Tom Petty & the Heartbreakers 50th Anniversary2026/01/05 19:49

 紙の年賀状は出さなくなって久しいが、年始の挨拶メールやメッセージ用に、毎年絵柄は準備している。
 多くの場合、ロックのデビューや発表からちょうど何年になるとか、干支にちなんだロックの曲、バンドなどが題材になる。
 ウマ、ウマ…なんだかピンとこないうちにとっくに年を越してしまった。あまりにも何も思いつかないので、ギリギリまで2018年にスパで優勝したフェラーリのセブにしよとしたほどだ。

 しかし、結局はトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズが1976年にデビューして50年になることに気づき、そちらを採用した。

 50年となると、感慨深い。トムさんも生きていればマイクと同じ76歳になっただろう。大規模なツア―はともかく、単発的なコンサートはいまもでやっていただろうし、もちろん新譜も発表していたに違いない。

 デビュー作 [Tom Petty & The Heartbreakers] はアメリカではそれほど話題にはならなかったが、その後のUKツアーを経てUKから人気に火がついた。
 私は、一番すきな TP&HBのアルバムを選べと言われれば、色々悩んだ末にこのファースト・アルバムにするだろう。なにせ、”American Girl” が入っているのだ。彼らのキャリアの中でも一番の名曲だと信じているし、毎回のライブを締めくくるにもふさわしい曲だった。
 そうか、”American Girl” も50周年なのか!こんな瑞々しく、鮮やかで、説得力のある曲が50年前という考えると、ロックの持つ普遍性を思わずにいられない。

Here comes the new Champion !2025/12/29 19:33

F1は5年ぶりに新しいチャンピオンが誕生して終了した。
おめでとう、ランド・ノリス!応援していた甲斐があった!

 シーズン初戦こそ、去年からの流れで当然ランドが勝ち、このままチャンピオンへの道を突っ走るのだろうなと思ったら、これが大違い。なんとチームメイトのピアストリとの争いが白熱してしまったのだ。これは予想できたような、さすがに予想外だったような…。
 とにかく前半、冷静にポイントと重ねるピアストリと、動揺を隠せないランド、対象的なレースが続いた。正直、ピアストリは本当に素晴らしかったと思う。同じ車に乗っているなら、当然チャンピオンになるチャンスがある。彼はそれを虎視眈々と狙い、実行していったのだ。
 しかし、ランドにはセブというメンターがついている!(←強調部分)だんだん本来の強さを取り戻し、終盤にはチャンピオンをぐっと引きつけ、最後は僅差ではあったが確実に王座を獲得した。よく言われているが、まさに「いい奴のまま」でチャンピオンになった、珍しい例だろう。みんなの祝福を見ていると、本当にそのとおりだなと思う。



 カルロス・サインツなんて、とても仲良しなだけに本当に嬉しそうだ。

 げに恐ろしきは、フェルスタッペンである。終盤のあの追い上げはすごかった。同時に不可解なのは、チームメイトは苦戦するあの車だ。今回のマクラーレンのように、二人のドライバーが揃って好成績を出すのが普通であって、レッド・ブルの極端な違いはなにか根本的に間違っているのかもしれない。
 チーム運営もドタバタがあった。プリンシパルがシーズン途中で変わったし、ドライバーも初戦の2レースで変えてしまった。酷い成績ではあったが、あんまりだと思う。結果的には、角田くんはあのままレーシング・ブルズにいれば素晴らしい成績を上げ、来シーズンの飛躍を期待できただろう。角田くんはローソンのかわりに貧乏くじを引き、来年のシートを失うことになってしまった。
 角田くんというレーサーは、これまでのどの日本人ドライバーとも異なる性格の、稀有な存在だ。ここでF1を離れてしまうのはとても惜しい。エンジンや政治、経済的な問題が色いろあると思うが、ぜひとも来年の早い時期にどこかのシートを勝ち取ってほしい。

 F1は短いシーズン・オフに入る。その前にここ数年、毎年やっている、Secret Santaをどうぞ。みんな段々わかってきて、まともな物を送る人は減ってきた(角田なんて、日本酒を送ったことがある)。
 私が好きなのは髪の毛フサフサなサインツに櫛をプレゼントした、ハジャーだな。

 この映像を見るといつも思うのだが、全員がバリバリと遠慮なく包装紙を破ってしまう。日本人の多くはテープで止めてあるところからきれいに剥がして、あわよくば包装紙をもう一度使おうとするのではないだろうか…と、思ったら、角田くんもバリバリやっていた。ユキー!!さすが一味違う日本人ドライバー。

 ラッピングといえば、フェラーリ時代のセバスチャンとキミが「ラッピング対決」をしたことがある。これもまた日本人との違いがわかって面白いし、そもそもセブとキミの違いも分かって笑える。と、いうかキミは酷い。本当に酷い。

2025年フィギュアスケート全日本選手権2025/12/23 19:41

 私が好きなスポーツ。野球,F1,フィギュアスケート。
 一年で一番盛り上がる、フィギュアスケート全日本選手権が終わった。3日間、テレビにかじりつき、フィギュア師匠(という名の友人)とチャットしまくっていた。
 今回はオリンピック出場選手選考会とあって、各自の意地と情熱と根性の詰まった、熱い演技が沢山飛び出し、良い大会だったと思う。

 個人的に残念だったのは、友野一希。その卓越した表現力、ダンサーとしての魅力は他に追随を許さない彼だが、ただジャンプの能力だけは届かなかった。四回転のジャンプはどれも無理して跳んでいる傾向にあり、当然成功率は低い。日本の男子シングルという世界一のハイレベルな争いでは、勝ち切れなかった。彼が他の国の選手だったら、間違いなく複数回オリンピックに出ていただろう。これまで、世界選手権の枠取りに計り知れない貢献をしてきただけに、本当に残念。
 こうなったらノー・プレッシャーの四大陸で存分に存在感を発揮してほしい。四大陸は意外と力が抜けて名演技がでやすいのだ。

 女子はまさに、涙、涙の展開だった。
 フリー前半最後の滑走だったのでテレビには間に合わなかったが、三原舞依の現役最後の全日本は、大きな感動に包まれた「木星」で締めくくられた。



 独特の優美でしなやか、かつ儚い雰囲気で大好きだった三原。病気と怪我との戦いに多くの時間を割かれ、その分不足した練習時間が、彼女とオリンピックとの距離だった。同門の坂本との名コンビぶりは見ているこっちがニヤけるほどで、どれほど一緒にオリンピックに行かせてやりたかっただろう。ただし、同門から2人は無理だとも言えるので、坂本という天才であり、親友が、三原の壁でもあったのかもしれない。

 そして一番好きな坂本花織も、今回で最後の全日本選手権となった。様々なドラマを生んできた、心に残る大舞台。そもそも、今回のフリーは、樋口、青木あたりからベテラン勢の(20代だが)雰囲気が良かったのだ。祈る三原を見ても号泣、号泣している樋口を見ても号泣。本屋大賞の本を読んでもちっとも面白くないのに、どうしてこうフィギュアとなると簡単に号泣するのだろうか。



 坂本にはまだオリンピックという大仕事が待っている。全日本にピークをまず持ってきて、ここまで達成してしまったので、もう一度練習して磨き上げ、加点を増やして(後半、フリップからのコンビはもっと伸びる)、何色のメダルを手にするか。
 フィギュアシーズンは折り返しを過ぎて、いよいよオリンピックを迎える。みんな悔いのないように臨んでほしい。

Steve Cropper2025/12/17 20:53

 12月3日にスティーヴ・クロッパーが亡くなったと聞いた。彼の死去を受けていろいろな写真をネットで見たが、とびきり若い頃(20代?)の美男子っぷりに度肝を抜かれた。

 スティーヴ・クロッパーと言えば、私にとっては「ニール・ヤングと握手する人」である。ボブ・フェスの一番の盛り上がりどころ、”My Back Pages”の冒頭だ。



 ボブ・フェストと言えば、ジョージの出番でのスティーヴ・クロッパーも忘れがたい。ギター・ヒーローのくせに、このときはリズムギターしか弾かなかったジョージ。ボブのためのコンサートだということもあるし、スティーヴ・クロッパーがいるなら、彼に任せるべきだとでも思ったのだろう。ジョージは本当に幸せそうにプレイしている。
 ジョージはあまりライブが得意ではなく、声に波のある人だが、ボブ・フェストは絶好調だった。



 そしてもう一つ、私にとってのスティーヴ・クロッパーは、ブルース・ブラザーズ・バンドの人だ。特にお気に入りは名曲(というか、ブルース・ブラザーズの中でも特にお気に入り) “Soul Man” 。あのギター・リフは超名作である。
 改めて映像を見ると、曲良し、演奏良し、ダンスも良し。非の打ち所がない。

Ugly - Tom O'dell2025/12/14 19:22

 2008年6月にこのブログを始めて以来17年、こんなに記事にブランクを空けたことはなかった。空いてもせいぜい1週間とか、10日くらいだったのだが、このたびはじめて約2か月記事をアップしない日が続いた。
 なんのことはない、現代人らしく仕事が多忙過ぎた。もともと多すぎる業務をこなしているという実感はあったが、11月からはそれに拍車がかかり、さらに毎日出社するという負荷が加わったために、すっかりブログをアップできないでいた。
 その間、ショパン・コンクールが終わり、フィギュアスケートのGPシリーズも終わり、そしてF1もシーズンが終わっていた。

 音楽的には、ピアノの発表会があった。いつもならバッハしか弾かない私だが、今回は忙しすぎてバッハの準備が間に合わず。それまで弾いていたショパンを仕方なしに弾いたのだが ― 発表会のたびに思うのだが、びっくりするほど酷い演奏だった。とんでもなくだめな演奏でも、場数を踏んでるだけあって、落ち着いていたのは良かったのだが。ともあれ、やはり私はバッハ以外はだめだなぁと自覚するに至る。

 トム・オデールが新譜を出しているのに気づいたので、購入。
 彼のアルバムはここ2枚ほど低迷していたのだが、今回はドラムとベースの入ったバンド・サウンドに戻ってくれて嬉しい限りだ。
 私の中で、トム・オデールがちょっとエリオット・スミスのカテゴリーに入りそうな感じがする。初期のアルバムのもっと明るくて弾けた感じは、もっと戻り代があるので、まだまだ期待している。そういえば彼も生で見てみたいアーチストの一人だ。
 改めて聴いてみると、相変わらず苦しそうに歌う、絞り出しスタイル。私が好きなジョージ・ハリスンやトム・ペティのスタイルと共通していると、改めてトム・オデールの良さを認識した。

TP&HBのどこが好き?2025/10/21 19:49

 ここ一週間以上、ショパン・コンクールの演奏しか聴いていたのだが、最終結果発表が終わった途端に、すぐにトム・ペティを聞き始めた。どうやら私にとっては生で見るスポーツと同じだったらしい。ピアニストのくせに、けしからん。

 10月20日はトム・ペティの誕生日だ。きょうは21日だが、アメリカ時間ということで。生きていたら75歳だった。それを記念して、”Don't Fade On Me” のリハーサルの様子が公開された。



 マイクが寄り添っている様子が良い。いまにも一緒にワン・マイクロフォンで歌い出しそうだ。そもそもこの曲は、ギターの弾き方をマイクがトムさんに教えたところからできているので、歌詞以外はほぼマイクの作品と捉えて良い。

 先週末は、Heartbreakers Japan Partyさん主催のオフ会だった。なんと第75回。素晴らしい。
 よく話題になるのだが、どうして TP&HB を好きになったのかという話になる。だいたいは他に好きなミュージシャンがいて、そのつながりで好きになるというパターンが多い。

 なぜ好きなのかと言えば、要するにタイプだということだろう。私が最初にトムさんと仲間たちを聴いたり、見たりしたとき、彼らはポップでクールで、シンプルなロックンロールをやっていて、しかもとても仲の良さそうな素敵なバンドだった。実際は色々難しいこともあったし、ギスギスもしていたが、彼らなりの愛情とチームワークは確実にあった。
 私は男子が仲良くバンドをやっているのを眺めるのが好きなのだ。ビートルズがそのお手本で、ハートブレイカーズはまさに「ビートルズのようなバンド」だった。私のこの点は徹底していて、ディラン様を最初に好きになったときは、ジョージと一緒に仲間と楽しくバンドを組でいる人だったのだ。

 具体的にどの TP&HB かと言えば、このブログでは何度も言及しているように、”So You Want To Be A Rock ‘n’ Roll Star” のライブ映像だ。
 はっきり言って、金髪碧眼はタイプではない。しかし、トムさんはちょっと変わった顔つきで(ネイティヴ・アメリカンの血が入っていることを知るのは少し後)、しかも服がださかった。むしろ、ダークな髪色のギタリストが真摯で控えめで、ジョージっぽい雰囲気で格好良く、彼に変な服の金髪がちょっかいを出したりして仲良しな感じがツボだった。
 そして、トムさんの表情が良かった。生き生きとしたその表情には、ロックンロールを演奏することがどれだけ好きかが表れていた。微笑みながら会場を見回す瞳の輝きが魅力的で、この表情こそが私のタイプだった。べつに金髪碧眼でなくても構わなかった。
 その後、様々な映像、画像を見ることになるのだが、どれも最初の印象を裏切ることなく、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズは最高に格好良く、ロックンロールの真髄を体現する存在であり続けている。これからもそうだろう。

Midas Man2025/10/12 10:23

 映画「ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男」を見た。原題は “Midas Man” マイダスとはギリシャ神話に登場するミダス王のことで、触れるものが黄金に変わるという男だ。触れたバンドが黄金ビートルズになったという意味だろう。



 どこが見どころかと言えば、もちろんどの程度ビートルズを再現できているかである。ブライアンについてはだいたい知っている話ばかりだったので、それほど興味があるわけではない。
 結論として、どの程度ビートルズに寄せられていたかというと…65点といったところだろうか。ジョンは顔も喋り方も似ているけど、背が低いのと、やや鋭さが削がれてむしろジュリアンに似ていた。ポールは顔の上半分はそっくり!下半分は似ていない。ジョージは、眉を足した(だろう)ことは良いが、それ以外はあの輝くような美少年ぶりは不発。リンゴにいたっては全く似ていなかった。
 演奏する姿はまぁまぁ。選択する楽器も違和感がなかったし、四人の仲の良さがよく出ていた。
 ブライアンは俳優ありきで、べつに似せるつもりもなかったらしい。それはエド・サリバンもしかり。ジョージ・マーティンは姿こそかなり似ていたが、喋り方がまったく似ていないので、中途半端な仕上がり。ビートルズ・ファンは、マーティンの喋り方も熟知しているのだ。

 この映画の苦労のしどころは、ビートルズを描くのにビートルズのオリジナル楽曲を、一切使えないところだ。初期はカバー曲だけでなんとか乗り切れるのかもしれないが、”Please Please Me” “I Want to Hold Your Hand” が大ヒットする重要な場面で、使えないという足かせはいかんともしがたい。その後はだいたいビートルズっぽい雰囲気だけで話が流れていき、この話は別にビートルズのマネージャーじゃなくても良いのでは?ということになった。

 要はビートルズという世界最高のバンドを世に送り出した、大成功者であったブライアンだが、薬物という悪癖と、当時はさらに生きづらかった同性愛者だったことの苦悩を描く映画だった。60年代は魔法の時代であり、音楽文化が黄金期を迎え、色とりどりの花で彩られ、様々な奇跡が起きたが、人間にとってそのスピードはついていけないものであり、その負の側面である薬物によって、多くの人は若くして命を落としいった。ビートルズという象徴的な太陽の影にそんな物語がある。

 そのほかに印象的だったのは、シラ・ブラックがけっこう良くフューチャーされていたこと。キャバーンのクローク係だったところから登場している。ブライアンのことを全ては理解していないが、優しく友愛に満ち、支えになろうとする姿が良かった。
 もう一つ良かったのは、ブライアンのアシスタントだった、アリステア・テイラーがしっかり出てきたところ。テイラーは、私が初めてビートルズにはまった小学生の時、ビートルズの情報を得るべくまず図書館でかりた本の著者だった。ビートルズの良き理解者で、欠くべからざる人のはずだが、その後のビートルズを取り巻く環境の変化で彼は歴史から弾き出されてしまった。そのことが私個人として悔しかったのだが、今回は日の目を見た。

 そしてこの映画で一番良かったところは、ジェリー&ザ・ペースメイカーズの “ You'll Never Walk Alone” が流れるところ。これぞ Liverpool !という感じで、すべてを持っていってしまった感じ。良かったなぁ。

Pianoforte2025/10/06 19:53

 2021年に開催された第18回フレデリック・ショパン国際ピアノ・コンクールの、舞台裏から出場者たちを追ったドキュメンタリー映画「ピアノフォルテ」を見た。ピアノという楽器名はピアノフォルテの略称である。
 ショパン・コンクールは5年に一度行われるが、2020年は COVID19 の影響で翌年に延期された。



 コンクール本番なので、集中的に映画に収められた人が最終的に勝つというわけではない。フューチャーされていた中では、アレクサンダー(イタリア)が最高位の3位。彼は舞台裏でも自分を見失わず、精神統一が上手だった。かなり成熟したピアニストに近いだろう。
 中には成績が振るわず、取り乱す人や、そもそも勝負にならない人なども発生。コンクールやピアノにのめり込みすぎて精神の病気を抱える人がいるのも分かる。
 同じピアニストとしては、教師と弟子の関係も興味深かった。最も若い高校生のハオ(中国)の先生は、ハオとベッタリ。でもその若い女性の先生は明るくて感じの良い人なのが救われる。ハオは先生といるとリラックスできると同時に、先生に縛られることなく飄々とした感じが良かった。ハオは今年も出場している。頑張れ。
 一方、17歳のエヴァ(ロシア)は神経質で不安定なお年頃。しかも先生が古風な厳しくて、怖くて、弟子を人前で侮辱しても平気でいるタイプ。でもエヴァは精神的に先生に依存しており、彼女がもっと高みを目指すには教師に関して考え直す必要もあるかもしれない。そして彼女は不運にもロシア人。ウクライナ侵攻以来、その活動は国内に限られており、今年のコンクールにも参加していないのだ。ロシア人が参加するには「国籍表示なしの中立的立場」でなくてはならず、さすがに数が少ない。

 そう、第19回ショパンコンクールが始まっているのだ。
 ピアノは芸術であって、スポーツではない。アレクサンダーが言ったように、ピアノで競うなんて、本当がおかしいのかもしれない。しかしギリシャ神話の昔から音楽での勝負は続いており、ショパン・コンクールはその究極形である。無論、優勝すればピアニストとしての一生の名声を得ることが殆どだ(例外もいる)。優勝しなかったとしても、内田光子(1970年2位)のように世界で最高のピアニストになるひともいる。メジャーなコンクールとは無縁でもキーシンのように、これまた世界で最高のピアニストもいるので、コンクールが全てではない。

 それでもなんだか気になってみてしまうし、最近はインターネットでどんどん一次予選の演奏が聞けてしまうからやっかいだ。
 きょう、私は一次予選の6人の演奏を聴いたので、それぞれちょっとメモを付けていった。一次予選の通過者は出場者の半分だが、私のメモによると、6人中2人しか通過しないらしい。さて、実際の結果はいかに。

 今回のコンクールで驚いたのは、本選(ファイナル)の曲が、協奏曲に加えて、幻想ポロネーズも加わったことだ。とても画期的な改善だと思う。
 そもそも、ピアノの詩人ショパンにおいて、協奏曲だけでファイナルを競うのはどうなんだという議論は長くあったのだ。ショパンの最高傑作ではないし、正直言ってオーケストラも上手くない。たった一人で世界を作り尽くすのがショパンなのに、協奏曲で最終的に決まるのは納得がいかないという訳だ。しかも、ここのところずっと、協奏曲1番を弾かないと勝てないといわれている。(オケが不慣れで2番だと上手く行かないという噂あり)そのせいで、みんな揃って1番を弾く。けっこううんざり。
 だから、幻想ポロネーズは大歓迎。わかりやすい曲ではないが、その分技量の差が出るのではないだろうか。ちょっと楽しみだ。
 音楽に国籍もなにもないだろうという建前はあるが、まぁ、たしかにおなじ日本人が健闘してくれると嬉しい。ただ、なんとなくポーランド・ロシア以外のヨーロッパ人の奮起に期待したい。最後にポーランド・ロシア勢以外で優勝したヨーロッパ人はなんと1960年のポリーニ(イタリア)だそうだ。60年以上出ていない。まぁ、ゲルマン人は「ショパンなんて別に」なのかもしれないが…ともあれ、健闘を祈る。

Cheap Trick in Budokan2025/10/04 20:57

 三日前の水曜日に、日本武道館でチープ・トリックのライブを見た。
 三日も経ってから言うなと、ファンからは怒られそうだ。詳しくは知らないのだが、どうやらフェアウェル・ツアーだったらしい。

 そもそも、私はチープ・トリックのファンというわけではない。親しい友人たちにファンの一団がいて、彼らと過ごしたときにチープ・トリックのビデオを一緒にみたこと、そのついでにベスト盤を一枚購入したこと。私がチープ・トリックについて知っているのはその範囲である。
 それがどうして、大事な大事な武道館公演などに行くことになったのかというと、例のファンの一団が盛り上がっており、「誰かぴあの会員になっていないか」、「席を取ってくれ」、「私会員だよ、取ろうか?」…という流れでなんとなく私も行くことに。
 しかも私にしては珍しく、武道館のアリーナを引き当てた。一番後ろの方で決して視界は良くなかったが、まぁアリーナが取れたというそれなりの興奮がある。

 コンサートが始まってみると、ちょっと困ったのは全然曲を知らないことだった。こんなに知らないんだ…とびっくりしてしまった。しかしファンである友人たちにとっては「おなじみの」ナンバーだったらしい。
 私の知っている曲が増えたのは後半からアンコールまでで、これなら私も一緒に歌えると楽しく過ごした。

 日本は世界でも有数のチープ・トリック好きの国だそうだ。そもそも、ヒットのきっかけも日本での人気とのこと。その割には観客は大人しいなぁと、バンドメンバーは思わなかったっだろうか。コール&レスポンスなんて、もっと凄くて良いのにと、客席に居ながら思う。アメリカで体験したものすごい歓声や合唱(うるさすぎて騒音である場合もある)を懐かしく思う。

 たぶん、バンドのオリジナル・メンバーの平均年齢も70歳を超えているだろう。それでもパワフルで、たった四人の音であれだけの迫力を出すのだから、偉いものだと、感心しきりだった。

The Boys of Summer2025/09/23 20:13

 ドン・ヘンリーの大ヒット曲 “The Boys of Summer” はマイク・キャンベルが作り、ヘンリーが詞を書いたことは有名だ。
 マイクはただただ、トムのためだけに沢山の曲を作りためていた。1980年代前半、マイクはドラムマシーンも手に入れて、曲のストックもかなりのものになっていた。ジミー・アイヴィーンもそれを知っていて、マイクをヘンリーに紹介したのだろう。
 ヘンリーはマイクの曲を気に入り、”The Boys of Summer” は大ヒットとなった。当時、経済的な危機にあって自宅が抵当に入っていたマイクだが、この曲によってその危機は回避された。そもそも、マイクが自力で曲をどんどん作れることに気づいた妻のマーシーが録音機を買うことを薦め、彼女が自宅の売却を拒否したことによるこの結果だ。マイクの愛妻はどこまでも正しく、マイクいわく「これぞ俺の彼女だ」。

 ”The Boys of Summer” の絶好調ぶりは、マイクの「本命」であるトムさんにとっては複雑なものだった ― と、マイクは感じているようだ。
 当時、ハートブレイカーズは “Rebels” の仕上げに苦労しており、トムはフラストレーションをためていた。そんな頃の出来事が、マイクの自伝に書かれている。

  私たちが ”Rebels” のミックスを行っているとき、トムと私はミキサーの前に並んで座り、何回か聴いていた。トムはつまみを回しながら微妙な調整を繰り返した。ひと仕事終わると、トムは車のステレオでどう聞こえるか聴いてみたいと言った。
 私はできあがったカセットテープを取り出し、私の車へと歩き出した。私が運転席に回る間に、トムは助手席に座った。私はイグニッション・キーを回した。
 ”The Boys of Summer” のコーラスがスピーカーから鳴り響いた。
 私は取り出しボタンをぶっ叩いて止めようとした。しかしそれはカセットの音ではなかった。ラジオが鳴っていたのだ。
「ああもう。ごめん。」私は反射的に謝っていた。
 私はラジオのボタンを押してラジオ局を変えようとした。しかし、またも同じ曲が流れる。トムは唇を引き結んでフロントガラスを見つめていた。私はもう一度違う局にしようとした。しかし、三度同じ曲が流れた。
 私はラジオを叩いて止めた。私たちの間にしばらく沈黙があった。三つの違うラジオ局で流れるなんて。
「ごめん」
「いや。よく出来てた。自信がついただろう?」
 トムとしては良い評価だった。
「そうだな、うまく行って嬉しいよ」
「だな。俺が聞き逃してなけりゃなぁ」

 この場面はやたらとエモい。二人きりの車中で、焦るマイク。黙り込むトム。謝るマイク。謝る必要なんてないのに。本命のトムが苦しんでいるのに、ほかのシンガーを大成功に導いたことへの罪悪感。トムとマイクの信頼関係が分かっているだけに、よけいにつらい 。
 自伝では、次のページでトムが自ら手を折ってしまう。自身信のフラストレーションのやり場を誤ったのだが、ともあれマイクを誰かに盗られたようなストレスが、彼を追い詰めたのだろう。

 ある種の悲劇でありつつ、彼らの絆の強さを表すエピソードだった。