Learning to Fly2015/01/22 21:17

 ローリング・ストーン誌のトム・ペティ・スペシャル・コレクターズ・エディションは、最後に [The 50 Greatest Songs] と題して、トムさんの名曲をリストアップし、インタビューや解説を短く載せている。
 一応ランキング形式になっているのだが、これがどういう基準なのか良く分からない。たぶん、ローリング・ストーン誌独自のランキングなのだろう。
 一位が “Amaeican Girl” で、私の意見と合致している。”Echo” も29位と意外と健闘(?)しており、まぁ文句はない。

 短い解説の多くは既によく知られていたり、色色なところに掲載されていたりしたのだが、この “Learning to Fly” に関するマイク・キャンベルのコメントは初めて見たような気がする。

 「"Learning to Fly" はジェフ・リンのプロデュースだ。」
 マイク・キャンベルはそう語っている。
「アコースティック・ギターてんこ盛り。積み上げるように、分厚く弾きまくっている。ぼくのお気に入りは、最後の方のドラムがドカドカいうところだ。あれには参ったね。楽しかったよ。」
 しかし、彼はこの曲を際立たせているのはペティによるソングライティングの、シンプルさにあるとも付け加えている。
「そこがこの曲の奇跡的なところだ。やり過ぎなというものが全くない。実にシンプルな曲と、シンプルな歌詞だ。」




 そもそも、”Learning to Fly” という曲自体が、私にとってトム・ペティのトップ5に入る曲。

 マイクの言うドラムの所は、2分50秒付近からのパートだろうか。
 マイクの言う通り、分厚いアコースティック・ギターこそがこの曲を形作っているのだが、その一方で短いエレキ・ギター・ソロも外せない。実に控えめなのだが、これしか無いという絶妙さ。胸が一杯になるような、切ないような。あんなに素晴らしいのに、ごくごく短く、さりげなく退いてしまい、またトムさんのヴォーカルが帰ってくる。
 こういう演奏を聴くと、やはりマイクは歌が、トム・ペティというヴォーカリストが大好きなのだと思い知らされる。飽くまでも歌のための演奏、歌のためのギター・ソロ。そういう相棒を得たトムさんの幸運たるや、並大抵ではない。

 最近ではすっかりアコースティック・バージョンのライブ・パフォーマンスが定番になってしまった。それはそれで良いのだが、私はオリジナルに近い演奏の方が好きだ。
 そういう意味で、この1991年の演奏が大好き。音が悪いのが惜しい。



 シングルのジャケットになった、このハートブレイカーズの写真も素敵。今はもうきけないハウイのコーラスが切ない。
 この曲の歌詞にあるように、あらゆる物は変化し、過ぎ去ってゆく ― という抗いようのない運命と、それでも感じずにいられない愛惜が、バンドのハードな音いっぱいにあふれている。マイクのギター・ソロも、あのスタンのドラム・プレイも、どこかに痛みを抱えていて、ロックの持つ切ない情感に満ちている。
 またこのバージョンで演奏してくれる日が来るだろうか。