Moon2013/12/12 22:18

 時差ボケというものは意外と深刻な影響があるもので、先週はすこし調子がおかしかった。電車を乗り間違えたりしているうちは良いが、とうとうあの大事なディラン様ラジオを録音し損ねるという大失態を演じたのである。
 幸い、逃したのは初回放送で、日曜日の再放送で録音したのだが。そのようなわけで、前回のディラン様ラジオ "Moon" を聞いたのは、つい二日前のこと。

"Moon" ときて、多くのロック・ファンは、ビートルズの "Mr. Moonlight" を思い浮かべるだろう。ディランはピアノ・レッドによる初期録音バージョンを流した。



 間奏のソロ・メロディの微妙な違いが面白い。ビートルズで言うと、ポールがハモンド・オルガンで弾くパートで、このピアノ・レッドのバージョンではギター。
 簡単に言うと、音階の第7音 ― 主音にメロディを導くから「導音(どうおん)」と言うのだが、これを半音上げるか、上げないかという問題。ビートルズはオシャレにシャープをつけているが、このピアノ・レッドのバージョンはやや素朴な雰囲気を出すためか、半音上げずに弾いている。この箇所が非常に印象に残った。

 ビートルズのバージョンを改めて聞いてみると、やはりジョンのボーカルの素晴らしさに圧倒される。



 ポールも素晴らしいヴォーカリストだが、この時期のジョンには敵わない。ポールのみならず、誰も敵わないのがこの時期のジョン・レノンだ。もし、ただ一人だけ最高のロック・ヴォーカリストを挙げろと言われたら、私はこの時期のジョン・レノンと答える。その理由は、この曲、1曲で十分だ。

 初めて知ったのだが、ホリーズも "Mr. Moonlight" をカバーしているとのこと。



 ビートルズを聞いてからだと、やや分が悪いか。
 面白いのは、実はこのホリーズの場合も、導音を半音上げていないところだ。歌詞の冒頭 "You came to me one summer night" でいうと "summer" や、"Mr. Moonlight come again please" の "again" のところ。
 おそらく、ホリーズの方がビートルズより先にこの曲を録音していて、ピアノ・レッドに近いのだと解釈しているのだが、ホリーズのレコーディングには詳しくないので、自信がない。ビートルズの録音は1964年10月。ホリーズの録音時期をどなたか教えて下さい。

 ディラン様ラジオ日本版のお楽しみと言えば、ピーター・バラカンさんの解説と、1曲流すディラン自身の曲。私は密かにウィルベリーズの "New Blue Moon" を期待していたのだが…残念![Love and Theft] の "Moonlight" だった。
 "New Blue Moon" は本当に大好きなのだ。下手すると、ウィルベリーズ Vol.3 で一番好きな曲かも知れない。何せ、あのボブ・ディランが「フー!!!」とか言ってくれるのだ!ディラン様があんなにはっちゃけるのは、ウィルベリーズだけ!

コメント

_ bombay2goa ― 2013/12/14 04:57

「Mr. Moonloght」のハーモニーの違い、面白いですね!
ホリーズの「Mr. Moonlight」は64年1月発売のデビューアルバム「Stay With The Hollies」収録で、録音は63年中に行われたようなので、ビートルズより先のようです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Stay_with_The_Hollies

ただ、ビートルズは62年のハンブルグ録音のライブですでにこの曲を演奏していて、ポールのハーモニーはこの時期から半音上げています。間奏はオルガンでなくジョージのギターで、こちらはオリジナルどおり半音上がってないのが面白いところです。ポールとジョージの間で譲りがたい意見の相違があったということでしょうか(笑)
http://www.dailymotion.com/video/x10gjsj_mr-moonlight-the-beatles-live-at-the-star-club-in-hamburg-germany-1962_music

_ NI ぶち ― 2013/12/15 13:03

>bombay2goa さん
ホリーズ情報、ありがとうございます!やはりホリーズが先ですね。ビートルズの [For Sale] バージョンを聞いてしまうと、あそこはどうしても半音上げたくなりますからね…

 もう一度ピアノ・レッドとホリーズのバージョンを丁寧に聞いてみると、どうやら冒頭の歌詞 "Sammer" では半音上げているようです。しかし、2回目の"again" はシャープをつけていない。なかなか細かいことをやってきます。ピアノ・レッドのギターソロは、2回とも上げていませんね。

 それを踏まえて、ご紹介してくださったビートルズのハンブルグ演奏を聴くと…ジョンとポールのハーモニーは、もう完全に半音上げ。この二人の感覚ではこっちが相応しいのでしょう。
 で、ジョージのソロが面白い。1回目は半音あげて、2回目はあげていない!ピアノ・レッドのオリジナルボーカルに沿うようなソロにしている。なるほど…
 やはり、ポール的には絶対に半音上げなのでしょうね。かくして、[For sale] では。コーラスはもちろん、ソロも徹底的に半音上げになったようです。なるほど、なるほど。

_ bombay2goa ― 2013/12/16 04:58

ジョージ、何気にオリジナルを細かく再現してたんですね!ビートルズのアンソロジーVol.1にはジョンがギターソロを弾いてる「Mr. Moonlight」が収録されてますが、こちらはやっぱり2回とも半音上げ。
http://www.youtube.com/watch?v=bt_hWWtVmlo

ウィルベリーズの「New Blue Moon」は自分も大好きです。ディランの「ゆーやーゆーフーー!」、こんなに気を抜いちゃっていいのかよ!と思いながら微笑ましく聴いてます。

_ NI ぶち ― 2013/12/17 21:35

>bombay2goaさん
アンソロジーのは、私も聞き覚えがありました♪
ジョンとポールのコーラスは、半音上げをすごく意識した歌い方ですね。ギターソロも、すごく意識した感じ。でもやっぱりオルガンの方が良いな。

ウィルベリーズのディランは本当に楽しそうで嬉しくなっちゃいます。Vol.3 はそもそも、ディランがジョージに「そろそろやらないの?」と言ったことがきっかけらしいですから。

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