Martin Freeman: Made to Measure2012/09/08 21:57

 自分にとって新しいジャンルの音楽を聞き始めようと思ったら、何から聞けば良いのか。私にとってのモータウンが、その対象である。
 音楽に詳しい友人には、マーヴィン・ゲイのアルバムと、映画「永遠のモータウン」とそのサントラを勧められた。自分が好きなアーチストが勧めるモータウンという手もある。その方面で行くと、ジョージがスモーキー・ロビンソンのファンなので、これも購入する。

 ミュージシャンではないけれど、馴染みの俳優であるマーティン・フリーマンがモータウンのファンあることは、何度か記事にしたとおりだ。
 そのマーティンが、お気に入り,聞いて欲しい20曲を選び、コンピレーション・アルバムにしたのが、2006年発売の[Made to Measure] である。「おあつらえ向け,オーダーメイド」という意味。



 新品ではもう手に入らない。そこで、曲目リストを元に、iTunes (USA)から1曲ずつ購入し、ジャケットもネットで手に入れてiPodで楽しんでいた。しかし、やはり現物の盤が欲しくなって中古で入手したところ、インナーが面白かった。マーティンによる全20曲の解説が載っているのだ。
 これはモータウンの勉強がてら、全文を翻訳したので、Cool Dry Place にアップした。マーティンの豊かな音楽知識や、独特の語り口、何と言っても音楽オタクっぷりが面白い。

 まず曲目は、ジャクソン5の "I want you back" や、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズの "The Tears of a Clown" など、モータウンの中でもとびきりの有名ヒット曲から、iTunes のリストでもかなり下の方まで行かなければ見つけられないほど、非常にマイナーな曲まで、かなりバラエティに富んでいる。
 1971年生まれのマーティンがモータウンを聴くようになった頃に、彼の姉の友人二人(男子)からもらった、編集カセットテープの話が面白い。どうやらこの二人、マーテインに布教して、成功したようだ。
 レコードショップでレアな盤を手に入れた喜びなど、実に可愛らしい。ロンドンのJB's Recordsは、Hanway Street 大英博物館の近くだ。もっと早く知っていれば、絶対に行ったのに。残念。

 どうやら、マーテインの音楽好きはかなり広範囲かつ深いらしく、出てくるミュージシャンの名前が軒並み私には分からない。何度もググることになった。
 そんな中で、"It's a Shame" のソングライターの名前を、微妙に間違えたようだ。マーティンが間違えたのか、編集者が間違えたのかは分からない。ともあれ、R&Bのアーチストと、80年代ティーン・アイドルを間違えるのは、止めてほしい。しばらく何が何だか分からなかった。

 とても興味深かったのは、ブレンダ・ハロウェイの "You Made Me So Happy" に関するコメント。音楽産業の商業性に言及している。
 莫大な利益を得るビジネスを、「金儲け主義」という言葉を使って非難するのは、私たちにとって簡単だし、格好良い事だ。しかし、20世紀におけるポップスの隆盛は、このビジネスとしての音楽,もっと直裁に言えば「金儲け主義」がもたらした。ただ芸術だけを無欲に追求していたら、私たちはポップスの喜びを享受していなかっただろう。
 マーティンもその点に「肯定的」な思いを述べている。彼はいかにもUK人らしいシニカルなところがあり、このコメントもそういう面と、音楽に対する真摯な思いが同居していて面白い。

 マーティンが特に好きなのは、マーヴィン・ゲイ,スティーヴィー・ワンダー,そしてスモーキー・ロビンソンだ。私はスモーキーにはまった。モータウンはベスト版ばかりで、なかなかオリジナル・アルバムは手に入りにくい。まだまだこれからだ。
 ジャクソン5 の良さも、このアルバムで認識した。映像無し,ただ純粋に音だけで聞いたのは初めてで、いたく感動した。声変わり以降,大人になって踊るマイケル・ジャクソンには興味は湧かないのだが、ジャクソン5のアルバム,最初の2作品は早速購入した。

 素晴らしき先導役になってくれたマーティン・フリーマンに感謝。そして、お誕生日おめでとう。翻訳アップが今日になったのは、偶然。