軽井沢大賀ホール2010/08/02 21:54

 軽井沢に来たので、初めて軽井沢大賀ホールに行ってみた。
 大賀典雄氏は、1930年生まれ。東京芸術大学でバリトンとして声楽を勉強している時に、ソニーの前身である東京通信工業の仕事に関わるようになり、その後正式に入社。ソニーを世界に名だたる大会社に育て上げた人物の一人であり、ソニーの社長,会長を勤めた。
 音楽家出身だけあって、音響製品の開発にもその手腕を発揮した。CDの開発に大賀氏の存在は欠かせなかったと、いわれている。
 20世紀の大指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908~1989)とは個人的にも親しい友人であり、カラヤンの死に際して、身近に居た人でもある。

 大賀氏がソニーを退任した後、その退職金などの私財を提供して建造されたのが、軽井沢大賀ホールである。
 軽井沢駅(昔は信越本線の小さな木造の駅舎だったが、今は新幹線が止まるご立派な駅になっている。風情がないと文句の一つも言いたいが、何せ新幹線は便利なので、その恩恵を受けている)から、徒歩でせいせい10分くらいだろうか。標高1000mほどの日差しは強く、軽井沢だというのに、やけに暑かった。
 大賀ホールは、特徴的な五角形をしている。大きな池に面し、緑が多くて雰囲気は良い。客席数は784。
 私は東京にある紀尾井ホールのようなものを想像していたのだが、大賀ホールに入ると、もっとこじんまりとした感じの作りになっていた。ロビーなども簡素で、ゴージャスという訳にはいかない。
 ホール内も実に簡素で、雰囲気的にはやや拍子抜けする。クラシック向きのホールではおなじみのフカフカ絨毯や、キラキラのシャンデリアは無い。五角形とう形状をのぞいては、町の公民館のような印象がある。



 今回見に行ったのは、首都圏の音楽大学,S学園(母校ではない)の夏期コンサートの一つ。最初、演奏者は全員S学園の指導者だと勝手に思いこんでいたのだが、これは私の誤解で、実際はオケのほとんどは学生だった。院生より学部生が多く、中には高校生までいた。
 当然演奏のクォリティは期待できないが、指揮者は秋山和慶。一曲目,メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲のソリストは、徳永二男という有名どころが揃っている。

 演奏が始まってみると、まず第一音から目驚いてしまった。耳が突然震え上がるほどの驚き ー。私がこれまで聞いたどの音楽ホールよりも、すばらしい音が、響きわたったのだ。
 特に弦の響き方は尋常ではない。ピチカートがあそこまで豊かな響きを表現するとなると、楽器の善し悪しをアレコレ言うのがバカバカしくなってくる。
 私は基本的に、音響やステレオには興味がない。それでも感心してしまったのだから、大したものだと思う。

 すさまじく音響にこだわった素晴らしいホールではあるのだが、演奏会スケジュールを見ると、どうもピンと来ない。そういう演目を、このホールは想定していないのではないだろうかという、タイトルが散見されるのだ。
 無論、音楽なのだからどこの誰が、どのホールで演奏しようが文句は無い。しかし、大賀ホールとして望んでいるのは、それこそ紀尾井ホールのコンサートスケジュールのようなものではないかと思うのだが。
 軽井沢という立地が影響しているのかとか、ちょっと考えさせられる。
 ともあれ、あの音響は一聴の価値がある。機会があったら、行ってみることをお勧めする。できれば、弦楽器のある演奏が良いかもしれない。

 肝心の演奏そのものだが ー そもそも学生オーケストラなのだから、それなりの演奏である。どの学生も瞳孔が開いたみたいな必死の形相で、楽譜に没入している。演奏に余裕がない。切れとか、勢いとか、深みとか、とにかく「表現」と言うものは、「余裕」の向こう側にあるものだなと、改めて思い知らされた。
 特に管の人は、気の毒になる。人数が少ないだけに、アラが目立ってしまう。
 客の入りは、芳しくない。演奏会の趣旨が趣旨なだけに、いくらかの学校関係者と、学生たちの家族がほとんど。舞台上の孫娘に向かって、必死に手を振っているおばあちゃんとか居て、微笑ましいのやら、滑稽なのやら。
 ともあれ、学生にとっては良い経験になっただろう。

 ちょっと気になったのは、オケの衣装。男性は全員ちゃんとタキシードを着込んでいるのだが、女性の衣装に統一感がない。白いブラウスに、くるぶしまである黒いボトムズという決まりのようだが、多くの学生がパンツスタイルで、どうもこれが普段着っぽい。
 別にオケが普段着でも主旨によっては問題ないが、男性がタキシードで揃っているので、バランス的にちょっと変。
 やはり黒ロン(黒のロングスカート)ぐらいは、音大の演奏科学生なのだから、持っていた方が良いのではないだろうか。安く入手できるものも、けっこうある。この私でさえ、持っていたのだから、それほど特別なことではなかろう。

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