は分からない。凄く格好良いドラミングだと思っている。
 そして何と言っても、スタンの歌の上手さは抜群だった。トムさんとの絶妙なコーラスワークは、ハートブレイカーズに欠かせない要素だ。さらにハウイが加わると、ハートブレイカーズは一つの絶頂期を迎えたと思う。

 スタンがメイン・ヴォーカルを取った曲で有名なのが、"Psychotic Reaction"。[Playback]や、[Take the Highway] にも収録されているので、ファンにはお馴染みだ。



 このスタンがカバーする "Psychotic Reaction" について、[Playback] の解説にはこうある。

 面白かったのは、オリジナルをやっていたカウント・ファイヴの連中がオークランド・コロシアムまで僕らに会いに来て、僕らがこの曲をやるというのに感激して、僕に吸血鬼のマントをくれたことだった。彼らが席に戻るとスタンが僕を見て言った、『歌えないよ、声が出無いんだ』と言った。『何だって?こんな特別の晩に歌えないだって!彼らが来ているし、マントももらったというのに…』

 なんだか文章が変だが、私のせいではない。翻訳がこうなっているのだ。
 「吸血鬼のマント」というのが、よく分からない。
 分からないが、とりあえずそのオリジナルのカウント・ファイヴによる "Psychotic Reaction" を聞いてみよう。



 アメリカはカリフォルニアで活躍、1964年結成の5人組。ジャンルは「ガレージ・ロック」と言うそうだ。
 たぶん、アンサンブルを始める際の拍子=カウントと、伯爵=count を掛けたバンド名だろう。(ちなみに、伯爵を count というのは、ヨーロッパ大陸の呼び方で、イングランドでは earl を使う。earl はトムさんのミドルネームでもある)
 伯爵 → ドラキュラ伯爵 → ヴァンパイア → 吸血鬼コスプレ → ケープ(マント)を羽織る



 どうやら、そういう事らしい。この写真は、カウント・ファイヴのアルバムの裏ジャケットに載っているとのこと。
 トムさんがもらったのはこのケープのうちの一つ。
 質問!トムさん、そのケープ、どうしたの?着たの?トムさん…どうも似合いそうにないなぁ。帽子は似合うが、マントは似合わないと思う。こういうのは、マイクが似合うと思う。

 そういえば、トムさんはジョージの家でノサノサしていたら、大掃除を始めたジョージに「エルヴィス好き?これあげるー」と、エルヴィスのサイン入りホルスターをもらったことがある。
 ウクレレも4つもらったことだし。他にも色々ありそう。

Tears2013/05/24 23:15

 まずは、訃報から。
 狂言大蔵流の四世茂山千作さんが亡くなった。当代一の名人の死去だった。
 私にとっては、千作さんがまだ千五郎さんだったころの印象が強い。西日本が拠点の狂言師さんだったため、残念ながら直接舞台を見ることは出来なかったが、映像で見る狂言は、本当に素晴らしかった。特に「彦一ばなし」のお殿様役は、千作さん以外には考えられないほどだ。
 何年か前に、西日本の大蔵流若手楽師さんがテレビに出ているのを見たが、びっくりするほど下手なので、ちょっとショックだった。名人亡き後、彼らが成長してゆくのを祈るばかりだ。

 さて、ディラン様ラジオこと、[Theme Time Radio Hour] は、何事もなかったかのように、アメリカでのエピソード39,日本でのエピソード8 [Tears] が放送された。そして、今日はディラン様の誕生日!72歳おめでとう!
 相変わらず面白い番組で、重ね重ね、飛ばされたエピソードがどうなるのか気になる。

今回の[Tears]は、とりわけ興味深い選曲が多かった。
まずは、ソロモン・バークの、"Cry to me"。



 私にとっては、もちろんトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ若かりし頃のカバーで覚えている曲。TP&HBのカバーは、バークのカバーというよりは、やはりバークをカバーした、ストーンズのそのまたカバーと言うべきだろう。

 と、言う訳で、TP&HBの "Cry to me"。この動画のトムさんは若い。若いぞ、可愛いぞ。
 2分24秒くらいに出てくる写真の左のお兄さんは、誰だろう?TP&HBのファンなら絶対に分かっていなければいけない人のような気がするが、ピンと来ない。忘れているのかも知れない。お分かりになる人、教えて下さい。(「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥」と言うし…)



 今回のディラン様ラジオでは、スモーキー・ロビンソンのべた褒めコーナーがあり、大喜び。マーティン先生!ディラン様が、スモーキー最高って言ってます!
 スモーキーに "Tears" と来れば、当然 "The tears of a clown" かと思ったら、そこはさすがディラン様。韻の踏み方が凄い(と、コステロも言っている)、マーヴェレッツの "No More Tear-Stained Makeup" をかけた。マーサ&ヴァンデラスではないところにも、こだわりがあるのだろうか。

 ううむ、私としては、やはり "The tears of a clown" を推したい。ねぇ、マーティン先生?



 もう一つ、気になったのは、ジェイ・ガイルズ・バンドの "Cry One More Time"。凄く格好良い演奏なのだが、YouTubeにはアルバム収録版がアップされていないようだ。
 私はこの曲をどこかで聴いたような気がしていた。ザ・バンドのような、違うような…なんだか分からないでいると、最後の解説でピーター・バラカンさんが教えてくれた。グラム・パーソンズだ。彼のカバーで聞いていたらしい。
 でも、私の好みとしては、グラム・パーソンズよりは、ジェイ・ガイルズ・バンドの方が格好良い。

 最後に、バラカンさんがテーマに沿った、ディラン様自身の曲をかけることになっている。
 毎回、何をかけるのか予想するのが楽しみで、今回どういう訳か、"The Lonesome Death of Hattie Carroll" 以外が思い浮かばなかった。
 バラカンさんが「tears といえば、ほとんどのディラン・ファンが思い浮かべる曲」というので、ドキドキしたのだが、なんと、ビンゴ。"The Lonesome Death of Hattie Carroll" だった。悲しい歌ではあるが、とても美しい。
 次回のテーマは、"Laughter"。バラカンさんがかけるディランの曲は、"Bob Dylan's 115th Dream" と予想。さぁ、どうだろう?

(I'm not your) Steppin' Stone2013/05/27 22:37

 トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのツアーも、いよいよニューヨーク,ビーコンシアターでの連続公演が終わろうとしている。
 毎日数曲がかわるセットリストを見てると、今回のツアーの特徴として、お馴染みだったり、珍しかったりするカバー曲が、数曲含まれていることがわかる。"So you want to be a Rock 'n' Roll star" や、"Friend of the devil" など。
 私はもう数回TP&HBのライブを楽しんだから、これらのカバー曲が聴けるとても嬉しいが、その一方で "Free Fallin", "I won't back down", "Learning to fly" などお馴染みのヒット曲が聴けないのが残念に思われる人も居るだろう。この辺りの兼ね合いは難しいところだ。

 さて、今回のカバー曲の中で、モンキーズ・ファンをどよめかせているのが、"(I'm not your)Steppin' Stone" だ。



 私はこの曲を知らなかった。モンキーズは、[The Monkees Show] のDVDが欲しい欲しいと思いつつ、いつも後回しになっている ― 不義理をしているような存在だ。
 最初に "(I'm not your)Steppin' Stone" を録音したのは、Paul Revere & the Raiders、1966年。同年、すぐにモンキーズがカバーしたのが、この曲の一番のヒットバージョンとのこと。モンキーズの特徴と思われる、やや甘い感じが曲のハードさとのコントラストを成していて、凄く格好良い。



 これは確かに、TP&HBが好きそうな曲。Them の "Gloria" ともよく似ているし、これまた、TP&HBがカバーしている、アニマルズの "I'm Crying" にも似ている。
 そこで、[Sound Stage]。このライブは、マイクが素敵な爆発頭だった最後だし、トムさんの女優っぷり(本番に向けて容姿を完全に整える技術という意味)が最大限で発揮されていて、大好きだ。



 トムさんとマイクは、この手の曲を聴くとムズムズするし、ベンモントは格好良いオルガンを響かせずにはいられないのだろう。
 この格好良さで、まだまだ続くツアーを、頑張って欲しい。

Laughter2013/05/31 22:33

 ディラン様ラジオこと、[Theme Time Radio Hour] は、エピソード9。アメリカでのエピソード40にあたる、テーマは "Laughter" 「笑い」だった。

 曲に笑い声の入っている選曲もあるが、ディランは「笑い」のもつ意味に重点を置いた選曲もしている。

 ディラン自身が雑学豊富と思われるし、リサーチ方も充実しているのだろう、この番組にはいろいろな情報が盛り込まれていて、その話も面白い。
 コメディ好きの私としては、テレビにおける「ラフ・テイク」の話が面白かった。最初は1950年とのこと。パイソンよりもだいぶ前ということになる。
 この「ラフ・テイク」は録音された笑い声を重ねることだが、一方で今でも実際に観客の前でコメディを演じてみせ、実際の笑い声を録音することもある。[The IT Crowd](邦題「ハイっ、こちらIT課!」)などは、その例だろう。アウト・テイクで、ノエル・フィールディングが観客に話しかけていた。
 ディランやバラカンさんも言っていたように、最近はラフ・テイクを入れない作品も多い。これはなかなか勇気の要る冒険で、わが「ザ・マイティ・ブーシュ」にはラフ・テイクがない。もっとも、ブーシュもパイロット版にはラフ・テイクが入っていて、これはこれで面白かった。

 さて、ディランの選曲の中で、印象深かったのは、ソニー・ボノの "Laugh At Me"。1965年の作品で、ディランっぽい歌い方と、重厚でサイケなインストゥルメンタル構成が素晴らしい曲だった。
 ソニー・ボノ死去のニュースは、私も聞いたような、かすかな記憶がある。



 バラカンさんが選んだ、ディラン様自身の曲は、"It Takes a Lot to Laugh, It Takes a Train To Cry" だった、なるほど。
 私が予想した、"Bob Dylan's 115th Dream" は、最初にディランとプロデューサーが大笑いするのが聞こえるから。
Bob Dylan's 115th Dream

 歌手が笑い出してしまう曲と言えば、何と言っても、これ。ビートルズの "And Your Bird Can Sing" アルバム[Revolver] に収録されている公式バージョンも超名曲だが(たしか、バラカンさんが大好きな曲だ)、[Anthology vol.2] に収録されているこのバージョンも大好き。
 ジョンとポールが笑いだしてしまいながら、どうにか最後まで歌うのだが、それがたまらなく格好良い。重ねてあるコーラスと、インストゥルメンタル・テイクもばっちり決まっている。
 私は[Anthology]のアルバム をあまり高く評価していないのだが、この "And Your Bird Can Sing" は素晴らしい。



 さて、来週のテーマは [Musical Instruments]…おや、アメリカでのエピソード37。
 一体どういう順番なのだろうか…。戻るなら、エピソード7に戻って欲しいのだが。
 ディラン様自身の曲は…もちろん、"Mr. Tambourine Man" で決まりだ!ライブバージョンだったりするとさらにうれしい。