George Fest (その2)2016/03/04 23:14

 資格試験を控えており、なかなかゆっくり記事が書けない。
 それでも、通勤時だけは音楽に浸ることにしている。もっとも、先週からずっと、[George Fest] しか聴いていない。知っている出演者は少数だし、好きな人も特に居ないのに、いくらでも聴けるのだから、ジョージと、その音楽を愛する人々、恐るべし。
 このライブの記事をどうまとめるか考えたのだが、うまくまとまらない。結局、順を追って全ての曲に言及するしかないらしい。

Old Brown Shoe / コナン・オブライエン
 まずは、コメディアン,コナン・オブライエンの登場。バンドは彼の番組のハウスバンドなので、良い蹴り出しだ。まずはジョークで会場を温める。ジョージにコメディはつきもの。
 歌詞を見ながらとは言え、歌もなかなか上手で、格好良い。バンドの演奏にも余裕がある。終わり方が独特で面白い。

I Me Mine / ブリット・ダニエル
 ビートルズ時代のジョージの作品として、昔からもっと評価されても良いのではないかと思っていた作品なので、この選曲は嬉しい。ダニエルの弾くギターが面白い。テレキャスのセミアコースティック?
 贅沢を言うと、AメロはBとの対照のために、もう少し滑らかで柔らかに歌ってくれるとなお良い。

Ballad of Sir Frankie Crisp (Let It Roll) / ジョナサン・ベイツ
 このコンサートの重要人物,ジョナサン・ベイツ登場。深みのある声をしており、これが後々活きてくる。そして、貫禄のついたダニーもお目見え。
 流れの速い川のような曲だが、このライブでは "Oh, Sir Frankie Crisp..." というコーラスをつけて、これが水を打ったような効果をもたらす。そしてコーダでのコーラスの繰り返しは、雨が作り出す波紋のようで美しい。間違いなく名演奏。

Something / ノラ・ジョーンズ
 数少ない、「名前を知っている人」が、スタイル悪く見えるファッションで登場。でも歌声は抜群に良い。オリジナルからキーを少し上げて、女性版 "Something" を完璧に再現してみせている。バンドも、ビートルズの名演をそのまま再現するべく、気合いが入っているようだ。
 彼女はジョージと直接の交流はあったのだろうか。ジョーンズとラヴィ・シャンカールがどの程度交流があったかにもよるだろうが、その辺りは良く知らない。

Got My Mind Set on You / ブランドン・フラワーズ
 ザ・キラーズの人登場。コーラスがポイントになる曲でもあるので、ジョナサン・ベイツも参加。そしてこの曲をシングルカットすることをジョージに進言(?)したダニーも加わっている。フラワーズとダニーは個人的にも仲が良さそうな様子。この二人はよくじゃれている。
 フラワーズのメタリックな声が、この曲にとても良く合っている。歌い出しだけで好きになってしまった。「ジョージの原曲じゃないのか」なんて言っているが、これはもう、「ジョージの曲」と言って良いと思う。このヒット曲を聴いた若い人が、ジョージだけではなく、ビートルたちのソロ・ワークに目を向けるきっかけにもなったに違いない。

If Not For You / ハートレス・バスターズ
 イントロで号泣してしまった。このイントロを聴いただけで、ジョージとディランの永遠の友情を思って泣いてしまう。
 鼻にかかった声の女性シンガーの、オリジナルよりも力強い歌声に、オリジナルに忠実な演奏がうまくマッチしている。

Be Her Now / イアン・アストベリー
  殆どがアメリカ人の中で、英国人登場。しかも、ザ・カルトの人。そのイメージを裏切らない、幻想的で荘厳な "Be Here Now" は良いチョイスだ。そもそも、ジョージのトリビュートと言って、この曲を選ぶ人はほとんど居ないのではないだろうか。
 ジョージのスピリチュアルな一面を、美しい音楽で、でも説得力を持って伝えている。

Wah-Wah / ニック・ヴァレンシ
 ザ・ストロークスの人による、"Wah-Wah" は、[Concert for George] の名演があるだけに、なかなかのチャレンジだ。何と言っても、エレクトリック・ギタリストとしては憧れの曲ではないだろうか。
 格好良く行くかどうかは、ドラムとベースのがんばりにかかっているが、この曲の持つパワーと明るさを爆発させている。ドラムのマット・ソーラムは、ザ・カルトの人で、ガンズ・アンド・ローゼズの人で、モーターヘッドの人でもあるとのこと。なんだか良く分からないが、凄い。
 ギター・ソロに入る前に、一瞬ワウギターだけで保たせるパートがあるが、ちょっとテンポがもたついた。これは転ばないようにテンポを保つ方が難しいのであって、[CFG] の時のクラプトンは、やはり凄かったのだと思い知る。
 大事なポイントでもあるホーン・セクションは、もう少し粘っこく、重く演奏した方が良いだろう。ピアノとオルガンの音を大きくミックスしているのは格好良い。

If I Needed Someone / ジェームズタウン・リバイバル
 コーラスの美しい、ちょっとサイモン&ガーファンクルみたいな二人。学校の同級生だそうだ。
 イントロ以外は、ビートルズのオリジナルに忠実なのだが、面白いことに誰もリッケンバッカーを弾いていない。そういえば、[CFG] でも飾ってあった以外、ほとんどリッケンバッカーは使われていなかったと思う。ここはやはりロジャー・マッグインの登場が待たれる。

Art of Dying / ブラック・レベル・モーターサイクル・クラブ
 唯一、イントロで何の曲か分からなかったのが、この曲。このコンサートの中では珍しく、オリジナルとは大きく異なる解釈で演奏している。クラプトンのワウを再現する人がいなかったという推理も成り立つが。
 不気味で、地を這うようなプレイが、ジョージのダークな面を出していて、味わい深い。

Savoy Truffle / ダニー・ハリスン
 いよいよダニーの登場。まずこの選曲が大好き。私もお気に入りの曲なのだが、ほとんどカバーで取り上げられないのが寂しかったのだ。
 ダニーの、ジョージとよく似ているけれど、よりメタリックでエッジの利いた、力強い声がこの曲に良く合っている。シニカルでぶっきらぼう、クールでユーモアがある曲を、完璧にプレイしている。エンディングの格好良さには痺れる。ちょっと惜しいのは、やはりホーン・セクション。ちょっと軽快過ぎた。もっと重く、粘っこくして欲しかった。

For You Blue / チェイズ・コール
 オシャレなお姉さんによる、オシャレな "For You Blue"。オリジナルはかなりアコースティックな曲だが、ここでは思い切ってエレキサウンドでポールとはひと味値違った魅力を引き出している。

Beware of Darkness / アン・ウィルソン
 ハートというグループのことは良く知らないが、その姿はMTVで見たことがあり、そのイメージでいたら、これまたスタイル悪く見える格好の、この人がアン・ウィルソンその人であることにビックリしてしまった。そのことを人に言ったら、「昔から、角度を選ぶ人なんだ」とのこと。
 演奏はさすがにソウルフルで格好良い。ジョージの中では女性向きとは言いがたい曲だが、存在感たっぷりの良い演奏だ。タンバリンを叩いているお兄さんが、ダークホースTシャツを着ている!

(その3につづく)