Taking Photos or Listening to Music2019/04/22 20:47

 ボブ・ディランが、ウィーンでの公演中に、観客が携帯電話で写真を撮る(もしくは動画を録画する)ことに対して、怒り気味に止めるように言った後、演奏を切り上げてしまったというニュースがあった。

 私が海外で見たロックコンサートが、TP&HBだけだった頃は、写真,動画はとり放題だと思っていたため、2013年ロンドン,ロイヤル・アルバート・ホールでのディランのコンサートで、撮影が固く禁じられ、観客もその指示にほぼ従っていたのには驚いた。
 TP&HBのコンサートでは、みんな嬉々として撮影しまくり、ハートブレイカーズ側も、トムさんの死後、そういう動画や写真も含めて募集していたほどだから、非常に自由だったのだ。

 一方、ディランのように、一切撮影を禁止するアーチストもいる。スマホではなく、演奏そのものに集中してほしいという気持ちが、第一だろう。
 ロンドンでは、多くの人が撮影せずにいたのだが、こっそり撮影しようとする人はあちこちに、ちらほら出現した。すると係員が飛んできて、注意する。複数回になると、機器を取り上げられる人もいたようだ。
 もっとも、アンコールになると、みんな立ち上がったのと、相当数の人が堂々と撮影し始めたので、注意もできない状況だった。

 日本には、もともとおおっぴらに撮影する文化がないので、「禁止」と言われれば当然と思う。
 私はコンサートというものを日本以外ではアメリカ、ロンドン、ウィーンでしか経験したことがないが、やはり日本の聴衆というのは、お行儀が良いと思う。ロンドンも良い方。
 ニューヨークでは、前座の演奏中、完全に演奏を無視して大声でしゃべっている人と隣になって、ウンザリした経験がある。ウィーンの国立歌劇場で、オペラの上演中に(トスカ)、前の席の人が携帯で撮影し始めたのには、さすがに驚いた。

 ともあれ、アーチスト側にそれなりに信条と心情があって、聴衆に求めるものがあるのは、当然だろう。
 一方で、素晴らしい思い出を記録に残したい、人に見せたいという側の気持ちも、よく分かる。特にわざわざ海外から遠征しているとなると、できる限りの手段で記録しておきたくもなるというものだ。

 ただ、私が2017年6月、最後にTP&HBを見たときは、それほど撮影には熱心ではなかった。席が悪かったので、機器に気を取られるよりは、全力で鑑賞せねばと思っていたのだ。だから、ほかのTP&HBのコンサートに比べて、記録が少ない。
 それでも、今となっては、それで良かったのだと思う。