陪臚 / 竹生島2015/01/01 20:09

 テレビで雅楽の演奏が見られる機会はほぼ皆無だが、例外が1月1日の早朝。Eテレで、雅楽の舞楽を放映するのが通例なのだ。
 今年は、録画してみた。演目は舞楽「陪臚」。演奏は宮内庁楽部。
 「陪臚」は平調(雅楽にもナニ調というキーがある。そもそも、西洋音楽のキーを『調』という言葉で表現したのは、雅楽に由来している)の曲で、雅楽を習い始めるとごく初期に練習することが多い。
 私も学生時代吹いた。舞を伴わない『管絃』として演奏するときは、2+4という拍子で、非常にノリが良く、吹きやすかったし、曲そのものが名曲で好きだった。

 舞楽は、舞人が4人。「おいかけ」と呼ばれる飾りのある冠に、赤や金の華やかな装束。そして特徴的なのは、それぞれが盾を持ち、太刀を抜いたり、鉾を振ったりと、武具を用いた派手な動作だ。
 華やかで賑やかで、派手なこの舞、お正月にはぴったりかも知れない。
 楽部の立派な火焔太鼓が見えるのだが、さて奏者の姿がまったく見えない。何せ、火焔太鼓は全長で4メートルほどもある。人間よりずっと大きいので、正面からは打っている人の姿が見えないのだ。
 そこはテレビなので心配無用、ちゃんと横から録って、どえらい力で思い切り太鼓をぶっ叩く楽師さんの勇士も見られた。あの火焔太鼓の迫力は、その場に居ないと実感できない。そこがテレビの残念なところ。
 雅楽を見るといつもおもうのだが、楽師さんが眼鏡をかけているのはどうなのだろう。装束や烏帽子,冠に合わないと思うのだが。プロの能舞台では、眼鏡の楽師さんを見たことがない。いまや、コンタクトレンズもいろいろ選択肢があるのだから、眼鏡はやめたら良いのにと思う。

 さて、雅楽に続いて能も放映されたので、これもついでに録画。
 やはりお正月なので、おめでたい演目である脇能(一番目物)の「竹生島」。観世流で、シテは梅若玄祥さん。シテツレが野村四郎さん。ずいぶん豪華な取り合わせだなと思ったら、「竹生島」という曲がやや変わったものだった。
 竹生島,および弁財天を訪れようとした旅人(ワキ)が、琵琶湖で釣り船に便乗させてもらうのだが、その釣り船に乗っていたのが、シテの老人とシテツレの若い女性。
 竹生島に着くと、旅人が「そういえば、女人禁制のはずだけど、どうして女の人がいるの?」と尋ねる。すると老人が「そういうことは、物を知らない人が言うものだ」と、なかなか言い方がキツい。
 そもそも、弁財天が女性なのだから、女性でも分け隔てなくお参りできるのだ、といってシテとシテツレが旅人をジトっと見るのが可笑しかった。

 さて、実はこの女性が弁財天その人であり、老人は龍神なのだということで、後半にその正体を現す。だから華やかな後シテ,シテツレのために豪華な二人の取り合わせなのだ。
 普通は若い女性を演じたシテツレがそのまま女性の弁財天を、老人を演じたシテがそのまま男性の龍神を演じる。しかし、今回は「女体」というスゴい小書き(特別演出)がされていて、後半になると男女が入れ替わり、老人だったシテが弁財天を、女性だったシテツレが龍神となって現れるのだ。
 この男女入れ替わりの演出、たぶん後場はシテであるはずの龍神の出番が短いため、天女舞を長々と披露する弁財天をかわりにシテにするという意図なのだろう。その意義は分かるのだが…うーん。
 なんだか変。老人が作り物(セットみたいなもの)の小宮に入り、再登場したら美しい天女になって出てくる。そして女性が鏡の間(舞台袖)に引っ込み、出てきたら龍神になっている…違和感がある。あまり好きな演出ではないな。

 ともあれ、おめでたい天女と龍神の舞で舞台は終わる。面白い能だった。
 ひとつ残念なのは、アイ狂言が省略されていたこと。時間の都合もあるのだろうが、ここは省かないでほしかった。

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