十字路の悪魔2011/06/01 23:03

 伝説のブルースマン,ロバート・ジョンソン生誕100周年を記念して、リマスタリングアルバム,[The Centennial Collection] が6月1日に発売されるそうだ。
 同時に、ジョンソンの伝説をイラストで追うミュージック・ビデオが制作された。

Robert Johnson: Devilish Detail on Nowness.com.



 私もジョンソンのアルバムは1枚持っていて、24曲収録されている。ジョンソンと言えば、ロックンロールに及ぼした影響や、多くのロックギタリストによってカバーされていることが強調されがちだが、そのブルースという音楽を純粋に聴くだけで、その背筋のぞくっとするようなパワーを感じずには居られない。
 クリームによる "Crossroad" などはさすがに60年代だけあって、ロックの持つパワーに圧倒されるような魅力にあふれている。しかし、最近のエリック・クラプトンによるカバーアルバムとなると、やや空虚な印象を受ける。
 ジョンソンの凄まじさはただブルースとしてコピーするには無理がありすぎ、ロックという熱量が加わって、やっと太刀打ち出来るのかも知れない。

 ロバート・ジョンソンの伝説として有名なのは、「27歳の時に毒殺された」という伝承と、「十字路で悪魔に魂を売り渡して、その才能を手に入れた」というものだろう。むしろ、この伝説がなかったら、これほどジョンソンは有名人では無かったかも知れない。
 しかし、この伝説は、完全にオリジナルではなさそうだ。18世紀末から19世紀にかけて活躍したイタリアの作曲家,ヴァイオリニストのニコロ・パガニーニも同様の伝説を持っているからだ。彼もまたその超絶的な演奏技術のために、「悪魔に魂を売った」と本気で噂された。無論、これも「メフィストとファウストの伝説」を前提にしているに違いない。
 賭け事が好きで愛器を売り飛ばしたりもしたパガニーニだが、当人はなかなか商才もあったようだ。「悪魔との契約」を宣伝にしていた形跡もある。ともあれ、この噂はかなり広く知られたらしく、1840年に彼が死去したとき、複数の教会に埋葬を断られたそうだ。

 パガニーニということで、有名なカプリース。古いが、ヤッシャ・ハイフェッツの演奏で。